【司法書士試験】民法総則「不在者と失踪宣告」

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不在者と失踪宣告

1. 単元のセンターピン(本質)
「『不在者(自分から旅 or 行方不明)』なら財産を管理し、
『失踪(長期間不明)』なら死んだことにして区切りをつける。
ただし、生きて帰ってきたら『善意の人』だけ守って元通り。」

(※「ステージ1:不在者の財産管理」→「ステージ2:失踪宣告。死亡扱い」→「ステージ3:奇跡の生還、失踪宣告の取消し」という3段階のタイムラインが核心です。)

2. この単元の全体像(リーガルマインド)
【国民的アニメで例えるなら:波平の遭難と、残されたフネ】

**波平(不在者)**が海外出張へ行き、行方不明気味になりました。

パターンA:うっかり者の波平(委任管理人なし) 何も決めずに出て行ってしまいました。家はボロボロ、税金は未納。
◦ ルール:フネ(利害関係人)が困って「誰か選んで!」と裁判所に頼みます(請求)。そこで裁判所が**カツオ(選任管理人)**を選びます。
◦ 権限:カツオは裁判所の部下です。家の修理(保存行為)は自由にできますが、家を売る(処分行為)には裁判所の許可が必要です。

パターンB:しっかり者の波平(委任管理人あり) 出発前に、波平が「ワカメ、家の管理は頼んだぞ」と自分で決めて行きました。
◦ ルール:波平が生きてる限り、ワカメがダメな奴でも裁判所は口出しできません。波平が自分でクビにすればいいからです。
◦ 例外:波平の生死がわからなくなったら、波平はクビにできないので、裁判所が出てきてワカメをクビ(改任)にできます。

パターンC:もう帰ってこない波平(失踪宣告) 7年も音信不通なら、「死んだこと」にして遺産相続を進めます。

パターンD:しかし、ひょっこり帰ってきたら? 死んだことにして売った土地はどうなる?

ステージ1:不在者の財産管理
◎管理人の選任(スタート地点)
◦ 原則:不在者が管理人を置いていない場合、利害関係人等の請求により、家庭裁判所が管理人を選任・変更できる(25Ⅰ)。
◦ 例外:不在者が自分で管理人を置いていた場合、裁判所は原則介入しない。ただし、不在者の生死が不明になったら、裁判所は管理人を改任(クビに)できる(26)。
注意:期間要件がないので、失踪と違って、財産管理人はいなくなったらすぐ請求してよい
注意:財産が放置されると社会経済的に困るため、公益の代表者である**「検察官」も請求できる。

◎管理人の権限(何ができるか)
◦ 保存・利用・改良:家の修理、期限の来た借金の返済など。これは裁判所の許可なく自由にできる(103)。
◦ 処分行為:家を売る、抵当権を設定する、訴えを取り下げるなど。これは家庭裁判所の許可がないとできない(28)。許可なく処分行為を行った場合、無権代理となり原則無効。
*「控訴する」ことは、確定して財産が失われてしまうのを防ぐ、つまり**「現状を維持するため」**の行為なので、許可なくできる。
* 逆に、「訴えを取り下げる(負けを認める)」ような行為は、財産を失う「処分行為」になるため、許可が必要です。

◎管理人の報酬
◦ 裁判所が選んだ管理人には、裁判所が不在者の財産から報酬を与えることが「できる」(29Ⅱ)。
*報酬を「与えなければならない」義務ではないので注意。

【民法】不在者の財産管理

【民法】不在者の財産管理

ステージ2:失踪宣告。死亡扱い
◎失踪宣告の要件(7年と1年)
普通失踪:生死不明が7年間継続(30Ⅰ)。期間満了時に死亡とみなす。
タイムライン:
2025/1/1:家出(生死不明の開始)
2032/1/1:【7年期間満了日】※法律上、この瞬間に**「死亡したとみなされる」**(31条)。
2032/6/1:【失踪宣告日】(裁判所が「波平は死んだ」と確定させた、宣言)*世間の第三者たちは波平が死んだとわかる日
宣告後~取消前:32Ⅰ善意の第三者が保護される期間
2035/1/1:【奇跡の生還、失踪宣告の取消日】(波平が帰ってきたので宣告を取り消した日)

特別失踪:危難(沈没など)が去ってから1年間生死不明(30Ⅱ)。危難が去った時に死亡とみなす(遡及する)。
タイムライン:
2025/1/1:沈没(危難去った時)※法律上、後で振り返ると**「この日に死んだとみなされる」**(遡及する)。
2026/1/1:1年経過(請求が可能になる日)
2026/6/1:【失踪宣告日】裁判所:「波平は2025/1/1に死んだものとする!」と宣言。
宣告後~取消前:32Ⅰ善意の第三者が保護される期間
2030/1/1:【奇跡の生還、失踪宣告の取消日】(波平が帰ってきたので宣告を取り消した日)

◎失踪宣告を請求できるのは、妻や子などの**「利害関係人」だけ**に限られます(民法30条1項)。
注意:国(検察官)は請求できない。勝手に「いや、もう死んだことにしよう」と介入するのは、個人の意思への過度な干渉になります。

ステージ3:奇跡の生還、失踪宣告の取消し
◎失踪の取消し(生還)の効果と「善意」の保護
本人が生きていれば宣告を取り消す。ただ、本人が帰ってきても、自動的には消えない。裁判所の命令は、新たな命令で「取消し」されるまで有効。失踪の取り消しの効果は、原則、全て元通りになる。
ただし、宣告後~取消前になされた行為で、**「当事者双方が善意(生きていると知らなかった)」**であれば、契約は有効のまま(32Ⅰ後段)。売った人(相続人)と買った人(第三者)、両方とも「波平は死んだ」と信じていないと守られない。
財産を得た人は、**「現に利益を受けている限度」**で返還すればよい(32Ⅱ)。

「不在者・失踪宣告」試験に出る最重要条文リスト

1. 不在者の財産管理(留守番役のルール)
■ 民法25条1項(管理人の選任)
従来の住所又は居所を去った者(不在者)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。

■ 民法28条(管理人の権限)
管理人は、第百三条に規定する権限(保存行為など)を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

■ 民法103条(権限の定めのない代理人の権限)
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
1. 保存行為
2. 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
• (ガチ勢メモ):
◦ 保存(修理など):許可不要で自由にできる。
◦ 処分(売却など):家裁の許可がないと無権代理(無効)になる。ここが最大のひっかけです。

2. 失踪宣告(死亡の確定スイッチ)
■ 民法30条(失踪の宣告)
第1項(普通失踪) 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
第2項(特別失踪) 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者…(中略)…危難に遭遇した者の生死が、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後…(中略)…その他の危難が去った後一年間明らかでないときは、前項と同様とする。

■ 民法31条(効力発生時期=死亡とみなす時期)
前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
• (ガチ勢メモ):
◦ 普通:7年待って、その**「期間満了時」**に死亡。
◦ 特別:1年待つが、死亡時期は**「危難が去った時(事故発生時)」**まで遡る。この「遡及するかどうか」の違いが試験の急所です。
◦ 「推定する」ではなく**「みなす」**(反証があっても覆らない、取消し手続が必要)という点も重要。

3. 失踪宣告の取消し(奇跡の生還と後始末)
■ 民法32条(失踪宣告の取消し)
第1項 失踪者が生存すること…(中略)…証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
第2項 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度において、その財産を返還する義務を負う。
• (ガチ勢メモ):
◦ 1項後段(善意の保護):生きて帰ってきても、その間に売られた土地などは戻ってきません。ただし、判例により**「契約の当事者双方(売主も買主も)が善意」**である必要があります。片方でも悪意ならアウトです。
◦ 2項(現存利益):相続して使い切ってしまった生活費などは返さなくてOK(パチンコなどの浪費は残っていないとみなされることが多いが、借金返済に充てた分は「借金が減った利益」が残っているとされる)。

「不在者と失踪宣告」の問題演習

問 Aの父Bが旅行中、船舶事故に巻き込まれたまま生死不明になった場合、Bが事故に遭遇してから1年が経過しなくても、Aは、家庭裁判所に対しBのために不在者の財産管理人の選任を請求することができる。

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理由:失踪と違って、財産管理人はいなくなったらすぐ請求してよい
• 不在者財産管理(25条):これは「留守番」を決める制度です。「家が壊れそう!」「税金払わなきゃ!」という**「現在の管理」が目的なので、行方不明になったら即日**でも請求できます。1年も待っていたら財産がボロボロになってしまいます。
• 失踪宣告(30条):これは「死亡したとみなす」という**「終わりの確定」**が目的です。人の命に関わる重大事なので、「1年(特別失踪)」や「7年(普通失踪)」という慎重な待機期間が必要です。

問 家庭裁判所が不在者Aの財産管理人としてDを選任した場合において、DがA所有の財産に充てるためにAの財産である不動産を売却するときは、Dは、これについて裁判所の許可を得る必要はない。

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正解:×
管理人の権限:「不動産の売却」処分行為(権限を超える行為)をするには、家庭裁判所の許可が絶対に必要です(民法28条)。

問 不在者Aが財産管理人Dを置いた場合において、DがA所有の財産の管理を著しく怠っているときは、家庭裁判所は、Aの生存が明らかであっても、利害関係人の請求により、管理人の任務に適しない事由があるとしてDを解任することはできない。

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〇(正しい)
自分で選んだ管理人がいるなら、もしその管理人がダメな奴だったら、本人が自分で「お前クビ(解任)!」と言えばいいだけの話です。
◦ 本人が何も言っていないのに、裁判所が横から「こいつダメだから変えますね」と口出しするのは、大きなお世話(過干渉)なのです。
◦ 例外:もしAさんの**「生死が不明」**になったら、Aさんは解任したくてもできません。その時初めて、裁判所が代わりに出てきて改任(クビ)できるようになります(民法26条)。

問 不在者の財産の管理人(以下「管理人」という。)に関し、不在者が管理人を置いていない場合において、その不在者の生存していることが明らかであるときは、利害関係人は、管理人の選任を家庭裁判所に請求することができない。

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×(請求できる)
不在者財産管理の目的:不在者本人のためだけでなく、**「残された利害関係人(債権者や家族)を守るため」**でもあります。
波平が生きていようが、管理人を置かずに放置していれば、フネたちは困ります。だから「本人が選んだ管理人がいない」なら、生死に関わらず、裁判所に「代わりの人を選んでくれ」と請求できるのです。

問 不在者の財産の管理人(以下「管理人」という。)に関し、家庭裁判所が管理人を選任した後、不在者が従来の住所において自ら管理人を置いた場合には、家庭裁判所が選任した管理人は、その権限を失う。

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×(自動的には失わない)
裁判所が一度出した「命令(カツオを選任する)」は、裁判所が**「取り消す」**までは有効なままです。正しくは、本人やワカメなどが裁判所に**「もう決めたから、前の命令を取り消してくれ」と請求**し、裁判所がそれを取り消して初めて、カツオの権限は消滅します(民法25条2項)。

問 不在者の財産の管理人(以下「管理人」という。)に関し、家庭裁判所が選任した管理人は、家庭裁判所の許可を得ないで、不在者を被告とする建物収去土地明渡請求を認容した判決に対し控訴することができる。

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〇(できる)
一審をしているから応訴は保存行為といえそう。よって、控訴もできる。
控訴の意味:このままだと確定して財産が失われてしまうのを防ぐ、つまり**「現状を維持するため」**の行為です。
結論:これは民法103条の**「保存行為」**にあたるため、家庭裁判所の許可(28条)は不要です(最判昭47.9.1)。

問 不在者の財産の管理人(以下「管理人」という。)に関し、家庭裁判所が選任した管理人がその権限の範囲内において不在者のために行為をしたときは、家庭裁判所は、不在者の財産の中から、管理人に報酬を与えなければならない。

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×(与えることができる)
解説:報酬は「義務」ではない
条文:家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる(民法29条2項)。
もし管理人が「不在者の親族(フネやカツオ)」だったらどうでしょう? 親族なんだから無償(タダ)でやるのが普通かもしれません。
◦ 逆に、弁護士などの専門家を選んだ場合は、報酬を払うのが普通です。
◦ つまり、**「常に払う(義務)」わけではなく、裁判所が事情を見て「払うかどうか決める(裁量)」**のです。
◦ ちなみに、報酬がもらえなくても、管理のために使った実費(切手代や修繕費)は当然請求できます(民法650条)。

問 Aの父Bが旅行中、船舶事故に巻き込まれたまま生死不明になった場合、Bが事故に遭遇してから1年が経過すれば、Aは、家庭裁判所に対し、Bについての失踪宣告を請求することができる。

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正解:◯
特別失踪(沈没、震災などの危難):生存の可能性が低いため、危難が去ってから1年待てば請求できます。
• 今回は「船舶事故」なので特別失踪のルートに乗ります。

問 不在者の生死が7年間明らかでないときは、利害関係人だけでなく検察官も、家庭裁判所に対し、失踪の宣告の請求をすることができる。

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×(検察官はできない)
失踪宣告(死亡):これは「人を法律上死亡させる」という、極めてプライベートで重大な処分です。
◦ もし家族が「帰りを待ちたい」と言っているのに、国(検察官)が勝手に「いや、もう死んだことにしよう」と介入するのは、個人の意思への過度な干渉になります。
◦ したがって、失踪宣告を請求できるのは、妻や子などの**「利害関係人」だけ**に限られます(民法30条1項)。

不在者財産管理(留守番):財産が放置されると社会経済的に困るため、公益の代表者である**「検察官」も請求できます**。

問 Aの父Bが旅行中、船舶事故に巻き込まれたまま生死不明になった場合、Bが事故に遭遇する前に既にBのために財産管理人が選任されている場合には、Aは、Bにつき失踪宣告の請求をすることができない。

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×(請求できる)
理由:管理人とは関係がない。管理人がいても、7年も帰ってこなければ「死亡扱い」にして遺産相続などを開始させる必要があります。管理人の有無は関係ありません。

問 Aは、Bと婚姻をしていたが、ある日、Bが家を出たまま行方不明となった。Bの失踪宣告がされた場合、Bが死亡したものとみなされる7年の期間満了の時より前に、Aが、Bが既に死亡したものと信じて行ったBの財産の売却処分は、有効とみなされる。

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正解:×
「善意なら有効(32条1項後段)」という救済ルールは、「失踪宣告の後」から「取消しの前」までの間に行われた行為だけの特権です。
今回のケース:
◦ Aが売却したのは、**「7年の期間満了の前」**です。
◦ つまり、法律上、Bはまだ**「生きている」**期間です。
◦ 生きてる人の財産を、妻Aが「死んだと思って」勝手に売ったとしても、それは単なる**「他人物売買(無権利者の処分)」**です。

問 Aの失踪の宣告によって財産を得たBがその財産を第三者Cに譲渡した後、Aの生存が判明したために失踪の宣告が取り消された場合において、Cが譲渡を受けた際にAの生存を知らなかったときは、BがAの生存を知っていたとしても、失踪の宣告の取消しはその財産の譲渡の効力に影響を及ぼさない。

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正解:×
「当事者双方(売主Bも買主Cも)が善意」でなければ保護されません。
あてはめ:問題文では「Bが悪意(知っていた)」ので、いくら期間内でもアウト(影響を及ぼす=土地を返せとなる)です。

問 Aの父Bが旅行中、船舶事故に巻き込まれたまま生死不明になった場合、Bが事故に遭遇して生死不明になったことを理由として、Aの請求により失踪宣告がされた場合には、Bは、事故から1年を経過した時に死亡したものとみなされる。

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正解:×
解説:1年は「待つ期間」、死ぬのは「その時」】 この問題は、以下の2つの概念をごちゃ混ぜにしています。
1. 請求できるまでの期間(待機期間)
◦ 船舶事故などの危難失踪の場合、危難が去ってから**「1年間」**生死不明であれば、失踪宣告を請求できます(民法30条2項)。
2. 死亡したとみなされる時期(死亡擬制時期)
◦ しかし、死亡したと扱われるのは、1年後ではなく、「危難が去った時(沈没した時)」に遡ります(民法31条)。
◦ 理由:沈没事故などで死んだとすれば、それは「沈んだその時」に死んでいるはずだからです。1年も海に浮いていた後に死んだわけではありません。

問 生死が7年間明らかでないために失踪の宣告を受けた者は、失踪の宣告を受けた時に死亡したものとみなされる。

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正解:×
解説:死亡時期は「宣告日」ではない
• 普通失踪(家出):
◦ × 裁判所が「宣告した日」に死ぬのではありません。
◦ 〇 7年間の**「期間が満了した時」**に死んだとみなされます(31条)。
• なぜ?:もし宣告日に死ぬとしたら、裁判所の手続きが遅れれば遅れるほど、死亡日がズレ込んでしまいます。あくまで「7年音信不通なら死んだことにする」制度なので、7年経った瞬間が死亡日です。

問 不在者Aが家庭裁判所から失踪宣告を受けた後に、AがEに100万円を貸し渡した場合は、当該金銭消費貸借契約は、当該失踪宣告が取り消されなくても有効である。

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正解:◯(有効)
【解説:ゾンビではない、生きている】
• 失踪宣告の効果:あくまで「従来の住所を中心とした法律関係(妻との婚姻や、残してきた家の相続)」を終わらせるために、死亡したとみなすだけです。
• 権利能力:本人が他所で生きているなら、その**「生きている本人」の権利能力(契約する力)まで奪うわけではありません**。
• 結論:Aが生きて他所で結んだ契約は、失踪宣告とは無関係に有効です。

問 Aの父Bが旅行中、船舶事故に巻き込まれたまま生死不明になった場合、Bが事故に遭遇して生死不明になったことを理由として、Bについて失踪宣告がされた後、Bが事故後も生存していたことが判明された場合には、Aは、失踪宣告によりAが相続したBの財産を善意で取得した者がいるときといえども、失踪宣告の取消しを請求することができる。

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【解説:取消請求権 vs 第三者保護】
• 思考の分離:以下の2つを分けて考えてください。
1. 「戸籍を直すこと(取消請求)」:これはできます。生きてる父を法的に死んだままにする理由はありません。
2. 「売った土地を取り戻すこと(効果)」:これはできません(善意の第三者がいるから)。
• 結論:第三者が保護されるからといって、取消請求そのもの(1の手続き)まで封じられるわけではありません。

問 Aは、Bと婚姻をしていたが、ある日、Bが家を出たまま行方不明となった。Bの失踪宣告がされた後、Bが家出した日に交通事故で死亡していたことが判明した場合、Bが死亡したとみなされる時期は、Bの失踪宣告が取り消されなくとも、現実の死亡時期にさかのぼる。

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正解:×(さかのぼらない)
【解説:「みなす」は最強の固定】
• 「推定する」(〜らしい):反対の証拠が出れば、自動的に覆ります。
• 「みなす」(〜とする):反対の事実(実はあの時死んでいた)が判明しても、それだけでは覆りません。
• どうすればいい?:裁判所で改めて**「失踪宣告の取消し(または変更)」**の手続きを行い、宣告を消して初めて、現実の死亡日に修正されます。
• 理由:宣告を信じて行動した人々の法的安定性を守るため、手続きを経ない自動修正は認めないのです。

問 Aは、Bと婚姻をしていたが、ある日、Bが家を出たまま行方不明となった。Bの失踪宣告がされた後、Bが生存していたことが判明した場合、Bの失踪宣告が取り消されない限り、Aは、相続により取得したBの遺産を返還する必要はない。

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正解:◯
【解説】
• 形式的確実性の保護:失踪宣告は、家庭裁判所が取り消すまでは**「有効」**なままです。たとえ本人が生きて帰ってきても、自動的に無効にはなりません。

問 Aは、Bと婚姻をしていたが、ある日、Bが家を出たまま行方不明となった。Bの失踪宣告がされた後、Aが死亡し、その後にBの失踪宣告が取り消された場合、Bは、Aの遺産を相続することはできない。

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正解:×(相続できる)
取消しの遡及効:失踪宣告が取り消されると、**「初めからなかったこと」**になります(民法32条1項)。
• タイムトラベル:Bはずっと生きていたことになります。したがって、妻Aが死亡した時点でもBは(法的に)生きていたことになるため、夫として当然にAを相続できます。

問 家庭裁判所が選任した不在者の財産の管理人は、保存行為であれば、裁判上の行為であるか裁判外の行為であるかを問わず、家庭裁判所の許可なくすることができる。

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正解:◯
【解説】
• 保存行為はフリーパス:民法103条の「保存行為(現状維持)」は、管理人の判断で自由に行えます(28条反対解釈)。
• 裁判上の行為でもOK:第51問で確認した「控訴」のように、裁判上の行為であっても、それが財産を守るための**「保存行為」**であれば、許可は不要です(最判昭47.9.1)。

問 家庭裁判所は、不在者の財産の管理人と不在者との関係その他の事情を考慮し、当該管理人に対し、不在者の財産の中から報酬を与えることも、与えないこともできる。

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正解:◯
【解説】
• 裁量主義:第52問のリベンジ成功です。「与えなければならない(義務)」ではなく、事情に応じて決める**「裁量(できる)」**が正解です(民法29条2項)。