このページは、司法書士試験に出題された民法の《総則》第三節・代理(第九十九条―第百十八条)をまとめたページになります。
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【民法総則】論点「代理」ガチ解説
代理の基本(代理と使者の違い、復代理人)
代理人と使者の違い
代理人:
本質:「自分の頭で考えて決定する人」
自分で意思決定を行うため、契約の内容(代金額など)を決定する権限を持つ。
「騙された(詐欺)」「勘違いした(錯誤)」の判断基準は誰か?
「代理人」を基準とします。契約内容を決めたのは代理人自身です。したがって、代理人が騙されたり勘違いしたりしていれば、本人はその契約を取り消すことができます(民法101条1項)。逆に、本人だけが騙されていても、実際に契約を決めた代理人が騙されていなければ取り消せません。
使者:
本質:「本人が決めたことを、ただ相手に伝えるだけの人」
本人が意思決定を行い、使者はそれを伝えるだけなので、決定権限を持たない。
使者の復任:使者の場合、本人の許諾がなくてもその任務を他の者に委ねることができる。
「騙された(詐欺)」「勘違いした(錯誤)」の判断基準は誰か?
「本人」を基準とします。使者はただ伝えただけです。したがって、契約内容を決めた本人が騙されたり勘違いしたりしていたかどうかで判断します。
顕名(本人のためにすることを示すこと)
代理人が「本人のためにすること」を示さないでした意思表示は、原則として「自己(代理人自身)のためにしたもの」とみなされる(100)
例外として、相手方が「本人のためにすること」を知っていた(悪意)か、知ることができた(有過失)ときは、直接本人に対して効力を生ずる(100但)。
復代理人のルール
・イメージ
復代理人(ピンチヒッター)は「代理人の子分」ではなく、直接「本人の代理人」として扱われます。
・任意代理人(委任による代理人):
本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
自己の責任で勝手に選任することはできない(104)
・法定代理人(親など):
やむを得ない事由がなくても、自己の責任で自由に復代理人を選任することができる(105)
自由に選べる分、その責任は重く、原則として、復代理人がやらかしたことについて本人に対して全責任を負います(無過失責任)
ただし、例外として、法定代理人であっても「やむを得ない事由」で復代理人を選任した場合は、責任が軽くなり、選任・監督の過失についてのみ責任を負う
・誰の代理人か:
復代理人は、代理人の代理人ではなく、「本人の代理人」である(106Ⅰ)
・顕名(名前の示し方):
復代理人が契約する時は、自己を選任した代理人の名ではなく、「本人のためにすること」を示さなければならない(99Ⅰ)
例「私は(代理人)Bの代理人です」と名乗るのではなく、「私は(本人)Aの代理人です」**と名乗らなければなりません
・効果の帰属:
復代理人がした行為の効果は、代理人を介さず、直接「本人」に帰属する。
・権限の範囲:
復代理人の権限は、元の代理人の権限の範囲内に限られる(106Ⅰ)
・元の代理人の権限:
復代理人を選任しても、元の代理人は代理権を失わず、自ら代理行為をすることができる。
つまり、元の代理人と復代理人の両方が「本人の代理人」として動ける状態になります
・代理権の消滅:
元の代理人の代理権が消滅すると、復代理人の代理権も一緒に消滅する。
・受領物の引き渡し:
復代理人が相手方から受け取ったお金などを元の代理人に引き渡したときは、本人に対する引渡義務は消滅する。
・代理人は本人の同意の有無を問わず、いつでも復代理人を解任できる
代理人と復代理人の間には「委任関係」があります。
委任契約のルールとして「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる(651条1項)」
「代理の基本」の過去問演習
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの代理人である場合、Aは、Bに対し、売買代金額に関する決定権限を付与することができる。
解答表示
Bが「代理人」である場合、契約にあたっての意思決定は代理人自身が行います。
• したがって、A(本人)は、B(代理人)に対して「いくらで買うか」という売買代金額の決定権限を委ねる(付与する)ことが当然にできます
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの使者である場合、Aは、Bに対し、売買代金額に関する決定権限を付与することができる。
解答表示
使者(お使い)は、自ら意思決定を行わず、本人の意思決定を相手方に伝達するだけの存在です。
• したがって、本人Aが使者Bに対して「売買代金はお前に任せる(決定権限を付与する)」と委ねることは、使者の性質上できないことになります
~復代理人~
問 委任による代理人はやむを得ない事由があるときは、本人の許諾を得なくても、復代理人を選任することができる。
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任意代理人による復代理人の選任は、原則はダメだが、例外的に2つのパターンで可能。
1. 本人の許諾を得たとき
2. やむを得ない事由があるとき
問 委任による代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。
解答表示
例外として許される条件を一切無視して「自己の責任で自由に選任できる」とするのは誤り。
※ちなみに、これが**「法定代理人(親など)」であれば、「自分で引き受けたわけではなく法律で決められただけ」なので、やむを得ない事由がなくても自己の責任で自由に復代理人を選任できます**(民法105条)
問 Aは、Bの任意代理人であるが、Bから受任した事務をCを利用して履行しようとしている。AがBから代理人を選任するための代理権を授与されている場合にも、AがBのためにすることを示してCを代理人として選任するためには、Bの許諾又はやむを得ない事情が存することが必要である。
解答表示
復代理人を選任する代理権を与えられているならいちいち許諾は必要ない
法的には以下。
AはBからあらかじめ「代理人を選んでいいよ」という代理権を与えられています。
Aは、**「Bのためにすることを示して(Bの名前で)」**Cを代理人に選任しています。
「復代理人」とは、代理人が「自己の名義で(自分の責任で)」**選任した本人の代理人のことを指すので、これは「復代理人の選任」ではなく、ただの**「代理人を選ぶという代理行為」**をしたに過ぎないのです
問 Aは、Bの任意代理人であるが、Bから受任した事務をCを利用して履行しようとしている。Aがやむを得ない事情によりBの許諾を得ることなくCを復代理人として選任した場合には、Cの復代理人としての権限は、保存行為又は代理の目的たる権利の性質を変更しない範囲における利用若しくは改良行為に限られる。
解答表示
復代理人の権限は、代理人が選任する際に代理権の範囲を定めるため、権限の定めのない代理人に関するルールである「保存行為や利用・改良行為(103条)」に自動的に限定されるわけではありません(106条1項)
問 法定代理人は、復代理人を選任したときは、やむを得ない事由によりその選任をした場合を除き、その選任及び監督につき過失がなかった場合であっても、復代理人の行為について本人に対して責任を負う。
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法定代理人(親など)は、任意代理人と違って「やむを得ない事由」がなくても、自由に復代理人を選任できます(105条)
自由に選べる分、その責任は重く、原則として、復代理人がやらかしたことについて本人に対して全責任を負います(無過失責任)
ただし、例外として、法定代理人であっても「やむを得ない事由」で復代理人を選任した場合は、責任が軽くなり、選任・監督の過失についてのみ責任を負う
問 委任による代理人は、復代理人を選任したときは、自ら代理行為をすることができない。
解答表示
復代理人を選任しても、元の代理人は代理権を失うことはなく、引き続き自ら代理行為を行うことができます。
• つまり、元の代理人と復代理人の両方が「本人の代理人」として動ける状態になります
問 復代理人は、代理人を代理するものであって、本人を代理するものではない。
解答表示
復代理人が行った仕事の成果(例えば、買ってきたどら焼きや、支払うべき代金)は、代理人ではなく直接「本人」に帰属します。
そのため、復代理人は「代理人の代理人」ではなく、直接**「本人の代理人」**として扱われます(民法106条1項)
問 復代理人は、代理行為をするに当たっては、本人のためにすることを示すほか、自己を選任した代理人の名を示すことを要する。
解答表示
代理人の名前まで示す必要はなく、「本人の代理人です」と、本人のためにすることを示せば足ります(民法99条1項)
問 Aは、Bの任意代理人であるが、Bから受任した事務をCを利用して履行しようとしている。Aから復代理人として適法に選任されたCの法律行為の効果がBに帰属するためには、CがAのためにすることを示して当該法律行為をすることが必要である。
解答表示
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの代理人である場合、Aの許諾がない場合には、Bは、やむを得ない事由がない限り、その任務を他の者にゆだねることができない。
解答表示
Bは本人Aから頼まれた「任意代理人」です。
• 任意代理人は、原則として勝手に復代理人を選任できません。例外として選任できるのは**「本人の許諾」があるか、または「やむを得ない事由」**がある場合のどちらかです(民法104条)。
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの使者である場合、Aの許諾がない場合には、Bは、やむを得ない事由がない限り、その任務を他の者にゆだねることができない。
解答表示
使者(ただのお使い)は、自分の頭で意思決定を行わず、本人が決めたことを相手に伝えるだけの役割です。
• 「誰が伝えても結果は同じ」であるため、使者は原則として、本人の許諾ややむを得ない事由といった厳しい条件がなくても、自由にその任務を他の者に委ねる(復任する)ことができます
問 復代理人が本人の指名に従って選任された場合、復代理人の代理権は、代理人の代理権が消滅しても消滅しない。
解答表示
復代理人の代理権は、あくまで親分である「元の代理人の代理権」を基礎(土台)として成立しているものです。
• したがって、土台である元の代理人の代理権が消滅すれば、その上に乗っている復代理人の代理権も当然に(道連れで)消滅します。
問 復代理人が委任事務の処理に当たって金銭等を受領した場合、復代理人は、委任事務の処理に当たって、本人に対して受領物を引き渡す義務を負うほか、代理人に対しても受領物を引き渡す義務を負うが、復代理人が代理人に受領物を引き渡したときは、本人に対する受領物引渡義務は、消滅する。
解答表示
復代理人は「本人の代理人」として直接本人に引渡義務を負う(106条2項)と同時に、自分を頼んだ「代理人」との間にも委任関係があるため、代理人に対しても引渡義務を負います。
• しかし、同じお金を2回払う必要はありません。復代理人が、親分である「代理人」に無事にお金を引き渡した時点で、代理人に対する義務が消滅し、それと連動して本人に対する引渡義務も消滅します(最判昭51.4.9)
問 復代理人が本人の許諾を得て選任された者である場合には、本人の同意がなければ、代理人は、復代理人を解任することはできない。
解答表示
代理人と復代理人の間には「委任関係」があります。
委任契約のルールとして、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる(651条1項)」と定められています。
したがって、たとえ「本人の許諾」を得て選任された復代理人であったとしても、代理人は本人の同意の有無を問わず、いつでも復代理人を解任する(クビにする)ことができます。
問 代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合であっても、相手方がその本人のためにすることを知っていたときには、その意思表示は直接本人に対して効力を生ずる。
解答表示
原則として、代理人が「〇〇の代理人です」と名乗らずに(顕名なしで)契約をした場合、その契約は代理人自身が自分のためにしたものと「みなされ」ます(民法100条本文)
しかし、相手方が「この人は代理人として契約しているんだな」と**知っていた(悪意)か、または知ることができた(有過失)**場合には、相手方を保護する必要はありません。例外として、その契約の効果は直接「本人」に帰属することになります(民法100条ただし書)
顕名、代理権の濫用、代理行為の瑕疵
代理であることを名乗らなかったらどうなるか?(顕名がなかった場合)
原則:代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己(代理人)のためにしたものとみなす。(100本文)
例外1:相手方が「本人のためにすること」を知っていた(悪意)か、知ることができた(有過失)ときは、直接本人に対して効力を生ずる(100但)。
例外2:【判例知識(署名代行)】代理人が契約書に「本人の名前だけ」を書き、相手方も本人と契約する意思を持っていた場合、その契約は本人に対して効力を生じる。
代理権の濫用(ネコババ)
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で、権限内の行為をした場合
原則:権限内の行為なので、原則として本人に効果が帰属します(有効な代理行為)
例外:相手方がその目的を知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)ときは、本人には帰属しない(無権代理行為)とみなされる。(107)
*代理権の範囲外であれば、「濫用」ではなく「表見代理(110条)」の問題である。
双方代理と自己契約
同一の法律行為について、相手方の代理人として(自己契約)、又は当事者双方の代理人として(双方代理:一人二役)した行為について
原則として無権代理行為とみなされる。(108Ⅰ本文)
例外として、本人があらかじめ許諾した行為や、単なる債務の履行については、有効な代理行為となる。(108Ⅰただし書)
無権代理行為(代理権を有しない者がした行為)は、本人の追認で、本人に効力が生じる(113条Ⅰ)
代理権の消滅事由
本人の消滅事由:死亡、破産手続開始の決定。(111Ⅰ)
代理人の消滅事由:死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判。(111Ⅱ)
※注意:代理人の「保佐開始の審判」は消滅事由ではない
過去問を解くために必要な知識
~~《代理行為の瑕疵》~~
代理行為の瑕疵(かし)と本人の指図
原則は「現場の代理人」基準
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が、意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと(悪意)若しくは知らなかったことにつき過失があったこと(有過失)によって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。(101Ⅰ)
*ひっかけ注意:問題文に「本人が知らなかったら~」「本人が重過失なら~」という言葉で揺さぶってきても、代理人自身に問題がなければセーフ、代理人に問題があればアウト
*Aの代理人Bの代理行為が相手方Cとの通謀虚偽表示に基づくものであった場合、代理人Bを基準に決するため(101条1項)、この契約は当事者間で無効。本人Aは「第三者」になりえない。
例外は「黒幕の本人」基準(本人の指図)
特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情(悪意)について、代理人が知らなかったこと(善意)を主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情(有過失)についても、同様とする。(101Ⅲ)
「使者」は単なるロボット
使者(本人の決定した意思を表示・伝達するにすぎない者)を通じて契約がされた場合、意思決定を行っているのは本人であるため、錯誤や善意・悪意などの事情の有無は、すべて本人を基準として決する。
「騙した側」に情けは無用(詐欺)
代理人が相手方を詐欺した場合、代理人の行為は本人の行為と同視されるため、本人が詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、相手方は詐欺を理由として意思表示を取り消すことができる。(96Ⅰ、判例知識)
本人が相手方を詐欺した場合、現場の代理人がその事実を知らなくても(善意)、相手方は当然に詐欺を理由として意思表示を取り消すことができる。
過去問を解くために必要な知識
~《代理人の能力》~
代理人の行為能力
『意思能力』が必要だが、他人のために契約するだけなら『行為能力』まではいらない!(未成年でも代理OK)
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない(102本文)
復代理人の能力
復代理人は本人の代理人であるから、代理人と同様に、意思能力は必要であるが、行為能力者であることは求められない
本人の能力(代理人を使う場合)
法律行為は代理人が行うため、契約の時点で本人に意思能力・行為能力は不要である
使者の能力
使者は本人が決定した意思を伝える者に過ぎないため、使者には行為能力はもちろん意思能力も不要である
本人の能力(使者を使う場合)
使者を使う場合、本人が自ら意思決定をするため、本人に意思能力と行為能力が必要である
成年後見人・被保佐人の同意権
成年後見人にはそもそも同意権がないため、成年後見人が任意代理人として代理行為をする場合に同意を得る必要はない。
また、被保佐人が代理行為をする場合も、保佐人の同意を得る必要はない(13、102本文)
「顕名、代理権の濫用、代理行為の瑕疵」の過去問演習
~顕名、代理権の濫用~
問 代理人が本人のためにすることを示さずに意思表示をした場合であっても、その権限内において本人のためにした行為は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
解答表示
顕名をしないと、自分自身の取引となる。
問 Aの代理人であるBは、Cに対し物品甲を売却した。なお、この売却行為は、商行為には当たらないものとする。この事例に関して、Bは、Aのためにする意思をもってCに対し物品甲を売却したが、その際、売買契約書の売主署名欄にAの氏名のみを記載し、自己の氏名を記載しなかった。この場合において、契約書にAの氏名だけを記載することをAがBに許諾しており、Cも契約書に署名したBではなくAと契約する意思を有していたときは、Bがした意思表示は、Aに対して効力を生ずる。
解答表示
代理人が、自分の名前を書かずに「本人の名前だけ」を書いて契約すること(署名代行)自体は、本人の許諾があれば有効な代理行為となり得ます。
この場合、相手方が「目の前にいる代理人」ではなく、「名前を書かれた本人」と契約する意思を持っていたのであれば、その契約の効力は予定通り本人(A)に対して生じます(大判大9.4.27)
問 Aの代理人Bが自己の利益を図るために権限内の行為をした場合において、相手方CがBの意図を知ることができたときは、当該法律行為の効果は、Aに帰属しない。
解答表示
代理権の濫用の事例だが、原則有効、例外として相手方悪意有過失のとき無権代理行為。
本問では、相手方が悪意であり、例外に該当。
問 Aの代理人Bが、代金着服の意図をもって、相手方Cと甲不動産の売買契約を締結した場合において、相手方Cが、Bの代金着服の意図を知らなかったのであれば、知らなかったことについてCに過失があったとしても、当該契約の効力は、Aに帰属する。
解答表示
代理権の濫用の事例だが、原則有効、例外として相手方悪意有過失のとき無権代理行為。
本肢の相手方Cは、「知らなかった(善意)」ものの、**「知らなかったことについて過失があった(有過失)」**と明記されています。したがって例外パターンに該当し、契約は無権代理となるため「Aに帰属する」
問 代理人が保佐開始の審判を受けた場合には、代理権は消滅する。
解答表示
被保佐人は「原則として単独で有効に法律行為ができ、重要な財産行為(13条1項列挙事由)にのみ保佐人の同意が必要」というベースの能力を持っています。
前提(102条):代理人がした契約の効果(代金を払う義務など)はすべて本人に帰属するため、代理人自身が損をすることはありません。本人が「少し判断力が怪しいけれど、彼に任せよう」と選んだのであれば、それは本人の自己責任です。
後見開始(重度)の場合:事理弁識能力を「欠く常況」にあるため、まともな意思表示(契約)すら期待できなくなります。したがって、法律上強制的に代理権を消滅させます(111条)。
保佐開始(中度)の場合:事理弁識能力が「著しく不十分」ではあるものの、ガチ勢様が仰る通り日常的な判断はまだ可能です(お使いはできる)。したがって、本人が自ら解任しない限り、法律上当然には消滅しません
問 同一人物が、債権者及び債務者双方の代理人として代物弁済をする場合であっても、債権者及び債務者双方があらかじめ許諾していたときは、無権代理行為とはみなされない。
解答表示
当事者双方の代理人として(双方代理:一人二役)した行為について
原則として無権代理行為とみなされる。(108Ⅰ本文)
例外として、本人があらかじめ許諾した行為や、単なる債務の履行については、有効な代理行為となる。(108Ⅰただし書)
過去問演習
~《代理行為の瑕疵》~
★問 法人が代理人によって動産を買った場合において、売主が無権利者であることについて、当該法人の代表者が善意無過失であっても、代理人が悪意であったときは、当該法人は、当該動産を即時取得することはできない。
解答表示
動産の「即時取得(192条)」が成立するためには、取引の時に「善意かつ無過失」であることが必要です。 今回、会社(法人)が代理人に買わせたわけですが、その事情を知っていたかどうかは**「現場でアタマを使っている代理人」を基準に判断します
★問 Aが代理人Bに特定の動産を買い受けることを委託し、BがAの指図に従って相手方Cからその動産を買い受けた場合において、Cが無権利者であることをAが知っていたとしても、Bがその事実を知らず、かつ、そのことに過失がなかったときは、その動産について即時取得は成立しない。
解答表示
「特定の行為を委託」「本人の指図」というキーワードがあるため、原則の代理人基準(101条1項)ではなく、**例外の本人基準(101条3項)**が発動します
今回、本人AはCが無権利者であることを知っていました(悪意)。即時取得(192条)を成立させるためには「善意無過失」でなければならないため、本人Aが悪意である以上、現場の代理人Bがどれだけ善意無過失であっても、即時取得は成立しません
★問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの使者である場合、Cが甲動産の所有権を有しないことについて、Aは、Cが甲動産の所有者であるものと誤信し、かつ、誤信したことにつき無過失であったが、Bは、Cが甲動産の所有者でないことにつき悪意であったときは、Aは、甲動産を即時取得することができない。
解答表示
「使者(おつかいロボット)」であるため、代理人のルール(101条)は適用されず、すべて意思決定者である「本人A」を基準に判断します。
そして、基準となる本人Aは**「善意無過失」**です。 即時取得の要件である「善意無過失」を(本人Aが)満たしている以上、現場のロボット(使者B)が悪意であろうと関係なく、Aは即時取得をすることができます。
★問 Aの代理人Bが相手方Cとの間で売買契約を締結した場合、Cの意思表示がAの詐欺によるものであったときでも、Bがその事実を知らなかった場合には、Cは、その意思表示を取り消すことができない。
解答表示
契約によって影響を受ける本人自身が詐欺を行っている以上、現場の代理人Bがその詐欺の事実を「知っていた(悪意)」か「知らなかった(善意)」かは一切関係ありません
騙された相手方Cは、当然にその意思表示を取り消すことができます
★問 Aの代理人Bの代理行為が相手方Cとの通謀虚偽表示に基づくものであった場合において、Aがそのことを知らなかったときは、Cは、Aに対しその行為について無効の主張をすることができない。
解答表示
意思表示の瑕疵は代理人を基準に決するため(101条1項)、この契約は当事者間で無効
無効となった契約の効果は、そのまま「当事者」である本人Aに帰属します。本人Aが「私はウソの契約だなんて知らなかった(善意)!」と言っても、第三者ではないので保護されません
契約は無効なのですから、相手方Cは当事者であるAに対して、当然に「あの契約はウソだったから無効だよ」と主張することができます。
★問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの代理人である場合、Bが、Cに対し、売買の目的物を誤ってCの所有する乙動産と表示してしまい、その表示内容による売買契約が締結された場合において、誤った表示をしたことにつきAに重過失があるときは、Aは、乙動産の代金支払を免れることができない。
解答表示
意思表示に瑕疵(本問は表示の錯誤など)があったかどうか、そしてそれに過失があったかどうかは、すべて**「現場の代理人(B)」を基準に判断します**(101条1項)
本人Aは「代理人が勘違いしたのだから無効(取消し)だ!」と主張して、代金の支払いを免れることができます
代理行為に本人の重過失は関係がない
問 Aは、Bの代理人として、Cとの間で金銭消費貸借契約及びB所有の甲土地に抵当権を設定する旨の契約(以下両契約を合わせて「本契約」という。)を締結した。本契約がAのCに対する詐欺に基づくものである場合、Bがこれを過失なく知らなくても、Cは、本契約を取り消すことができる。
解答表示
詐欺の場合、本人も代理人も関係がなく取消できる
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの使者である場合、Aが、Cに対し、売買の目的物を誤ってCの所有する乙動産と表示してしまい、その表示内容による売買契約が締結された場合において、誤った表示をしたことにつきAに重過失があるときは、Aは、乙動産の代金支払を免れることができない。
解答表示
使者の場合、本人を基準にする。
本人に重過失があるので、錯誤取消を主張することはできない(95Ⅲ)
問 甲は、乙に家屋を購入する代理権を与え、乙は、丙との間で、甲のためにすることを示して特定の家屋の購入契約を締結したが、実は、その家屋は丁所有のものであった。契約の際、丙は乙に対してその家屋が自己のものであると偽っていたが、乙はそれが丁所有のものであることを知っていた場合には、甲は詐欺を理由としてその契約を取り消すことができない。
解答表示
契約において「騙されたかどうか(詐欺の有無)」は、現場でアタマを使っている**「代理人」を基準**にして判断します(民法101条1項)
本問では、相手方(スネ夫:丙)が「俺の家だ!」と嘘をつきましたが、現場にいる代理人(ドラえもん:乙)は「いや、これ別の人の家だろ」と知っていました(悪意)。 つまり、代理人は騙されていないのです。
代理人が騙されていない以上、そもそもこの契約に「詐欺」という事実は存在しません。したがって、お留守番をしている本人(のび太:甲)が後から「スネ夫が嘘をついていたから取り消す!」と主張することはできません(取り消すことができない)
過去問演習
~《代理人の能力》~
★問 未成年者を代理人に選任した場合に、その者が代理人としてした法律行為は本人がこれを取り消すことができる。
解答表示
未成年者でも代理人になることができます。
「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない」からです(民法102条本文)
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの代理人である場合、BがCに対し、甲動産の購入に際し、Bには意思能力がある必要はないが、Aには行為能力がある必要がある。
解答表示
問 BがAのためにする意思を、Aの代理人であることを示して、Cに対し物品甲を売却したと主張する者であるときは、Bが未成年者であるときは、Bがした意思表示は、Aに対して効力を生じない。
解答表示
回りくどい問題文でしたが、未成年者Bであっても有効な代理人になることができます。
したがって、未成年の代理人Bがした契約(意思表示)は、何の問題もなく有効に本人Aに対して効力を生じます。
問 Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの使者である場合、甲動産の購入に際し、Bには意思能力がある必要があるが、Aには行為能力がある必要はない。
解答表示
★問 Aは、Bの任意代理人であるが、Bから受任した事務をCを利用して履行しようとしている。AがCを復代理人として選任する場合には、Cには、意思能力を有することは必要であるが、行為能力者であることは要しない。
解答表示
復代理人も、代理人の場合(民法102条)と全く同じ理由で、「行為能力(未成年者などではないこと)」までは求められません。
問 他人の任意代理人として代理行為をするためには、成年被後見人は、成年後見人の同意を得ることが必要であるが、被保佐人は、保佐人の同意を得ることを要しない。
解答表示
制限行為能力者(成年被後見人でも、保佐人であっても)は、同意なく代理人になれる。
表見代理
過去問を解くために必要な知識
~《表見代理》~
表見代理とは?(110条)
代理人がその権限外の行為をした場合、原則として無権代理行為として本人に効果帰属しない。
例外として、第三者(相手方)が代理人の権限があると信ずべき正当な理由(善意無過失)があるときは、本人はその行為について責任を負うとする制度。
表見代理の共通要件
1、外観の存在:どう見ても「本物の代理人」に見える状態
2、本人の帰責性:「代理人っぽく見せてしまった」という落ち度(責任)があること
3、第三者の信頼:本物の代理人だと信じ込み(善意)、そう信じたことについて落ち度がなかった(無過失)こと
3種類の表見代理
本人の帰責性に応じて3種類に分けられている
① 代理権を与えていないのに「与えた」と言ってしまったパターン(109条1項:代理権授与表示による表見代理)
要件:「授権表示」「その表示の範囲内の行為」「代理権がないことについて善意無過失」
② 与えられた権限を「オーバー」してしまったパターン(110条:権限外の行為の表見代理)
要件:「何らかの基本代理権の存在」「その権限外」「権限外ではないと信じるについて正当な理由(善意無過失)」
③ 昔は代理人だったけど「今は違う」パターン(112条1項:代理権消滅後の表見代理)
要件:「契約時に代理権消滅」「かつての代理権の範囲内」「代理権消滅について相手方の善意無過失」
表見代理が成立した場合の処理方法
【本人の選択肢】
「追認」か「追認拒絶」ができる。
【相手方の選択肢】
以下、4つのカードがあるが、どれか1つしか選べない(両立しない)関係にある。
① 取消し(やーめた!)(115条)
*相手方が契約時に「代理権がないことを知っていた(悪意)」ときは、取り消すことはできない(115ただし書)
*相手方に多少の不注意(過失)があったとしても、善意でありさえすれば、自ら契約をなかったことにする(取消し)権利は認められます。無権代理の取消権は、あくまで「本人の追認という不確実な状態から、相手方を解放してあげる(白紙に戻す)」ための制度です。
② 催告(本人、どうするの?)(114条)
*催告権は、相手方が「無権代理だと知っていた(悪意)」場合でも行使できる。
③ 表見代理の主張(本人、履行しろ!)
④ 無権代理人への責任追及(無権代理人、お前が履行するか損害賠償しろ!)
*相手方が表見代理の成立を主張できる場合であっても、無権代理人は表見代理の成立を抗弁として自己の責任を免れることはできない(最判昭62.7.7)
⇒③にするか④にするかは相手がが自由に選べるということ。表見代理は『相手方を守る剣』であり、無権代理人が『責任から逃げるための盾』として使うことは絶対に許されない。
*損害賠償請求できるのは履行利益。信頼利益だけではない。
履行利益:
「もし約束(契約)が完全に守られていたら、手に入っていたはずの利益」のこと。
例えば、「土地を安く買って、他の人に高く転売して儲けようとしていた利益(転売利益)」など
信頼利益:
「契約が有効だと信じてしまったために、無駄になってしまった出費」のことです。
例えば、「契約のために現地へ行った交通費」や「印紙代」など、マイナスになってしまった実費のこと
無権代理における、本人の『追認・拒絶』と相手方の『取消し・催告』の先後関係
勝負は完全に『早い者勝ち』で決まる!
・相手方が取消権を行使した後は、契約は確定的に無効となり、本人はもはや追認することができない
・ 本人が一度「追認拒絶」をした後は、本人に効果が帰属しないことが確定するため、後から改めて追認することはできない(最判平10.7.17)
追認の相手方と取消権(113条2項、115条)
追認は、原則として相手方に対して行う。
無権代理人に対しても「契約を認める(追認)」できるが、相手方がその事実を知るまでは、相手方は取り消しできる(本人は対抗できない)。
追認の効果(116条)
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
*「追認の時から」ではない
*「第三者」として保護されるためには、登記などの「対抗要件」を備えている必要がある
*無権代理には「法定追認(125条)」は適用されない。代金を受領しても、黙示の追認と認められる余地があるにとどまり、「みなされる」わけではない(最判昭54.12.14)
*追認拒絶後の再追認は不可:本人が一度「追認拒絶」をした後は、契約が本人に帰属しないことが確定するため、後から改めて追認することはできない
無権代理人の責任(117条)と表見代理
原則(117Ⅰ):
無権代理人は、相手方の選択に従い、「履行(自ら契約内容を実現する)」または「損害賠償(履行利益)」の責任を負う。
趣旨:代理人だと信じて取引に入った相手方を保護し、取引の安全を守るため(無過失責任に近い非常に重い責任です)。
例外(117Ⅰ、117Ⅱ):
以下の①〜⑤のいずれかに該当する場合、無権代理人は責任を免れる。
趣旨:相手方を保護する必要がない、あるいは無権代理人の方をより保護すべき事情があるため。
① 自己の代理権を証明したとき(実は正当な代理人だった)
② 本人の追認を得たとき(本人が後からOKを出して有効な契約になった)
③ 相手方が悪意(知っていた)(117Ⅱ①)
④ 相手方が有過失(不注意で知らなかった)(117Ⅱ②本文)
例外の例外:ただし、無権代理人自身も「自分に代理権がない」と知っていた(悪意)場合は、やはり責任を負う(117Ⅱ②ただし書)。※不注意な相手方よりも、確信犯である偽代理人の方が悪いため。
⑤ 無権代理人が制限行為能力者(117Ⅱ③)
趣旨:取引の安全よりも、未成年者などの保護を優先するため。
日常家事代理権と表見代理(110条・761条の判例)
夫婦間の日常家事に関する代理権(761条)を基本代理権として、110条の表見代理は原則として成立しない。
ただし、相手方がその行為を「日常家事の範囲内である」と信じるにつき正当な理由がある場合には、例外的に110条の趣旨を類推適用する(最判昭44.12.18)
代理権消滅後の表見代理(112条1項)
かつて存在した代理権が消滅した後に代理行為をした場合、相手方が善意無過失であれば表見代理が成立する。
この際、代理権が消滅する「前」に相手方が取引をしたことがある等の事情は不要である(最判昭44.7.25)
無権代理と錯誤取消し
無権代理人が錯誤によって取り消しうる契約をした場合、本人が追認して契約が有効に帰属した後は、本人が錯誤取消しを主張することができる。
「表見代理」の過去問演習
過去問演習
~《表見代理》~
問 甲からコピー機賃借に関する代理権を与えられた乙が、丙との間でコピー機を買い受ける契約をした。丙が乙に売買契約締結の代理権があると信じるにつき正当な事由がある場合において、甲は丙からの請求を拒否することができない。
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権限外の表見代理の典型パターン。
① 「コピー機を借りる権限」という基本代理権がある。
② 「買う契約」という権限外の行為をした。
③ 相手方丙は、権限があると信じるにつき**「正当な事由(善意無過失)」**がある。
この3拍子が完全に揃っているため、表見代理が成立し、本人(甲)は責任を負わされます
問 Bの妻Aは、Bの実印を無断で使用して、Aを代理人とする旨のB名義の委任状を作成した上で、Bの代理人としてB所有の土地をCに売却した。この場合、Aに売却の権限がないことにつきCが善意無過失であったときは、Cは、当該土地の所有権を取得することができる。
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原則として、日常家事代理権を基本代理権とした表見代理(110条)は成立させない
例外として、相手方が『その契約は、この夫婦の日常家事の範囲内だ』と信じるような正当な理由がある時だけ、相手方を保護する
本問は、土地売却についての行為であり、「土地売却がこの夫婦の日常家事だ」と信じるような正当な理由があったわけではありません
問 代理人の代理権が消滅した後に、その者がした無権代理行為につき、民法第112条の表見代理が成立するためには、代理権が消滅する前に、その代理人が当該本人を代理して相手方と取引行為をしたことがあることを要する。
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112条の表見代理(代理権消滅後の表見代理)が成立するための要件に「以前に取引したことがあること」は含まれていません
判例も、「以前に取引したことがあるかどうかは、相手方が善意無過失であったかどうかを判断するための一つの材料にすぎない」としており、絶対に必要とはしていません
112条の要件:「契約時に代理権消滅」「かつての代理権の範囲内」「代理権消滅について相手方の善意無過失」
問 無権代理人は、相手方が無権代理人に対して民法第117条の規定によりした履行請求に対して、表見代理が成立することを主張・立証して自己の責任を免れることはできない。
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無権代理人の履行又は損害賠償の責任は、以下の5つの場合に、責任を逃れることができるが、これに該当しない。
① 自己の代理権を証明したとき(実は正当な代理人だった)
② 本人の追認を得たとき(本人が後からOKを出して有効な契約になった)
③ 相手方が悪意(騙されていない)
④ 相手方が有過失。ただし自分が悪意を除く
⑤ 自分が制限行為能力者であること
問 Aは、Bの代理人として、Cとの間で金銭消費貸借契約及びB所有の甲土地に抵当権を設定する旨の契約を締結した。BがAに対し、代理人として金銭消費貸借契約を締結する権限は与えていたが、甲土地に抵当権を設定する権限は与えておらず、Cもこれを知っていた場合、Bが追認をしない限り、設定した抵当権は無効である。
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相手方悪意なので、無権代理行為の原則通り、無効。本人の追認しない限り。
問 Aは、代理権がないにもかかわらず、Bのためにすることを示して、Cとの間でB所有の甲土地を売却する旨の契約を締結した。Bは、Aから甲土地の売買代金の一部を受領した。この場合、Bは、Aの無権代理行為を追認したものとみなされる。
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無権代理には、『法定追認(民法125条)』のルールは使えない。
法定追認(125条)の本来のターゲット「とりあえず今は有効だけど、後から取り消せる契約」
無権代理の契約の性質:無権代理の契約は、本人が追認するまでは「本人にとって全く効果がない(無効のような状態)」
問 本人が無権代理人に対して契約を追認した場合でも、相手方は、その追認があったことを知らないときは、無権代理であることを理由として契約を取り消すことができる。
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追認は、原則として相手方に対して行う。
無権代理人に対しても「契約を認める(追認)」できるが、相手方がその事実を知るまでは、相手方は取り消しできる(113条2項、115条)
問 本人は、無権代理人が本人の利益を図る意思で契約した場合に限り、契約を追認することができる。
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追認の要件に「無権代理人の意図(誰のためを思ってやったか)」なんてものは一切ありません
問 Aが、Bの代理人と称して、Cとの間で、Bの所有する不動産を売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したが、実際にはAは代理権を有しておらず、また、CはAが代理権を有していないことを知らなかった。Bが本件売買契約を追認した場合において、別段の意思表示がないときは、本件売買契約は、その追認の時から効力を生ずる。
解答表示
民法116条の遡及効は、「契約時」としている。
問 Aは、何らの権限もないのに、Bの代理人と称して、Cとの間にB所有の不動産を売り渡す契約を締結した。AC間の売買が錯誤によって取消し可能であるときは、Bは、Aの無権代理行為を追認したとしても、当該売買契約の取消しを主張することができない。
解答表示
最終的に「取り消すかどうか」は本人が決める権利を持っています。
追認すると、この契約は最初から有効だったことになり、契約の効果(権利や義務、取消権のゲット )がすべて本人へ。
追認によって契約を自分のものにした上で、「やっぱりこの契約、勘違いだったから取り消す!」と主張することができる
問 Aは、何らの権限もないのに、Bの代理人と称して、Cとの間にB所有の不動産を売り渡す契約を結んだ。AC間の売買が合意されたときにAの無権限を知らなかったCがこれを取り消した後にあいては、Bは追認をすることができない。
解答表示
取消権と追認権は「早い者勝ち」
相手方が取消権を行使した時点で、この無権代理行為は**「確定的に無効」**となります。 無効が確定してゲームオーバーになった以上、本人Bが後から「やっぱり追認する!」と後出しジャンケンをすることは絶対にできません。
問 本人は、契約の追認を拒絶した後でも、改めて契約を追認することができる。
解答表示
「追認拒絶」のカードを切った瞬間に、その無権代理行為の効果は**「本人には絶対に帰属しない(確定的に無効)」**という結果でゲームオーバーとなります。
法律関係が確定した以上、本人であっても「やっぱり今のナシ! 追認する!」と覆して、契約を有効に復活させることは絶対に許されません
問 本人は、無権代理人のした契約を遡及的に有効とするか、将来に向かってのみ有効とするかを選択して、契約を追認することができる。
解答表示
追認の効果は原則として「契約の時にさかのぼって」生じます(116条本文)。
例外として「別段の意思表示」をすれば将来に向かってのみ有効とすることも可能ですが、この「別段の意思表示」は本人の一存(単独の意思表示)だけで決めることはできず、必ず相手方の同意が必要です
問 Aの代理人であると称するBが、Cとの間で、Aが所有する甲建物の売買契約を締結した後に、Bの無権代理によるCへの甲建物の売却を知らないDに対してAが甲建物を売却し、その後、AがBの無権代理行為を追認した場合には、AがBの無権代理行為を追認しても、第三者の権利を害することはできないので、追認の遡及効は制限され、対抗要件の具備を問うまでもなくDが所有権を取得する。
解答表示
判例は、追認の遡及効(116但)のルールによって第三者が無条件に保護される(絶対的に勝つ)とは考えていません。
二重譲渡の決着は、民法177条の絶対ルールである「登記(対抗要件)の早い者勝ち」で決まります。この場合、116但の適用はない。
問 甲からコピー機賃借に関する代理権を与えられた乙が、丙との間でコピー機を買い受ける契約をした。丙が乙に代理権がないことを知っていた場合、丙は甲に対して売買契約を追認するか否かを催告することはできない。
解答表示
無権代理の相手方の「取消権」には善意の要件が必要だが、「催告」には善意の要件は必要ではない
問 相手方が本人に対して相当の期間を定めて契約を追認するか否かを催告したが、応答のないままその期間が経過した場合、本人は、契約を追認したものとみなされる。
解答表示
民法114条後段は、本人が無視をした場合、現状維持である**「追認を拒絶したもの(=契約は無効のまま)」**として扱うと厳格に決めている
問 甲は、乙に対し自己所有のカメラの買入れに関する代理権を授与したところ、乙は、丙に対しこのカメラを甲の代理人として売却した。丙が乙に代理権のないことを過失により知らなかったため乙に対し代金を支払ったときは、丙は、甲の追認がない限り、契約を取り消して代金の返還請求をすることができる。
解答表示
無権代理の取消権は、あくまで「本人の追認という不確実な状態から、相手方を解放してあげる(白紙に戻す)」ための制度です。したがって、相手方に多少の不注意(過失)があったとしても、善意でありさえすれば、自ら契約をなかったことにする(取消し)権利は認められます
問 Aは、代理権がないにもかかわらず、Bのためにすることを示して、Cとの間でB所有の甲土地を売却する旨の契約を結んだ。Cは、Bに対し、本件売買契約を取り消すとの意思表示をした。この場合、Cは、Aに対し、無権代理人としての責任を追及して本件売買契約の履行を求めることができる。
解答表示
【相手方の選択肢】以下、4つのカードがあるが、どれか1つしか選べない(両立しない)関係にあります。
① 取消し(やーめた!)(115条)
② 催告(本人、どうするの?)(114条)
③ 表見代理の主張(本人、履行しろ!)
④ 無権代理人への責任追及(無権代理人、お前が履行するか損害賠償しろ!)
問 Aは、代理権がないにもかかわらず、Bのためにすることを示して、Cとの間でB所有の甲土地を売却する旨の契約を締結した。Cは、Aに対し、無権代理人の責任に基づく損害賠償を請求した。この場合、Cは、甲土地を転売することによって得られるはずであった利益に相当する額を請求することができる。
解答表示
無権代理人に追及できる責任(117条)は、単に無駄になった交通費(信頼利益)を払うだけでは許されず、**「もし本当に土地が手に入っていれば得られたはずの転売利益(履行利益)」**までガッツリと賠償しなければならない、というのが判例の厳格なルール。
問 AとCの取引で、Aの代理人Bが、Cの代理人Dに代理権のないことを知らないことについて過失があったとしても、Aは、Dに対して無権代理人の責任を追及することができる。
解答表示
代理人基準の原則(101条1項) 「知っていたか」「過失があったか」は、現場にいた代理人を基準に決めます。今回、本人Aに過失がなくても、**代理人Bに過失があれば、A側全体として「過失あり」**として扱われます
無権代理人の責任追及の要件(117条2項) 相手方が無権代理人に重い責任(履行や損害賠償)を追及するためには、相手方自身が「善意かつ無過失」でなければなりません(※無権代理人が悪意の例外ケースを除く)
したがって、A側(代理人B)に過失がある以上、無権代理人Dに責任追及することはできず、本肢は誤り(×)
問 AがBから代理権を授与されていないにもかかわらず、Bの代理人として、Cとの間でB所有の甲建物の売買契約を締結した場合において、Cが、AがBから代理権を授与されていないことを知らず、また、知らないことについて過失はあったものの、それが重大な過失でなかった場合には、Cは、Aに対し、無権代理人の責任を追及することができる。
解答表示
判例も、「117条の『過失』には、重過失だけでなく、ほんの少しの不注意である『軽過失(単なる有過失)』も含まれる」と明確にルール化
問 Aが、Bの代理人と称して、Cとの間で、Bの所有する不動産を売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したが、実際にはAは代理権を有しておらず、また、CはAが代理権を有していないことを知らなかった。 Aが、自己に代理権がないことを知りながら、本件売買契約を締結した場合であっても、CがAが代理権を有しないことによって過失によって知らなかったときは、Aは、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
解答表示
原則:相手方が無権代理人に責任追及するためには、相手方自身が「善意・無過失」でなければならない。
例外((117条2項2号ただし書)):無権代理人自身が**「自分に代理権がないことを最初から知っていた(悪意の確信犯)」**場合、無権代理人は責任を免れず
「嘘をついた悪い奴(悪意の無権代理人)は、絶対に逃がさない」
問 甲からコピー機賃借に関する代理権を与えられた乙が、丙との間でコピー機を買い受ける契約をした。乙が未成年者である場合、丙は乙が代理権なきことを知っているか知っていないかにかかわらず、乙に対して履行の請求又は損害賠償を請求することはできない。
解答表示
民法117条2項3号の条文知識です。
無権代理人が制限行為能力者(未成年者など)「判断能力の不十分な制限行為能力者を保護すること」を民法が最優先している
無権代理と相続
ポイント
「誰が誰を相続したか?」
「生前に本人が追認を拒絶したか?」
「単独相続」か「共同相続」か
無権代理人の責任の性質(117Ⅰ)
無権代理人の責任は、不法行為責任ではなく、法律が取引の安全のために特別に認めた「無過失責任(自分に落ち度がなくても負う責任)」である。そのため、相手方は無権代理人に故意や過失があったことを証明(立証)する必要はない。
無権代理人が本人を「単独相続」した場合
無権代理人が本人を単独相続した場合、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じ、契約は当然に有効となる(最判昭40.6.18)。
理由:無権代理人が本人の資格で追認を拒絶することは信義則(ルールとマナー)に反して許されないから。
無権代理人が本人が「生前に追認拒絶」した後、本人を「単独相続」した場合
無権代理人は追認拒絶(無効)を主張できる(最判平10.7.17)。
ただし、無権代理人自身の責任(117条の責任)を免れるわけではないため、相手方から損害賠償などを請求される。
無権代理人が本人を「共同相続」した場合
無権代理人が他の相続人と共同相続した場合、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は有効とはならない。
無権代理人の相続分(自分の取り分)についても当然に有効となるわけではない(最判平5.1.21)。
他の共同相続人が追認を拒絶して無権代理行為の無効が確定した場合、無権代理人自身が追認拒絶(無効の主張)をすることは信義則に反しない(最判平10.7.17)。
本人が無権代理人を相続した場合
本人が無権代理人を相続した場合、本人は無権代理人の資格で追認を拒絶しても信義則に反しない。よって、本人の資格で堂々と追認を拒絶することができる(最判昭37.4.20)。
本人としての地位に基づいて「追認拒絶」したとしても、引き継いでしまった「無権代理人としての117条責任(損害賠償等)」から逃げることはできません(最判昭48.7.3)
無権代理人死亡後の本人死亡と相続(いわゆる「資格の融合」)
無権代理人(子)が死亡して本人(父)とその妻(母)が共同相続した後、さらに本人が死亡して妻が単独相続した場合
妻は「無権代理人の地位」と「本人の地位」の両方を承継したことになる。 これは、「無権代理人が本人を相続した場合」と同視することができるため、妻が本人の資格で追認を拒絶することは信義則に反して許されず、契約は当然に有効となる(最判昭63.3.1)
「無権代理と相続」の過去問演習
問 Aの代理人であると称するAの子Bが、Cとの間で、Aが所有する甲建物の売買契約を締結したところ、Bは代理権を有していなかった。 AがBの無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡し、BがAを単独相続した場合には、Cが民法第117条第1項に基づいてBに対して損害賠償を請求するときには無権代理人の損害賠償責任の性質が、不法行為責任ではなく、法律が特別に認めた無過失責任であるので、Cは、Bの故意又は過失を立証する必要はない。
解答表示
生前に拒絶して「無効」が確定しているため、その後にのび太が相続しても契約自体は「無効のまま」です。契約が無効になってしまったからこそ、スネ夫は「のび太自身の責任(117条)」を厳しく追及している、という非常に美しい論理展開になっています。
問 Aの子Bが、Aから代理権を与えられていないにもかかわらず、Aの代理人と称してCとの間で土地売買契約を締結した場合、その後Aが死亡し、Bが単独で相続人となったときは、Bは追認を拒絶することができる。
解答表示
本人⇒無権代理人の単独相続は、追認拒絶できない
問 Aが、実父Bを代理する権限がないのに、Bの代理人と称してCから金銭を借り受けた場合において、Bが無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡し、AがBを単独で相続した。CはAに代理権がないことを知らなかったことに過失があったとしても、Aに対し、貸金の返還を請求することができる。
解答表示
無権代理人が、本人が「生前に追認拒絶」した後、本人を「単独相続」した場合のパターン。
本人Bが、生前に「追認を拒絶」した瞬間に、この契約は無効でゲームオーバーが確定しています。
一度終わったゲームは、その後で無権代理人Aが単独相続したからといって復活しません。
したがって、契約に基づく返還請求はできません。
相手方に過失あるので、無権代理人の責任(117条)により履行請求するルートもない。
問 Aが、実父Bを代理する権限がないのに、Bの代理人としてCから金銭を借り受けた場合において、Bが死亡し、AがBの子Dと共にBを相続した場合、Dが無権代理行為の追認を拒絶しているとしても、Cは、Aに対し、Aの相続分の限度で貸金の返還を請求することができる。
解答表示
無権代理人Aが、他の相続人Dと**「共同相続」した場合の処理です。
共同相続の場合、契約を有効にする(追認する)ためには「共同相続人全員の同意」が必要です。
したがって、他の相続人Dが一人でも「絶対にダメ!(追認拒絶)」と言えば、その瞬間にこの無権代理行為は「確定的無効」**となります
問 Aが、実父Bを代理する権限がないのに、Bの代理人と称してCから金員を借り受けた場合において、Bが死亡し、AがBの子Dと共にBを相続した場合、Dが無権代理行為を追認したときは、Cは、A及びDに対し、貸金の返還を請求することができる。
解答表示
無権代理人Aの立場:自分が勝手に契約してきた張本人なので、当然「やっぱり認めない(追認拒絶)」とは言えません
他の相続人Dの立場:今回は、いいよ、認めてあげる(追認する)と言ってくれました。
共同相続において契約を有効にするための条件である**「相続人全員の同意(追認)」が完全に揃いました!** したがって、この無権代理行為(金銭の借り入れ)は完全に**「有効(ゲームクリア)」
問 本人が無権代理人を相続した場合であっても、無権代理行為の追認を拒絶したときには、本人は無権代理人が相手方に対して負うべき履行又は損害賠償の責任を免れることはない。
解答表示
本人は「追認拒絶」をして契約自体は無効にできる(自分の財産は守れる)ものの、それはそれとして、引き継いでしまった「無権代理人としての117条責任(損害賠償等)」から逃げることはできません。
※もちろん、相手方が善意無過失である等の要件を満たしていることが前提です。
問 Aは、Bから代理権を授与されていないにもかかわらず、Bの代理人と称して、Cとの間でB所有の甲土地の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。本件売買契約の締結後にAがBから甲土地の譲渡を受けた場合においても、Cは、その選択に従い、Aに対し、履行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。
解答表示
無権代理人が後からたまたま目的物を手に入れたからといって、無権代理人の責任(117条)は消滅しない
問 Aが、実父Bを代理する権限がないのに、Bの代理人と称してCに不動産を売り渡した場合において、Aが死亡し、B及びAの母親Dが共同相続した後、Bが追認も追認拒絶もしないまま死亡し、DがBを単独相続した場合、Dが追認することを拒絶しても何ら信義則に反しないため、BC間の売買契約は当然に有効となるものではない。
解答表示
判例は、時系列的に、先に無権代理人を相続して、本人を相続した場合は、無権代理人が本人を相続したのと同じ扱いをしている。
よって、無権代理人として母は扱われるため、信義則上、追認拒絶できない。
問 Aが、父親Bから代理権を授与されていないのに、Bの代理人として、第三者との間で、B所有の甲建物を売る契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。本件売買契約の締結後にAが死亡し、Bが他の相続人Cと共にAを相続し、その後、CがBを単独で相続した場合には、Cは、本件売買契約の追認を拒絶することができる。
解答表示
CがA(無権代理人)を共同相続したことで、Cは「無権代理人の立場」に足を突っ込みました。
CがB(本人)を単独相続したことで、Cの中で「無権代理人の立場」と「本人の立場」が完全にフュージョン(融合)しました。
結果として、判例(最判昭63.3.1)は、これを**「無権代理人が本人を単独相続した場合」と全く同じ(同視できる)**と判断します