【司法書士試験】物権「占有権」(第180条から第205条)

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【民法物権】論点「占有権」ガチ解説

占有権の全体像
民法の条文
第二章 占有権
第一節 占有権の取得(第百八十条―第百八十七条)
第二節 占有権の効力(第百八十八条―第二百二条)
第三節 占有権の消滅(第二百三条・第二百四条)
第四節 準占有(第二百五条)

民法物権の全体像と条文

民法物権の全体像と条文

占有の基本(取得・移転・消滅)

単元:占有のセンターピン(本質):
「本当の持ち主かどうかは関係なく、『今、現実にモノを持っている(支配している)状態』そのものを、とりあえず保護してあげる権利」である!

(占有権の取得)
第百八十条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

「占有権」が発生する条件と、赤ちゃん(意思無能力者)180条
要件: 占有権が生まれるには、ただモノを持っているだけでなく、「自分のためにする意思(これを自分のものとして持っておくぞ、という気持ち)」が必要です。
あてはめ: 赤ちゃんや重度の認知症の人(意思無能力者)は、この気持ちを持つことができないため、自分でモノを握りしめても占有権はゲットできません。
ただし、代わりに親(法定代理人)が受け取ってあげれば、親を通じて占有権をゲットできます。

(代理占有)
第百八十一条 占有権は、代理人によって取得することができる。

代理占有(間接占有)のイメージ:自分では直接モノを持っていなくても、**「別の人(代理人)に頼んで、自分の代わりにモノを物理的に持たせておくことで、自分も(間接的に)モノを支配している状態」**のこと。

代理占有(間接占有)の具体例
① 賃貸借契約(アパートやレンタカーなど)
賃借人(住人など):直接占有(占有代理人)
賃貸人(大家さんなど):代理占有(間接占有)
② 寄託契約(倉庫や荷物の預かりなど)
受寄者(預かった人):直接占有(占有代理人)
寄託者(預けた本人):代理占有(間接占有)

【論点:代理占有における占有権の二重帰属】
寄託契約の場合、受寄者だけが占有してる状態では?
占有の二重帰属: 寄託契約などの代理占有関係において、本人(寄託者)は代理人を通じて間接的に占有権を有する。と同時に、現実に物を所持している代理人(受寄者)自身にも「自己のためにする意思」があるため、直接の占有権が認められる。

【論点:占有代理人に対する権利行使(時効更新)の効果】
原則:占有代理人(現実に物を所持している借主など)に対する第三者の権利の行使は、同時に本人(貸主など)に対する権利の行使となる(大判大10.11.3)
結論: したがって、真の所有者が取得時効を更新(中断)させるためには、現場で現実に占有している「占有代理人」に対してのみ時効更新の手続(裁判など)をとれば足り、背後にいる「占有者本人」に対して別途手続をとる必要はない。

【超重要】「代理占有」と「占有補助者」の違い
占有補助者になる人(アルバイトやお手伝いさん): あくまで社長や主人の「手足(道具)」に過ぎないため、持っている人には占有権が一切認められない
代理占有:「借りている間は自分が持っておくぞ」という独立した意思があるため、本人との「二重の占有」になる。

「占有補助者」の具体例
雇用契約など(手足として使われているだけの場合)
コンビニのアルバイト・住み込みのお手伝いさん:占有権なし(占有補助者)
店主・雇主:直接占有(唯一の占有者)

(代理占有権の消滅事由)暗記が必要な条文
第二百四条 代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
二 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
三 代理人が占有物の所持を失ったこと。
2 占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。

取得時効への影響:
占有代理人の反逆によって代理占有が消滅すると、占有の継続が絶たれるため、その時点から取得時効の期間進行もストップする。

Ⅱ項の具体例
賃貸借契約などの基礎となる法律関係が終了しても、それだけでは代理占有は消滅しない
⇒貸主も占有回収の訴えを提起できる

(占有回収の訴え)
第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

【論点】間接占有者の占有回収の訴えと代理占有の存続
賃貸借契約が取り消されて無効になっても、それだけで貸主の間接占有(代理占有)は消滅しない
借主が第三者に目的物を奪われた場合、貸主自身(間接占有者)も占有回収の訴えを起こして返還を求めることができる

(現実の引渡し及び簡易の引渡し)
第百八十二条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
2 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
(占有改定)
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
(指図による占有移転)人物関係がイメージできること!
第百八十四条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
指図による占有移転(民法184条)

指図による占有移転(民法184条)

用語の確認
倉庫の寄託契約を例に、Aが倉庫番Bに預けた場合
A=寄託者、本人、所有者、代理占有者、間接占有者
B=受寄者、占有代理人、直接占有者

(契約の視点)「AがBに寄託している場合において〜」
(代理の視点)「AがBを占有代理人として〜」
(占有の視点)「間接占有者であるAは〜」

指図は、新しい所有者であるCが、現在の占有者Bに対して一方的にするイメージだが?
正しくは、「元の持ち主(譲渡人A)」が、自分と契約している倉庫のオジサンBに対して「これからはCさんのために持っておいてね」と命じ(指図)、
それを「新しい持ち主(譲受人C)」が「わかった、それで引き受けた」と承諾することで成立します。

指図の主体: 本人(元所有者)
つまり、「命じる(指図する)」ことができるのは、占有代理人と従前の契約関係(占有媒介関係)にある「譲渡人(元の持ち主)」のみである。
理由:倉庫番が命令を聞く義務があるのは、契約相手である元の所有者だけだから。新しい持ち主から言われても、むやみに応じる義務はない。

承諾の主体:「第三者(新所有者)」
倉庫番に「嫌だ」と拒否権を発動させる(承諾を要求する)必要はありません。新しい所有者が誰であろうと、「倉庫に荷物を置いておく」という物理的な負担(仕事の内容)は1ミリも変わらないため。
新所有者にとっては「占有権を受け取る」ということは、大きな権利を得ると同時に、「これからの倉庫代を払う義務」や「もし火事で燃えたら自分が損をするリスク」を引き受けることを意味します。受け取る本人が「はい、それで引き受けます(承諾)」と合意しなければ、権利を押し付けることはできない。

(占有の性質の変更)
第百八十五条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

「所有の意思」の有無(自主占有 or 他主占有)は権原の性質により客観的に定まる
⇒農地法などの行政上の許可の有無は関係がない
⇒悪意などの主観は関係がない
⇒相続による占有の承継は観念的に生じるため、相続人が相続財産の存在や占有の事実を知らなくても、被相続人の占有の性質(自主占有or他主占有)をそのまま承継する。

自主占有:「これは自分のモノだ!」と思って持っている状態のことです。
⇒買った人や、泥棒などがこれにあたります。

他主占有:「これは人から借りているモノだ」と思って持っている状態のことです。

【共同相続人の一人による占有(原則:他主占有)】
親が死亡し、兄弟で土地を共同相続しました。
原則:共同相続が開始した場合、相続人の一人が単独で占有を始めても、他の相続人の持分については他主占有となる。
例外:しかし、共同相続人の一人が、「単独に相続したものと誤信」し、相続開始とともに相続財産を占有し、「公租公課もその負担において納入」していたような例外的な事情がある場合には、その相続の時から、相続財産について単独所有者としての自主占有を取得する(最判昭47.9.8)

【論点:「新たな権原」=相続、相続による占有の性質の変更と取得時効】
原則: 単に相続によって他主占有を承継しただけでは、「新たな権原」(民法185条)には当たらず、他主占有の性質は変わらない。
例外(最判昭46.11.30): 相続人が新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有が外形的・客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情がある場合には、相続自体が「新たな権原」に該当し、自主占有に変更される。
具体例: 相続人Cは、賃料の支払いを拒絶するという「客観的に独自の所有の意思を示す行動」をとっており、その時点から自主占有に切り替わり、善意無過失で10年が経過しているため、短期取得時効が完成する。

(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
(占有の承継)
第百八十七条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

【10年の短期取得時効(162条2項)成立のために】
自分が悪意の場合、前主の善意・無過失の占有という、プラスの瑕疵を引き継ぐ必要がある
⇒選択すべきは「自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張」
自分が善意無過失の場合、前主の悪意占有は引き継ぎたくないから、
⇒選択すべきは「自己の占有のみを主張」

善意・無過失の判定時点:
複数の占有を併合して主張する場合、善意・無過失の判断は「その主張に係る最初の占有者の占有開始時点」で決まる(最判昭53.3.6)

【論点:共同相続における占有権の観念的承継】
原則(観念的承継): 相続が開始すると、被相続人の占有権は、物理的な所持・管理の有無にかかわらず、当然に(観念的に)相続人に移転する(最判昭44.10.30)。
共同相続の場合: したがって、共同相続人の一人が現実に被相続人所有の家屋を占有していたとしても、その者だけが占有権を取得するわけではない。現実に占有していない他の共同相続人も含め、共同相続人全員が共同して占有権を承継取得する。

占有の基本:過去問演習

問 【論点:意思無能力者による占有権の取得】
意思無能力者は、法定代理人によって物の占有を取得することができるが、物を自ら所持することによっては、その占有を取得することはできない。

問 【論点:農地法の許可と自主占有の取得】
農地の賃借人が農地を買い受け、代金の支払も完了している場合でも、農地法の許可が得られないときには自主占有を取得することができない。

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正解:×(「所有の意思(自主占有)」があるかどうかは売買などの客観的な原因(新権原(185条))によって決まるため、農地法などの行政上の許可が下りているかどうかは関係なく自主占有に変わる)

問 【論点:他人の物であることの認識と自主占有】
売買により土地の引渡しを受けた買主は、引渡しの当時、その土地が売主の所有物ではなく他人の物であることを知っていた場合には、自主占有を取得することはできない。

解答表示
正解:×(「所有の意思(自主占有)」があるかどうかは売買などの占有を取得した原因(権原)によって客観的に決まるため、他人の物であると知っていた(悪意)としても自主占有となる)

問 【論点:相続による占有の観念的承継と自主占有】
土地の所有者が死亡して相続が開始した場合、相続人が当該不動産が相続財産に属することを知らないときでも、自主占有を取得する。

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正解:〇(相続はすべての権利義務を丸ごと引き継ぐ包括承継であるため、被相続人が「所有者」として有していた「自主占有」は、相続人がその存在を知らなくても法律上当然に(観念的に)そのまま承継される)

問 【論点:共同相続人の一人による単独の自主占有の取得】
亡Aの遺産をB及びCが相続した場合には、Bが、その相続の時から、Aの遺産に属する財産について単独所有者としての所有の意思をもってする占有を取得することはない。

解答表示
正解:×(単独で相続したと信じて疑わず、税金を一人で払っていたなどの例外的な事情があれば、相続の時から単独所有者としての自主占有を取得することがあるため)
【論点:共同相続人の一人による単独の自主占有の取得(例外)】
原則: 共同相続が開始した場合、相続人の一人が単独で占有を始めても、他の相続人の持分については他主占有となる。
例外(判例のルール): しかし、共同相続人の一人が、「単独に相続したものと誤信」し、相続開始とともに相続財産を占有し、「公租公課もその負担において納入」していたような例外的な事情がある場合には、その相続の時から、相続財産について単独所有者としての自主占有を取得する(最判昭47.9.8)

問 【論点:共同相続人の一人による占有と自主占有の取得】
土地所有者が死亡し、共同相続が開始した場合において、他の相続人の承諾を得てその占有を始めたときは、その者は単独所有者として自主占有権を取得する。

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正解:×(「他の相続人の承諾を得た」という程度の事情だけでは、他の兄弟の持分を奪って「全部俺のモノだ(単独の自主占有)」と主張するための魔法の条件(特段の事情)には満たないため)

問 【論点:解除条件付売買における条件成就と自主占有権の帰趨】
所有者から、土地を解除条件付で買い受け、引渡しも終了している場合、後に条件が成就すれば、買主は所有権と自主占有権も失う。

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正解:×(占有権は所有権などの本権とは別個独立の権利であるため、解除条件の成就により売買契約が失効して所有権を失ったとしても、現実に占有をやめない限り自主占有権まで自動的に失うわけではない)

問 【論点:相続による占有の承継と取得時効】
AがB所有の甲土地に無権原で自宅として乙建物を建て、所有の意思をもって甲土地を15年間占有した後、Aが死亡し、その直後からAの単独相続人であるCが自宅として乙建物に住むようになり、5年間所有の意思をもって甲土地を占有した場合、Cは甲土地の所有権を取得する。

解答表示
正解:〇(相続人は、自分の占有期間だけでなく被相続人(親)の占有期間を合算して主張できるため、15年+5年=20年となり、取得時効が完成して所有権を取得する)

問 【論点:新たな権原による占有の性質の変更】
Aは、Bが所有しAに寄託している動産甲をBから買い受け、その代金を支払った。この場合には、Aの動産甲に対する占有の性質は、所有の意思をもってする占有に変更される。

解答表示
正解:〇(寄託という他主占有の原因から、売買という客観的な「新たな権原」が発生したため、占有の性質が所有の意思をもつ自主占有に変更される)

問 【論点:共同相続における占有の承継】
被相続人所有の家屋を相続人の一人が占有している場合において、被相続人が死亡したときは、当該相続人のみが、その家屋の占有権を取得する。

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正解:×(事実的にではなく、観念的に他の相続人も法定相続分に従って、占有権も相続する)

問 【論点:占有権の移転要件(引渡し)】
Aは、Bが所有しAに賃貸している動産甲について、Bの承諾を得て、動産甲の賃借権をCに譲渡した。この場合には、Aは、動産甲の占有権を失う。

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正解:×(動産の占有権は「引渡し」によって移転するため、賃借権の譲渡契約をしただけで引渡しが終わっていない段階では、Aは占有権を失わない)

問 【論点:代理占有における占有権の二重帰属】(難)
Aが所有しBに寄託している動産甲について、Bによる動産甲の占有の効力はAに帰属することから、Bは、動産甲の占有権を取得しない。

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正解:×(代理占有の場合、本人(寄託者A)だけでなく、現実に物を支配している代理人(受寄者B)にも占有権が認められ、占有権が二重に成立するため)
寄託契約の場合、受寄者だけが占有してる状態では?
⇒「代理占有(他人に預けておく状態)」の最大のポイントは、**「預けた本人(A)も、預かっている代理人(B)も、どっちも同時に占有権を持つ(二重構造になる)」**という点

問 【論点:占有改定による占有権の取得】
Aは、Aが所有し占有する動産甲をBに売却し、同時に、動産甲について、Bとの間で、Bを貸主、Aを借主とする使用貸借契約を締結した。この場合において、Aが以後のBのために動産甲を占有する旨の意思表示をしたときは、Bは、動産甲の占有権を取得する。

解答表示
正解:〇(売主Aが「これからはBのために占有します」と意思表示をする『占有改定』という引渡しの魔法が使われているため、買主Bは代理占有により占有権を取得する)

問 【論点:指図による占有移転の要件】(難)
Aが所有する動産甲をBに賃貸している場合において、Aが甲をCに譲渡した。この場合において、Cが指図による占有移転により甲の引渡しを受けるためには、AがBに対して以後Cのためにその物を占有することを命じ、Cがこれを承諾することが必要である。

解答表示
正解:〇(指図による占有移転は、譲渡人Aが占有代理人Bに「以後はCのために占有すること」を命じ、譲受人Cがこれを「承諾」することによって効力を生ずるため)

問 【論点:指図による占有移転の要件(指図の主体)】
Aは、Bが所有しCに寄託している動産甲をBから買い受け、自らCに対し以後Aのために動産甲を占有することを命じ、Cがこれを承諾した。この場合には、Bの動産甲の占有権は、Aに移転する。

解答表示
正解:×(指図による占有移転において「以後は新しい持ち主のために占有しろ」と命じることができるのは、あくまで代理人と直接の契約関係にある譲渡人(元の持ち主であるB)だけであり、譲受人Aから一方的に命じることはできないため)

問 【論点:指図による占有移転における占有代理人の承諾の要否】
Aが、Fに甲動産を譲渡し、Bに対し、以後Fのために甲動産を占有すべき旨を命じたところ、Bは、Fと不仲であるとして、これを拒絶した。この場合には、Fは、甲動産に対する占有権を取得しない。

解答表示
正解:×(指図による占有移転の魔法を発動させるにあたり、現実にモノを預かっている倉庫番(占有代理人B)の承諾は不要であるため、Bが拒絶したとしてもFは占有権を取得する)

問 【論点:占有補助者に対する建物明渡請求の可否】(難)
A所有の甲建物をBがAから賃借して居住し、CがBの身の回りの世話をする使用人として甲建物でBと同居している場合において、A B間の賃貸借契約が解除されたときは、Aは、Cに対し、甲建物の明渡しを請求することができない。

解答表示
正解:〇(使用人Cは雇主Bの手足にすぎない「占有補助者」であり、法律上の占有者ではないため、明渡請求のターゲット(相手方)にはならない)
明渡請求(物権的請求権)という強力な武器を行使するためには、相手が「法律上の占有者」であることが絶対条件になります。 事前知識でお伝えした通り、使用人CはあくまでBの「手足(占有補助者)」にすぎず、C自身は占有していません。したがって、Aの武器のターゲットはあくまで占有者であるBとなり、Aは「Bに対して(手足であるCを連れて)出て行け」と請求することになります。

問 【論点:占有改定による占有の取得と取得時効の完成】
甲建物に居住して善意・無過失の自主占有を8年間続けたAから甲建物を買い受けた善意・無過失のBは、その買受けと同時に甲建物をAに賃貸し、Aが甲建物に引き続き居住して更に2年間が経過した。Bは、甲建物について取得時効を主張することができる。ただし、取得時効の要件のうち「平穏かつ公然」の要件は、いずれも満たされているものとする。

解答表示
正解:〇(前主Aの占有期間(8年)と、賃貸でも代理占有しているから自己の占有期間(2年)を合算して「10年の善意無過失の占有」となり、取得時効を主張できる)
賃貸=占有改定によって買主Bは代理占有を取得

問 【論点:指図による占有移転による占有取得と、自己の占有のみの主張】(難)
甲建物に居住して悪意の自主占有を3年間続けたAは、甲建物をBに賃貸して引き渡した。Aは、その5年後に、甲建物を善意・無過失のCに譲渡し、Cの承諾を得て、Bに譲渡の事実を通知し、その後、更に10年間が経過した。Cは、甲建物について取得時効を主張することができる。ただし、取得時効の要件のうち、「平穏かつ公然」の要件は、いずれも満たされているものとする。

解答表示
正解:〇(Cは前主Aの悪意の占有期間を合算せず、自分自身の善意無過失の代理占有期間(10年間)のみを分離・選択して主張できるため(187Ⅰ)、短期取得時効が完成する)
もし、前主Aの占有(悪意3年+賃貸5年=8年)とガッチャンコ(合算)してしまうと、Aの「悪意」という瑕疵も引き継いでしまい、時効完成までに20年必要になってしまいます。
しかし、民法187条1項により「自分の占有だけ」を分離して主張することが認められているため、C自身の「善意無過失の10年(Bを通じた代理占有)」だけを切り出せば、前主の悪意は完全に無視して、見事に短期取得時効が完成します。

取得時効の主な要件は、(1)所有の意思、(2)平穏・公然、(3)20年間(善意無過失なら10年)の占有継続です。

問【論点:善意・無過失の占有の承継と取得時効】
AがB所有の甲土地を所有者と称するCから買い受け、これにより甲土地が自己の所有となったものと誤信し、かつ、そう信じたことに過失なく3年間占有した後、甲土地をBの所有であることを知っているDに売却し、Dが7年間甲土地を占有した場合、Dは甲土地の所有権を取得する。

解答表示
正解:〇(占有を併合して主張する場合、最初の占有開始時点での「善意・無過失(瑕疵がないこと)」もそのまま引き継がれるため(187)、Dは自身の悪意を問わず10年の短期取得時効を主張できる)

問 【論点:特定の前の占有者からの占有の併合と取得時効】
甲建物に居住して悪意の自主占有を8年間続けたAは、甲建物を善意・無過失のBに譲渡して引き渡した。Bは、自ら8年間甲建物に居住した後、甲建物を悪意のCに譲渡して引き渡し、Cがこの建物に居住して2年間が経過した。Cは、甲建物について取得時効を主張することができる。ただし、取得時効の要件のうち「平穏かつ公然」の要件は、いずれも満たされているものとする。

解答表示
正解:〇(Cは、一番最初のAからではなく、途中のB(善意・無過失)からの占有期間(Bの8年+Cの2年=10年)を選択して切り出し、合算して主張することができるため)
時効取得を主張する上で前主の占有を併せて主張する場合には、数人ある前主のうち特定の者以後の占有を主張でき(大判大6.11.8)、また、10年の取得時効の要件である善意・無過失は、2個以上の占有が併せて主張される場合には、その主張に係る最初の占有者につきその占有開始の時点において判定される(最判昭53.3.6)

問 【論点:占有代理人による所持の意思の変更と代理占有の消滅】
甲建物に居住して善意・無過失の自主占有を8年間続けたAは、甲建物をBに賃貸して引き渡した。ところが、その1年後、Bは、甲建物の真の所有者はCであり、自分は改めてCから甲建物を賃借したので、今後Aには賃料を支払わない旨をAに通知し、そのまま居住を続け、更に1年間が経過した。Aは、甲建物について取得時効を主張することができる。ただし、取得時効の要件のうち、「平穏かつ公然」の要件は、いずれも満たされているものとする。

解答表示
正解:×(占有代理人BがAに対して「今後はCのために占有する」と通知(反逆)した時点でAの代理占有は消滅するため(204Ⅰ②)、Aの占有期間は9年でストップし、10年の取得時効は完成しない)
「占有最初の時点を基準にする(善意無過失の判定時点)」からすると、10年経過しているようにも思えるが、占有中断時効にチェックできたかがポイントだった

問 【論点:相続による占有の性質の変更と取得時効】(難)
甲建物の所有者Aは、甲建物をBに賃貸して引き渡した。その2年後、Bが死亡したところ、善意・無過失の相続人Cは、甲建物はBがAから買い受けたものであるとして、賃料の支払を拒絶して甲建物に居住を始めたが、Aがこれを放置してうやむやになったまま、更に10年間が経過した。Cは、甲建物について取得時効を主張することができる。ただし、取得時効の要件のうち「平穏かつ公然」の要件は、いずれも満たされているものとする。

解答表示
正解:〇(相続人が独自の事実的支配を開始し、客観的に所有の意思があると認められる場合は、例外的に相続自体が「新たな権原」となり自主占有に変更されるため)
相続によって賃貸という客観的な他主占有を引き継ぐ。
占有の選択によって(187)、自主占有のみを主張することで、「自分の期間だけを分離(187条)」しようにも、Cの占有のスタート原因が「相続」である以上、分離しても他主占有のままなのです。
しかし、最高裁は**「相続人が『これは親父が買った家だ!』と信じて、家賃の支払いを明確に拒絶し(所有の意思の客観的表現)、独自の支配を始めた場合」には、なんと「相続という出来事自体が、例外的に『新たな権原』にジョブチェンジする」**という最強の救済魔法を認めました。
Cが賃料を拒絶して独自の支配を始めた時点からピカピカの「自主占有」に切り替わり、そこから善意無過失で10年経過したため、見事時効完成となります!

問【論点:占有代理人に対する権利行使(時効更新)の効果】
AがBに対して甲動産を貸し渡している。甲動産の真実の所有者であるEは、甲動産の取得時効を更新するためには、Bに対して時効更新の方法をとるだけでは足りず、Aに対しても時効更新の方法をとらなければならない。

解答表示
正解:×(現実に占有している占有代理人Bに対して手続をとれば、背後にいる本人Aに対しても効力が生じるため、Aに直接手続をとる必要はない)

【論点:占有回収の訴えによる占有権の回復】
占有権は占有物の所持を失うことにより消滅するが、占有者が占有回収の訴えにより勝訴すれば、占有権を勝訴の時から再び取得する。

解答表示
正解:×(勝訴の時から再び占有権を取得するのではなく、占有者は現実にその物を占有しなかった間も占有を失わず、占有が継続していたものと擬制される(最判昭44.12.2))

(論点:代理占有の消滅)
賃貸借契約が終了した場合は、賃借人が引き続き目的物を占有していても同人の占有権は消滅する。

解答表示
正解✕ (賃貸借契約などの基礎となる法律関係が終了しても、それだけでは代理占有は消滅しないため(204Ⅱ))
「賃貸借契約が期間満了した」「契約が解除された」などの事情は、民法204条1項の消滅事由に含まれていない。
代理占有(間接占有)は、以下のいずれかに該当した場合にのみ消滅する。
本人の意思放棄:本人が、代理人に占有をさせる意思を放棄したとき。
代理人からの意思表示:占有代理人が本人に対して、「これからは自分(または第三者)のためにこの物を所持する!」と意思表示したとき。
所持の喪失:占有代理人が、占有物の所持を失ったとき。

(論点:解除条件成就による占有の性質の変化)
A所有の甲建物を、代金を約定期限までに支払わないときには契約が当然に解除されたものとする旨の解除条件付きで、BがAから購入して占有を始めた場合において、その解除条件が成就して売買契約が失効したときは、Bの占有は所有の意思をもってする占有ではなくなる。

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正解✕ (売買契約に基づいて開始された自主占有は、契約が解除条件の成就により失効しても、それだけでは他主占有には変わらないため)
自主占有か否かは、占有を開始した時点で客観的に決まるから、解除条件=新たな権原による変更ではない

(論点:物権的請求権の相手方/建物退去土地明渡請求)
A所有の甲土地の上にあるB所有の乙建物をCがBから賃借して占有している場合において、Bが甲土地の占有権原を失い、Aは、Cに対し、乙建物からの退去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

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正解〇 (建物を占有使用する者はこれを通じて敷地も占有していると解されるため、土地所有者は現に占有している建物賃借人に対して退去および土地明渡しを請求できる)
受験生のひっかけポイント
💡 「建物の賃借人(C)には建物を壊す権限(処分権限)がないから、AはCに何も請求できないのでは?」という思い込みに注意! AからCに対して「建物の収去(取り壊し)」を求めることはできませんが、Cが現実に建物を占有して土地を使っている以上、「建物からの退去」と「土地の明渡し」であれば請求できる

(論点:代理占有の消滅と占有回収の訴え)(難)
AがBに対して甲動産を貸し渡している。A B間の甲動産の賃貸借が、錯誤に基づくものであったため、Aはこの錯誤に基づき、当該賃貸借契約を取り消した。この場合には、Aは、Bから甲動産を窃取したCに対し、占有回収の訴えを提起することができない。

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✕ (間接占有者である貸主Aも占有権を有しており、基礎となる契約が取り消されても代理占有は消滅しないため、Aも占有回収の訴えを提起できる)
受験生のひっかけポイント
賃貸借契約が取り消されて無効になったのだから、貸主Aの(代理)占有権も消滅し、占有回収の訴えはできなくなるのでは?
契約が無効になっても、それだけでは代理占有は消滅しないため(204Ⅱ)、Aは引き続き間接占有者としての権利を主張できる

(論点:代理占有の消滅事由/占有代理人からの意思表示)
AがBに対して甲動産を貸し渡している。AがBに対して甲動産の一時返還を求めたところ、Bは、甲動産は自己の所有物であるとして、これを拒否した。その後、DがBから甲動産を窃取した。この場合にAは、Dに対し、占有回収の訴えを提起することができない。

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正解〇 (もともとAは賃貸借により代理占有していたが、Bの以後自己のために占有するという意思表示により代理占有権が消滅し(204Ⅰ②)、Aは占有回収の訴えを提起できない)
※ただし、Aが本当の所有者であれば「所有権に基づく返還請求」という別のカードでDから取り返すことは可能です

本権者と占有者の関係

(占有物について行使する権利の適法の推定)
第百八十八条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

現に占有しているという事実だけで
⇒《対 第三者 》きっと正当な権利(本権)を持っているのだろう、と推定してあげるルール
具体例:見知らぬ第三者からイチャモンをつけられた場合
あなたが公園で自転車に乗って休んでいると、全く見知らぬ第三者Xがやってきて「お前、その自転車の所有者じゃないだろ!盗んだんだろ!俺に渡せ!」と明渡しを請求してきたとします。
〇 188条の推定を主張する(証明不要) 「今、現に私が占有しているのだから、私に正当な権利(所有権)があるはずだ(188条)。文句があるならそっちが証拠を出せ!」と突っぱねるだけでOK
✕ 自分で契約書を出して証明する(不要) 「いやいや、私は昨日、自転車屋で3万円で買ったんです!これが領収書で…」と、自分から権利の取得原因(権利変動)を証明する必要はありません。

⇒《対 元所有者 》「あなたから買ったんだ!」という『権利変動の事実(売買契約の存在など)』までは推定されません
したがって、元の所有者から返還を求められた際に「正当に譲り受けた」と主張するためには、その原因となった契約の存在を占有者自ら証明する必要がある。

民法188条の権利推定(適法に権利を有することの推定)は、現在の占有者だけでなく、過去の占有者にも適用される

見知らぬXが現れ、「あの自転車は本当は私の物だ!あなたが過去の1年間、不法に乗り回していた分のレンタル料相当額(損害賠償)を払え!」と裁判を起こしてきました。
私はあの1年間、現に占有していました。だから、その期間中は適法な権利を持っていたと推定されます。文句があるなら、私が不法に盗んだという証拠をXさん、あなたが提出してください!と反論するだけで済む。

推定される権利:
所有権だけでなく、賃借権などの債権も含まれます

あくまで「推定」されるだけなので、積極的に「対抗すること」はできない点に注意が必要です

【論点】占有の権利推定(民法188条)の不利益適用
大家さん(賃貸人)には、賃借人(店子)が家賃を滞納したときに、店子が部屋に持ち込んでいる家財道具(テレビ、冷蔵庫、家具など)を差し押さえて、そこから優先的に家賃を回収できる「不動産賃貸の先取特権」という強力な権利があります。
ここで、店子が「このテレビは友達から借りてるものだから、僕のものじゃない!差し押さえないで!」と言い訳したとします。
しかし、ここで民法188条により、「現に部屋に置いて使っている(占有している)のだから、そのテレビは賃借人(店子)のものだと推定するよ」とされてしまうのです。大家さんから適法に差し押さえを受けてしまう(占有者にとって不利益に推定効が働いている)。

(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
(悪意の占有者による果実の返還等)
第百九十条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
(占有者による損害賠償)
第百九十一条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

本権者と占有者の利益調整(占有者と回復者の関係)
具体的なイメージ:他人の物を賃貸して賃料を受け取っていた者
本当の所有者(回復者)が、無権原で占有していた人(占有者)に「返して!」と言ったときに、
それまで生じていた
①果実(利益)
②管理にかけた費用
③壊した分の損害
をどう精算するかのルールです。
「善意(本権があると信じていた)」か「悪意(本権がないと知っていた)」かで扱いが大きく変わるのがポイント

① 果実収取権(利益の精算)
「果実」には、農作物のような「天然果実」だけでなく、家賃や地代のような「法定果実」、さらには「自分で使用したことによる利益(使用利益)」もすべて含まれるとされています。
善意の占有者:生じた果実(家賃収入や農作物など)を自分のものにできる(返さなくてよい)。
悪意の占有者:果実を全て返還しなければならない。すでに消費してしまった場合は、お金(代価)で返す義務がある。
※善意占有者は本権の訴えで敗訴したとき、起訴の時から悪意の占有者とみなされるが(189 II)、起訴の時までに占有物から生じた果実は取得することができる(189 I)
いくら後から裁判で負けたとはいえ、訴えられる前までは「自分のものだ!」と信じていた(善意だった)わけですから、その期間に得た果実(家賃や農作物など)は生活費などに使ってしまっているのが普通です。「訴状が届いて『あれ?もしかして他人のものかも?』と疑い始めたであろう起訴の時」から悪意として扱うルールになっています。

② 費用償還請求権(管理にかけた費用の精算)
必要費(保存や修理にかかった費用)
善意・悪意を問わず、全額請求できる。
ただし、占有者が「果実(家賃や農作物など)」を取得していた場合は、その見返りとして、通常の必要費は自分で負担しなければならない。
反対解釈として、「特別の必要費(台風で屋根が吹き飛んだから大修理をしたなど)」については、たとえ果実を取得していても、全額を回復者に請求することができます。

有益費(価値を高めるためのリフォーム代など)
善意・悪意を問わず請求できる(本権者にプラスになっているなら、悪意者でも請求できないとバランスに欠ける)が、価値の増加が「現存」している場合に限る。
返す金額は、回復者(真の所有者)が「実際にかかった費用」か「増加した価値分」のどちらかを選ぶ。
※悪意の占有者からの有益費の請求に対しては、裁判所が「支払いを少し待ってあげて(期限の許与)」と猶予を与えることができます。悪意者が、勝手にリフォームしておいて「今すぐ払え」はバランスに欠けため。

③ 滅失・損傷の賠償(壊してしまった場合の精算)
善意 + 自主占有(自分の物だと信じている):現存利益の限度(今残っている価値の分だけ)で賠償すればOK。
上記以外(悪意の占有者、または善意でも借りていると信じていた他主占有者など):損害の全部を賠償しなければならない。

【論点】善意の他主占有者による滅失・損傷の賠償責任(191条ただし書)
なぜ「所有の意思(自主占有)」まで要件になっているか?
もし占有者が「これは私が借りている物だ(賃借権がある)」と信じていた場合、いくら善意でも、借り物である以上は「他人の物として大切に扱う義務(善管注意義務)」があります。それにもかかわらず壊してしまったのなら、全額賠償するのが筋です。

もし、悪意占有者でも、その滅失が自己の責めに帰すべからざる事由によるものの場合なら、損害賠償義務を負わない。

本権者と占有者の関係:過去問演習

(論点:占有の権利推定の範囲)
民法第188条にいう占有物の上に行使する権利とは、所有権その他の物権に限られ、賃借権その他の債権は含まれない。
参考)第188条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

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正解
✕ (188条で推定される権利は、占有を正当化するすべての権利を指すため、賃借権などの債権も含まれる)

(論点:占有の権利推定と主張立証責任)
土地の占有者は、その土地の所有者である旨を主張する者からその所有権に基づき明渡しを請求された場合において、その者から土地の譲渡を受けた旨の反証をするときは、民法第188条による推定は働かず、所有権の譲受けに事実を主張立証しなければならない。

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〇 (188条で推定されるのは現在の権利の存在のみであり、どうやって手に入れたかという権利変動の事実までは推定されないため、自ら主張立証する必要がある)

(論点:占有の権利推定の限界/登記請求権への流用)
他人の所有する土地につき地上権を主張する占有者は、その土地の所有者に対し、民法第188条に基づき地上権の設定登記手続を請求することができる。

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✕ (188条の推定は相手の攻撃を防ぐ消極的な防御にのみ使え、これを根拠に自分から積極的な登記請求をすることはできないため)

(論点:占有の権利推定の不利益適用)
建物の賃貸人が有する不動産賃貸の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた賃借人の所有の動産に及ぶが、賃借人が占有している備付動産は、民法第188条によって賃借人の所有に属するものと推定される。

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正解〇 (188条の権利推定は、占有者を保護するため(利益)だけでなく、今回のように差し押さえの対象にされるという「不利益」な場面でも働くため)
【論点】占有の権利推定(民法188条)の不利益適用
大家さん(賃貸人)には、賃借人(店子)が家賃を滞納したときに、店子が部屋に持ち込んでいる家財道具(テレビ、冷蔵庫、家具など)を差し押さえて、そこから優先的に家賃を回収できる「不動産賃貸の先取特権」という強力な権利があります。
ここで、店子が「このテレビは友達から借りてるものだから、僕のものじゃない!差し押さえないで!」と言い訳したとします。
しかし、ここで民法188条により、「現に部屋に置いて使っている(占有している)のだから、そのテレビは賃借人(店子)のものだと推定するよ」とされてしまうのです。大家さんから適法に差し押さえを受けてしまう(占有者にとって不利益に推定効が働いている)。

(論点:占有の権利推定の限界と主張立証責任)
土地の占有者は、当該土地の所有者からの所有権に基づく土地明渡請求に対し当該土地を使用する権原があるとして使用借権が設定されている旨の主張をするときは、その占有権原を適法に有することが推定されるので、当該土地の使用借権の設定に係る事実について主張・立証する必要はない。

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正解✕ (188条の推定は現在の権利の存在にとどまり、権利の取得原因たる事実(使用借権の設定など)については推定されないため、占有者自らが主張・立証する必要がある)

(論点:所有権に基づく返還請求の主張立証責任)
Aは、A所有の甲パソコンを占有しているBに対し、所有権に基づき甲パソコンの返還を請求した。この場合において、Aは、Bに占有権原がないことを主張・立証しなければならない。

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正解✕ (所有権に基づく返還請求において、原告Aは「自己の所有」と「被告Bの占有」を立証すれば足り、正当な権利(占有権原)があること(たとえば賃借権)は被告B自身が抗弁として主張・立証すべきだから)

(論点:占有の権利推定の適用範囲/過去の占有者への適用)
民法第188条が適用されるのは、現在の占有者についてのみであり、過去の占有者は、その占有の間、本権を適法に有していたとは推定されない。

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正解✕ (188条の権利推定は現在の占有者だけでなく、過去の占有者についても「占有していた期間中は適法に権利を有していた」と推定されるため)

(論点:善意占有者による法定果実の収取)
他人の物を賃貸して賃料を受け取っていた者は、その物の所有者に賃料の返還を請求された場合には、自分に本権があると信じていたときでも、これを返還しなければならない。

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✕ (善意の占有者は法定果実である賃料を収取する権利があるため、返還する必要はない)

(論点:本権の訴え敗訴による悪意擬制の時期と果実収取権)
善意の占有者は、本権の訴えで敗訴した場合であっても、起訴の時までの間に占有物から生じた果実を消費していたときは、その果実の代価を償還する義務を負わない。

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正解〇 (善意占有者は本権の訴えで敗訴したとき、起訴の時から悪意の占有者とみなされるが(189 II)、起訴の時までに占有物から生じた果実は取得することができる(189 I))

(論点:占有物の滅失・損傷に対する賠償責任)
自分に所有権があると信じて他人の物を占有していた者は、自らの責めに帰すべき事由によってその物を損傷した場合、現に利益を受けている限度で、回復者に損害を賠償すれば足りる。

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正解〇 (所有権があると信じていた=「善意」かつ「自主占有」の占有者は、現に利益を受けている限度(現存利益)で賠償すれば足りるため)

(論点:占有物の滅失・損傷に対する賠償責任)
善意の占有者は、自己の責めに帰すべき事由によって占有物が滅失したときは、回復者に対し、損害の全部を賠償する義務を負う。

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正解✕ (善意かつ自主占有であれば「現存利益」のみの賠償で足りるため、「損害の全部を賠償する義務を負う」と言い切っているこの問題文は誤りです!)

(論点:占有物の滅失・損傷に対する賠償責任)
Aが、Bの所有する甲建物を自己の所有と偽って、事情を知らないCに賃貸している場合において、占有者Cがその責めに帰すべき事由によって甲建物を損傷させたときは、Cは、Bに対し、その損害の全部の賠償をしなければならない。

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正解〇 (Cは賃借人として占有を始めているため「他主占有(所有の意思がない)」に当たり、善意であっても全額の賠償責任を負う!)

(論点:占有者の必要費償還請求権)
自分に本権がないことを知りながら、他人の物を占有していた者は、保存のために必要な費用を支出した場合には、回復者に対し、その償還を請求することができる。

解答表示
〇 (占有者の必要費償還請求権は、占有者が善意か悪意かを問わず認められるため)

(論点:果実を取得した占有者と通常の必要費の償還)
占有者は、その占有物を第三者に賃貸して賃料を取得していたときは、通常の必要費を支出していたとしても、占有の回復者に対しその償還を請求することができない。

解答表示
正解〇 (占有者が果実を取得した場合、通常の必要費については自己負担となり、回復者に償還請求することはできないため)
対価としてバランスをとる必要がある

(論点:悪意の占有者と有益費の償還請求)
悪意の占有者は、占有物を返還する場合に、有益費の償還を請求することができない。

解答表示
✕ (悪意の占有者であっても、有益費(リフォームなど価値を増加させるための費用)の償還を請求することができるため)
本権者がプラスになっているなら、請求できないとバランスに欠ける

(論点:占有者の有益費償還請求と裁判所による期限の許与)(難)
善意の占有者が占有物に支出した有益費について、価格の増加が現存するときは、回復者の選択により、回復者に対し、費やした金額又は増価額の償還を請求することができる。ただし、裁判所は、回復者の請求により、その償還に相当の期限を許与することができる。

解答表示
正解✕ (前半部分は正しいが、後半の裁判所に相当の期限を許与されるのは、悪意占有者のみである(196 II但書))

即時取得

(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

即時取得の対象になる権利:
「所有権(自分のモノにする権利)」と「質権(借金のカタとして預かる権利)」のみ
具体例
時計について無権利者であるAが、時計を担保にして、Bからお金を借りた場合
⇒Bは、「この時計は間違いなくAさんのモノだ!」と信じ込んでいて、そう信じたことについて不注意(ミス)もなかったとき、「質権(借金を返してもらうまでその時計を預かっておける権利)」を即時取得する

何が「動産」になるの?
登録制度により公示方法が具備されている物については成立しない
車について:
ナンバープレートなどが登録されている「普通の自動車」はダメ
登録されていない「未登録の自動車」なら動産扱いになる
木について:
地面に生えたままの木(立木)は動産じゃないからダメ
「切り倒された丸太(木材)」なら持ち運べるから動産扱いになる

どんな「取引」ならOK?
オークション(競売)、借金を返す代わりにモノをもらうこと(代物弁済)は、すべて取引だからOK
ダメなパターン(取引じゃない):
「親から引き継いだ(相続)」
「自分で木を切り倒した」
「他人の靴を自分の靴と間違えて履いて帰った」
有効な取引である必要があり、制限行為能力・錯誤・強迫等の理由によって取引行為自体に瑕疵がある場合には、即時取得の規定は適用されない。

どんな「引き渡し(受け渡し)」ならOK?
現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転はOK
占有改定のみNG

善意・無過失のルール
いつの時点で判断:モノを受け取って「占有を始めた時(引き渡しの時)
証明はいらない!

(盗品又は遺失物の回復)
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

第百九十四条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

典型具体例:盗品または遺失物の場合
甲⇒窃盗犯乙へ⇒取引にて丙(善意無過失)
被害者である甲は、2年間丙に対して回復請求できる。

典型具体例:盗品または遺失物を、古物商(リサイクルショップなど)から買った場合
甲⇒窃盗犯乙へ⇒古物商の丙(善意無過失)へ売却⇒丁(善意無過失)
盗まれて2年間は、甲に所有権がある。
丙には代価弁償不要で回復請求。
丁は古物商から買っているので代価弁済必要しないと回復できない。

盗品・落とし物の特別ルール
もし買ったモノが、実は誰かから「盗まれたモノ」や「落とし物」だった場合は、本当の持ち主がかわいそう
・2年以内なら取り返せる!
・ただ、「オークション(競売)」や「お店(公の市場)」や「そのモノを売っている商人(古物商(リサイクルショップなど))」から、盗品だと知らずに買っていた場合は、弁償してあげないと、返してもらえない!
・詐取(詐欺で騙し取られた場合)には適用されません。

2年間の所有権は誰のもの?:
この「返して」と言える2年間の間は、所有権は依然として「本当の持ち主(被害者)」に残ったままになります

競売若しくは公の市場による場合で、占有者が代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益権限を有する

競売若しくは公の市場による場合で、第三者が所有者に動産を返還後であってもなお所有者へ代価弁償請求ができる

回復請求前に目的物が滅失した場合
本当の持ち主は、回復に代わる賠償(お金)を請求することはできない。
理由:「公の市場で普通に買っただけの、善意無過失の人」に、不法行為などの責任がない限り、賠償義務を負わせるのは酷

(動物の占有による権利の取得)
第百九十五条 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。

この条文は、他人が飼っていた動物(ペットなど)が逃げ出し、それを別の人が保護して飼い始めた場合の権利関係を早期に安定させるための規定です 。
通常、他人の物を自分のものにするには「即時取得(192条)」などの厳しい条件が必要ですが、動物の場合は「1ヶ月」という短い期間で権利が確定するのが特徴です 。

195条の具体例
のび太くんが公園で、首輪のない可愛い猫を見つけて保護し、「野良猫だろう」と思って自分の家で飼い始めました(占有の開始時に善意)。
実はその猫は、隣町の家から3日前に逃げ出した猫でした(飼主の占有を離れた動物)。
そのまま1ヶ月が経過し、元の飼主から何の連絡もありませんでした。
この場合、1ヶ月が過ぎた時点でのび太くんはその猫の所有権を正式に取得します。
逆に、逃げ出してから1ヶ月以内であれば、元の飼い主は返還を求めることができます。

*ペットを飼っているみなさん
「善意」「一か月」の2つの要件だけで、ペットが奪われるので注意してください。
もっとも、首輪などを付けていると、善意要件はなくなるとは思いますが。

詐取された場合に、本条の適用はない。

即時取得:過去問演習

(論点:即時取得の対象となる「動産」の判断)
立木法による登記がされた丙所有の樹木を乙が無権原で伐採し、甲がその材木を乙から買い受けた場合、甲は、材木の所有権を即時取得し得る。

解答表示
正解〇 (伐採された瞬間に「材木(動産)」となるため、即時取得の対象となります!)

(論点:即時取得の対象となる「動産」の判断(自動車の場合))
Aの所有する未登録の乙自動車を保管しているBが、乙自動車を自己の所有物であると偽ってCに売却し、現実の引渡しをした場合には、Cは、Bが所有者であると信じ、かつ、そう信じるにつき過失がないときであっても、乙自動車を即時取得することはできない。

解答表示
正解✕ (自動車であっても「未登録」のものは動産として扱われるため、即時取得の対象となります。)

(論点:即時取得の対象となる「動産」の判断(自動車の場合))
Aは、Bが所有者Cに無断で占有していた甲自動車を、Bの所有物であると過失なく信じて購入し、現実の引渡しを受けた。この場合において、甲自動車が道路運送車両法による登録を受けた自動車であるときは、Aは甲自動車を即時取得しない。

解答表示
正解〇 (登録制度(公示制度)が整えられている自動車は即時取得の対象にならない)

(論点:即時取得の要件(取引行為の有無))
甲が、丙所有の山林を自己のものと誤信して伐採し、材木の占有を取得した場合、甲は、材木の所有権を即時取得し得る。

解答表示
正解✕ (自分で木を切り倒す行為(事実行為)は「取引行為」には当たらないため、即時取得は成立しません。)

(論点:即時取得の要件(取引行為に代物弁済が含まれるか))
債務者がその占有中の他人所有の宝石を善意・無過失の債権者に対して債務の弁済に代えて譲渡し、現実の引渡しをしたときは、債権者はその宝石の所有権を取得する。

解答表示
正解〇 (「借金を返す代わりにモノを渡す(代物弁済)」も立派な取引行為として認められるため、即時取得は成立します。)

(論点:即時取得の要件(取引行為に強制競売が含まれるか))
強制競売により、債務者の所有に属さない動産を取得した場合には、即時取得は認められない。

解答表示
正解✕ (強制競売も「取引行為」に含まれるため、即時取得は認められます。したがって「認められない」とする本問は誤りです!)
いきなり、債務者という用語がでているが、オークション(強制競売)にかけられてしまった人をさす。
問題文は、「オークションにかけられたモノが、実はその債務者のモノではなく、他人のモノ(借りパクしていたモノなど)だった」という状況を言っています。

(論点:即時取得の対象となる権利)
乙は甲の所有するゴッホの絵を盗み出し、第三者に売却することをもくろんで、事情を知らない丙に傷んだ箇所の修復を依頼した。丙は、修復作業を終えたところ、甲から絵の返還請求を受けた。丙は、善意・無過失で乙から絵の引渡しを受けたことを理由として、甲に絵の返還を拒むことができる。

解答表示
正解✕ (「善意無過失だから返さない」という理由付けは法律的にも意味不明であり、認められません!)
即時取得(192)の対象となるのは所有権・質権に限られる。
もし丙が、乙から絵を「買った(所有権)」り、「借金のカタとして預かった(質権)」りしていれば、善意無過失を理由に即時取得を主張して返還を拒めます。
しかし、単に「修理のために預かっただけ」では、そもそも即時取得という魔法のルールの対象外なのです。

(論点:悪意の買主による即時取得の成否)
動産質権者が質権の目的である動産を自己の所有物と偽って売却し、これを引き渡した場合において、その買主が、所有者でない者から売却を受けたことを知っていたときは、その買主は、その動産について、所有権を取得することはできず、質権を取得するにすぎない。

解答表示
正解✕ (悪意である以上、192は成立せず、所有権はもちろん「質権も取得できない」ため、本問は誤りです!)
そもそもこの買主は「買う(所有権を手に入れる)」つもりで取引をしたのであり、「借金のカタとして預かる(質権を手に入れる)」つもりなど全くありません。

(論点:即時取得の要件(取引行為自体の有効性))
未成年者Aは、単独の法定代理人である母親Bの所有する宝石を、Bに無断で自己の物としてCに売却し引き渡した上、代金50万円のうち30万円を受け取り、そのうち10万円を遊興費として消費してしまった。他方、Cは、Aに対し、残代金を支払わない。Aが、未成年者であることを理由にA・C間の売買を取り消したとしても、Cが、Aを宝石の所有者であると信じ、かつ、そう信ずるについて過失がなかったときはAは、Cに対し、宝石の返還を請求することができない。

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正解✕ (未成年であることを理由に売買契約が「取り消し」になり、取引自体がなかったことになった場合、即時取得は成立しません。したがって「返還を請求することができない」とする本問は誤りです!)
Cは契約当事者であり、取り消し後の第三者の話にもあてはまらない。
即時取得というのは、あくまで「相手が本当の持ち主じゃなかった」という1つの傷(無権利)だけを治してあげる魔法です。 今回のように、そもそも「未成年者だから契約を取り消せる」という別の理由で取引が白紙に戻ってしまった場合、即時取得の魔法をもってしても、その契約を無理やり有効にすることはできないのです。

(論点:取消し後の第三者と即時取得)
Aは、A所有のデジタルカメラ甲をDに売却し、その現実の引渡しをした後、自己が未成年者であることを理由として当該売買契約を取り消したが、その後、Dは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Dが甲に関し無権利者であることにつき善意無過失であったとしても、甲を即時取得しない。

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✕ (AD間の取引は瑕疵があるが、取り消された後、BD間の取引は有効であり、BD間においては即時取得の適用がある)

(論点:即時取得の要件(無権代理行為と即時取得))
AがBの無権代理人CからB所有の宝石を買い受けた場合に、Cの無権代理について善意・無過失であるときは、その宝石を即時取得することができる。

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正解✕ (「瑕疵のある取引である」から即時取得はできないため、「即時取得することができる」とする本問は誤り(✕)となります!)

(論点:占有改定と即時取得の成否)
譲渡担保の目的である印刷機を設定者が第三者に譲渡した場合であっても、当該第三者に対し占有改定により引き渡したときは、譲渡担保権は消滅しない。

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正解〇 (占有改定では、第三者に即時取得が成立しないので、譲渡担保権は消滅しない)

(論点:占有改定と即時取得の成否)
Aは、自己所有の機械をBに売却し、占有改定による方法で引き渡し、これをBから借りて使用していたが、その後Aは、B所有であることを秘して、その機械をCに売却し、占有改定による方法で引き渡した場合、Cが善意・無過失であれば、Cはその機械を即時取得する。

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正解×  
第1譲受人Bは、占有改定により対抗要件を具備しており(178・183)、確定的に当該機械の所有権を取得し、原権利者AはBへの占有改定による引渡しによって無権利者となる。
そこで、第2譲受人Cの即時取得(192)の成否が問題となるが、占有改定によっては即時取得し得ないので(最判昭35.2.11)、Cはその機械を即時取得しない。

(論点:指図による占有移転と即時取得の成否)
Aは、Gに甲動産を譲渡し、Bに対し、以後Gのために甲動産を占有すべき旨を命じた。甲動産は、Aが他人から預かっていたものであった。この場合には、Gは、甲動産がAの所有物であると誤信し、そのことにつき無過失であれば、甲動産の所有権を取得する。

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指図による占有移転(184)により占有を取得した場合であっても、即時取得(192)は成立する(最判昭57.9.7)。

(論点:善意無過失が要求される時点)
Aの所有する甲動産を保管しているBが、甲動産を自己の所有物であると偽ってCに売却した場合において、代金支払時にCが甲動産の所有者がBであると信じ、かつ、そう信じるにつき過失がないときは、代金支払後、引渡しを受けるまでの間に、所有者がBでないことをCが知ったとしても、Cは、甲動産を即時取得することができる。

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×
即時取得における善意無過失の要件は、占有開始時に要求される(192)。
Cは、代金支払時にはBが所有者であると信じているが、
引渡しを受けるまでの間に所有者がBでないことを知っているので、占有開始時に善意無過失であるとはいえない。

(論点:善意無過失が要求される時点)
AからA所有のデジタルカメラ甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。

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即時取得における善意無過失の要件は、取得者が占有を取得した時点で必要となる(192、最判昭26.11.27)。

即時取得の無過失の立証責任の有無
占有者が、占有物の上に行使する権利は、これを適法に有するものと推定されるので、即時取得を主張する者は、無過失を立証する責任を負わない。

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占有者が占有物について行使する権利はこれを適法に有するものと推定されるところから(188)、譲受人である占有取得者が前主の占有を信頼することについては無過失と推定され(最判昭41.6.9、最判昭45.12.4)、即時取得を主張する者は、無過失を立証する責任を負わない。

詐取された場合の即時取得の回復
Aから動産甲を詐取したBが、自己の所有物であると偽って、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに動産甲を売り渡した場合には、Aは、詐取された時から2年以内であれば、Cに対して動産甲の返還を請求することができる。

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× 193条は、詐取は「盗難又は遺失」にあたらない。したがって、AはCに対して動産甲の返還を請求することができない。

(論点:即時取得の例外(盗品・遺失物の特則))
甲が所有者乙から宝石を盗み出し、善意・無過失の第三者丙に売却して引き渡した場合であっても、原則として乙は盗難の時から2年間は宝石の所有権を失わないが、丙が古物商であるときは、所有権を失う。

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代価弁償(194条の適用)が必要なのは古物商「から」買った第三者であり、丙が古物商である場合には代価弁償は不要。所有権の話は別で、2年の間は甲のもとにある。

(論点:即時取得の例外(回復請求前に目的物が滅失した場合))
Aの家から動産甲を盗んだBが、自己の所有物であると偽って、公の市場において、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに動産甲を売り渡した場合において、AがCに対して動産甲の返還を請求する前に動産甲が滅失したときは、Aは、盗難の時から2年以内であれば、Cに対して動産甲の回復に代わる賠償を請求することができる。

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正解✕
回復請求前に目的物が滅失した場合
本当の持ち主は、回復に代わる賠償(お金)を請求することはできない。
理由:「公の市場で普通に買っただけの、善意無過失の人」に、不法行為などの責任がない限り、賠償義務を負わせるのは酷

占有の訴え

単元:占有の訴えのセンターピン(本質)
占有訴権は『本当の持ち主(本権)かどうか』は一切関係なく、
『事実上の支配状態(占有)』の平和を乱す者を排除するための権利である!

占有訴権
占有回収の訴え(過去奪われたモノを取り返す「及び」損害賠償も払え)
占有保持の訴え(現在邪魔されているのをやめさせる「及び」損害賠償も払え)
占有保全の訴え(未来邪魔されそうなのを予防する「又は」損害賠償の担保を預けろ
*「及び」は、両方を同時請求可(併合請求)
*「又は」は、どちらか一方を選ぶ(選択請求)

占有訴権による損害賠償請求
3つの訴えすべてにおいて、損害賠償請求の相手の「故意・過失(わざと、不注意)」は要求されていません!
占有保全の訴えの場合のみ、実際に損害が出てお金を払わせるわけではなく、「もし損害が出たときのための保証金(担保)」を確保するだけなので、例外的に故意・過失は不要とされています。
他の2つ、占有回収、占有保持の訴えにおける損害賠償請求を行使するためには、相手の故意・過失が必要。(不法行為のルール)

(占有の訴え)
第百九十七条 占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
(占有保持の訴え)
第百九十八条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

要件と効果
現在進行形で占有を「妨害されている」場合、その妨害の停止と損害賠償を請求できます。
ただし、損害賠償まで請求する場合は、妨害した人に「故意または過失(わざと、または不注意)」があることが必要です(不法行為のルール)。
妨害をやめさせるだけなら故意過失は不要です。

占有保持の訴え期間制限
妨害が存在している間、または妨害が消滅した後**「1年以内」**に提起する必要があります。

(占有保全の訴え)
第百九十九条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

要件と効果
占有を「妨害されるおそれ(危険)」がある場合、妨害の予防「又は」損害賠償の担保のどちらかを請求できます。
条文上「及び」ではないので、両方を同時に請求することはできない点に注意してください。
相手の故意・過失は不要です。

占有保全の訴え期間制限
妨害の危険が存在している間であれば、いつでも提起できます。

(占有回収の訴え)
第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

「占有を奪われた(侵奪された)」ことが絶対条件
騙されて自分で渡してしまった(詐欺)⇒✕
自分で落とした(遺失)⇒✕
貸していた相手が契約終了後も返してくれない⇒✕
貸している相手が勝手に他人に渡してしまった⇒✕
裁判所の強制執行で持っていかれた場合(適法な手続き)⇒✕

自力救済の禁止(勝手に取り返すのはNG)
もし勝手に取り返すと、泥棒の方から、占有回収の訴えを起こされてしまいます。
具体例
賃貸借契約の終了後、賃借人が賃貸目的物を所有者である賃貸人に返還しない場合、賃貸人が賃借人に無断で目的物の占有を取り戻したときは、占有の侵奪となる。

誰が訴えることができるか(原告になれる人)
悪意の占有者でもOK:
間接占有者(賃貸人など)でもOK:
占有補助者(店員など)はNG:
会社のモノが奪われたら、従業員個人ではなく「会社(法人)」名義として訴える必要があります。

占有訴権の原告適格(法人の代表者)
法人の代表者は、業務上管理しているモノを奪われても、「自己(個人)の名で」占有回収の訴えを起こすことはできない。
理由 代表者は法人の「機関(手足)」としてモノを所持しているにすぎず、独立した占有者ではないから。
占有しているのは「法人」であり、訴えるなら「法人名義」でなければならない
もっとも、例外として判例は、法人の代表者が法人の機関として物を所持するにとどまらず、代表者個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特別の事情がある場合には、その物について個人として占有の訴えを提起することができるとしている
「代表者が自己(個人)のためにも所持していると認めるべき特別の事情」の具体例
⇒社用車の私的利用
ある車が「会社の所有物(社用車)」であり、平日は社長が会社の業務(手足)として乗っているとします。
しかし、会社との約束で「休日は、社長個人のマイカーとして遊びに使ってもいいよ」と認められていたとしましょう。
この場合、社長はその車を「会社の手足(機関)」として持っているだけでなく、「自分個人の遊びのため(個人の利益のため)」にも持っていると言えるので、占有回収の訴えを提起できる。

誰を訴えるのか(被告になる人)
原則:
被害者A⇒占有を奪ったB⇒C(相続人、一般承継人)なら占有回収の訴え〇
被害者A⇒占有を奪ったB⇒C(特定承継人:善意)には✕
例外:
被害者A⇒占有を奪ったB⇒C(特定承継人:悪意)
悪意の場合は、例外的に訴えることができます。

特定承継人の「悪意」の程度
「占有の侵奪の可能性についての認識にとどまる限り」、悪意の特定承継人ではない以上、占有回収の訴えはできない。
*過失、重過失のとき請求できる、これは間違い。

転得者のケース:
被害者A⇒占有を奪ったB⇒C(特定承継人:善意)⇒D(悪意)
途中に「善意の人」が一人でも挟まると権利関係が確定し、Dさんが悪意であっても訴えることはできません。

相続が絡むケース:
特定承継人の「地位」はそのまま相続人に引き継がれます。
被害者A⇒占有を奪ったB⇒C(特定承継人:悪意)⇒D(Cを相続):悪意Cの相続人Dは、Dが善意でも訴えられます。
被害者A⇒占有を奪ったB⇒C(特定承継人:善意)⇒D(Cを相続):善意Cの相続人Dは、Dが悪意でも訴えられません。

占有回収の訴え期間制限:
占有を奪われた時から**「1年以内」**に裁判を起こさなければなりません。

占有回収の訴え効果:「その物の返還及び、損害の賠償を請求」
返還請求権と損害賠償請求権はそれぞれ別個のものであり、当該物を取り戻した場合であっても、占有回収の訴えにより、占有侵奪により生じた損害の賠償を請求することができる。
訴えに勝ってモノを取り返した場合、「占有はずっと失われていなかった(継続していた)」とみなされます。

(占有の訴えの提起期間)
第二百一条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
(本権の訴えとの関係)
第二百二条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

例 占有回収の訴えを提起された場合、抗弁として自分には所有権があると主張することはできない。ただし、被告側から「じゃあ、私が本当の持ち主であることを確認する裁判(本権の訴え)」を逆に起こし返す(反訴する)ことは防御方法として認められています。

占有の訴え:過去問演習

占有回収の訴えの要件
動産甲の占有者Aは、Bの詐欺によって、Bに動産甲を現実に引き渡した。この場合において、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることはできない。

解答表示

占有回収の訴え(200 I)は占有を奪われた場合に提起することができるが、占有者が物を詐取された場合は「占有を奪われた」に該当しない

占有訴権の原告適格(法人の代表者)
法人の代表者が、その業務上占有する物品の占有を奪われた場合には、当該代表者は、法人の占有代理人として、自己の名において占有回収の訴えを提起することができる。

解答表示
正解✕
占有訴権の原告適格(法人の代表者)
法人の代表者は、業務上管理しているモノを奪われても、「自己(個人)の名で」占有回収の訴えを起こすことはできない。
理由 代表者は法人の「機関(手足)」としてモノを所持しているにすぎず、独立した占有者ではないから。
占有しているのは「法人」であり、訴えるなら「法人名義」でなければならない

(論点:占有回収の訴えの原告になれる人(法人の代表者の例外))
法人Aの代表者BがAの業務として所持する動産甲をCが盗んだ場合には、Bが自己のためにも動産甲を所持していると認めるべき特別の事情があるときであっても、Bは、個人としては、Cに対し、占有回収の訴えにより、動産甲の返還を請求することができない。

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正解✕
法人としての占有と、個人としての占有がイメージしずらいが
判例は、法人の代表者が法人の機関として物を所持するにとどまらず、代表者個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特別の事情がある場合には、その物について個人として占有の訴えを提起することができるとしている

代表者が自己(個人)のためにも所持していると認めるべき特別の事情
⇒社用車の私的利用
ある車が「会社の所有物(社用車)」であり、平日は社長が会社の業務(手足)として乗っているとします。
しかし、会社との約束で「休日は、社長個人のマイカーとして遊びに使ってもいいよ」と認められていたとしましょう。
この場合、社長はその車を「会社の手足(機関)」として持っているだけでなく、「自分個人の遊びのため(個人の利益のため)」にも持っていると言えます。

(論点:占有回収の訴えの被告(転得者がいるケース))
Bは、Aが占有する動産甲を盗み、盗品であることを秘して動産甲をその事実を知らないCに売却した。その後、Cは動産甲をそれが盗品であることを知っていたDに売却した。この場合において、Aは、Dに対し、占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

解答表示

一旦善意の特定承継人の占有を介した場合、その後に占有を特定承継した者が悪意であっても、この者に対しては占有回収の訴えを提起することができない

(論点:占有回収の訴えの被告(特定承継人の「悪意」の程度))
Bは、Aが占有する動産甲を盗み、盗品であることを秘して動産甲をCに売却した。その際、Cは、動産甲が盗品である可能性があることは認識していたものの、動産甲が盗品であることを知ることはできなかった。この場合において、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

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正解✕
十分に調べなかったという意味で「過失(不注意)」はあるかもしれませんが、「確実に盗品だと知っていた(悪意)」とまでは言えません。
「占有の侵奪の可能性についての認識にとどまる限り」、悪意の特定承継人ではない以上、訴えられない。
占有回収の訴えで特定承継人から取り返せるのは**「悪意(確実に知っていた)」の場合のみという例外中の例外**です。

権原を有しない悪意の占有者の占有回収の訴え
果実を取得する権利を有しない悪意の占有者は、その占有物の侵奪者に対して占有の侵奪によって生じた損害の賠償を請求することはできない。

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✖ 占有回収の訴えの原告適格を有する者は、権原を有しない悪意の占有者も、占有回収の訴えの内容として、侵奪者に対して損害賠償を請求することができる(200Ⅰ)。

占有回収の訴えによる取り戻した後の損害賠償請求の可否
Aが占有する動産甲をBが盗んだが、Aが適法に動産甲の占有を取り戻した場合には、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより、占有侵害により生じた損害の賠償を請求することができない。

解答表示
✖ 占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる(200Ⅰ)。返還請求権と損害賠償請求権はそれぞれ別個のものであり、当該物を取り戻した場合であっても、占有回収の訴えにより、占有侵奪により生じた損害の賠償を請求することができる。

占有回収の訴えの提起期間
BはAの車庫から自動車を窃取して乗り回した後、これをCに売り渡した。Aは、Cに対し、Cが自動車の占有を取得した時から1年内に限り、占有回収の訴えにより自動車の返還を請求することができる。

解答表示
✖ 占有回収の訴えの提起期間は、最初の占有侵奪の時から1年以内である(201 Ⅲ)。したがって、Aは、Cに対し、「BがAの車庫から自動車を窃取した時から」1年以内に限り、占有回収の訴えにより自動車の返還を請求することができる。

占有保持の訴えと所有権に基づく妨害排除請求権
所有権に基づく妨害排除請求権は、時効によって消滅しないが、占有保持の訴えは、妨害が消滅した時から1年を経過した場合には提起することができない。

解答表示

所有権は消滅時効にかからないので、所有権に基づく妨害排除請求権も時効により消滅することはない。一方、占有保持の訴えは妨害が消滅した後1年以内に提起しなければならない(201 I)から、妨害が消滅した時から1年を経過した場合には提起することができない。

論点:占有保持の訴えの要件と損害賠償請求(故意・過失の要否)
Aの自宅の隣接地にあった大木が落雷を受け、Aの自宅の庭に倒れ込んだため、Aは、庭に駐車していた車を有料駐車場に停めざるを得なかった。この場合、Aは、当該隣接地の所有者であるBに対し、占有保持の訴えにより大木の撤去を請求することはできるが、損害賠償を請求することはできない。

解答表示

占有保持の訴えの内容である妨害停止請求は、妨害者に妨害について故意・過失がなくても認められる。
しかし、損害賠償請求は、不法行為に基づく損害賠償請求権としての性質を有するので、これが認められるためには、妨害者に妨害についての故意・過失を要する(条文上は書いてないが)。
大木が倒れてきた原因は「落雷」という自然災害(不可抗力)であり、隣人Bさんに「故意・過失」はありません。
したがって、Aは、Bに対して、占有保持の訴えにより「木をどかして!(妨害停止)」請求することはできるが、「駐車場代を払って!(損害賠償)」を請求することはできない。

どっちが主張しやすいか?
スピード重視・手っ取り早さなら「占有保持の訴え」(とにかく今すぐ追い出したい、証明が面倒なとき)
確実性・期限切れの保険なら「所有権に基づく妨害排除」(1年以上経ってしまったときや、根本的に権利を確定させたいとき)

論点:占有保全の訴えの請求内容(予防と担保)
Aの宅地の隣接地に堆積されていた大量の土砂が、長雨のため、Aの宅地に流入しそうになった。Aは、当該隣接地の所有者であるBに対し、土砂がAの宅地に流入しないようにするための設備を設置することを請求するとともに、損害賠償の担保を請求することができる。

解答表示

占有保全の訴えの内容である妨害予防請求と損害賠償の担保請求は選択的である(199)。
妨害の予防(例:土砂が崩れないように壁(設備)を作って!)
損害賠償の担保(例:もし土砂が崩れて損害が出たときのために、あらかじめ保証金を預けておいて!)
したがって、Aは、土砂の宅地流入防止設備の設置という妨害予防請求をするとともに損害賠償の担保を請求することはできない。