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【司法書士試験対策】不動産登記法

択一の解き方
単なる条文の知識であれば、条文の典型とする具体例をイメージできるように
論点であれば、条文には書かれていない趣旨などからバランスを図る

ディスプレイ

第一章 総則(第一条―第五条)

第二章 登記所及び登記官(第六条―第十条)

第三章 登記記録等(第十一条―第十五条)

第四章 登記手続

第一節 総則(第十六条―第二十六条)

第二節 表示に関する登記

第一款 通則(第二十七条―第三十三条)

第二款 土地の表示に関する登記(第三十四条―第四十三条)

第三款 建物の表示に関する登記(第四十四条―第五十八条)

(建物の表題登記の申請)
第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
2 区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。

★「建物」か否か
「居住用か?」は関係ない。
要件
①定着性 (土地にしっかり固定されているか)
例:コンクリートの基礎工事がしてあり、ボルトなどで土地にしっかりと固定されている倉庫。
例:コンクリートブロックの上にただ置いただけの物置や、いつでもトレーラーで移動できるようなコンテナハウス、これらは簡単に動かせるため「定着性」がないと判断
②外気分断性 (壁と屋根で囲まれているか)
例:屋根と柱だけで壁がないカーポートは外気分断性はないと判断
③用途性 (目的をもって利用できるか)
例:「倉庫」として物を保管したり、「車庫」として車を入れたり、「作業場」として使ったりと、その空間が特定の目的のために継続して利用できる状態であること。
3つの条件を満たせば、それは法律上の「建物」であり、登記の義務が発生する。

このようなガレージは「建物」に該当し、登記の義務が発生する

★表題登記を放置している人の心境やその状況
1. 経済的な理由(税金・費用)
「建物を登記すると、すぐに市町村役場に情報が伝わって固定資産税の通知が来てしまう。」
「ガレージごときに題登記を専門家である土地家屋調査士に依頼費用はかけたくない」
2.単純な無知・無関心・多忙
「家本体ならまだしも、ただの車庫や物置に登記が必要だとは思わなかった」
3.売却や担保提供の予定がない
「登記しないと売買や担保、所有権を主張できないが、問題ない」

★新築した建物の所有権を取得した者は、
「表示に関する登記」(表題登記、地目変更など)については、その所有権の取得の日から1か月以内に申請しなければならない(不動産登記法第47条)。
他方で、「権利に関する登記」(所有権保存、移転など)について、申請義務が課されておらず、任意申請にすぎない(不動産登記法第74条)。
もっとも、「権利に関する登記」でも義務化された例外がある。

★相続登記の義務化(不動産登記法第76条の2第1項)
ポイント:
主体: 相続または遺贈により所有権を取得した者
起算点: ①自己のために相続があったこと、②所有権を取得したこと、の両方を知った日
期間: 3年以内

★氏名・住所等の変更登記の義務化(不動産登記法第76条の5)。
ポイント:
主体: 所有権の登記名義人
起算点: 氏名や住所に変更があった日
期間: 2年以内

第三節 権利に関する登記

第一款 通則(第五十九条―第七十三条)

第二款 所有権に関する登記(第七十三条の二―第七十七条)

(所有権の保存の登記)
第七十四条 所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二 所有権を有することが確定判決によって確認された者
三 収用(土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
2 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

不動産の「初代オーナー」として登記できる人(=所有権保存登記を申請できる人)を厳格に限定するルールです。
*対抗要件を具備した初オーナーを決める場面。ちなみに、表題部の所有者は、あくまで表題登記がされた時点の所有者にすぎない。

この条文の趣旨
登記の真実性と取引の安全を守ることです。

覚えるべき法律用語
所有権の保存の登記(しょゆうけんのほぞんのとうき)
定義: その不動産について初めてされる権利(所有権)の登記のこと。登記記録の権利部(甲区)に「所有者」として名前が記録される最初の登記であり、いわば不動産の所有権の「出生届」です。
表題部所有者(ひょうだいぶしょゆうしゃ)
定義: 登記記録の「表題部」(不動産の物理的状況が記録される部分)に、所有者として記録されている者。通常、建物を新築した人がこれにあたります。
一般承継人(いっぱんしょうけいにん)
定義: 相続人や合併後の会社など、亡くなった人や消滅した会社の権利義務を包括的に引き継ぐ者のことです。
敷地権(しきちけん)
定義: マンションの部屋(区分建物)と、その建物が建っている土地の権利(所有権や賃借権など)が、法的に一体化されて分離して処分できなくなったもののことです。

条文の典型とするわかりやすい具体例
第1項1号の例(基本形)
Aさんが自分の土地に家を新築し、建物の表題登記をしました。
この時点でAさんは「表題部所有者」です。
Aさんは、この規定に基づき、自分を所有者とする所有権保存登記を申請できます。

第1項2号の例(裁判で解決)
Bさんが、まだ登記されていない建物をCさんから購入しました。
しかし、Cさんが登記手続きに協力してくれません。
困ったBさんは裁判を起こし、「この建物の所有者はBであることを確認する」という勝訴判決を得ました。
Bさんはこの確定判決書を法務局に提出して、単独で所有権保存登記を申請できます。

第1項3号の例
市町村などが、公園やダムなどの公共の利益を目的として、Aさんの土地を強制的に取得した場合。
市町村は、「収用によって所有権を取得した者」として、法務局に対し、所有権保存登記を申請できる。

第2項の例(マンション購入)
「中間省略登記」を認めた規定。
不動産デベロッパーD社が、新しく「リーガルマンション」を建設しました。
D社が表題部所有者です。
Eさんは、完成したマンションの301号室をD社から購入しました。
原則なら: ①D社が301号室の保存登記 → ②D社からEさんへの所有権移転登記、という2段階の手続きが必要です。
この第2項の規定があるため、EさんはD社名義の登記を挟むことなく、直接自分名義の所有権保存登記を申請できます。
これにより、手間と登録免許税が節約できます。

★特定承継人は、所有権保存の登記ができない(74条1項1号に該当しない)。
よって、原則、①Aが保存登記 → ②A・Bで移転登記という手順になる。
もしAが非協力的なら、訴訟・判決: Bが単独で①保存登記と②移転登記を連続申請。

★区分建物の特定承継人は74条2項に該当するが、特定承継人からの特定承継人や相続人も、「表題部所有者から所有権を取得した者」といえるか?
いえない。
一度特定承継人の所有権保存した後、所有権移転登記をすることになる。

★「敷地権の登記をした建物」とあれば、それは必ず「区分建物」である。
「敷地権」という登記制度は、「区分建物」のためだけに設けられた特別な仕組みだから。
敷地権(敷地利用権)とは
マンションなどの区分建物において、部屋(専有部分)の所有権と、その建物が立つ土地を利用する権利(敷地利用権)を、法律上一体化して分離できないようにした権利のこと。

実務では何が多いか?
①日本のマンションの大多数は、土地の権利が「所有権」の敷地権
マンションの建物(部屋)と、それが建っている土地の両方を買うイメージです。
自分のもの: あなたの部屋 + 土地の共有持分
特徴: 土地も自分たち住民の共有財産なので、地代(土地のレンタル料)を払う必要はありません。
②地上権と賃借権 — 「建物だけ買い、土地は借りる」ケース
「定期借地権付きマンション」がこれにあたります。
土地を買わない分、マンションの購入価格が安くなる傾向があります。
ただし、毎月、地主に対して**地代(土地のレンタル料)**を支払う必要があります。
(表題登記がない不動産についてする所有権の保存の登記)
第七十五条 登記官は、前条第一項第二号又は第三号に掲げる者の申請に基づいて表題登記がない不動産について所有権の保存の登記をするときは、当該不動産に関する不動産の表示のうち法務省令で定めるものを登記しなければならない。

通常は「表題登記」→「権利の登記」の順番だが、判決や収用によって所有権を得た者が未登記不動産の所有権保存登記を申請した場合に限り(74条で所有権保存の登記ができる)、登記官が職権で不動産の物理的状況(表題登記)も一緒に登記してくれるという、手続きの例外ルールです。

この条文の趣旨
権利者の迅速な保護と登記手続きの円滑化
不動産登記は、まず不動産の物理的状況を示す「表題登記」を行い、その後に誰が所有者かを示す「所有権保存登記」をするのが大原則です。
表題登記は本来、建物を新築した人などが申請する義務がありますが、これが放置されているケースもあります。

この状態で、例えば裁判に勝ってその建物の所有権が自分のものであると認められた人(74条1項2号)や、公共事業のために国が建物を強制的に取得(収用)した場合(74条1項3号)を考えてみてください。
これらの人は、本来の所有者の協力を得られず、表題登記をしたくてもできない可能性があります。

(所有権の保存の登記の登記事項等)
第七十六条 所有権の保存の登記においては、第五十九条第三号の規定にかかわらず、登記原因及びその日付を登記することを要しない。ただし、敷地権付き区分建物について第七十四条第二項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、この限りでない。
2 登記官は、所有権の登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で、所有権の保存の登記をしなければならない。
3 前条の規定は、表題登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をする場合について準用する。

所有権保存登記には原則として「原因と日付」の記載が不要というルールと、税務署などが未登記の不動産を差し押さえる場合、登記官が強制的に所有権保存登記を行うという、2つの重要なルールを定めた条文です。

この条文の趣旨
第1項: 所有権保存登記は、売買や相続のような**先行する原因がない「原始取得」**であるため、記載すべき原因が存在しないという実態を反映しています。
例 建物の所有権が原始的に発生する日はいつでしょうか?「工事が完了した日」でしょうか?それとも「建築確認の検査済証が交付された日」でしょうか?法律上、これを特定する明確な基準はなく、無理に日付を入れると、その日付が何を示すのか分からず、かえって混乱を招く恐れがあるため、日付など記載は不要とした。

第2項・第3項: 公共的な強制執行(差押えなど)の実効性を確保することが目的です。
納税を怠っている人などが、不動産を登記していないことを理由に差押えを免れる、という不都合を防ぐための規定です。
国民の義務の公平な実現を支えています。

覚えるべき法律用語
嘱託(しょくたく)
定義: 国や地方公共団体などの公的機関が、法務局に対して登記を依頼すること。
当事者が行う「申請」と区別されます。(例:裁判所による差押えの登記の嘱託)

処分の制限の登記(しょぶんのせいげんのとうき)
定義: 所有者がその不動産を自由に処分(売却や担保設定など)することを制限する登記のこと。
差押え、仮差押え、仮処分などが代表例です。

職権(しょっけん)
定義: 当事者からの申請や嘱託がなくても、法律上の権限に基づき、登記官が自らの判断で登記手続きを行うこと。

条文の典型とするわかりやすい具体例
第1項:登記事項のルール
原則: 所有権保存登記には、「登記原因及びその日付」を記載しない。
例外: 新築マンションの最初の購入者が保存登記をする場合(74条2項のケース)は、原因(例:売買)とその日付を記載しなければならない。
第1項(例外)の例:
Aさんが不動産デベロッパーから新築マンションの一室を買い、所有権保存登記を申請します。
この場合、Aさんはデベロッパーから「売買」によって所有権を得たことが明らかなので、登記記録には「原因 令和7年5月10日売買」のように記載されます。

第2項:差押え等の前提としてのルール
前提: 権利部がない(所有権の登記がない)不動産に対し、公的機関から差押えなどの「処分の制限の登記」の嘱託があった。
効果: 登記官は、その差押えの登記を入れる前提として、職権で所有権保存登記をしなければならない。
Bさんは家を建てて表題登記はしましたが、面倒なので所有権保存登記はしていませんでした。
その後、Bさんが税金を滞納したため、税務署がこの建物を差し押さえることにし、法務局へ差押え登記を嘱託しました。
嘱託を受けた登記官は、まず職権でBさん名義の所有権保存登記を行い、その次に、嘱託された差押えの登記を記録します。

第3項:第2項のルールの拡張
前提: 表題部すらない(全くの未登記)不動産に対し、公的機関から差押えなどの嘱託があった。
効果: 前条(75条)のルールを準用し、登記官は職権で表題登記をし、さらに第2項に基づき職権で所有権保存登記をした上で、嘱託された差押え等の登記を実行する。
Cさんは家を建てましたが、表題登記も所有権保存登記も全くしていない完全な未登記状態でした。
Cさんが借金を返さないため、債権者が裁判所に申立て、裁判所がこの建物の仮差押えを決定し、法務局へ登記を嘱託しました。
嘱託を受けた登記官は、以下の3つの登記をすべて職権で行います。
1.表題登記を創設する。
2.Cさん名義の所有権保存登記を行う。
3.仮差押えの登記を記録する。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
第七十六条の五
所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、その所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

第三款 用益権に関する登記(第七十八条―第八十二条)

第四款 担保権等に関する登記(第八十三条―第九十六条)

第五款 信託に関する登記(第九十七条―第百四条の二)

第六款 仮登記(第百五条―第百十条)

第七款 仮処分に関する登記(第百十一条―第百十四条)

第八款 官庁又は公署が関与する登記等(第百十五条―第百十八条)

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