このページは、司法書士試験に出題された民法の債権各論「売買」(第555条―第585条)をまとめたページになります。
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【司法書士試験】債権各論「契約各論」ガチ解説
民法条文目次
第二章 契約
第一節 総則
第二節 贈与(第五百四十九条―第五百五十四条)
第一款 総則(第五百五十五条―第五百五十九条)
第二款 売買の効力(第五百六十条―第五百七十八条)
第三款 買戻し(第五百七十九条―第五百八十五条)
第四節 交換(第五百八十六条)
第五節 消費貸借(第五百八十七条―第五百九十二条)
第六節 使用貸借(第五百九十三条―第六百条)
第七節 賃貸借
第八節 雇用(第六百二十三条―第六百三十一条)
第九節 請負(第六百三十二条―第六百四十二条)
第十節 委任(第六百四十三条―第六百五十六条)
第十一節 寄託(第六百五十七条―第六百六十六条)
第十二節 組合(第六百六十七条―第六百八十八条)
第十三節 終身定期金(第六百八十九条―第六百九十四条)
第十四節 和解(第六百九十五条・第六百九十六条)
以下、論点名を見ただけで、結論などが思い浮かぶように。
論点:手付解除の要件(売主からの解除)
手付(解約手付)とは
契約締結時に買主から売主に手渡される金銭等のこと。
原則
手付が交付された場合、買主は「手付の放棄」、売主は「手付倍額の現実提供(実際にお金を持参するなど。口頭では足りない。供託までは必要ない。)」をすることで、理由を問わず「いつでも」契約を解除できる
(趣旨:契約の拘束力からの解放)
例外:履行の着手による制限
「相手方が」契約の履行に着手した後は、相手方の保護(不測の損害防止)の観点から、もはや手付解除をすることはできない
*自分がすでに履行に着手していても、相手方がまだ未着手であれば、自分から手付解除をすることは可能
《司法書士過去問コレクション》
売主が売買契約を解除するには、買主に対し、手付の倍額を償還する旨を告げてその受領を催告するのみでは足りず、その現実の提供をしなければならない。
解答表示
557条1項により売主が売買契約を解除するには、買主に対し、その現実の提供をしなければならない。
《司法書士過去問コレクション》
買主が売主に手付を交付した場合において、売主が売買契約を解除するためにした手付の倍額の償還の受領を買主が拒んだときは、売主は、手付の倍額の金銭を供託しなければならない。
解答表示
手付解除のための「現実の提供」したといえるには、供託する必要はない。
供託なくして手付解除は成立しますが、売主はそのお金を買主のためにキープしておく(後から請求されたら払う)ことになります。
論点:手付解除の要件(「履行の着手」とは)
手付解除ができるのは「相手方が」履行に着手するまでです。
「履行の着手」とは、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部を行うことです。
具体的には
買主が支払期日に売主に対して代金を提供すること
目的物の引渡し
自分名義の所有権移転登記を経たこと
「履行の着手」の判断に、履行期の前後は関係がない。
履行期「前」であっても代金を提供すれば「履行に着手」に該当し、履行期「後」であっても代金の提供がなければ「履行に着手」とはいえない。
手付解除のルール(557条1項)は任意規定なので、「履行に着手した後でも手付解除できる」といった特約を結ぶことは有効
民法557条
《司法書士過去問コレクション》
買主が売主に代金をその支払期日に提供して履行を求めた場合であっても、売主は、手付の倍額を償還して契約を解除することができる。
解答表示
買主が支払期日に売主に対して代金を提供することは、「履行に着手」(557 I)に該当
《司法書士過去問コレクション》
土地の買主は、土地の引渡しを受けても、所有権移転の登記を受けるまでは、手付を放棄して契約を解除することができる。
解答表示
土地売買契約における土地の引渡しは、「履行に着手」(557 I)に該当
《司法書士過去問コレクション》
解約手付が授受された売買契約においては、買主が売買代金の履行期前に売買代金を提供したとしても、履行の着手があったことにはならないので、売主は、売買契約を解除することができる。
解答表示
債務の履行期前であっても、「履行に着手」することができる
履行の着手があったといえるから、売主は、売買契約を解除することはできない。
《司法書士過去問コレクション》
履行期後においては、売主は、手付の倍額を償還して契約を解除することができない。
解答表示
たとえ履行期後であっても、買主が履行に着手していない限りは、売主は手付の倍額を償還して契約を解除することができる。
《司法書士過去問コレクション》
買主は、売主に代金を提供して履行を求めた場合でも、売主がこれに応じなければ、手付を放棄して契約を解除することができる。
解答表示
買主自身は履行に着手したといえるが、相手方である売主が引き渡しをするなど履行に着手していない以上、手付を放棄して契約を解除することができる。
《司法書士過去問コレクション》
履行の着手の前後を問わず履行の終了するまでは解約手付による解除権を行使することができる旨の特約がある場合には、当事者の一方は、相手方が履行に着手した後であっても、売買契約を解除することができる。
解答表示
557条1項は任意規定であるから、特約は有効である
論点:「手付解除」「債務不履行解除」「合意解除」「損害賠償」との関係
手付解除と損害賠償との関係
通常、債務不履行による解除の場合は損害賠償請求ができるが(第545Ⅳ)、手付解除の場合は手付の放棄や倍額提供によってすでに清算が済んでいるため、追加で損害賠償を請求することはできません。
手付解除と債務不履行解除との関係
手付が交付されていても、手付解除ではなく通常の「法定解除」や損害賠償請求が可能
受け取っていた手付金は不当利得として全額返還しなければなりません。
手付解除と合意解除との関係
手付が交付されていて、合意解除した場合、原状回復義務として、すでに受け取っている手付金などすべて返還しなければなりません。
第557条
《司法書士過去問コレクション》
乙は、甲からその所有する土地を代金1,000万円で買い受ける旨を約し、解約手付として50万円、代金の一部として200万円を甲に支払った。甲・乙の合意により契約が解除された場合において、甲が受領した金額の返還についての定めがないときは、甲は乙に対し、200万円を支払えば足りる。
解答表示
売買契約が無効・取消しなどによって消滅すると、従たる契約の手付契約も消滅する
原状回復義務(121の2 I)として、手付金も含めて返還義務を負う。
《司法書士過去問コレクション》
売買契約が買主の債務不履行により解除された場合は、特約がなくても、売主は、債務不履行による損害賠償の請求をすることができるほか、手付の返還義務を免れる。
解答表示
前半部分は正しい。つまり、解約手付が交付されていても、債務不履行を理由とする解除・損害賠償請求をすることができる。
後半について、解除によって契約関係が遡及的に消滅するため、売買契約に付随する手付契約も消滅し、売主が受け取った手付は不当利得に当たるから、売主は手付を買主に返還する義務を免れない(703)
論点:他人物売買の効力と解除
他人物売買自体は有効に成立します。
最初から元の所有者に譲渡する意思がなかったとしても有効です。
他人物買主からの解除
売主が結局権利を取得できず、買主に移転できなかった場合、買主自身が他人の物だと知っていた(悪意だった)としても、善意・悪意を問わず契約を解除できます。
他人物売主からの解除
売主自身が「自分の物だと思い込んでいた(善意だった)」としても、売主側から契約を解除することはできません。
解除権は約束を破られた側(債権者)を守る制度だからです。
《司法書士過去問コレクション》
他人の物の売買において、目的物の所有者が売買契約成立の当時から当該目的物を他に譲渡する意思がなく、したがって、売主が当該目的物を取得して買主に移転することができないような場合には、当該売買契約は、無効である。
解答表示
他人物売買において、目的物の所有者が売買契約成立時から当該目的物を他に譲渡する意思がなく、売主が買主に当該目的物を移転できない場合でも、当該売買契約は有効
《司法書士過去問コレクション》
他人の権利を売買の目的とした場合、売主が権利を取得して買主に移転することができなかったときには、買主が善意であった場合に限り、買主は契約の解除をすることができる。
解答表示
買主は当該権利が他人に属することについて善意であると、悪意であるとを問わず、契約の解除をすることができる
《司法書士過去問コレクション》
他人の権利を売買の目的とした場合には、売主は、契約の当時売却した権利が自己に属しないことを知らなかったときでも、契約を解除することができない。
解答表示
そもそも解除権は、債権者側の解除権を認めるもので、債務者側の解除権を認めるものではない。
したがって、売主が他人の権利であることにつき、売買当時善意であっても、売主から、契約を解除することはできない。
論点:代金減額請求の要件
第563条【買主の代金減額請求権】
目的物に欠陥などがあった場合(目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合)、
原則として買主はまず「直して!(追完請求)」と催告した後、応じない場合に「安くして!(代金減額請求)」と主張します。
しかし、以下の場合、例外として、催告をすることなく直ちに代金減額請求ができます。
・履行の追完が不能であるとき。
・売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
・契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
・買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
ただし、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、代金の減額の請求をすることができない。
第541条【催告による解除】
欠陥を理由に契約を解除する場合、一般の債務不履行解除のルールが適用されます。
つまり、「売主に落ち度(帰責事由)」が全くなくても、買主は契約を解除できます。
《司法書士過去問コレクション》
売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求するために、履行の追完の催告をすることを要しない。
解答表示
代金減額請求は、原則として履行の追完の催告を先にする。
しかし、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときには、買主は、履行の追完の催告をすることなく直ちに代金の減額を請求することができる(563 II ②)
《司法書士過去問コレクション》
売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合であっても、売主の責めに帰すべき事由がないときは、買主は、その不適合を理由として、当該売買契約の解除をすることができない。
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売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、売主の責めに帰すべき事由がないときであっても、債務不履行の一般規定に基づき、買主は、その不適合を理由として、当該売買契約の解除をすることができる(564、541、542)。
論点:「種類又は品質」に関する契約不適合責任に基づく4つの権利行使の期間制限
第566条【目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限】
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、「買主がその不適合を知った時(主観的起算点)」から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
この条文は、売買契約における目的物の「品質・種類」の不適合について、買主が権利を主張できる期間を制限するものです。
不適合が長期間放置されると、売主の法的地位が不安定になり、証拠の散逸も招くため、「知った時から1年以内」という短い通知期間を設けて早期の解決を促しています。
第166条【債権等の消滅時効】
① 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
② 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
③ 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
種類又は品質についての契約不適合は、買主はその不適合を知ってから1年を過ぎると、契約不適合責任に基づく4つの権利行使(履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除)が封じられる。
数量不足や権利に関しての契約不適合(例:他人物売買、第三者の登記がついていたなど)は、この566条の期間制限(1年以内の通知)の対象外となる。
つまり、買主は1年を経過しても責任追及できるが、166条の原則通り、主観的要件である5年と客観的要件である10年の期間制限は受けることとなる。
《司法書士過去問コレクション》
売買の目的である土地について第三者が登記をした賃借権を有していたときは、買主は、当該土地の引渡しを受けた時から1年以内に限り、売買契約の解除をすることができる。
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問題文「第三者が登記をした賃借権を有していたとき」⇒権利についての契約不適合に該当する。
権利についての契約不適合は、566条の適用がなく、166条の原則通りに契約の解除をすることができる。
つまり、566条の規定する1年の期間制限は適用されず、166条1項の主観的要件である5年と客観的要件である10年が適用される。
《司法書士過去問コレクション》
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合であっても、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなかったときは、売主がその引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除き、買主は、その不適合を理由として、損害賠償の請求をすることができない。
解答表示
566条の条文通り。
論点:競売における契約不適合責任(場合分けが必要)
第568条【競売における担保責任等】
① 民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)における買受人は、第541条及び第542条の規定並びに第563条(第565条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
② 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
③ 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
④ 前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。
競売は、売主(債務者)が無資力となった場合など、国家権力による強制的な売却手続であり、通常の売買とは異なる特殊性があります。
競売の買受人に「権利の不適合」は救済するが、「物の不適合(キズ)」は自己責任というルールを課しています。
競売における権利の不適合(数量不足・他人物など)
買受人は、まず債務者に対して、解除または代金減額請求ができる。
債務者が無資力なら、配当を受けた債権者に対して、代金の返還を請求できる。
競売は債務者の意思で行われるものではないため、原則として損害賠償はできないが、債務者や債権者が「欠陥を知っていて黙っていた」場合は、例外的に損害賠償請求が可能。
競売における物の不適合(種類・品質の不適合)
競売手続の安定を保つため、担保責任の規定は一切適用されない(=解除も減額も賠償もできない)。
《司法書士過去問コレクション》
強制競売の目的である権利の一部が他人に属していたことにより、買受人が当該権利の一部を取得することができなかった場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
解答表示
《司法書士過去問コレクション》
強制競売の目的物に契約不適合があった場合において、買受人が売却許可決定がされた当時、当該不適合があることを知らなかったときは、買受人は、当該不適合を知っていながら申し出なかった債務者に対し、損害賠償を請求することができる。
解答表示
権利の不適合(他人の物だった等): 債務者が悪意なら、例外的に損害賠償請求できる
種類・品質の不適合(モノの欠陥など): 債務者が悪意であろうとなかろうと、一切の責任追及(解除・減額・損害賠償のすべて)ができない
問題文では、権利とも種類・品質とも限定せずに、単に「契約不適合があった場合」と書かれています
場合分けせずに、ひとくくりに言い切ってしまっているため、この問題は「×」になる
国民的アニメのストーリー風
競売で買ったノビタの空き地(権利の不適合)
【原則】
ノビタが借金を返せなくなったので、裁判所がノビタの「空き地」を競売にかけました。スネ夫くんがこれを落札し、お金を払いました(買受人)。
ところが、後で調べてみると、その空き地の一部が実は「先生の土地」だったことが分かりました(権利の不適合)。
この場合、スネ夫くんはノビタ(債務者)に対して、「代金を安くしてよ!」と言ったり、契約を白紙に戻したり(解除)できます。
【例外(ノビタにお金がない場合)】
もしノビタが「もう一銭も持ってないよ!」(無資力)という場合、スネ夫くんは、その代金を受け取ったスネ夫(配当を受けた債権者)に対して、「僕が払ったお金を返して!」と言うことができます。
【注意!物理的なキズの場合】
もし、買った空き地の下に大量の不法投棄ゴミが埋まっていた(品質の不適合)としても、スネ夫くんは誰に対しても文句を言えません。競売は、中身を細かくチェックするのが難しいため、「権利」については保証しますが、「品質」については買った人の自己責任とされるからです。
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