このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「留置権」(第295条から第302条)をまとめたページになります。
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【民法物権】論点「留置権」ガチ解説
担保物権(質権、抵当権、根抵当権、留置権、先取特権)の全体像(総論)
それぞれの定義とイメージは暗記
約定担保物権:「抵当権」「根抵当権」「質権」がこれに該当
「金を借りたいなら担保を出せ」という当事者の合意(契約)によって生まれる担保権
質権=「渡して預ける担保」
抵当権=「渡さずに縛る担保」
根抵当権=「継続取引をまとめて担保にする枠」
法定担保物権:「留置権」と「先取特権」がこれに該当
法律上の一定の要件(特定の債権の存在)を満たせば、当然に発生する担保物権
留置権=「払うまで返さない」修理代を払うまで修理品を返さない
先取特権=「特別な債権者(雇用費用など)に法律が先に取らせる」
担保物権の通有性
・付従性:
担保物権は、被担保債権(借りたお金など)があって初めて存在します。債権が成立しなければ担保物権も成立せず、債権が消滅(弁済など)すれば担保物権も消滅します。(「元本確定前の根抵当権」には付従性がない)
・随伴性:
被担保債権と担保権は譲渡された場合、一体となって動きます。
・不可分性:
債権者が被担保債権の全額の弁済を受けるまで、担保物の全部の上に効力を及ぼす性質です。一部を弁済しても、担保権は消滅しません。
・物上代位性:
目的物が売却、賃貸、滅失、損傷したことで、債務者が金銭等を受取る場合、その金銭などに対しても担保権の効力が及ぶ性質です(留置権のみ物上代位性がない)
担保物権の「留置的効力」
債権の全部の弁済を受けるまで目的物を手元に留め置く(引き渡しを拒む)効力を「留置的効力」といいます。留置権はもちろんのこと、質権にもこの留置的効力が認められています。(民法第347条本文)
担保物権の「優先弁済的効力」
目的物が競売などで売却された際、その代金から他の債権者に先立って優先的に債権を回収できる効力(民法第342条、第369条1項)
「約定担保物権(当事者の合意で設定する担保物権=質権・抵当権・譲渡担保、所有権留保など)」には、すべてこの優先弁済的効力があります
留置権には優先弁済的効力はありません
担保物権の客体(債権を目的とできるか)
質権は、財産権(債権など)を目的とすることができます(権利質)。
一方で、抵当権の目的は不動産(所有権・地上権・永小作権)に限られ、債権を目的とすることはできません。
したがって、すべての約定担保物権が債権を目的とすることができるわけではありません。(民法第362条1項、第369条)
不動産質権の存続期間
不動産を目的とする質権(不動産質権)の存続期間は、10年を超えることができません。設定行為で10年より長い期間を定めたとしても、強制的に10年に短縮されます。(民法第360条1項)
先取特権における優先弁済的効力の有無
抵当権者及び不動産の質権者は、競売による目的物の売却代金から優先弁済を受けることができるが、不動産の先取特権者は、競売による目的物の売却代金から優先弁済を受けることができない。
解答: ×
ひっかけポイント: 抵当権や質権といった当事者の合意で設定する「約定担保物権」と対比させることで、法律上当然に発生する「先取特権(法定担保物権)」には優先弁済的効力がないのではないか、と勘違いさせる点です。
先取特権についても、目的物から優先的に債権を回収する効力(優先弁済的効力)が明確に認められています(民法第303条)。
留置権の成立要件
第二百九十五条
「他人の物の占有者」は、「その物に関して生じた債権」を有するときは、その債権の「弁済」を受けるまで、その物を「留置することができる」。ただし、その債権が「弁済期にないとき」は、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が「不法行為によって始まった場合」には、適用しない。
「自分の債権(お金など)を回収するまでは、預かっている相手の物を人質にとってもよい」という公平の原則に基づいた権利(留置権)を定めた条文です。
相手に心理的なプレッシャーを与え、支払いを促す強力な効果があります。
条文構造
【原則】 他人の物を占有している者は、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、「いつでも」その物の返還を拒み、留置することができる(公平の原則)。
【例外①:弁済期による制限】 ただし、その債権の「支払期限(弁済期)」がまだ来ていない場合は、留置することができない。
【例外②:不法行為による制限】 また、その物の占有の始まりが「泥棒や強奪などの不法行為」であった場合は、留置権自体が成立しない(適用されない)。
留置権は「物権」であるため、契約の当事者だけでなく**誰に対しても主張できる(対世的効力)**という強さを持ちます。
たとえば、留置権が成立した後に目的物が第三者に売却された場合でも、新しい所有者(買主)に対して堂々と引渡しを拒むことができます。
引換給付判決:
物の引渡しを求める訴訟で被告が留置権を主張した場合、裁判所は原告の請求を全面的に退ける(棄却する)のではなく、「原告が借金を払うことと引き換えに、被告は物を引き渡せ」という**「引換給付判決(一部勝訴判決)」**を下します
具体例
牽連性が認められる(留置権が成立する)ケース
・必要費・有益費・修繕費の償還請求権
借家人が支出した屋根の修繕費などの必要費・有益費の償還請求権は、建物に関して生じた債権として、建物を留置できます。また、適法に留置している間にさらに必要費を追加で支出した場合も、その追加分を含めて留置権を主張できます。
・売買代金請求権
建物の売主が買主に対して有する未払いの売買代金請求権は、建物に関して生じた債権に当たるため、建物を留置できます。
・他人の物の修理代金債権(所有者が債務者でない場合) 「他人の物」とは占有者以外の者に属する物であればよく、債務者の所有物である必要はありません。したがって、修理を依頼してきた者が所有者でなくても、修理代金債権に基づいてその物を留置でき、真の所有者からの返還請求も拒むことができます。
・譲渡担保の清算金支払請求権
譲渡担保権が実行されて目的物が第三者に譲渡された場合、譲渡担保設定者(債務者)は、譲渡担保権者(債権者)に対する清算金支払請求権(実行によって得たお金ーもともとの債務)に基づいて、目的物を留置できます。
牽連性が認められない(留置権が成立しない)ケース
・造作買取代金債権による「建物」の留置
賃借人がクーラーなどの造作を買い取ってもらう権利(造作買取請求権)は、あくまで「造作」に関して生じた債権であり、「建物」に関して生じた債権ではないため、建物を留置することはできません。
・敷金返還請求権による「建物」の留置
敷金返還請求権は、家屋の明渡しを条件として発生するもの(明渡しが先履行)であるため、これを理由に建物を留置することはできません。
・建物買取代金債権による「敷地(土地)」の留置
借地人が建物買取請求権を行使した場合、建物の代金が払われるまで「建物」を留置することはできますが、それによって結果的に敷地を占有し続けることになったとしても、「敷地(土地)」に対する留置権まで認められるわけではありません。そのため、敷地の賃料相当額については不当利得として返還する義務を負います。
・二重譲渡の第1買主の損害賠償債権による「土地」の留置 不動産が二重譲渡され第2買主が登記を備えた場合、第1買主が売主に対して取得する履行不能の損害賠償債権は、売主の債務不履行によるものであり、土地に関して生じた債権とはいえないため、第2買主からの明渡請求に対して土地を留置することはできません。
・他人物売買の買主の損害賠償債権による「目的物」の留置
他人物売買の買主が売主に対して有する履行不能の損害賠償債権を理由に、真の所有者からの返還請求を拒んだとしても、真の所有者には支払義務がないため、売主の支払いを間接的に強制する機能が働きません。したがって牽連性が認められず、目的物を留置することはできません。
弁済期の到来の要件について
停止条件付債権: 条件が成就するか未確定の段階では、まだ弁済期が来ていないため留置権は成立しません。
期限の許与: 留置物に有益費を支出した際、裁判所から「支払いを少し待ってあげなさい(期限の許与)」とされた場合、弁済期が未到来に戻るため、留置権は消滅します(主張できなくなります)。
質権との比較:もし留置権に弁済期前で成立するとなると、債務を強制させることになり、法定担保物権からすると不都合。しかし、質権の場合には、当事者の約定担保物権なので弁済期前でも質権は成立する。
*「占有」の要件は、留置権も質権も、ともに成立要件で同じ
*留置的効力について、留置権と質権は同じく存在
「不法行為による占有ではない」の要件の具体例
賃料不払いなどの債務不履行で賃貸借契約を解除された後、権原がない(もう住む権利がない)ことを知りながら居座って建物の修繕費や有益費を支出したとしても、それは不法行為によって占有しているのと同視されるため、留置権を主張して明渡しを拒むことはできません。
過去問演習
留置権行使中の賃料相当額の支払義務(不当利得)
問: 建物所有目的の土地の賃借人が賃貸人に対して建物買取請求権を行使した場合において、賃借人は、建物の買取代金の支払を受けるまでは、建物について留置権を主張して建物の敷地を占有することができ、敷地の賃料相当額の支払義務も負わない
解答表示
ひっかけポイント: 「適法に留置(占有)できるのだから、敷地の賃料も払わなくてよいだろう」と勘違いさせる点です。建物を留置することによって結果的に敷地を占有することは適法ですが、それによって実質的な利益(敷地の利用)を得ている以上、賃料相当額の不当利得返還義務は負うことになります。
第二百九十六条
「留置権者」は、「債権の全部の弁済」を受けるまでは、「留置物の全部」についてその権利を「行使することができる」。
「お金を全額払ってもらうまでは、預かっている人質(物)は一切返さなくてよい」という、留置権の強力な効力(不可分性:ふかぶんせい)を定めた条文です。一部の支払いで物の一部を返してしまうと、相手への心理的プレッシャーが弱まり、残りの借金の回収が困難になることを防ぐためのルールです。
留置中に必要費を追加で支出した場合、その必要費も留置権で担保されます。したがって、元の修理代だけを支払われても、追加の必要費が未払いであれば、不可分性により依然として留置権は消滅しません
留置権には、「優先弁済的効力」と「物上代位性」がない
留置権は「物を返してほしければお金を払え」と心理的圧迫を加える権利にすぎず、目的物を売却した代金から他の債権者に先んじて借金を回収する**「優先弁済的効力」はありません**。
優先弁済権がないため、目的物が火災などで滅失して保険金に変わった場合などに、その保険金を差し押さえて回収する**「物上代位性」も認められません**。
※質権や抵当権には優先弁済権も物上代位性も認められています
留置権者に認められた競売権(民事執行法195条):
留置権には前述の通り優先弁済権はありませんが、いつまでも他人の物を手元に置いておくわけにもいかないため、お金に換えて保管するための**「競売権(形式的競売)」**は例外的に法律で認められています。
留置権者がお金に換えて保管するために「形式的競売」を行った場合、目的物がなくなった代わりに、その売却代金(換価金)を引き続き留置することができます。
第二百九十七条
「留置権者」は、「留置物から生ずる果実」を「収取」し、「他の債権者に先立って」、これを自己の債権の「弁済に充当することができる」。
2 前項の果実は、まず債権の「利息に充当」し、なお残余があるときは「元本に充当」しなければならない。
留置権の本来の目的は「物を人質にとること」ですが、その人質(物)から何らかの利益(果実)が生み出される場合があります。
この条文は、留置権者がその利益を受け取り、相手が払ってくれない借金の返済分として差し引く(充当する)ことを認めることで、効率的な債権回収を図る合理的なルールです。
条文構造
【原則】 留置権者は、留置している物から生じた果実を収取して、他の誰よりも優先的に、自分の債権の弁済に充てる(=借金から差し引く)ことができる(果実充当権)。
【ルールの詳細:充当の順序】 ただし、差し引く際の計算順序には決まりがあり、果実の価値は必ず「①利息」→「②元本(本来の借金額)」の順番で充てなければならない。
第二百九十八条
「留置権者」は、「善良な管理者の注意」をもって、留置物を「占有しなければならない」。
2 留置権者は、「債務者の承諾」を得なければ、留置物を「使用し」、「賃貸し」、又は「担保に供することができない」。ただし、その物の「保存に必要な使用」をすることは、この限りでない。
3 留置権者が前二項の規定に「違反したとき」は、債務者は、「留置権の消滅を請求することができる」。
留置権者は、借金を取り立てるために「他人の物」を正当に預かっている状態ですが、あくまで「他人の物」である以上、自分のものであるかのように自由に扱ってよいわけではありません。
この条文は、留置物を大切に保管する義務(善管注意義務)と、勝手に使ったり貸したりしてはいけないという禁止事項、そしてそれに違反した場合の強力なペナルティを定めています。
条文構造
【原則①:保管のルール】 留置権者は、留置物を「善良な管理者の注意(善管注意義務)」をもって大切に保管・占有しなければならない。
【原則②:使用等の禁止】 留置権者は、持ち主の「承諾」がない限り、勝手に留置物を使ったり、他人に貸したり、担保に入れたりしてはならない。
【例外:保存行為】 ただし、物の現状を維持するための「保存に必要な使用」であれば、持ち主の承諾がなくても例外的に行うことができる。
【効果:ペナルティ】 留置権者がこれらの義務(保管義務違反、無断使用など)に違反した場合、持ち主は「留置権の消滅」を請求することができ、留置権者は物を返還しなければならなくなる。
消滅請求できる人: 債務者だけでなく、目的物を買い受けた**「第三取得者(新しい所有者)」も消滅請求をすることができます
義務違反があったからといって、「当然に(自動的に)」留置権が消滅するわけではありません。「消滅請求」というアクションを起こされて初めて消滅します。
損害の発生は不要: 善管注意義務違反があれば、それによって現実に損害が発生していなくても消滅請求が可能です。 また、過失で一部を壊したような場合、債務を全額弁済しなくても消滅請求ができます。
留置物の使用制限と「保存行為」としての適法使用
建物の賃借人が賃貸借契約終了後に、必要費または有益費償還請求にもとづく留置権を主張して「従前どおりそのまま建物に居住し続けること」は建物の維持管理(保存行為)に当たるため適法です。適法に居住し続けられるからといって、。実質的に利益を得ている以上、その間の家賃相当額は「不当利得」として所有者に返還(または自分の債権から相殺・充当)する義務**があります
第二百九十九条 「留置権者」は、留置物について「必要費」を支出したときは、「所有者」にその「償還をさせることができる」。
2 留置権者は、留置物について「有益費」を支出したときは、「これによる価格の増加が現存する場合に限り」、「所有者の選択に従い」、その支出した金額又は増価額を「償還させることができる」。ただし、「裁判所」は、所有者の請求により、その償還について「相当の期限を許与することができる」。
留置権者が他人の物を長期間預かっていると、その物を維持したり価値を高めたりするためにお金(費用)がかかることがあります。この条文は、立て替えたそれらの費用を「必要費」と「有益費」に分け、持ち主(所有者)に返して(償還して)もらうためのルールを定めています。
条文の文言
「必要費」:物が壊れたり死んだりしないよう、現状を維持するためにどうしても必要な費用(例:動物のエサ代、雨漏りの修理代など)。
「所有者」:留置されている物の本来の持ち主。
「有益費」:絶対に必要というわけではないが、その物に手を加えることで価値をアップさせるために使った費用(例:壁を高級な素材に張り替えた、最新設備を取り付けたなど)。
「相当の期限を許与することができる」:裁判所が「急にそんなお金を請求されても払えないだろうから、支払いを少し待ってあげなさい」と支払い期限を延ばす(猶予する)ことができる制度。
条文構造
【原則①:必要費の償還】 留置権者は、現状維持のための「必要費」を支出した場合、全額をすぐに所有者へ請求できる。
【原則②:有益費の償還】 留置権者は、価値を高めるための「有益費」を支出した場合、「価値の増加が現存していること」を条件に、「所有者が選んだ金額(実費 or 増価額)」を請求できる。
【例外:有益費の猶予(期限の許与)】 ただし、有益費については、所有者が裁判所に「今すぐは払えない」とお願いすれば、支払いの期限を延ばしてもらうことができる(※必要費にはこの猶予制度はありません)。
第三百条 「留置権の行使」は、債権の「消滅時効の進行」を「妨げない」。
留置権を行使して物の返還を拒み続けていても、大元である借金(債権)そのものの消滅時効のカウントダウンは止まりません。時効によって借金が消滅してしまえば、連動して留置権も消滅してしまうため、債権者は別途時効を止めるアクションを起こす必要があります。
条文の文言
「留置権の行使」:相手の物を手元に置き、「お金を払うまで返さない」と正当に拒絶し続けている状態のこと。
「消滅時効の進行」:権利を行使しないまま一定期間(原則として知った時から5年、権利を行使できる時から10年など)が経過することで、その権利が消滅してしまうカウントダウンが進むこと。
条文構造
【原則】 留置権を行使(物の返還を拒絶)しているという事実だけでは、被担保債権(回収したい借金)の消滅時効の進行は止まらず、カウントダウンは進み続ける。
【ルール(時効を止めるための要件)】 したがって、債権の消滅時効を止める(完成猶予や更新)ためには、単に物を留置し続けるだけでなく、別途「裁判上の請求」を起こしたり、債務者に借金の存在を認めさせたり(「承認」)といった、民法が定める時効ストップのための確実な手続きを行う必要がある。
第三百一条 「債務者」は、「相当の担保を供して」、「留置権の消滅を請求することができる」。
留置権の本来の目的は「借金の回収を確実にすること」です。したがって、留置権者(人質をとっている人)にとって、借金の回収さえ確実になるのであれば、どうしても「その物」に固執する必要はありません。一方で、持ち主(債務者)にとっては、「今どうしてもその物が必要だ」という切実な事情があるかもしれません。
そこで、この条文は「十分な価値のある別の身代わり(代担保)」を差し出すことを条件に、物の返還を求めることができるという、双方の利益のバランスをとる合理的なルールを定めています。
条文の文言
「留置権の消滅を請求することができる」:「代わりの担保を渡すから、預けている物を返してくれ」と要求できる権利。
※注意点として、これは一方的に宣言すればすぐ消滅する権利(形成権)ではなく、留置権者の承諾(またはそれに代わる裁判所の判決)が必要だと解釈されています。
国民的アニメのストーリー風
ジャイアンが、スネ夫の高級ラジコンを「修理代5000円」のカタに留置(人質に)しています。しかしスネ夫は、明日のラジコン大会でどうしてもそのラジコンを使わなければなりません。
そこでスネ夫は、ジャイアンに対して「修理代の5000円は来週必ず払う。それまでの間、代わりに僕の『最新の激レアゲームソフト(5000円以上の価値あり)』を担保として預けるから、ラジコンの留置権は消滅させて返してくれ!」と提案しました(相当の担保の供与による消滅請求)。
効果:ジャイアンが「おっ、そのレアゲームなら、もし修理代をバックれられても売り飛ばせば損はしないな」と納得(承諾)すれば、ラジコンに対する留置権は消滅し、スネ夫は無事にラジコンを取り戻して大会に出場することができます。
過去問演習:代担保の提供による消滅請求と承諾に代わる裁判
Aは、Bからその所有する時計の修理を依頼され、その修理をしたが、Bは、時計の修理代金を支払っていない。Aが修理代金債権の額に相当する担保の提供に応じないときは、Bは、Aの承諾に代わる裁判を得てAの留置権の消滅を請求することができる。
解答表示
一方的な意思表示ではなく、留置権者が代担保の提供(別の物を担保に差し出すこと)に合意してくれない場合は、債務者は「承諾に代わる判決」を得る必要がある
第三百二条 「留置権」は、留置権者が留置物の「占有を失うことによって、消滅する」。ただし、「第二百九十八条第二項の規定により」留置物を「賃貸し」、又は「質権の目的としたとき」は、この限りでない。
留置権は、「自分の手元に相手の物を置いておく(占有する)」ことによって相手にプレッシャーをかける権利です。そのため、自ら手放したり、うっかり無くしてしまったりして手元から物がなくなれば、その時点で権利も消滅してしまうという大原則を定めた条文です。ただし、正当な手続きを踏んで他人に預けたような場合は、例外的に権利が保護されます。
条文の文言
「留置権」:他人の物を合法的に人質にとっている権利。
「占有を失うことによって、消滅する」:自分の意思で相手に返還した場合はもちろん、どこかに置き忘れて紛失した場合や、誰かに盗まれた場合でも、現実に手元から無くなれば(事実上の支配を失えば)留置権は自動的に消滅します。
「第二百九十八条第二項の規定により」:つまり、「債務者(持ち主)の承諾を得て」という正当な手続きを踏んだ場合のことです。
「賃貸し」:他人に貸してレンタル料をとること。
「質権の目的としたとき」:別の借金のカタとして、質屋などに預ける(質入れする)こと。
「この限りでない(消滅しない)」:承諾を得て貸したり質に入れたりした場合は、直接自分の手元にはなくても、貸した相手や質屋を通じて「間接的に占有(代理占有)している」と法的に評価されるため、例外的に留置権は消滅しません。
条文構造
【原則】 留置権者は、留置物の「占有(現実の支配)」を失った瞬間に、留置権を失う(消滅する)。
【例外:適法な間接占有】 ただし、持ち主の「承諾」をきちんと得たうえで、その物を他人に貸し出したり(賃貸)、質入れしたりした場合は、他人の手を通じて間接的に占有し続けているとみなされるため、留置権は消滅しない。
目的物を騙し取られたり奪われたりした場合、「占有回収の訴え」を提起して勝訴し、現実に占有を取り戻せば、占有は初めから失われなかったものとみなされ、留置権は消滅しません(復活します)
