このページは、司法書士試験に出題された民法の《総則》第五節:条件及び期限(第百二十七条―第百三十七条)をまとめたページになります。
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【民法総則】論点「条件及び期限」ガチ解説
『条件』は実現するかどうか不確実なタイマー
『期限』はいつか必ずやってくる確実なタイマー
どちらも契約の効力を操るスイッチである!
条件及び期限
全体のポイント
なぜ「条件」や「期限」という制度があるのでしょうか?
それは、人々の「今はまだ無理だけど、将来こうなったら契約を進めたい!」という願いを叶えるためです。
◎条件と期限の違い
条件:将来発生するかどうか**「不確実」**な事実にかからせること。
期限:将来発生することが**「確実」**な事実にかからせること。
「身分行為」は、当事者の身分関係を明確にする必要があるため、「条件」だけでなく「期限(始期・終期)」を付けることも一切許されません
例「来年の4月1日から結婚しようね(始期)」という約束は、ただの婚約(予約)であって、法的な婚姻の効力そのものを期限付きにすることはできない
相殺は「条件」「期限」を付することができない(506条1項後段)
相殺(お互いの借金をチャラにすること)は、相手方に強制的に効果を及ぼす一方的な意思表示です。
これに「条件」や「期限」を付けると相手の立場が非常に不安定になるため、民法で禁止されています
◎「不確定期限」なのか「条件」なのか
法律上、ある約束が「不確定期限」なのか「条件」なのかを区別する究極の基準は、
「当事者の意思表示の解釈の問題」(当事者がどういうつもりでその約束をしたか)である
「結婚したら」という言葉について
パターン①:「条件(停止条件)」になるケース
例「YがAと結婚したら、Xに車をあげる」
⇒この場合、普通に考えて「もしAと結婚できなかったら、Xに車をあげる必要は全くない(約束はチャラになる)」という意味、つまり「結婚しなかったら払わなくてよい」という趣旨
パターン②:「期限(不確定期限)」になるケース
例「Aが結婚するまで、借金の返済を待ってあげる」
⇒お金を貸している側からすれば、「もしAが一生結婚しなかったら、借金を踏み倒していいよ(支払わなくてよい)」という意味で言ったわけではありません。「結婚するまでは支払わなくてよいが、結婚しないことが確定したら、すぐに支払え」という趣旨であると解釈すべき。
「出世払い」という言葉について
パターン①:「不確定期限」になるケース(判例)
例「出世したら、借金返してね」
「出世するまでは返さなくてもよいが、出世の見込みがなくなればすぐに返して」という趣旨で考えるべき。
つまり、いつになるかは分からないけれど、
「出世した」か「出世しないことが確定した(死亡など)」のどちらかの形で「必ずやってくる」
よって、不確定期限といえる。
出世払いは、原則として「不確定期限付」(判例)
パターン②:「停止条件」になるケース
「出世したら、借金返してね」
もし出世しなかったら、1円も返済しなくてもよい(踏み倒していいよ)」という太っ腹な趣旨で約束をしたのであれば、それは「出世」という不確実な事実にかからせているため「停止条件付」**となります。
*例外的にこのような趣旨で言葉を考える場合もある。
◎確定期限と不確定期限とは?
確定期限:「必ずやってくるし、それがいつなのかもハッキリ決まっている」という期限
例:「来年の4月1日になったら」「10年後に」など
不確定期限:必ず来るが、いつ来るかは不明という期限
例:「次に日本の総理大臣が交代したら」「私が死んだら」など
◎停止条件と解除条件とは?
停止条件:ー⇒+へ(せき止められていたダム)
条件が満たされた(成就した)時から、契約の効力が発生する条件のこと。
解除条件:+→ーへ(罰ゲームで無しに)
条件が満たされた(成就した)時から、契約の**効力が消滅する(なくなる)**条件のこと。
◎停止条件と解除条件の効果
原則として、遡及効なし(127Ⅰ)。
遡及効の例外:
当事者が「条件が成就したら、過去(契約時)に遡って効力を生じさせよう」と特別に合意(意思表示)した場合は、その意思に従って過去に遡ります(127Ⅲ)。
※「期限(いつか必ず来るもの)」には、このような特約で遡らせるルールすら存在しません
◎期待権の保護
条件がまだ成就するかどうかわからない間でも、条件が成就した時に得られるはずの利益(期待権)を、相手方は侵害してはいけません(128)。
期待権を侵害した場合、かつ、条件が成就したときには、損害賠償の対象になります。
*逆に、条件不成就なら損害なし(判例)
◎条件の不正な操作(条件成就の妨害と擬制)
条件が成就することで**「不利益」**を受ける者(お金を払う側など)が、**故意(わざと)**に条件の成就を邪魔したときは、相手方は「条件は成就した!」とみなすことができます(130Ⅰ)。
※第三者が邪魔した場合は適用されません。
条件が成就することで**「利益」**を受ける者が、不正に条件を成就させたときは、相手方は「条件は成就していない!」とみなすことができます(130Ⅱ)。
◎初めから結果が決まっている条件(既成条件・不能条件)のパズル
「前の条件⇒後ろの条件」のパズル
既成条件:「後ろの条件」が確定
契約した時点ですでに条件が満たされている場合、
停止条件(ー⇒+)なら「無条件(+)」、
解除条件(+→ー)なら「無効(ー)」になります(131Ⅰ)。
不成就の確定:「手前の条件」のまま
契約した時点ですでに「絶対に条件が満たされない」と決まっている場合、
停止条件(ー⇒+)なら「無効(ー)」、
解除条件(+→ー)なら「無条件(+)」になります(131Ⅱ)。
不能条件:「手前の条件」のまま
絶対に不可能なことを条件にした場合、
停止条件なら「無効(ー)」、
解除条件なら「無条件(+)」になります(133Ⅰ、133Ⅱ)。
◎ヤバい条件(不法条件・純粋随意条件)
不法条件:
犯罪などの不法な行為をすることを条件にした場合、その契約全体が「無効」になります。
「不法行為をしないこと」を条件にしても無効です(132)。
純粋随意条件:気分で変わる条件
例
気が向いたら、あげる⇒無効(134)
気が向いたら、返して⇒有効(134反対解釈)
「気が向いたら」という気分で変わるような随意条件は、
効力が発生する停止条件として使うなら無効(134)
効力が消滅する解除条件として使うなら有効(134反対解釈)
理由
「嫌ならあげなくていい」というのでは、そもそも契約(法律行為)として成り立っていない(134)
解除条件の場合なら、とりあえず効力発生しているので、わざわざ無効にする必要はない(134反対解釈)
◎期限の利益とその放棄
期限の利益:
期限が来るまで「まだ払わなくていい」というメリットのこと。
原則として借主(債務者)のためにあると推定されます(136Ⅰ)。
利益の放棄:
期限の利益は自分から捨てる(早く返す)ことができます。
ただし、それによって貸主(相手方)の利益(もらえるはずだった利息など)を奪う場合は、その損害を払わなければなりません(136Ⅱ)。
◎期間の計算(初日不算入の原則)
期間を日、週、月、年で定めたときは、
原則として**「最初の日はカウントしない(初日不算入)」**というルールがあります(140)。
たとえば、「4月1日から1か月間」と言われたら、4月1日は丸1日あるわけではないのでカウントせず、翌日の4月2日からカウントを始めます。
利息の例外:
ただし、お金を借りた時の利息の計算だけは特別で、初日不算入のルールは使わず、「お金を受け取ったその日」から利息が発生します(589Ⅱ)。
なぜなら、利息というのは「元本を利用させてもらったことへの対価(レンタル料のようなもの)」だからです
お金を借りた場合、たとえそれが午後3時であろうと午後11時であろうと、**「受け取ったその日から、そのお金を自分のものとして使える状態」**になっていますね
条件及び期限:過去問演習
問(停止条件の成就と効力発生時期)
停止条件付法律行為について条件が成就した場合、初めから効力を有していたものとみなされる。
解答表示
「条件」も「期限」も、原則として過去に遡ることはありません(遡及効なし)
例外として、特約で遡及効をつけられる(127Ⅲ)
※ちなみに、「期限(いつか必ず来るもの)」には、このような特約で遡らせるルールすら存在しません
問(解除条件の成就と効力)
解除条件付法律行為は、その条件が成就したときには、その法律行為の時にさかのぼって効力を失う。
解答表示
民法127条2項は「解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を失う」と明確に定めています。
問(不成就が確定した停止条件)
法律行為の当時、停止条件の不成就が既に確定していた場合に、当事者がそれを知らなかったときは、無条件の法律行為となる。
解答表示
停止条件は、ー⇒+にする条件
不成就が確定しているならーのまま、つまり無効(ー)
当事者の主観は関係がない
問(既成条件と解除条件)
条件が法律行為の当時、既に成就している場合において、その条件が解除条件であるときは無効である。
解答表示
解除条件は、+⇒ーにする条件
成就が確定しているならーが確定ってこと、つまり無効(ー)
問(不成就が確定した解除条件)
解除条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合には、その法律行為は、無効となる。
解答表示
解除条件は、+⇒ーにする条件
不成就が確定しているなら+が確定ってこと、つまり無条件(+)
問(不法条件)
不法行為をしないことを停止条件とする法律行為は、無効である。
解答表示
不法行為をしないことも、することも、そもそもそんな条件は無効
問(条件成否未定の間の権利の侵害・期待権)
Yは、Xとの間で、Xが半年後に実施される資格試験に合格したら、Y所有の甲時計をXに贈与する旨を約した。その後、Yは、故意に甲時計を壊した。Xは、これを知り、当該資格試験に合格した後、Yに対し、当該資格試験の合格についての条件成就の期待権の侵害を理由として、甲時計の価額相当の損害賠償を請求した。この場合、XのYに対する請求は認められる。
解答表示
ドキドキの期間(成否未定の間)であっても、「条件が成就した場合に得られるはずだった利益(期待権)」を勝手に奪ってはならないと定めています(民法128条)。
Yがわざと(故意に)時計を壊した行為は、まさにXの期待権を侵害する不法行為にあたります。
*ちなみに、時計を壊された瞬間にすぐ「損害賠償を払え!」と請求できるわけではありません。 なぜなら、もしXが試験に落ちていたら、どのみち時計はもらえなかった(損害は発生していない)ことになるからです。 そのため、**「期待権を侵害されたことに対する損害賠償請求権は、条件が成就した(合格した)時に確定的に発生する」**という判例のルールがあります。
問(事実の不発生を条件とする場合)
ある事実が発生しないことを停止条件とする法律行為は、無効となる。
解答表示
普通にあり得る話
例:「明日雨が降らなかったら」を条件にすることも、当然に可能
問(不能条件)
不能な事実を条件とする法律行為は無効である。
解答表示
不能な停止条件:「無効」(133条1項)。
不能な解除条件:「無条件(有効)」(133条2項)。
問(純粋随意条件の有効性)
贈与契約に「贈与者が欲するとき」は、贈与した物を「返還する」ものとする旨の条件を付したとしても、その贈与契約は有効である。
解答表示
民法134条は、「俺の気が向いたらね(純粋随意条件)」という気まぐれを「停止条件(〇〇したら効力が発生する)」にした場合のみを「無効」としています。
本問では、「俺が返して欲しくなったら(気まぐれ)、返せ(=解除条件:効力が消滅する)」という条件です。
この場合、とりあえず「実際に渡している(=契約の効力は一旦発生している)」ため、わざわざ法律で「最初から無効だ!」とぶっ壊す必要がありません。
したがって、「解除条件」に純粋随意条件を付けた場合は、そのまま「有効」として扱われます。
問(純粋随意条件と停止条件)
単に債務者の意思のみに係わる停止条件を付した法律行為は、無効となる。
解答表示
「嫌ならあげなくていい」というのでは、そもそも契約(法律行為)として成り立っていないため、民法はこれを「無効」とバッサリ切り捨てています(民法134条)
問題(条件成就の妨害と擬制)
条件成就により不利益を受ける当事者が故意に成就を妨げた場合、第三者は条件を成就したものとみなすことができる。
解答表示
民法130条1項は、この「条件が成就したものとみなす」という主張ができるのは、あくまで「相手方(ズルをされた被害者本人)」だけであると定めています
問(条件成就の妨害の成否)
Yは、Xとの間で、Yが交際中のAと結婚したら、Y所有の甲自動車をXに贈与する旨を約した。その後、Yは、Aから結婚の申込みを受けたが、仕事の都合から回答を保留し、これがきっかけとなって、結局、YとAとの関係が破綻し、YがAと結婚する見込みはなくなった。この場合、XのYに対する甲自動車の引渡し請求は認められる。
解答表示
わざと条件を妨害した(故意の妨害)なら条件成就の擬制(130があるが、)「仕事の都合で」という誰も責任が問われない理由であり、結婚してない以上、条件は満たされていない
問(条件成就の擬制の裏バージョン)
条件の成就によって利益を受ける当事者が信義則に反するような方法で条件を成就させた場合には、条件の成就によって不利益を受ける当事者は、条件が成就していないものとみなすことができる。
解答表示
130Ⅱの典型例。
問(条件成就の擬制・不正な条件成就のケーススタディ)
Yは、Xとの間で、X所有の甲カメラが壊れたら、Y所有の乙カメラをXに贈与する旨を約した。その後、Xは、Xの妻であるAに甲カメラを壊すように依頼し、Aが故意に甲カメラを壊した。この場合、XのYに対する、乙カメラの引渡し請求は認められる。
解答表示
妻Aを利用して(手足として使って)カメラを壊した行為は、X自身が故意に(不正に)条件を成就させたことと同じと評価されます
民法130条2項のペナルティが発動し、不利益を受ける相手方Yは**「条件はクリアしていない(無効だ)!」と主張できる**ため、Xのカメラ引渡し請求は認められません
問(期限の利益の放棄)
弁済期の定めがある利息付金銭消費貸借契約において、借主が期限の利益を放棄するには、元本に弁済期までの利息を加えた金額を提供しなければならない。
解答表示
「期限の利益(支払いを待ってもらえる/利息をもらえるメリット)」は、自分から放棄する(手放す)ことができますが、**「それによって相手方の利益を害することはできない」**という大原則があります(民法136条2項ただし書)
問(貸主からの期限の利益の放棄と前倒し請求)
Xは、Yに対し、利息を年1割、元本及び利息の弁済期を契約時から1年後として、金銭を貸し付けた。Xは、Yに対し、契約時から半年を経過した日に、同日から弁済期までの半年分の利息の支払請求権を放棄して、当該貸金債権の元本と契約時から同日の前日までの半年分の利息の支払を請求した。当該XのYに対する請求は認められる。
解答表示
「期限の利益は、相手方の利益を害しない限り放棄できる」というのが大原則です(民法136条2項本文)。
最大のメリット(期限の利益)は**「1年後までは元本を返さなくていい(手元に置いておける)」**ということです。
貸主(X)が「残り半年分の利息はオマケしてやる」と譲歩したところで、債務者が被る「予定より半年も早く元本を返さなければならない(半年じゃ困る)」という不利益をカバー(賠償)できていることにはなりません。
したがって、相手(借主)の利益を害してしまう以上、貸主からの身勝手な期限の利益の放棄と前倒し請求は認められない
問(出世払いは不確定期限か停止条件か)
債務者が出世した時に借金を返済するといういわゆる出世払の約定は、債務に停止条件を付したものである。
解答表示
判例(大判大4.3.24)は、このような「出世払い」の約束について、原則として以下のように解釈しています。 「出世した時はもちろん返すし、仮に会社をクビになる等して**『出世しないこと(見込みがないこと)』が確定したときには、その時点ですぐに借金を返さなければならない**」
つまり、いつかは分からないけれど、「出世した時」か「出世しないと確定した時」のどちらかのタイミングで必ず「返す時期(期限)」がやってくるため、これは条件(発生するか不確実)ではなく、**「不確定期限(必ず到来するが、いつ来るか分からない期限)」**を付けたものと扱われます。
問(不確定期限か停止条件か:結婚したら払う)
Xは、Aに対する貸金債権を有していたところ、その弁済をAが結婚するまで猶予するため、Aとの間で、その弁済期をAが結婚する時と定めた。その後、Aは結婚しないまま、死亡した。この場合、Xの、Aの唯一の相続人であるYに対する当該貸金債権の弁済請求は認められる。
解答表示
問題文にある「弁済をAが結婚するまで猶予するため」という事情から、この約束は「結婚しなかったら踏み倒していい(停止条件)」というものではなく、**「結婚するまでは支払いを待ってあげる(不確定期限)」**という趣旨であることが読み取れます
したがって、Aが死亡したことによって「結婚しないこと」が確定したその瞬間、もはや返済を待つ理由はなくなり、**「弁済期(期限)が到来した」**ことになります
Xは、Aの借金をそのまま引き継いだ相続人Yに対して、「期限が来たからすぐに返せ!」と弁済請求をすることが堂々と認められる
問(期間の計算・利息の発生時期)
利息付金銭消費貸借契約において、借主が金銭を受け取った日の分の利息を支払う必要はない。
解答表示
民法上の期間の計算において、原則は「初日不算入(初日はカウントしない)」です(民法140条本文)
しかし、判例(最判昭33.6.6)は、利息付金銭消費貸借契約における利息の発生時期については、**この初日不算入の原則を適用しない(例外)**と判断しました
なぜなら、利息というのは「元本を利用させてもらったことへの対価(レンタル料のようなもの)」だからです
お金を借りた場合、たとえそれが午後3時であろうと午後11時であろうと、**「受け取ったその日から、そのお金を自分のものとして使える状態」**になっています
