このページは、司法書士試験に出題された民法の債権各論「契約総論」(第521条から第548条)をまとめたページになります。
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- 【司法書士試験】債権各論「契約総論」ガチ解説
- 論点:承諾(相手の返事)の期間の定めのある申込み
- 論点:期間の定めのある申込みに、遅延した承諾・変更を加えた承諾
- 論点:申込者の死亡と申込みの効力
- 論点:同時履行の抗弁権と「債権譲渡」
- 論点:同時履行が「認められる」ケースor「認められない」ケース
- 論点:弁済の提供の継続と同時履行の抗弁権
- 論点:危険負担の原則(不可抗力による履行不能)
- 論点:第三者のためにする契約《第三者の存在、債権発生時期》
- 論点:第三者のためにする契約《契約変更、債務不履行解除、抗弁権》
- 論点:契約解除の要件《履行遅滞と催告、履行不能、軽微な不履行》
- 論点:解除権の撤回、不可分性
- 論点:解除による原状回復義務と解除権の消滅、「信頼関係破壊の法理」と解除権の消滅
- 論点:解除の効果(原状回復と第三者保護)
- 論点:定型取引の定義
- 論点:定型約款の「組入れ(合意の擬制)」
- 論点:定型約款の内容表示義務と違反ペナルティ
- 論点:定型約款の「変更」と「事前の周知要件」
【司法書士試験】債権各論「契約総論」ガチ解説
条文目次
第二章 契約
第一節 総則
第一款 契約の成立(第五百二十一条―第五百三十二条)
第二款 契約の効力(第五百三十三条―第五百三十九条)
第三款 契約上の地位の移転(第五百三十九条の二)
第四款 契約の解除(第五百四十条―第五百四十八条)
第五款 定型約款(第五百四十八条の二―第五百四十八条の四)
以下、論点名を見ただけで、結論などが思い浮かぶように。
論点:承諾(相手の返事)の期間の定めのある申込み
論点:期間の定めのある申込みに、遅延した承諾・変更を加えた承諾
論点:申込者の死亡と申込みの効力
論点:同時履行の抗弁権と「債権譲渡」
論点:同時履行が「認められる」ケースor「認められない」ケース
論点:弁済の提供の継続と同時履行の抗弁権
論点:危険負担の原則(不可抗力による履行不能)
論点:第三者のためにする契約《第三者の存在、債権発生時期》
論点:第三者のためにする契約《契約変更、債務不履行解除、抗弁権》
論点:契約解除の要件《履行遅滞と催告、履行不能、軽微な不履行》
論点:解除権の撤回、不可分性
論点:解除による原状回復義務と解除権の消滅、「信頼関係破壊の法理」と解除権の消滅
論点:解除の効果(原状回復と第三者保護)
論点:定型取引の定義
論点:定型約款の「組入れ(合意の擬制)」
論点:定型約款の内容表示義務と違反ペナルティ
論点:定型約款の「変更」と「事前の周知要件」
論点:承諾(相手の返事)の期間の定めのある申込み
「承諾(相手の返事)の期間を定めてした申込み」は、相手に到達するまでは撤回できる(到達主義)
しかし、相手に到達した後は、その期間が経過するまでは「撤回することができない」。(相手方の熟慮期間を保護)
ただし、申込者があらかじめ「撤回するかもしれない」と権利を確保(留保)していた場合は、期間内であっても撤回することができる。
定めた期間内に承諾の返事が届かなかった場合、その申込みは自動的に「効力を失う」(申込者の長期間の拘束から解放)。
「承諾期間を定めた申込み」とは:
「○月○日までに返事をください」と、あらかじめ期限を決めて契約を持ちかけること。
《司法書士過去問コレクション》
AB間の契約締結交渉において、AがBに対して書面を郵送して申込みの意思表示をした。その際、Aは承諾の通知を受ける期間の末日を2月5日と定めた。Aは、Bが承諾の通知を発する前であれば、申込みを撤回することができる。
解答表示
Aの申込みの意思表示がBに到達して、その返事を2/5までにしてくれという内容。
まさに承諾期間の定めのある申し込みの典型例で、「承諾の通知を発する前」は関係なく、期間内である2/5まではAは申し込みを撤回することはできない。
《司法書士過去問コレクション》
Aは、Bに対して承諾の期間を定めて契約の申込みをしたが、その通知が到達する前に、その申込みを撤回する旨をBに伝えた。その後、Bは当初の申込みにおいて定められた承諾の期間内に承諾の意思表示をした。この場合契約は成立する。
解答表示
到達によって、申し込みが完了するが、
申し込みの「通知が到達する前に、その申込みを撤回する旨をBに伝え」ており、この時点で申し込みの撤回ができている。
よって、その後の話はBからの新たな申し込みの余地はあるものの、Aの承諾ない限り、契約は成立はしない。
《司法書士過去問コレクション》
AB間の契約締結交渉において、AがBに対して書面を郵送して申込みの意思表示をした。その際、Aは承諾の通知を受ける期間の末日を2月5日と定めた。Bが承諾の通知を2月1日に郵送で発し、これが2月3日に到達した場合、契約は2月3日に成立する。
解答表示
到達時に承諾の効力が発生するので、2/3に契約が成立する。
*承諾の期間の定めは、〇〇日までに返事をしないと申し込みが失効するというだけであって、契約成立とは関係がない。
論点:期間の定めのある申込みに、遅延した承諾・変更を加えた承諾
遅延した承諾について、申込者は、新たな申込みとみなすことができる。第524条
申込みに変更を加えた承諾は、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。第528条
《司法書士過去問コレクション》
AB間の契約締結交渉において、AがBに対して書面を郵送して申込みの意思表示をした。その際、Aは承諾の通知を受ける期間の末日を2月5日と定めた。Bが承諾の通知を2月4日に発し、これが2月6日に到達した場合、Aがこの承諾を新たな申込みとみなして、これに対する承諾をすれば、契約は成立する。
解答表示
524条の典型事例
論点:申込者の死亡と申込みの効力
原則(97条3項)
申込者が申込みの通知を発信した後に死亡(or意思無能力or制限行為能力になる)した場合であっても、申込みの効力は失われない【意思表示の効力維持の原則】
例外(526条)
以下2つの場合に、申込みは効力を失う
・承諾の通知を発するまでに、申込者が死亡した事実を知っていた場合
・申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していた場合(「もし私が死んだら、この話は無しにしてね」)《申込者の生前の意思を尊重》
《司法書士過去問コレクション》
AB間の契約締結交渉において、AがBに対して書面を郵送して申込みの意思表示をした。その際、Aは承諾の通知を受ける期間の末日を2月5日と定めた。Aが申込みの意思表示の到達前に死亡し、その事実を知ったBがAの単独相続人Cに承諾の通知を発し、これが2月5日までに到達すれば、BC間に契約が成立する。
解答表示
死亡の事実について悪意の状態で、承諾を発信することは、例外の場合に該当する。
よって、申し込みの効力が失われる。
論点:同時履行の抗弁権と「債権譲渡」
債権譲渡がなされた場合、債務者は、譲渡の通知を受けた時又は譲渡の承諾をした時(対抗要件具備時)までに、譲渡人に対して生じた事由を譲受人に対抗できる【債権の譲渡における債務者の抗弁】
《司法書士過去問コレクション》
同時履行の抗弁権の付いている債権が、反対債務と離れて第三者に譲渡された場合でも、同時履行の抗弁権は消滅しない。
解答表示
債権は同一性を保って移転するのが原則である。
論点:同時履行が「認められる」ケースor「認められない」ケース
同時履行が「認められる」ケース(原状回復・契約不適合)
・契約の「解除」による原状回復義務は、お互いに受け取ったものを返す関係になるため、同時履行の関係に立つ。
・契約の「取消し」による返還義務についても、同時履行の関係に立つ。
・請負契約において、目的物に欠陥があった場合の「注文者の契約不適合責任に基づく損害賠償請求権」と「請負人の報酬請求権」も同時履行の関係になる。
同時履行が「認められない(先履行)」ケース(敷金・組合)
・建物の賃貸借契約が終了したとき、「賃貸人の敷金返還」と「賃借人の建物明渡し」は同時履行にはなりません。賃借人の「建物明渡義務」が先履行義務(先にやらなければならない義務)となります
・組合契約(667条)において出資を求められた場合、「他の組合員がまだ出資していないから自分もやらない!」と同時履行の抗弁を主張することはできません
《司法書士過去問コレクション》
業務執行組合員から出資の履行を請求された組合員は、他の組合員が出資の履行をしていないことを理由として同時履行の抗弁を主張することはできない。
解答表示
533条の規定は、いわゆる合同行為として分類される組合契約については、適用しない(667の2 I)。
《司法書士過去問コレクション》
請負契約において、注文者が契約不適合責任に基づく損害賠償の請求をすることができる場合には、その注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬請求権とは、同時履行の関係に立つ。
解答表示
「本来受けるべき完全な給付(修補)の代わりとなる損害賠償」と「報酬」が対価の関係としてぶつかり合うため、同時履行になる(564・415 II)。
ステップ①(本来の契約):「完全な目的物の引渡し(仕事の完成)」と「報酬の支払い」は、お互いに対価の関係(同時履行)です。
ステップ②(欠陥があった場合): 目的物に欠陥(契約不適合)があった場合、注文者は「直して!(追完・修補請求)」と言えます。未完成な状態なのですから、当然この「修補請求」と「報酬の支払い」も同時履行の関係になります(直してくれるまで報酬は払わない!と言えます)。
ステップ③(損害賠償にする場合): 修補してもらう代わりに「お金で解決して!(損害賠償請求)」と言った場合、この損害賠償請求権は「修補請求(追完)の代わり」としての性質を持ちます。
論点:弁済の提供の継続と同時履行の抗弁権
相手方が一度だけ「弁済の提供(約束通りにやろうとしたこと)」をしてきたからといって、こちらの同時履行の抗弁権が完全に消滅するわけではありません。
相手方の提供が「継続」されていない限り、後から請求を受けた際に、再び同時履行の抗弁を主張して支払いを拒むことができます
《司法書士過去問コレクション》
売主が買主に対して目的物引渡債務についての弁済の提供をした後に代金の支払請求をした場合には、その提供が継続されていないときであっても、買主は、同時履行の抗弁を主張することができない。
解答表示
双務契約の当事者の一方は、相手方の履行の提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失わない。
論点:危険負担の原則(不可抗力による履行不能)
危険負担の原則(不可抗力による履行不能)民法536条
売買などの双務契約において、引渡し前に「地震」などの当事者双方の責めに帰することができない事由(不可抗力)によって目的物が滅失(履行不能)した場合、売り主の商品だけが消えて、売り主が損をして終わるのか?
《債務者(売主)負担が原則》買主の「代金を支払う債務」が自動的に消滅するわけではないが、原則として買主は代金請求に対して、反対給付(代金の支払い)を「拒絶」することができます。
例外的に「代金の支払いを拒絶することができない(=目的物が手に入らなくても代金を払わなければならない)」以下の2つのケース
・債権者(買主)の責めに帰すべき事由で履行不能になった場合
・債権者(買主)が「受領遅滞」に陥った後に、債務者(売主)の責めに帰することができない事由(地震など)で履行不能になった場合
《司法書士過去問コレクション》
AはBに対してA所有の建物を売り渡す契約をしたが、引渡しも登記もしない間に建物が地震によって滅失した。AB間で特約がされていない場合には、AはBに対して売買代金を請求することができる。
解答表示
地震という当事者双方の責めに帰することができない事由により建物が滅失しているため、危険負担の原則により、BはAの売買代金請求を拒むことができる。
論点:第三者のためにする契約《第三者の存在、債権発生時期》
第三者のためにする契約は、「第三者(受益者)」とは関係なく、当事者である「債権者(要約者)」と「債務者(諾約者)」の合意のみで成立します。
さらに、第三者(受益者)が現に存在している必要はなく、特定されている必要もありません(胎児や、これから設立される法人を受益者とすることも可能です)。
第三者(受益者)自身は、債務者に対して、第三者自身が債務者に対して「利益を受け取る」という意思表示(受益の意思表示)をすることによって、直接「約束通り自分に渡しなさい」と請求できる権利(受益権)を持つ。
この受益の意思表示は債務者(諾約者)に対して行い、黙示でもよい。
また、負担付の給付の場合「負担は嫌だけど利益だけもらう」という都合のいい受益の意思表示はできません。
注意:債権者(要約者)が債務者(諾約者)に対して「約束通り第三者(受益者)に払え!」と請求する権利は、第三者が受益の意思表示をする前であっても、契約成立と同時に発生しています。
★債権発生時期まとめ
債権者(要約者):原則として契約成立時点
第三者(受益者):債務者(諾約者)へ受益の意思表示をした時点
《司法書士過去問コレクション》
AとBが、Bの所有する建物の所有権をCに移転する旨のCを受益者とする第三者のためにする契約を締結したときは、当該建物の所有権は、Cの受益の意思表示をした時期にかかわらず、その契約の成立時に、Cに移転する。
解答表示
第三者のためにする契約において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の「契約の利益を享受する意思を表示した時」に発生する(民537 III)
《司法書士過去問コレクション》
第三者のためにする契約で、AB間でBがCに対してある給付をする旨の契約が成立した場合には、Aは、Bに対して、Cに対する債務を履行するよう請求する権利を有する。この権利は、AB間の契約に始期又は条件が付されていない限り、Cが受益の意思表示をする以前であっても発生する。
解答表示
要約者は、原則として、諾約者に対して第三者に対する債務を履行するよう請求する権利を有する。この権利は、契約に始期又は条件が付されていない限り、契約の成立とともに発生する。
《司法書士過去問コレクション》
第三者のためにする契約で、AB間でBがCに対してある給付をする旨の契約が成立した場合には、Cの受益の意思表示は、Bに対する権利を取得するという効果を生ずる要件であるから、Bに対してなされる必要があるが、黙示の意思表示でもかまわない。
解答表示
受益者の給付を請求する権利は、債務者に対して利益を享受する意思を表示した時に発生する
《司法書士過去問コレクション》
第三者のためにする契約で、AB間の合意で、Cに対して、Bに金銭を支払うという負担付きでBに対する権利を取得させるということも可能であるが、自己の意思とは関係なく金銭を支払う義務を負わされるCの立場を考慮して、Cは、負担部分を除いて受益の意思表示をすることもできるとされている。
解答表示
第三者に権利を取得させるだけでなく、付随的な負担を課することも可能である。しかし、このような場合、第三者は負担を拒絶して利益だけを享受することはできない。
論点:第三者のためにする契約《契約変更、債務不履行解除、抗弁権》
受益の意思表示「後」の契約変更
当事者が勝手にその権利を減らしたり、合意解除で消滅させたりすることはできない
受益の意思表示「後」の解除
諾約者が約束を破った(債務不履行)ために要約者が契約を解除したい場合であっても、「受益者の承諾」を得なければ契約を解除することができない
諾約者の「抗弁」の主張(第三者への対抗)
諾約者は、要約者との間の契約(基本となる契約)から生じたトラブルや拒絶理由(抗弁)を、そのまま受益者(第三者)に対しても主張することができます。
例:要約者が品物を引き渡してくれないなら、諾約者は受益者に対しても「品物をもらうまで代金は払わない!」と同時履行の抗弁を主張できます。
例:要約者に騙されて契約した(詐欺)場合、その取消しを善意の受益者に対しても主張して支払いを拒むことができます。
受益者は、文字上「第三者」ではあるものの、意思表示の瑕疵が存在する場合の保護対象である「第三者」にはあたらない
例:心理留保、通謀虚偽表示の「善意の第三者」に該当しない
例:錯誤、詐欺の「善意無過失の第三者」に該当しない
《司法書士過去問コレクション》
AとBが、Aを諾約者とし、Bを要約者として、Cを受益者とする第三者のためにする契約を締結した場合において、Cが受益の意思表示をした後に、AがCに対する履行をしないときは、BはCの承諾を得ることなく、契約を解除することができる。
解答表示
第三者のためにする契約において第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、当該契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない(民538 II)。
《司法書士過去問コレクション》
AとBが、Bの所有する動産をAに譲渡し、Aがその代金をCに支払う旨の第三者のためにする契約を締結した場合には、AはBが当該動産を引き渡すまで、Cに対する代金の支払を拒絶することができる。
解答表示
債務者は、第三者のためにする契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる(民539)。
《司法書士過去問コレクション》
第三者のためにする契約で、AB間でBがCに対してある給付をする旨の契約が成立した。AB間の契約の締結に際して、AがBを欺罔していた場合、CがAの欺罔行為につき善意であれば、Bは、AB間の契約の取消しをCに対抗することができない。
解答表示
債務者は、自己の有する抗弁をもって第三者に対抗することができる(539・537 I)。
受益者は善意の第三者としての保護を受けず、善意・悪意を問わず取消しの効果をもって対抗される。
論点:契約解除の要件《履行遅滞と催告、履行不能、軽微な不履行》
⇒履行遅滞
履行遅滞の場合、どうやって解除するか?
相手が期日を過ぎても約束を守らない(履行遅滞)場合、相当の期間を定めて「あなた遅れてますけど、〇〇日までに払ってください」と催告し、その期間内に履行がなければ解除できます(541条本文)。
解除に条件を付けることは、相手方の地位を不安定にするため、原則として禁止される。
しかし、相手方の行為を停止条件とすることは、相手方を不利益にしないので許される。例えば、催告と同時に「期間内に履行がなければ解除する」と条件を付けることこができる。
期間を定めずにした催告でも無効ではなく、その後相当期間が経過したときは解除権が発生する。
もっとも、相当期間が経過したときであっても、遅延賠償金かつ本来の履行を提供してきたら解除権を行使できない。
契約を解除するために「債務者の帰責事由(故意や過失)」は不要
履行不能は直ちに(無催告で)解除
履行が完全に不可能になったときは、催告をしても無意味だから
債務不履行があっても、解除できないケース
・「社会通念上軽微である」場合
・契約の目的達成に影響しない「付随的義務(例:血統書の引き渡しなど)」の違反にすぎない場合
《司法書士過去問コレクション》
売買契約につき買主の資金不足により代金支払債務の履行ができなくなった場合には、売主は催告をしなければ解除できない。
解答表示
売買契約において買主が資金不足によって代金支払債務の履行ができなくなっている状態は、履行不能ではなく履行遅滞であり、売主は原則として催告をしなければ解除できない(541本文)。
《司法書士過去問コレクション》
Aは、Bに甲建物を賃貸していたが、Bは、3か月前から賃料を全く支払わなくなった。Aは、Bに対し、期間を定めずに延滞賃料の支払を催告したが、相当期間が経過してもBが延滞賃料を支払わなかったので、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。この場合、解除は無効である。
解答表示
当事者の一方が履行遅滞の場合、相手方が契約を解除するには、相当期間を定めて履行を催告しなければならない(541本文)が、期間を定めずにした催告でも無効ではなく、その後相当期間が経過したときは解除権が発生する
《司法書士過去問コレクション》
Aは、Bに甲建物を賃貸していたが、Bは、3か月前から賃料を全く支払わなくなった。Aは、Bに対し、相当期間を定めて延滞賃料の支払を催告した。Bは、催告の期間経過後に延滞賃料及び遅延損害金を支払ったが、その後、Aは、Bに対し、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。この場合、解除は無効である。
解答表示
相当期間を定め支払を催告しているので、その期間経過時点で解除権がいったん発生しているが(541本文)、その後Bが遅延賠償を添え本来の賃料を支払っているため、その時点で解除権は消滅する
《司法書士過去問コレクション》
債務の履行の催告と同時に、催告期間内に履行しないことを条件とする解除の意思表示をしても、この意思表示は無効である。
解答表示
相当の期間内に履行がないことを条件として催告とともになした解除の意思表示も有効である
《司法書士過去問コレクション》
当事者が契約をしたことによって生じた債務について、軽微な債務不履行があった場合であっても、相手方は、その履行を催告したのに相当期間内に履行がされないときは、契約の解除をすることができる。
解答表示
541条ただし書は、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは」催告による解除ができないと規定する。
《司法書士過去問コレクション》
土地の売買契約において、登記手続の完了までに当該土地について発生する公租公課は買主が負担する旨の合意があったが、買主がその義務の履行を怠った場合において、当該義務が契約をした主たる目的の達成に必須といえないときは、売主は、特段の事情がない限り、当該義務の不履行を理由として契約を解除することができない。
解答表示
契約の「要素たる債務」ではなく「付随的債務」にとどまる場合には、原則として解除権は発生しない
《司法書士過去問コレクション》
AはBに対してA所有の建物を売り渡す契約をしたが、引渡しも登記もしない間に建物が地震によって滅失した。Bは、Aの建物引渡義務の履行不能を理由として契約を解除することができない。
解答表示
債務者に帰責事由があることは、解除のための要件となっておらず、債務者に帰責事由がなくとも解除ができることから、可能である(542 I ①参照)
《司法書士過去問コレクション》
自動車の売買契約において、買主甲が売主乙に、代金の一部の支払に代えて丙から買い受けた自己所有の中古車を引き渡すことを約したが、その中古車の引渡しが不能となった場合でも、乙は直ちに契約を解除することはできない。
解答表示
中古車の引渡し(代物弁済契約)が不能となっても、本来の代金支払債務の履行は不能とならず、催告をしなければ、契約の解除ができない(541本文)ので、乙は直ちに契約を解除することはできない。
《司法書士過去問コレクション》
不動産の買主は、売主が当該不動産を第三者に売却し、かつ、当該第三者に対する所有権の移転の登記がされた場合には、履行不能を理由として直ちに契約を解除することができる。
解答表示
売主が当該不動産を二重に譲渡し、買主の一方が登記を具備した場合、売主が他方の買主に対して負う当該不動産の所有権を移転すべき債務は履行不能になる。履行不能を理由として直ちに契約を解除できる(542I①)
論点:解除権の撤回、不可分性
解除は相手方に対する一方的な意思表示によって行い、その意思表示が相手方に到達した時に効力が生ずる。
解除の撤回
解除の意思表示は、相手方に到達して効力が発生した後は、原則として撤回することはできない。
しかし、相手が承諾してくれれば解除の撤回可能。
解除権の不可分性
当事者の一方または双方が複数(共有者など)いる場合、解除は「全員から、または全員に対して」行う必要があります。
また、そのうちの1人の解除権が消滅すると、他の全員の解除権も道連れになって消滅します。
①損害賠償及び②解除は、相手の同時履行の抗弁権を失わせないとできない
相手が同時履行の抗弁権を失わせるために「自分の債務の履行の提供」をする必要がある。
《司法書士過去問コレクション》
同時履行の抗弁権を有する債務者が履行期を徒過した場合には、債権者は自己の反対債務の履行の提供をしないと解除をすることはできないが、損害賠償を請求することはできる。
解答表示
債権者が、解除又は損害賠償請求をするには、債務者の同時履行の抗弁権を失わせる必要がある
《司法書士過去問コレクション》
Aは、Bに甲建物を賃貸していたが、Bは、3か月前から賃料を全く支払わなくなった。Aは、Bに対し、相当期間を定めて延滞賃料の支払の催告をした上、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたが、その後、Bが延滞賃料を支払ったので、Bの承諾を得て、解除を撤回する旨の意思表示をした。この場合、解除の撤回は有効である。
解答表示
解除の意思表示は、その効力が生じた後は撤回することはできないが(540 II)、相手方の承諾を得て解除の意思表示を撤回することは許される。
《司法書士過去問コレクション》
買主が数人ある売買契約において、買主の一人が解除権を放棄したときは、他の買主は、契約を解除することができなくなる。
解答表示
解除権の不可分性により、一人について解除権が消滅したときは、他の者も、契約を解除することができなくなる(544 II)
論点:解除による原状回復義務と解除権の消滅、「信頼関係破壊の法理」と解除権の消滅
解除による原状回復義務と解除権の消滅 548条
解除権を持っている人が、自分の過失によって契約の目的物を著しく損傷させたり、加工して別の物に変えたりした場合、原状回復することができなくなるため、その解除権は消滅します。
ただし、解除権者が「自分が解除できること(例:品物が不良品であること)」をまだ知らずに壊したり作り変えたりしてしまった場合は、悪気がないので解除権は消滅せず、依然として解除することができる。
信頼関係破壊の法理
賃貸借契約において、無断転貸などの契約違反があった場合でも、それが「賃貸人に対する背信行為(裏切り)と認めるに足りない特段の事情(信頼関係が破壊されていない)」がある場合には、例外的に解除は認められません。
例:建物賃借人は、賃借建物に対する権利に基づき自己に明渡しを請求できる第三者から明渡しを求められた場合、それ以後、賃料の支払を拒絶できる。
《司法書士過去問コレクション》
買主が数人いる中古車の売買につき、引き渡された中古車に契約不適合があるために買主に解除権が発生した場合において、これを知っている買主の一人の過失によって売買の目的である中古車を売主に返還することができなくなったときは、他の買主についても、解除権は消滅する。
解答表示
過失によって売買の目的である中古車が原状回復できなくなっているので、解除権が消滅する。
そして、解除権の不可分性により、他の買主の解除権も消滅する
《司法書士過去問コレクション》
Aは、Bに甲建物を賃貸していたが、Bは、3か月前から賃料を全く支払わなくなった。Aは、Cからその所有する甲建物を賃借し、これをCの承諾を得ずにBに転貸していたところ、Cが、この事実を知り、3か月前から、Bに対し、甲建物の明渡しを求めてきた。そこで、Bは、Aから相当期間を定めた延滞賃料の支払の催告とともに、支払のない限り賃貸借契約を解除する旨の意思表示があったが、延滞賃料を支払わず、相当期間が経過した。この場合、解除は無効である。
解答表示
建物賃借人は、賃借建物に対する権利に基づき自己に明渡しを請求できる第三者から明渡しを求められた場合、それ以後、賃料の支払を拒絶できる。
そのため、CがBに甲建物の明渡しを請求してきたとき、BがAに賃料の支払を拒んでも、Aは債務不履行を理由にBとの賃貸借契約を解除することはできない
論点:解除の効果(原状回復と第三者保護)
解除前の第三者の保護:
契約が解除される前に、その契約の目的物について新たな権利を取得した「第三者」がいる場合、その第三者が「登記(対抗要件)」を備えていれば、解除による権利の消滅を主張されません(第三者は保護されます)
解除後の第三者:
対抗要件の具備によって処理
原状回復義務と果実・使用利益
契約が解除されると、お互いに受け取ったものを返す「原状回復義務」を負います。
金銭を返す場合は「受領の時から」の利息を付け、物(土地など)を返す場合は「受領時以降の果実(使用利益)」も返還しなければなりません。
これは他人物売買の解除の場合でも同じです。
原状回復義務と返還不能時の価格返還
返還すべき目的物が債務者の過失などで滅失して返せない場合は、代わりにその「価格」を返還(価格返還義務)しなければなりません。
もっとも返還不能の帰責性が相手方によるときは、価格返還義務を負わない。
《司法書士過去問コレクション》
甲から乙、乙から丙に土地が売却され、丙に所有権移転の登記がされている場合、甲は乙の代金不払を理由として契約を解除したとしても、丙に土地の引渡しを請求することができない。
解答表示
丙は、解除前に出現した第三者であり、しかも登記を具備しているので、545条1項ただし書の「第三者」として保護される
《司法書士過去問コレクション》
土地の売買契約が解除された場合には、売主は、受領していた代金の返還に当たり、その受領の時からの利息を付さなければならないが、買主は、引渡しを受けていた土地の返還に当たり、その引渡しの時からの使用利益に相当する額を返還することを要しない。
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目的物の引渡しを受けていた買主は、それまでの間、所有者としてその目的物を使用収益することによって得た利益を売主に償還すべき義務を負う。これは原状回復に基づく一種の不当利得の返還義務(545 III)。
《司法書士過去問コレクション》
第三者の所有する土地を目的とする売買契約であることを契約時に知っていた買主Aは、売主Bから当該土地の引渡しを受けたものの、その後、当該土地の所有権の移転を受けることができなかった。この場合において、売買契約を解除したAは、Bに対し、当該土地の使用利益を返還すべき義務を負う。
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他人売買であっても、解除がなされた場合、「領の時以後に生じた果実も返還する必要があり(545 III)、目的物の引渡しを受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間に目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負う
《司法書士過去問コレクション》
他人の不動産の売主が当該不動産の引渡義務は履行したが、所有権を取得する義務を履行しなかったため、買主が売買契約を解除した場合において、当該不動産の所有者からの追奪により買主が当該不動産の占有を失っていたときは、買主は、解除に伴う原状回復義務として、当該不動産の返還に代わる価格返還の義務を負う。
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売主の不完全履行を理由に買主が解除する場合、目的物の返還不能が買主の責めに帰することができない事由によるとき、又は売主の責めに帰すべき事由によるときは、買主は支払った代金の返還を請求することができ、価格返還義務を負わない
具体的なストーリー
登場人物:
A(売主): 他人の土地を勝手に売った人
B(買主): Aから土地を買い、代金を払って住み始めた人
C(真の所有者): 土地の本当の持ち主
出来事の流れ:
Aが、Cの土地を勝手にBに売却しました(他人物売買)。BはAに代金を支払い、土地の引渡しを受けて住み始めました。
しかし後日、真の所有者であるCがやってきて、「ここは私の土地だ!出ていけ!」とBを追い出しました(これを法律用語で「所有者からの追奪(ついだつ)」と言います)。
土地を奪われたBは怒り、Aに対して「他人の土地を売るなんて契約違反(債務不履行)だ!」として、売買契約を解除し、「払った代金を返せ」と請求しました。
ここでAが反論します。「契約解除ならお互いに『原状回復』だ。俺が代金を返す代わりに、お前(B)も土地を返せ。でもお前はCに追い出されて土地を返せない(返還不能)のだから、土地の代わりとして『土地の価格分のお金』を俺に払え(価格返還義務)!」
結論、自分に全く落ち度がない買主Bに価格返還義務を負わせるのは酷であるため、Bは価格返還をすることなく、Aに対して支払った代金の全額返還を請求できる
論点:定型取引の定義
電車に乗る、インターネットのサービスに登録する、保険に入るなど、現代の大量の取引において、いちいち個別に契約書の中身を話し合って決めるのは不可能です。
そこで、企業側があらかじめ用意した「利用規約(ルールブック)」に同意すれば、中身を全部読んでいなくても、そのルールすべてに合意したことにしてしまおう、というのが548条の2の条文の基本です。
しかし、それだと企業側がこっそり「いくら何でも理不尽すぎるルール(不当条項)」については、例外的に合意しなかったことにして無効にするという、強力な消費者保護のストッパーも用意しています。
「定型取引」とは
特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、その内容の全部または「一部」が画一的であることが双方にとって合理的なものをいいます。
内容の一部のみが画一的であるにすぎない場合でも、定型取引に該当します。
《司法書士過去問コレクション》
ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であっても、その内容の一部のみが当事者双方にとって画一的であることが合理的であるにすぎない場合には、その取引は、定型取引に該当しない。
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その内容の一部のみが当事者双方にとって画一的であることが合理的である場合でも、「定型取引」に該当する(548の2 I 本文)
論点:定型約款の「組入れ(合意の擬制)」
相手方がその「個別の条項」の内容を実際に読んで認識していなかったとしても、当事者間で「定型約款を契約の内容とする」旨の合意をした場合には、そのの個別条項について合意をしたものとみなされます(これを「組入れ」といいます)。
「個別の条項」とは
規約の中に書かれている具体的な一つ一つのルール(「キャンセル料は〇%」や「個人情報の取り扱い」など)のことです。
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定型約款準備者と相手方が定型約款を契約の内容とする旨の合意をした場合であっても、定型約款の個別の条項の一部について、相手方がその内容を認識していなかったときは、その条項については合意をしたものとはみなされない。
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当事者間で「定型約款を契約の内容とする」旨の合意をした場合
⇒定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなされる(組入れ)
論点:定型約款の内容表示義務と違反ペナルティ
表示義務(第548条の3Ⅰ):
定型約款を準備した側は、合意の前や合意後の相当期間内に相手方から「内容を見せて」と請求された場合、遅滞なく内容を示さなければなりません。
もっとも、事前にすでに定型約款を記載した書面を交付したり、データを送ったりしていた場合には、改めて示す必要はありません。
表示義務違反のペナルティ(第548条の3Ⅱ):
取引の合意の「前」に、相手方から内容を示すよう請求されたにもかかわらず、これを拒んだ場合、ペナルティとして「個別の条項について合意したものとみなされない(組入れが否定される)」。
もっとも、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない
《司法書士過去問コレクション》
定型約款準備者は、定型取引合意の際に、相手方に対して定型約款を記載した書面を交付していた場合であっても、定型取引合意の後相当期間内に相手方から請求があったときは、定型約款の内容を示さなければならない。
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定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、定型約款の内容を示す必要はない(548の3但)
《司法書士過去問コレクション》
定型約款準備者が定型取引合意の前に相手方から定型約款の内容を示すことを請求されたにもかかわらず、正当な事由がないのにその請求を拒んでいたときは、定型約款の個別の条項が合意されたものとみなされることはない。
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定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。(548条の3 II)
ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない
論点:定型約款の「変更」と「事前の周知要件」
定型約款は、以下の2つのいずれかのケースであれば一方的に変更することができます。
①相手方の一般の利益に適合する(=相手にとって有利な)変更の場合 *事前の周知は不要
②変更が「契約目的に反せず合理的である」かつ、効力発生時期までにインターネット等で「事前の周知」をした場合
第548条の4【定型約款の変更】
《司法書士過去問コレクション》
定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合する場合には、定型約款準備者が適切な方法による周知をしなかったときであっても、定型約款準備者が定めた効力発生時期に効力を生ずる。
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548の4Ⅰ①
定型約款準備者は、「定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合する」場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
