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【司法書士試験】物権「永小作権」(第270条から第279条)

このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「永小作権」(第270条から第279条)をまとめたページになります。

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【民法物権】論点「永小作権」ガチ解説

地上権の規定の準用もあり、永小作権と地上権は、どちらも「他人の土地を直接支配して利用できる強力な権利(用益物権)」として似ている。
以下、4点が異なるポイント

1. 土地を使う「目的」の違い
地上権:「工作物(建物やトンネルなど)」や「竹木(植林など)」を所有するため。
永小作権:「耕作(農業)」や「牧畜」で土地から収益を上げるため。

2. 「利用料(対価)」の違い
地上権:無償(タダ)でも成立する。(条文に「地代を払って」という言葉がない。特約を結んで初めて有料になる)
永小作権:「小作料」の支払いが絶対条件。(「タダで農業していいよ」という契約は、永小作権としては成立せず、別の権利(使用借権など)になります)

3. 「存続期間」の違い
地上権:**上限なし。当事者が合意すれば「永久(永遠)」**に設定することも可能。(一度建てた立派な建物や地下鉄のトンネルを、期間が来たからといって壊させるのは社会の損失になるため)
永小作権:**「20年以上、50年以下」**という厳格な枠がある。(長すぎると地主の所有権が名ばかりになってしまうため、MAX50年で強制リセットされます)

4. 「土地の大改造(変更)」の可否
地上権:建物の基礎を作ったり、地下にトンネルを掘ったりするため、土地の形状を大きく変更することが最初から想定されている。
永小作権:土地に対して**「回復することのできない損害を生ずべき変更(取り返しのつかない大改造)」を加えることが法律で禁止**されている(第271条)。あくまで「いずれ地主に農地として返すこと」が前提。

物権の全体像

民法物権の全体像と条文

単元のセンターピン(本質)
永小作権は「農業(耕作・牧畜)目的」に特化した強力な権利
地主を保護するために**「小作料の支払い(有償)」と「厳格な期間制限(20年〜50年)」が絶対のルール

(永小作権の内容)
第二百七十条 
「永小作人」は、「小作料」を支払って「他人の土地」において「耕作又は牧畜」をする権利を有する。

国民的アニメのストーリー風
のび太は将来、北海道で広大な畑を作って大根を育てたり、牛や羊を飼ったりして牧場を経営したいという夢を持ちました。
しかし、自分で広大な土地を買うお金はありません。
そこで、北海道に広い土地を所有しているスネ夫(地主)にお願いして、「毎年これだけのお金(小作料)をちゃんと払うから、君の土地で長期間、農業や牧畜をさせてよ!」と契約を結びました。
これでのび太は「永小作人」として、スネ夫の土地を堂々と使えるようになります。
例外(注意!):
永小作権はあくまで「耕作または牧畜」が目的です。のび太が途中で気が変わって、「やっぱりここに巨大な別荘やマンションを建てよう!」と土地の使い道を変更することは許されません(建物を建てる目的であれば、「地上権」や「賃借権」といった別の権利を設定する必要があります)。

条文の文言
「永小作人」:
地主(土地の所有者)と契約を結び、その他人の土地を利用する権利(永小作権)を持つ人のこと。
「小作料」:
土地を利用させてもらう対価として地主に支払うお金などのこと。
永小作権が成立するためには、この小作料の支払いが絶対条件(不可欠の要素)とされています。
「他人の土地」:
自分のものではない、地主が所有している土地のこと(農地や牧草地など)。
「耕作又は牧畜」:
農作物を作ること(耕作)や、牛や馬などの家畜を飼育すること(牧畜)。土地の利用目的がこれらに限定されており、建物を建てること(地上権の対象)などは含まれません。

(永小作人による土地の変更の制限)
第二百七十一条 
「永小作人」は、「土地」に対して、「回復することのできない損害を生ずべき変更」を加えることができない。

永小作権は他人の土地を長期間・強力に利用できる物権ですが、「あくまで他人の所有物(土地)を借りている」という本質を忘れてはいけません。
契約終了後などに元の状態に戻せなくなるような、取り返しのつかない破壊や重大な変更をしてはならないという、地主の所有権を保護するための条文です。

(永小作権の譲渡又は土地の賃貸)
第二百七十二条 
「永小作人」は、その権利を「他人に譲り渡し」、又はその権利の「存続期間内において」「耕作若しくは牧畜のため」「土地を賃貸することができる」。ただし、「設定行為で禁じたとき」は、「この限りでない」。

永小作権は「物権(物を直接支配する強力な権利)」であるため、原則として地主(土地の所有者)の承諾がなくても、自由に権利を他人に譲ったり、土地をまた貸ししたりできることを定めた条文です。
賃借権(債権)」とは異なる点です。

条文の文言
「他人に譲り渡し」:
自分が持っている「永小作権」という権利そのものを、別の人に売ったり(譲渡)、あげたりすること。
「耕作若しくは牧畜のため」:
永小作権の本来の目的に沿った使い方をさせること。建物を建てる目的で貸すことはできません。
「土地を賃貸することができる」:
自分が永小作人としての立場を保ったまま、その土地をさらに別の人に貸す(転貸・また貸しする)こと。

国民的アニメのストーリー風
のび太は、スネ夫(地主)の土地に永小作権を設定してもらい、一生懸命大根を作っていました。
しかし途中で面倒くさくなり、昼寝ばかりするようになりました。
そこでのび太は、「ジャイアン、俺の代わりにこの畑で大根を作らないか?」と持ちかけます。
このとき、のび太はスネ夫に「ジャイアンに代わってもいい?」と許可をとることなく、自分の「永小作権」をジャイアンに売って完全に身を引く(譲渡)こともできますし、自分が永小作人のままジャイアンに土地をまた貸し(賃貸)して、ジャイアンから使用料をもらうことも自由にできます。これが「物権」の強さです。
例外(注意!):
いくら自由に譲渡できるとはいえ、最初の契約の時に、スネ夫から「君だから貸すんだぞ。他のやつに譲ったり貸したりするのは絶対に禁止だ!」と釘を刺され、契約書(設定行為)にその旨がしっかりと書かれていた場合は別です。
この場合は特約が優先されるため、のび太は勝手にジャイアンに畑を譲ったり貸したりすることはできません。

(賃貸借に関する規定の準用)
第二百七十三条 
「永小作人の義務」については、「この章の規定及び設定行為で定めるもの」のほか、「その性質に反しない限り」、「賃貸借に関する規定を準用する」。
(小作料の減免):地上権はこれを準用
第二百七十四条 永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。

永小作権は「物権」という非常に強力な権利であるため、地主の干渉を受けずに自由に土地を使える代わりに、自然災害のリスクもすべて自ら(永小作人)が背負わなければならないという「ハイリスク・ハイリターン」の趣旨が込められています。
他人の土地で農業や牧畜を行う「永小作権」において、台風などの自然災害で大凶作になったとしても、地主に「土地の利用料(小作料)を安くしてくれ!」とは言えないという厳しいルールです。

もし単なる**「賃貸借契約(債権)」**で農地を借りていた場合は話が全く変わります。
賃貸借(民法609条)であれば、「不可抗力で収益が減った場合は、実際の収益額の範囲内まで家賃(賃料)をまけてもらえる」という優しい例外ルールが存在します。

(永小作権の放棄):地上権はこれを準用
第二百七十五条 永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。

274条で「自然災害があっても小作料の減額・免除はできない(自己責任の原則)」と定めていますが、もしその自然災害の被害が甚大で、何年も連続して大赤字が続くような絶望的な状況に陥った場合、いつまでも小作料を払い続けなければならないのはあまりにも酷です。
そこで、一定の厳しい限界ラインを超えた場合に限って、永小作人を地獄の赤字生活から解放してあげる(自分から権利を手放して逃げることを許す)ための救済規定です。

(永小作権の消滅請求):地上権はこれを準用
第二百七十六条 永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。

地主への対価(小作料)を支払うことは永小作人にとって最も重要な義務です。
この支払いが長期間にわたって滞るような悪質なケースでは、地主の財産権を著しく害するため、地主の側から一方的にこの強力な権利を叩き潰して(消滅させて)土地を取り戻すことができるというルールです。

条文の文言
「永小作人」:
小作料を払って他人の土地で農業や牧畜を行う権利を持つ人。
「引き続き二年以上」:
「連続して」2年以上という意味であり、通算(合計)で2年という意味ではありません。
「小作料の支払を怠ったとき」:
払うべき期日に小作料を払わなかった(債務不履行)状態のこと。不可抗力による不作であっても小作料は免除されない(274条)ため、お金がなくて払えなかった場合も当然にこれに該当します。
「永小作権の消滅を請求することができる」:
地主の「出ていけ!」という一方的な意思表示だけで、直ちに永小作権という強力な権利を終了させることができるという意味です(形成権といいます)。

(永小作権に関する慣習)
第二百七十七条 第二百七十一条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
(永小作権の存続期間)
第二百七十八条
「永小作権の存続期間」は、「二十年以上五十年以下」とする。「設定行為で五十年より長い期間」を定めたときであっても、その期間は、「五十年」とする。
2 永小作権の設定は、「更新することができる」。ただし、その存続期間は、「更新の時から五十年」を超えることができない。
3 「設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったとき」は、その期間は、「別段の慣習」がある場合を除き、「三十年」とする。

農業や牧畜は、土地を耕したり設備を整えたりと最初の投資が大きく、回収までに長い時間がかかります。
そのため、すぐに追い出されないように「下限(20年)」を設けて永小作人を保護しつつ、逆に長すぎると地主の所有権が名ばかりになってしまうため「上限(50年)」を設けて所有者を保護するという、双方のバランスをとった条文です。

【原則(期間の制限)】
永小作権の存続期間は、「20年以上50年以下」の範囲内で定めなければならない(永小作人保護の下限と、地主保護の上限)。
【例外(上限超過の修正)】
契約で「50年を超える期間」を定めた場合でも、契約自体が無効になるわけではなく、自動的に上限である「50年」に短縮される。
【補充(定めのない場合)】
契約で期間を定めなかった場合は、地域の「慣習」があればそれに従い、なければ自動的に「30年」となる。

なぜ地上権は「存続期間が無制限(永久も可能)」で、しかも「原則無料(無償)」なのか。
地上権の目的は、建物や橋、トンネルなどの「工作物」を所有することです。
これらは農業と違い、一度作ると非常に長持ちし、時には社会的なインフラとして機能しているからです。

(工作物等の収去等)
第二百七十九条 第二百六十九条の規定は、永小作権について準用する。

【準用される第269条(地上権が消滅した場合の原状回復の規定)の内容を永小作権に読み替えたもの】
1 永小作人は、「その権利が消滅した時」に、「土地を原状に復して」その「工作物及び竹木」を「収去することができる」。ただし、「土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したとき」は、永小作人は、「正当な理由」がなければ、これを「拒むことができない」。
2 前項の規定と「異なる慣習」があるときは、その慣習に従う。

条文構造
【原則(収去と原状回復)】
永小作権が消滅した時は、永小作人は自分が土地に付加した工作物や竹木を撤去(収去)し、土地を元の状態に戻すことができる。
【例外(地主の買取特権)】
ただし、地主が「時価で買い取る」と通知してきた場合、永小作人は正当な理由がない限り拒否できない(社会経済的な無駄を防ぐため)。
*永小作人からの請求は不可。
【補充(慣習の優先)】
これらのルールと違う特有のルール(慣習)がその地域にあれば、民法の規定よりもその慣習が優先される。

(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

永小作権:過去問厳選コレクション

永小作権の有償性(小作料の必須)
永小作権は、無償のものとして設定することができない。

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解答: ○
地上権は地代が要素ではなく無償でも設定できるのに対し、永小作権も同じように無償で設定できると勘違いさせる点です。(第405問対策)永小作権は「小作料を支払うこと」が成立の必須要件(有償)であり、無償での設定はできません。

永小作権を目的とする抵当権の設定
永小作権は、その権利のみを目的とする抵当権を設定することができる。

解答表示
解答: ○
民法の規定(369Ⅱ)により、所有権だけでなく、強力な物権である「地上権」と「永小作権」も抵当権の目的とすることができます。

永小作権の存続期間の制限
永小作権は、50年を超える存続期間を定めて設定することができない。

解答表示
解答: ○
ひっかけポイント: 存続期間に上限がない「地上権」と混同
永小作権には農地保護などの観点から「20年以上50年以下」という厳格な期間制限があり、50年を超える期間で設定しようとしても強制的に50年に短縮されます。

区分地上権設定と既存の永小作権者の承諾
対抗要件を備えた永小作権が設定されている土地の下に地下駐車場を所有するための地上権を設定しようとする場合には、その永小作人の承諾を得る必要がある。

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解答: ○
ひっかけポイント: 「地下の利用であるため、もっぱら地表で耕作等を行う永小作人には関係がなく、承諾は不要だろう」と誤認させる点です。
区分地上権を設定するには、すでにその土地を使用する権利を持つすべての者の承諾が必要であり、永小作人の承諾も必須となります。
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