このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「総則」(第175条から第179条)をまとめたページになります。
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【民法物権】論点「物権総則」ガチ解説
単元のセンターピン(本質)
物権総則(第175条から第179条)
この単元は「条文にズバリ書かれていない」ことが多いですが、判例が作った以下のルール
一物一権主義(いちぶついっけんしゅぎ)
定義:1個の物の一部には独立の物権(所有権など)は存在しない(独立性)、という大原則
そもそも「1筆(いっぴつ)」とは?
不動産登記簿上で「1つの土地(1個の物)」としてカウントされている単位のことです。
これを2つの土地に分ける手続きを「分筆(ぶんぴつ)」と呼びます。
一筆の土地の一部(一物一権主義の例外)
定義:「1筆の土地の一部」とは、「役所の書類(登記簿)上は『1つの土地』としてカウントされているけれど、物理的に線を引いた『その右半分』などの一部分」**のこと。
要件と効果:一筆の土地の一部であっても、分筆の登記をすることなく、独立して売買の対象とすることができ、当事者間では有効に所有権が移転する
理由:土地の一部だけを取引する社会的な必要性があり、当事者間であれば公示(登記)がなくても範囲が特定できるから
物権的請求権
返還請求権:「奪われたから、返して!」
妨害排除請求権:「今邪魔されているから、どかして!」
妨害予防請求権:「このままだと危ないから、なんとかして!」
物権的請求権の基本ルール
定義:自分の物が誰かに邪魔されている時に、「返して!」「どかして!」と言える権利。明文の規定はないが、所有権の性質から当然に認められる(202Ⅰ、206参照)
要件:
・相手の故意(わざと)や過失(うっかり)は不要。不可抗力でもOK。
・相手の責任能力(事の良し悪しがわかる能力)も不要。
効果:
・この最強パワーは、所有権が生きている限り、消滅時効によって消えることは絶対にない。
・自分が直接言えなくても、債権者代位権を使って「代わりに」行使してもらうことができる。
・抵当権者(お金を貸す代わりに土地を担保にとっている銀行など)も、土地の価値が下がるような邪魔をされたら、このパワーを使える。
物権的請求権の「相手方」のルール
原則:「現実に今、妨害している人(現在の所有者など)」が相手になる。前の持ち主には請求できない。
例外:他人の土地に不法に建物を建てた人が、「自らの意思に基づいて」自己名義の登記をした場合は、建物を他人に譲渡した後でも、登記名義を持っている限り、土地の所有者から「建物をどかせ」と請求される。
付合のルール
定義:別々の持ち主の物が、くっついて取り外せなくなり、法律上「一つの物」になってしまうこと(242本文)。
例:
他人の土地に無断で植えた木は、土地と一体化(付合)してしまい、一旦は**「土地の所有者の物」**になります。
原則:自分の物である以上、無権原者に「原状回復しろ」とは言えなくなる。
例外:物の一部の時効取得
しかし、その木を無権原者が「自分の物だ」と信じて平穏かつ公然に20年間占有し続けた場合、「付合した木(土地の一部)」だけを独立して時効取得することができます(最判昭38.12.13)
結論:無権原者から所有者への損害賠償請求の可否
したがって、元の土地所有者が勝手に伐採すれば、元無権限者は、所有権侵害として損害賠償請求をすることができます
共有における保存行為
定義:共有物の滅失・毀損を防ぎ、その現状を維持するための行為のこと。
効果:不法占拠者を追い出すような「保存行為」は、他の共有者の許可をもらわなくても、各共有者が「単独で(一人で)」行うことができる。(252Ⅴ)
物権総則:過去問演習
問(一物一権主義の例外)
Xは、Aから昭和50年1月にA所有の1筆の土地の一部を買い受け、引渡しも受けたが、未登記のまま放置していた。その後、Xは昭和55年ころ、買い受けた土地上に樹木を植えた。しかし、昭和58年2月になって、Aは同土地の全部がいまだ自己名義に登記されているのを幸いに、Yに対して同土地の全部及びXの植えた樹木を自分のものであると偽って売却し登記も済ませた。この場合、土地の分筆の登記がされていないから、XとAとの間の1筆の土地の一部の売買によっては、所有権移転の効力は生じない。
解答表示
第1段階:「まず、1筆の土地の一部を、XA間で売買することはできるのか?」
結論:一物一権主義の例外ではあるが、できる!所有権は移動する(当事者間では有効)。
第2段階:「じゃあ、Xへ所有権は移動したけど、後から登記を持っていったYには勝てるのか?」
結論:勝てない!(177条のルール通り、対抗できない)
問(不動産の付合と原状回復請求)
建物を不法に占有している者が増築をした場合において、当該増築部分が建物の構成部分となっているときは、建物の所有者は、不法占有者に対し、当該増築部分を原状に復すよう請求することができる。
解答表示
増築部分が建物の構成部分となった以上、付合により建物所有者が増築部分の所有権を取得する(242)ので不法占有者に所有権に基づき増築部分を原状に戻すよう請求することはできない。
問(立木の付合と時効取得)
BがA所有の甲土地上に無権原で立木を植栽した場合において、Bが所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間立木の占有を継続した後に当該立木をAが伐採したときは、判例の趣旨に照らし、Bは、Aに対し、立木所有権の侵害を理由として損害賠償を請求することができる。
解答表示
原則として、付合により、立木の所有権は、土地所有者のもの。
しかし、時効取得によって、無権限者のものになる。
問(物権的請求権(妨害予防請求権)の相手方)
Aがその所有する甲土地を深く掘り下げたために隣接するB所有の乙土地との間で段差が生じて乙土地の一部が甲土地に崩れ落ちる危険が発生した場合には、Aが甲土地をCに譲渡し、所有権の移転の登記をしたときであっても、Bは、Aに対し、乙土地の所有権に基づく妨害予防請求権を行使することができる。
解答表示
物権的請求権の「相手方」のルール
原則:「現実に今、妨害している人(現在の所有者など)」が相手になる。前の持ち主には請求できない。
問(物権的請求権(妨害予防請求権)の要件(相手方の故意・過失の要否))
A所有の甲土地に隣接する乙土地がその所有者Bにより掘り下げられたため、甲土地の一部が乙土地に崩落する危険が生じた場合において、当該危険が生じたことについてBに故意又は過失がないときは、Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、甲土地の崩落を予防するための設備の設置を請求することができない
解答表示
Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、甲土地の崩落を予防するための設備の設置を請求することができる。
物権的請求権である妨害予防請求権は、相手方の故意又は過失は不要である。
問「共有物の保存行為(不実の持分移転登記の単独での抹消請求)」
A及びBが共有する甲土地のBの持分がCに売り渡され、その旨の登記がされたものの、当該持分の売買契約が虚偽表示により無効である場合には、Aは、Cに対し、その持分権に基づき、当該登記の抹消登記手続を請求することができる。
解答表示
AはCに対し、その持分権に基づき、当該登記の抹消登記手続を請求することができる。
不動産の共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができる
不実の持分移転登記がされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができる
よって、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる
問 【論点:物権的請求権の行使と相手方の責任能力】
Aの所有する甲土地から、Bの所有する乙土地に土砂が流れ込むおそれがある場合には、Aが自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあっても、Bは、Aに対し、乙土地の所有権に基づき、予防措置を請求することができる。
解答表示
物権的請求権を行使するにあたっては、相手方の故意・過失が不要であるのと同様に、相手方に「責任能力」があることも要件とはなりません
問 【論点:物権的請求権の相手方(自らの意思で登記をした者)】
A所有の土地上に不法に建てられた建物の所有権を取得し、自らの意思に基づきその旨の登記をしたBは、その建物をCに譲渡しとしても、引き続きその登記名義を保有する限り、Aに対し、自己の建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れることはできない。
