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【民法総則】論点「意思表示(法律行為・無効と取消し)」ガチ解説
意思表示の基礎
過去問は、様々な行為を**「〜だから、意思表示である」と強引に断定してくる**のが定番のひっかけパターンです。
それぞれの具体例をチェックしておく。
1. センターピン(本質)
「意思表示」とは、「契約などの法律上の効果を発生させたい!」という目的を持った発言や行動だけであり、それ以外の「ただの催促」「ただのお知らせ」「ただの行動」とは明確に区別される!
2. この単元の全体像(リーガルマインド)
意思表示とは、一定の法律効果を欲する意思を外部に表明する行為である。
「契約の申込み」「承諾」「遺言」は、いずれも意思表示に当たる。
例
ジャイアンが「俺のサイン入りCDを100円で売るぞ(申込み)」と言い、
スネ夫が「買うよ(承諾)」と答えること。
また、ジャイアンが「俺の死後はこのCDをのび太に譲る」と書き残すこと(遺言)。
申込みの誘引(もうしこみのゆういん)
不動産売却の広告や、「入居者募集」の張紙は、申込みの誘引に当たる。
広告を見た者が申込みをし、広告をした者が承諾することにより初めて契約は成立するため、張紙自体は意思表示ではない。
例
ジャイアンが空き地に「サイン入りCDの買主募集!」と張り紙をすること。
意思の通知(いしのつうち)
意思の通知とは、一定の意思の発表。
意思が法律効果の発生を内容としない(新たな契約などを作らない)点で意思表示と区別される。
例
ジャイアンがのび太に「早くCD代の100円払え!(債務の履行の催告)」と怒鳴ること。
自分の気持ち(意思)は発表していますが、「新たな契約を作りたい」わけではなく、ただの「催促(早くしろという通知)」なので、意思表示とは区別されます。
観念の通知(かんねんのつうち)
観念の通知とは、一定の事実の通知であり、意思の発表という要素を含まない行為である。
ジャイアンがのび太に「あのCD代の100円、スネ夫に払うようにしたから(債権譲渡の通知)」とお知らせすること。
これは「そういう状態になったよ」という事実(観念)を伝えているだけなので、意思表示ではありません。
事実行為(じじつこうい)
ジャイアンが道に落ちていた100円玉を拾うこと(遺失物の拾得)。
これは言葉のやり取りではなく「ただの行動(事実上の行為)」です。
心の中で「自分のものにするぞ」と思っていたとしても、誰かに意思を伝えているわけではないので、意思表示ではありません。
「意思表示の基礎」の過去問演習
問 契約の申込み、承諾、遺言はそれぞれ意思表示である。
解答表示
一定の法律効果を欲する意思を外部に表明する行為を、法律上**「意思表示」**と呼びます。本問の3つは、まさに意思表示の代表選手です
問 債務の履行の催告は、これを行うことにより、時効の完成が猶予されることがあり、解除権の発生という効果が発生することがあるので、意思表示である。
解答表示
ジャイアンの頭の中にあるのは「新たな契約を成立させたい」という法的な効果を狙った意思ではありません。
単に「早くしろ」という自分の気持ち(意思)の発表にすぎないため、法律上は意思表示ではなく**「意思の通知」**に分類されます
問 遺失物の拾得により、その物の所有権を取得するなどの効果を生じることがあるが、拾得者の意思に効果を認めたものではないので、意思表示ではない。
解答表示
結果的に所有権を取得するという法的な効果が生まれることはありますが、それはジャイアンが「所有権を取得するぞ!」と意思を発表したからではなく、法律が「拾ったという事実」に対してオマケとして効果を与えているにすぎません。したがって、意思表示には分類されません
問 債権譲渡の債務者に対する通知は、通知をすることで対抗要件を具備することができるので、意思表示である。
解答表示
ジャイアンの発言自体は「契約を作りたい」という法的な意思を発表しているわけではなく、すでに起こった「債権譲渡」という客観的な事実(観念)を伝えているだけにすぎません。したがって、意思表示ではなく**「観念の通知」**に分類されます。
問 賃貸マンションの所有者である甲が、「101号室入居者募集甲」とだけ書いた張紙をマンションの入口に掲示して、入居者を募集する旨を表示することは、その張り紙を見た乙が、甲に入居したいと申し出ることによって、賃貸借契約が成立することから、意思表示である。
解答表示
これを見た人が「借ります!(申込み)」と言ったからといって、大家さんが強制的に契約させられるわけではありません。大家さんが「あなたになら貸してもいいよ(承諾)」とOKして、初めて契約が成立します。したがって、張り紙自体は意思表示には当たりません
心裡留保
(心裡留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
1人でのウソ(心裡留保)
『2人で結託して』ウソ(通謀虚偽表示)
心裡留保(しんりりゅうほ)とは?(93Ⅰ)
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない(原則有効)。
ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする(例外:悪意有過失は無効)
例
スネ夫が、本当はあげるつもりなんてないのに、のび太に「この高級なラジコン、あげるよ!」とウソをつきました。
のび太が「わーい!ありがとう!」と信じ切ってもらってしまった場合、法律は「ウソをついたスネ夫が悪い!」として、この契約を「有効」と扱います。
ただし、のび太が「どうせウソだろ」と知っていたり、ちょっと注意すればウソだと気づけた場合(悪意や過失がある場合)は、のび太を保護する必要はないので「無効」になります。
「心裡留保」の過去問演習
問 甲が真意では買い受けるつもりがないのに、乙から土地を買い受ける契約をした場合において、乙は注意すれば甲の意思表示が真意ではないことを知ることができたときは、その契約は無効である。
解答表示
スネ夫(甲)が1人でついたウソ(心裡留保)による契約は、ウソをついた本人が悪いので、相手方ののび太(乙)を保護するために**「原則として有効」**と扱われます(民法93条1項本文)
しかし、のび太がスネ夫のウソを知っていた(悪意)場合や、ちょっと注意すればウソだと気づけた(過失があった)場合には、のび太を保護する必要はありません。したがって、この場合は**「例外として無効」**となります(民法93条1項ただし書)
虚偽表示
(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
1人でのウソ(心裡留保)
『2人で結託して』ウソ(通謀虚偽表示)
虚偽表示(きょぎひょうじ)とは?
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする(94Ⅰ)
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。善意の第三者は登記を備えていなくても保護される。
例
ジャイアンが、お母さんに自分のマンガ(財産)を取り上げられそうになったので、スネ夫と結託して「このマンガ、スネ夫に売ったことにしようぜ(ウソの売買契約)」と相談しました。この場合、2人ともウソだとわかっているので、ジャイアンとスネ夫の間ではこの契約は「無効」です。マンガはジャイアンのもののままです。
しかし、スネ夫が裏切って、事情を全く知らない(善意の)のび太に「これ、俺のマンガなんだけど買う?」と言って売ってしまったらどうでしょう?
法律は、ウソの契約を作ったジャイアンよりも、何も知らずに巻き込まれたのび太(善意の第三者)を強力に保護します。
ジャイアンはのび太に対して「やっぱりウソだから返して!」とは言えなくなり、のび太はマンガを自分のものにできます。
「第三者」にあたる者(保護される人):新たに独立した利害関係を持った「第三者」にあたる。
悪意の第三者からの善意の転得者
善意の第三者からの悪意の転得者(絶対的構成)
仮装譲受人の目的物を差し押さえた一般債権者
仮装売買された目的物の代金債権を譲り受けた者
土地の仮装売買における土地の賃貸人
94条2項の類推適用
本人が自ら虚偽の外観を作り出したり(加功したり)して、その外観を信じて取引に入った第三者がいる場合は、94条2項の「善意の第三者」のルールを真似て(類推適用して)、第三者を保護する。
要件
1. 虚偽の外観の存在(例:本当はAの土地なのに、B名義のウソの登記が存在している)
2. 真の権利者(本人)の帰責性(例:Aがそのウソの登記を作ることに協力した、または放置した)
3. 第三者の外観への信頼(例:Cがウソの登記を信じて取引に入った。
※本人の帰責性の程度によって、第三者に求められる要件が「善意のみ」でよい場合と「善意無過失」まで求められる場合があります)
例
本当はAとBの共有なのに、AとBが話し合って「Aの単独所有」というウソの登記(見せかけ)を作ってしまった場合。
「第三者」にあたらない者(保護されない人):新たな利害関係を有していないため「第三者」にあたらない。
仮装売買から生ずる債権を代位行使する一般債権者
「土地」の仮装譲受人からその「土地上の建物」を賃借した者
仮装譲渡された債権の債務者
「虚偽表示」の過去問演習
問 甲・乙間で甲の土地を乙に売り渡す契約を仮装した後、乙が事情を知らない丙に転売した場合、甲は、乙から請求されたときは、その土地を引き渡さなければならない。
解答表示
ジャイアン(甲)とスネ夫(乙)が2人で結託して作った「ウソの契約(通謀虚偽表示)」は、**当事者である甲・乙の間では「無効」**です(民法94条1項)
問 甲不動産はAとBの共有であるが、登記記録上はAの単独所有とされていたところ、Aは、Cとの間で甲不動産の売買契約を締結し、Cへの所有権移転登記を経由した。AとBの合意に基づいてA単独所有の登記が経由された場合において、甲不動産がAとBの共有であることをCが知らなかったときは、Bは、Cに対し、自己の持分を主張することができない。
解答表示
本当はAとBの共有なのに、AとBが話し合って「Aの単独所有」というウソの登記を作りました。これは「相手方と通じてした虚偽の意思表示(94条1項)」にそっくりな、「ウソの外観(見せかけ)」を自ら作り出した(加功した)状態です。
このような場合、判例は、ウソの外観を信じて取引に入ったかわいそうな人を守るために、94条2項の「善意の第三者」のルールを真似て使うこと(類推適用)を認めています
問 甲不動産はAとBの共有であるが、登記記録上はAの単独所有とされていたところ、Aは、Cとの間で甲不動産の売買契約を締結し、Cへの所有権移転登記を経由した。AがBに無断でA単独所有の登記を経由し、直ちにCに売却した場合には、甲不動産がAとBの共有であることをCが知らなかったときでも、Bは、Cに対し、自己の持分を主張することができる。
解答表示
今回は、AがBに**「無断で」**ウソの登記を作っており、Bはウソの外観作りに全く協力していません。また「直ちに」売却されているため、Bがウソの登記を長期間放置したというような落ち度(帰責性)もありません。
• Bは完全な被害者であるため、94条2項の「善意の第三者保護」のルールを真似て使う(類推適用する)ことはできません。したがって、Bは事情を知らないCに対しても、堂々と自分の持分を主張することができます
問 Aは、Bと協議の上、譲渡の意思がないにもかかわらず、その所有する甲土地をBに売り渡す旨の仮装の売買契約を締結した。Bに対し金銭債権を有する債権者Cが、A・B間の協議の内容を知らずに、その債権を保全するため、Bに代位して、Bへの所有権移転登記をAに請求した。そこで、Aは、Cに対し、A・B間の売買契約の無効を主張した。この場合、判例の考え方に従うと、Aによる売買契約の無効の主張が認められる。
解答表示
Cは、Bにお金を貸しているだけの「一般債権者」であり、たまたまBの権利を代わりに行使(代位行使)しているにすぎません。甲土地そのものについて新たな権利を取得したわけではないため、「第三者」には当たりません
問 Aは、Bと協議の上、譲渡の意思がないにもかかわらず、その所有する甲土地をBに売り渡す旨の仮装の売買契約を締結した。Bに対し金銭債権を有する債権者Eが、A・B間の協議の内容を知らずに、その債権に基づき、甲土地を差し押さえた。そこで、Aは、Eに対し、A・B間の売買契約の無効を主張した。この場合、判例の考え方に従うと、Aによる売買契約の無効の主張が認められる。
解答表示
差押権者は94条2項の「第三者」にしっかりと当たり、有効となる
したがって、ウソをついたAは、保護されるべき第三者であるEに対して「売買契約は無効だ!」と主張することはできません
問 Aは、Bと協議の上、譲渡の意思がないにもかかわらず、その所有する甲土地をBに売り渡す旨の仮装の売買契約を締結した。Bは、甲土地上に乙建物を建築し、A・B間の協議の内容を知らないDに乙建物を賃貸した。そこで、Aは、Dに対し、A・B間の売買契約の無効を主張した。この場合、判例の考え方に従うと、Aによる売買契約の無効の主張が認められる。
解答表示
AとBがウソの契約をした目的物はあくまで**「甲土地(土地)」**です。
Dは、Bが建てた「乙建物(建物)」を借りただけの人であり、「甲土地(土地)」そのものについては、新たに独立した利害関係を持っていません。したがって、Dは甲土地に関する94条2項の「第三者」には当たりません。
問 AとBとが通謀して、A所有の土地をBに売却したかのように仮装したところ、Aは、売買代金債権を善意のCに譲渡した。Bは、土地の売買契約が無効であるとして、Cからの代金支払請求を拒むことはできない。
解答表示
「売買代金債権」というウソの権利を買い取ったCは、そのウソの外観を基礎として「新たに独立した利害関係」を持った者にあたります。
したがって、Cは94条2項の「第三者」としてしっかり保護されます。
問 土地が甲から乙へ、乙から丙へと順次売買された。甲乙間の売買契約が甲乙の通謀による仮装のものである場合には、丙は、たとえ善意であっても、所有権移転の登記を受けていない以上、甲に対してその土地の所有権を主張することができない。
解答表示
94条2項の「善意の第三者」として保護されるために、登記を備えている必要はありません。
なぜなら、ウソをついた張本人である甲と、それに巻き込まれた善意の丙は、一つの土地を正当に取り合う「対抗関係(ライバル同士)」ではないからです
問 Aは、Bと協議の上、譲渡の意思がないにもかかわらず、その所有する甲土地をBに売り渡す旨の仮装の売買契約を締結した。Bは、A・B間の協議の内容を知らないHに甲土地を転売し、さらに、Hは、その協議の内容を知っているIに甲土地を転売した。そこで、Aは、Iに対し、A・B間の売買契約の無効を主張した。この場合、判例の考え方に従うと、Aによる売買契約の無効の主張が認められる。
解答表示
善意の第三者からの悪意の転得者の問題。
判例は、「善意の第三者(H)」が現れれば、その時点で権利の移転が確定する(絶対的構成)という考え方をとっています
これによって、その後に買った人(I)がウソの事情を知っている「悪意の転得者」であったとしても、もはやIは完全に権利を取得できます。
問 Aは、Bと協議の上、譲渡の意思がないにもかかわらず、その所有する甲土地をBに売り渡す旨の仮装の売買契約を締結した。Bは、A・B間の協議の内容を知っているFに甲土地を転売し、さらに、Fは、その協議の内容を知らないGに甲土地を転売した。そこで、Aは、Gに対し、A・B間の売買契約の無効を主張した。この場合、判例の考え方に従うと、Aによる売買契約の無効の主張が認められる。
解答表示
「A(ウソ)→ B(ウソ)→ F(悪意)→ G(善意)」というバケツリレーの場合、判例は最後の善意のGを「94条2項の第三者」としてしっかり保護します
問 相手方と通じて債権の譲渡を仮装した場合において、仮装譲渡人が債務者に譲渡の通知をしたときは、仮装譲渡人は、当該債権につき弁済その他の債務の消滅に関する行為がない場合でも、当該債権譲渡が虚偽であることを知らない債務者に対して当該債権譲渡が無効であることを主張することができない。
解答表示
「債務者(B)」は、元々借金を返す義務を負っていただけであり、ウソの譲渡契約によって**「新たに」独立した利害関係を持ったわけではありません**。
• したがって、いまだ弁済(借金の返済)などをしていない段階の債務者は、94条2項で保護される**「第三者」には当たりません**
問 A所有の土地について売買契約を締結したAとBとが通謀してその代金の弁済としてBがCに対して有する金銭債権をAに譲渡したかのように仮装した。Aの一般債権者であるDがAに帰属するものと信じて当該金銭債権の差押えをした場合、Bは、Dに対し、当該金銭債権の譲渡が無効であることを主張することはできない。
解答表示
AとBによってウソの譲渡がされた「金銭債権」について、Aの単なる一般債権者であれば「第三者」には当たりません。
• しかし、本問のDは、そのウソの金銭債権そのものを**「差し押さえた」**一般債権者です。差し押さえをしたことで、Dは目的物について新たに独立した利害関係を持ったと評価され、94条2項の「第三者」に含まれます
問 A所有の甲建物について、A B間の仮装の売買契約に基づきAからBへの所有権の移転の登記がされた後に、BがCに対して甲建物を譲渡し、AがDに対して甲建物を譲渡した場合には、Cは、A B間の売買契約が仮装のものであることを知らなかったときであっても、BからCへの所有権の移転の登記をしなければ、Dに対し、甲建物の所有権を主張することができない。
解答表示
判例は、このように「仮装譲受人(B)から買った善意のC」と、「真の所有者(A)から買ったD」の関係を、「真の権利者(A)を起点とした二重譲渡(一つの建物を2人に売ってしまった状態)」と同じだと考えます。
• 二重譲渡の正当なライバル関係(対抗関係)になった以上、勝負をつけるルールは**「登記の早い者勝ち(177条)」**になります
問 A所有の甲建物について、A B間の仮装の売買予約に基づきBを仮登記の登記権利者とする所有権移転請求権保全の仮登記がされた後、BがAに無断で本登記手続をして、その後にBから甲建物を譲り受けたCが、その当時、当該本登記が真実に合致したものと信じ、かつ、そのように信じたことについて過失がなかったときは、Cは、Aに対し、甲建物の所有権を主張することができる。
解答表示
Aは、Bによる「本登記」こそ無断でやられましたが、そもそもの**「仮登記(売買の予約)」というウソの外観を作ることには自ら協力しています**。
• 判例は、このように「ウソの仮登記」を作ったAの落ち度(帰責性)を重く見ます。Bが勝手に本登記をしたとしても、その原因となる仮登記を作ったのはAなのだから、その本登記を信じて買った善意無過失のCは、94条2項の「第三者」として保護されるべきだと判断しました
問 Aは、その所有する甲土地のBへの売却をBとの間で仮装した。その後、Bが当該仮装の事実について善意無過失のCに甲土地を譲渡した場合において、Aは、Cに対し、虚偽表示を理由に、甲土地の返還を請求することができない。
解答表示
相手方と通じてした虚偽の意思表示(ウソの契約)は無効ですが、それを善意の第三者に対抗することはできません(94条2項)。
• 本問のCは、仮装売買の事実を知らない「善意(しかも無過失)」の第三者です。
• したがって、ウソをついた張本人であるAは、保護されるべきCに対して「あの売買はウソで無効だから、土地を返せ!」と主張することは許されません。
問 Aから土地を賃借したBがその土地上に甲建物を建築し、その所有権の保存の登記がされた後に、甲建物についてB C間の仮装の売買契約に基づきBからCへの所有権の移転の登記がされた場合において、B C間の売買契約が仮装のものであることを知らなかったAが賃借権の無断譲渡を理由としてA B間の土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたときは、Bは、Aに対し、B C間の売買契約は無効であり、賃借権の無断譲渡には当たらない旨を主張することができる。
解答表示
地主であるAは、Bが建てた建物の「仮装譲渡」があったからといって、その建物の譲渡について**「新たに」法律上の利害関係を持った者とはいえません**。したがって、94条2項の「第三者」には当たりません
錯誤
錯誤とは?
以下のステップを確認しましょう。
① 動機(心の中の理由・キッカケ) 例:「おいしそうだな」
② 意思(内心的効果意思)(心の中で最終決定したこと) 例:「よし、あのアイスクリームを買おう」
③ 表示行為(口に出したこと・行動) 例:「このアイスクリームをください」と言う
表示の錯誤(95条1項1号)とは、
構造:②(意思)と③(表示)の不一致をさす。
例:「アイスクリームを買おう(②)」と思っていたのに、ただの言い間違い等で「ソフトクリームをください(③)」と言ってしまった状態
動機の錯誤(95条1項2号)とは
法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
構造:②(意思)と③(表示)は一致しているが、①(動機)を欠く状態を指す。
例:おいしいから買おうと動機が湧いて、アイスクリームを買おうという意志を持ち、アイスクリームを下さいを表示したが、実はおいしくなかった場合。
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
1. 単元のセンターピン(本質):
「勘違い(錯誤)は原則として取り消せるが、
『重大なそそっかしさ(重過失)』があったり
『事情を知らない関係ない人(善意無過失の第三者)』
が現れたら、わがままは言えない!」
▼ ステップ1:要件チェック
その錯誤が社会通念に照らして重要なものなら取消できる
*【動機の錯誤の場合】心の中の理由(動機)が、言葉や態度で相手に**「表示」されていれば取消できる
▼ ステップ2:反論チェック
【例外の確認】本人に「重大な過失」があれば、原則として取消しNG
▼ ステップ3:反論の反論チェック
【例外の例外(大逆転)】自分が重過失でも、相手も悪いなら大逆転で取消しOK
相手方も勘違いを知っていた(悪意)」または「重過失で知らなかった」とき
相手方も同じ勘違いをしていた(共通錯誤)とき
▼ ステップ4:
【第三者の確認】取消前に善意無過失の第三者がいたらNG
【身分行為】錯誤が適用されるのは財産行為のみ。身分行為の錯誤取消NG
【錯誤の取消し】要件フローチャート《立証バトルバージョン》
第1ラウンド:
A(のび太)が立証すべきこと(請求原因)
まずは契約を無かったことにしたいのび太が、以下の要件を立証して攻撃を仕掛けます。
錯誤の存在(95Ⅰ① または 95Ⅰ②)
例:「空飛ぶじゅうたんだと勘違いして、ただのペルシャ絨毯を買ってしまった!」
錯誤の重要性(95Ⅰ本文)
例:「空を飛ばないなら、全財産をはたいてこんな絨毯買わなかったよ!」
事情の表示 ※動機の錯誤(95Ⅰ②)の場合のみ(95Ⅱ)
例:「買う前にちゃんと『空を飛ぶ絨毯を探してるんだ』ってスネ夫に言ったよね!」
第2ラウンド
B(スネ夫)が立証すべきこと(抗弁)
表意者の重大な過失(95Ⅲ本文)
例:「ちょっと触ればただの布だって分かるのに、確認しなかったのび太の不注意(重過失)がひどすぎる!だから取り消しは無効だ!」
第3ラウンド
A(のび太)が立証すべきこと(再抗弁)
スネ夫からの「お前が不注意だ」という反論に対し、のび太が最後に出すカウンター(例外の例外)です。
相手方の悪意・重過失(95Ⅲ①)または 共通錯誤(95Ⅲ②)
例:「スネ夫だって、僕が空飛ぶじゅうたんと勘違いしてるのを知ってた(悪意)じゃないか!だったら僕に重過失があっても取り消せるはずだ!」
2. この単元の全体像(リーガルマインド):
のび太は心の中で「ピカソの絵だから買うぞ」という目的(動機)を持っていましたが、実は全くの勘違いで、普通のお絵かき帳の絵を高いお金で買ってしまいました。
動機の錯誤(心の中の目的の勘違い) の要件
のび太が後から「勘違いだったから、買うのをやめる(取り消す)!」と言うためには、「これはピカソの絵だよね」という目的を、言葉や態度でジャイアンに伝えて(表示して)いる必要があります。
もちろん、はっきり言葉に出さなくても、態度で伝わる「黙示」でもOKです。
錯誤の要件(取り消すための条件)
勘違いのせいで契約をしてしまった場合、その勘違いが、契約の目的や世間の常識(社会通念)から見て「とっても重要」なものであれば、取り消すことができます(95Ⅰ柱書)
錯誤の要件:重過失ではないこと。
のび太に「普通に見れば偽物ってわかるでしょ!」というくらいの**「重大なそそっかしさ(重過失)」**があったら、いくら勘違いでも取り消すことはできません。
重過失であっっても、例外で取消ができる場合があります。(95Ⅲ①②)
①相手が悪意や重過失だった場合、
または、
②相手も同じ勘違いをしていた場合(共通錯誤)の場合
例
もしジャイアンも「これ本物のピカソの絵だぜ!」と同じように勘違いしていたら(共通錯誤)、お互い様なので、のび太が超そそっかしくても取り消すことができます。
取消権者(取り消しができる人)(120Ⅰ)
そもそも取消権は、勘違いをしてしまったかわいそうな本人を守るための制度。
よって、勘違い(錯誤)によって契約を取り消すことができるのは、**「勘違いをした本人、その代理人、またはその立場を引き継いだ人(承継人)」**だけです。
例
「のび太本人」や「のび太のママ(代理人)」、のび太の立場を引き継いだ「のび太の子孫(承継人)」だけ。
相手であるジャイアンの方から「お前、勘違いしてたから取り消してやるよ」とは言えません。
善意+無過失の第三者への対抗
さらに、のび太がモタモタしている間に、ジャイアンがその絵を「事情を全く知らない(善意無過失の)スネ夫」に転売してしまっていたら、のび太はスネ夫に対して「勘違いだったから絵を返して!」と取り返すことはできません。
事情を知らない第三者はしっかり守られるからです。
本人-相手方-第三者
センターピン(本質):第三者に「善意」なのか「無過失」まで要求するかは、
本人の帰責性とのバランスによる。
① 本人が自らウソを作った場合(本人がかなり悪い!)
第三者は「善意(知らなかった)」というだけで足りる。
心裡留保 = 善意 のみ
虚偽表示 = 善意 のみ
② 本人はウソを作っていない場合(本人はかわいそう!)
第三者は「善意+無過失」まで要求
錯 誤 = 善意+無過失
詐 欺 = 善意+無過失
③ 本人が全く悪くない場合(本人は超かわいそう!)
本人の保護優先で、第三者は保護されません。
強 迫 = 保護されない(本人が絶対勝つ)
損害賠償責任
錯誤本人は、重過失でなければ取消ができるので、過失がある場合はどうか?
勘違いで取り消すことができたとしても、本人に過失(落ち度)があり、相手方が損害を受けてしまった場合、事情を知らない相手方(善意無過失)は、本人に対して損害賠償を請求できます
身分行為への適用除外
この「勘違い(錯誤)」のルールは、物の売り買いなどの「財産」についてのルールなので、しずかちゃんとの結婚(婚姻)や養子になるといった「家族のルール(身分行為)」には使えません。
和解への適用除外
お互いに譲り合って争いをやめる約束(和解)をした場合、「争っていたことそのもの」についての勘違いがあっても、あとから「勘違いだったから取り消す」とは言えません
相続の放棄と手形行為への適用
家庭裁判所での「相続放棄」や、「手形」に金額を書く行為には、錯誤のルールは適用されます
「錯誤」の過去問演習
問 AのBに対する意思表示を錯誤により取り消すことができる場合であっても、その意思表示によって生じた契約上の地位をAから承継したCは、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。
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勘違い(錯誤)によって取り消すことができるのは、勘違いをした「本人」だけではありません。本人の**「代理人」や、本人の契約上の立場を引き継いだ「承継人(C)」**も、取り消す権利(取消権)を使うことができます
問 甲乙間の売買契約において、甲の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、民法95条3項各号該当事由がない場合に、甲が錯誤取消しを主張する意思がない場合、乙から取消しを主張することはできない。
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錯誤(勘違い)によって契約を取り消すことができるのは、「勘違いをした本人(表意者)、その代理人、または承継人」に限られます(120条1項)
取消権は、勘違いをしてしまったかわいそうな本人を守るための制度だからです。
問 甲乙間の売買契約において、甲の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである場合において、甲の錯誤が重大な過失に基づくものであり、民法95条3項各号該当事由がない場合、甲は売買契約の取消しを主張できないが、乙は取消しの主張ができる。
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勘違いした甲本人に「重大な過失(重過失)」があり、例外事由(相手の悪意や共通錯誤)もない場合、原則通り甲は取り消しを主張できません(95条3項柱書)
しかし、取消権は「勘違いした本人」を守るための武器なので、相手方(乙)から主張することは絶対にできません。
問 AのBに対する意思表示がされ、その意思表示によって生じた法律関係について、Bの包括承継人ではないCが新たに法律上の利害関係を有するに至った後に、その意思表示がAの錯誤を理由に取り消された場合において、錯誤による意思表示であることを過失により知らなかったことから、Aは、Cに対し、その取消しを対抗することができる。
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この第三者が保護されるための条件(要件)は、単に「知らなかった(善意)」だけでは足りず、**「知らなかったことについて落ち度もない(善意かつ無過失)」**ことが絶対に必要です(95条4項)
したがって、Aは過失のあるCに対して、堂々と「錯誤だから取り消す!(目的物を返せ)」と対抗することができます
問 甲乙間の売買契約において、甲の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであることに、売買契約が取消しとされる場合には、甲の錯誤がその過失によるものであっても、乙は損害賠償請求をすることができない。
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本人に重過失がなく、勘違い(錯誤)による取り消しが認められた場合でも、勘違いをした本人(甲)に過失(落ち度)があり、それによって相手方(乙)が損害を被ってしまったとします。
この場合、事情を知らず落ち度もない(善意・無過失の)相手方乙は、甲に対して「契約締結上の過失」や「不法行為(709条)」を理由として、損害賠償を請求できると考えられています。
本人を保護するための取消権であっても、他人に迷惑をかけてよい理由にはならないという、法律の公平性の原則が働いています。
問 相手方が資産家であると誤信し、それを動機として婚姻をした場合において、その動機が表示され、意思表示の内容となっていたときであっても、その婚姻について、錯誤による取消し(95条1項)を主張することはできない。
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婚姻(結婚)や養子縁組のような「家族のルール(身分行為)」は、当事者の「本当に結婚したい」という真意(本当の気持ち)が何よりも尊重されます。
そのため、物の売り買いなどの「財産のルール」である民法95条(錯誤)をそのまま当てはめることはできません。
もし「お金持ちだと思ったのに違ったから取り消す!」なんてことが簡単に認められたら、家族関係が不安定になってしまいます。
問 手形の裏書人が、額面1,000万円の手形を額面100万円の手形と誤信し、100万円の手形債務を負担する意思で裏書をした場合には、その裏書人は、裏書人に額面どおりの手形債務負担の意思がないことを知って手形を取得した悪意の取得者に対し、その手形の金うち100万円を超える部分に限り、錯誤を理由に手形金の償還義務の履行を拒むことができる。
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手形を受け取った相手が「こいつ、100万円だと勘違いしてるな」と知っている**「悪意の取得者」**だった場合、その悪い相手を厳格な手形のルールで保護する必要はありません。したがって、例外として錯誤(勘違い)を主張して支払いを拒むことができます。
• ただし、勘違いした本人も「100万円までは払うつもり」でサインをしたのですから、100万円の部分については錯誤(勘違い)はありません。
• よって、本人が悪意の相手方に対して支払いを拒否できるのは、自分が思っていた金額をオーバーしている**「100万円を超える部分(残り900万円)」に限定される**ことになります
問 家屋の賃貸人が自ら使用する必要があるとの事由で申し立てた家屋明渡しの調停が成立した場合において、その後にその事由がなかったことが明らかになったとしても、その事由の存否が調停の合意の内容となっていないときは、その調停について、錯誤による取消しを主張することはできない。
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「自分が使うから出て行ってほしい」というのは、明渡しを求める理由(動機)にすぎません。
• このような動機の勘違い(動機の錯誤)を理由に契約や合意を取り消すためには、その動機が相手方に表示され、**合意の内容(前提)**となっている必要があります(95条2項)。つまり、その動機を「もしこれが嘘なら明渡しは無効ですよ」というレベルまで高めて合意(内容化)していない限り、取り消しは認められない。
• 本問では、その事由が「調停の合意の内容となっていない」とされているため、後になって「自分が使うというのは勘違いだったから、あの調停は取り消す!」と主張することは許されません
問 当事者が和解契約によって争いをやめることを約した場合には、その争いの目的である事項につき錯誤があったときでも、錯誤の規定の適用はない。
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和解は「互いに譲歩して争いをやめる」契約です。後から「実は証拠が出てきて、私のほうが正しかった」と蒸し返せたら、和解の意味がありません。これを和解の**確定効(民法696条)といいます。
*本問とは関係がないが、争いの対象ではない「大前提」が間違っていた場合にまで、その効力を認めるのは酷であるため、「和解の前提」**については錯誤取消しが認められます。例:「いくら払うか」などの揉めていたポイントでの勘違いは取り消せませんが、「そもそも加害者は誰か」といった、話し合いの土台となる事実の勘違いなら取り消せる
問 家庭裁判所に対してされた相続の放棄の意思表示については、錯誤の規定の適用はない。
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たしかに「相続」は家族間の問題であり、家庭裁判所で行う手続きですが、純粋な「身分行為」ではなく、極めて**「財産上の行為(財産行為)」**としての性質が強いのです。
財産についてのルールである以上、民法95条(錯誤)の規定が適用されます。
問 養子縁組の意思表示については、錯誤の規定の適用があり、表意者に重過失があったときは、95条1項に基づき表意者は、自らその取消しを主張することができない。
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養子縁組や婚姻などの「身分行為」は、当事者の「本当に縁組をしたい」という真意が絶対的に尊重されます。
• そのため、財産の取引を前提とした民法95条(錯誤)の規定は原則として適用されません。
• 当事者間に縁組をする意思がないときは、錯誤による取消しではなく、そもそも「無効」となります(民法802条1号)。
問 Aは、Bから彫刻甲を著名な彫刻家Cの真作であると信じて購入したが、実際には、甲は、Cの真作ではなかった場合、Aは、甲がCの真作であるという錯誤に陥っているが、Aは、甲を買う意思でその旨の意思表示をしているので、意思と表示に不一致はなく、動機の錯誤が問題となる。
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Aさんは「あの彫刻(甲)を買うぞ!」と心で決めて(意思)、口でも「買います」と伝えている(表示)ので、Aさんの**「意思と表示」にズレ(不一致)はありません**。
• ズレていたのは、「なぜ甲を買おうと決断したか?」という、意思決定の前提となる理由、すなわち**「動機(Cの真作だと思った)」**の部分です。
• このように、買いたいという意思と表示は一致しているものの、その前提となる事情(理由)についての勘違いを、法律用語で**「基礎事情の錯誤(動機の錯誤)」**と呼びます。
問 動機の表示は黙示的になされたのでは不十分であり、明示的になされ、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示された場合に初めてその意思表示を取り消すことができる。
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動機の錯誤(意思と表示は一致しているが、前提となる理由が真実に反する錯誤)を理由に取り消しを主張するためには、その動機が「法律行為の基礎とされていることが表示されていた」ことが必要です(民法95条2項)。
• しかし、この「表示」の方法について、法律は「言葉でハッキリ伝えろ(明示)」とまでは要求していません。
問 AのBに対する意思表示が、法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤によるものであり、それが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである場合には、Aは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときでなければ、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。
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「法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」=「動機の錯誤」
動機の錯誤は、単に勘違いが「重要なもの(大間違い)」であったとしても、それだけでは取り消せません。
• 相手方からすれば、本人の心の中の理由(動機)など知る由もないからです。したがって、その動機が契約の前提(基礎)になっていることが相手方に**「表示」**されていなければ、取り消しを主張することはできないというルールになっています(民法95条2項)
問 Aは、その所有する甲土地を錯誤によりBに売却した。その錯誤がAの重大な過失によるものであった場合であっても、BがAの錯誤を認識していたときは、Aは、錯誤を理由として、Bとの間の甲土地の売買契約の取消しを主張することができる。
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例外の例外で、重過失で錯誤取消できない場合でも、相手が悪意or重過失なら取り消せる
問 AのBに対する意思表示が錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、かつ、Aの重大な過失によるものであった場合には、Aは、BがAに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。
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例外の例外で、重過失で錯誤取消できない場合でも、相手が悪意or重過失なら取り消せる
詐欺・強迫
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
詐欺のプロセス(二段の故意)
詐欺が成立するには、「①相手を騙して勘違いさせる(欺罔行為)」→「②その勘違いのせいで契約させる」という二段階の流れが必要です。
ウソをつかれても自分が騙されていなかった(錯誤に陥っていなかった)場合は、詐欺での取り消しはできません
沈黙も詐欺になる
本当のことを言わなければならないのに、わざと黙っていた(沈黙)場合も、状況によっては詐欺になります
詐欺と第三者(一番出るルール!)
詐欺による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者には対抗することができません(96Ⅲ)
「第三者」の定義
当事者以外で「新しく利害関係に入ってきた人」のことです。
単に抵当権の順位が繰り上がっただけのような人は第三者にあたりません
第三者による詐欺(スネ夫が横から騙してきた場合)
AとBが契約する際、関係ないC(第三者)がAを騙した場合。
Aが取り消せるのは、相手方Bが「Cが騙していること」を知っていた(悪意)か、知ることができた(有過失)時だけです
強迫と第三者(無敵ルール!)
強迫による取り消しは、善意無過失の第三者にも対抗(主張)できます。
また、第三者からの強迫の場合は、相手方が知っていたかどうかに関わらず、いつでも取り消せます
詐欺と錯誤のダブルパンチ(競合)
詐欺と錯誤、両方の条件を満たしている場合は、自分が好きな方を選んで主張することができます
*余談:詐欺のときに、必ず錯誤にも該当するとは限らないって話。
詐欺取消(民法96条1項)
相手の欺罔(ウソ・隠し)で、こちらがそれに引っ張られて意思表示した、という構造
錯誤取消(民法95条1項)
「重要な錯誤(法律行為の目的・取引上の社会通念に照らして重要)」が必要。
さらに、動機錯誤系は**表示要件(95条2項)
詐欺も錯誤も両方満たす事例
【事案:幻のレアカード売買契約】
スネ夫は、ただの100円のノーマルカードを、のび太に高く売りつけようと企みました。
スネ夫のウソ(欺罔行為):「のび太、このカードは世界に3枚しかない1万円の超レアカードだよ!特別に5000円で売ってあげる!」
のび太の信じ込みと勘違い:「ええっ!1万円のレアカードが5000円!?それはお得だ!」と完全に信じ込みました。
契約成立:のび太は「1万円の価値がある激レアカードである」と**重大な勘違い(重要な錯誤)**をしたまま、5000円を支払いカードを買ってしまいました。
【法的評価:なぜ両方満たすのか?】
この時、のび太は以下の2つのカード(取消権)を両方手に入れた状態になります。
詐欺取消しのカード(96Ⅰ):スネ夫の「ウソ(欺罔)」によって騙され、契約してしまったため。
錯誤取消しのカード(95Ⅰ):ウソが原因とはいえ、「100円のカードを、1万円のレアカードだと勘違いして買う」という、取引の目的に照らして超重要な勘違い(錯誤)をしてしまったため。
裁判になったとき、スネ夫が「俺は騙すつもり(詐欺の故意)なんてなかった!冗談のつもりだった!」と言い逃れをしてきた場合、「詐欺」を証明するのは意外とハードルが高いのです。
しかし、のび太が「詐欺かどうかはともかく、僕は『1万円のレアカード』だと重大な勘違いをして買ったんだ!(錯誤)」と主張できれば、スネ夫の悪意(騙す意図)を証明できなくても、契約を取り消して5000円を取り返すことができます。
詐欺は満たすが、錯誤は満たさない事例
型:ウソは意思決定に効いてるけど「取引上重要」とは言いにくい
スネ夫「のび太、この100円のノーマルカードを買えば、今日一日ラッキーなことが起きるおまじないがかかってるんだぜ!」 のび太「えっ、ラッキーになりたいから買うよ!」
この場合、スネ夫は「おまじない」というウソをついてのび太を騙しています。のび太はそれを信じて(勘違いして)買っているので、「詐欺による取消し」はできる可能性が高いです。 しかし、これを「錯誤」で取り消そうとするとどうなるでしょうか? 裁判官に「『ラッキーなおまじないがかかっている』という勘違いは、カードの売買において**『社会通念上重要な勘違い』とは言えません**」と判断され、錯誤取消しは認められない可能性が高い
つまり法律は、要件によって
• 詐欺ルート:騙した悪い奴をやっつけるためだから、「重要な勘違い」じゃなくても、動機が「表示」されてなくても、騙されてさえいれば取り消してあげるよ!
• 錯誤ルート:相手が騙してなくても使える強力な権利だから、「社会通念上重要」で、ちゃんと「表示」されているような、きちんとした勘違いじゃないと使わせないよ!
というように、それぞれ役割(ストライクゾーン)を分けているのです。
法定追認(取り消し権の消滅)
騙されたことに気づいた後で、自分から「早く商品を渡して(履行の請求)」などをしてしまうと、「もう取り消しません」というサイン(法定追認)になり、取り消せなくなります(125②)
悪い奴からの催告は無視
騙した側から「あの契約、どうする?」と催告(確認)されても、法律上完全に無意味です
「詐欺・強迫」の過去問演習
~詐欺~
問 AがBに対して甲土地を売却してその旨の所有権の移転の登記がされ、その後、BがCに対して甲土地を転売した。 BがAに対して虚偽の事実を告げてAB間の売買契約が締結された場合には、Aが当該事実を告げられたことによって錯誤に陥っていなくても、Aは、Bの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消すことができる。
解答表示
民法上の「詐欺」を理由に契約を取り消すためには、ただ相手がウソをついた(欺罔行為)というだけでは足りません
「詐欺られた」といえるには、そのウソによって自分が錯誤に陥って契約を結んでしまうという因果関係が絶対に必要
問 AがBからC社製造の甲薬品を購入した場合において、BがC社の従業員から甲薬品はガンの予防に抜群の効果があるとの虚偽の説明を受け、これを信じてAに同様の説明をし、Aもこれを信じて甲薬品を購入した場合、Aは、Bとの間の売買契約を詐欺を理由として取り消すことができる。
解答表示
詐欺(96条1項)を理由に契約を取り消すためには、騙す側に「①相手を騙してやろう」という故意(だます故意)と、「②騙して勘違いさせた上で契約させよう」という故意の、**「二段の故意」**が必要です
この問題のBさんは、メーカー(C社)のウソをすっかり信じ込んでしまい、「これは本当にガンに効く素晴らしい薬だ!」と善意でAさんに勧めています。つまり、Bさんの心の中には「Aを騙してやろう」という悪い気持ち(故意)は全くありませんでした。
したがって、Bさんの行為は民法上の「詐欺」には当たらず、Aさんは「詐欺」を理由に売買契約を取り消すことはできません。
※ただし、Aさんは「ガンに効く薬だと勘違いして買った(錯誤)」わけですから、条件を満たせば、詐欺ではなく「錯誤による取り消し(95条)」を主張して救済される道は残されています。
問 Aは、Bから彫刻甲を著名な彫刻家Cの真作であると信じて購入したが、実際には、甲は、Cの真作ではなかった。Bは、甲がCの真作ではないことを知っており、また、AがCの真作であると信じて購入することも認識していたが、甲がCの真作ではないことをAに告げずに売った場合には、AがBによる働き掛けなくして錯誤に陥っているのであるので、詐欺による取消しが認められることはない。
解答表示
相手が勝手に勘違い(錯誤)していることに気づきながら、社会の常識(信義則)から見て「真実を告げるべき義務」があるにもかかわらず、あえて黙っていた(沈黙)という場合、その沈黙は「騙す行為」と同じだと評価されます
問 AがBの詐欺により、Bとの間で、A所有の甲土地を売り渡す契約を締結した。Aは、詐欺の事実に気付いて売買契約の意思表示を取り消した場合において、Bへの所有権移転登記を経由していたときは、Bが第三者に転売した後であっても、Bに対し、その登記の抹消を請求することができる。
解答表示
たとえBが既に第三者に土地を転売していたとしても、Aは当事者であるBに対して「お前のウソの登記を消せ!」と請求(所有権に基づく妨害排除請求)をすることが当然に認められます
※実際にその土地を第三者から取り返せるかどうか(対抗できるか)は「第三者が善意無過失かどうか」によります
問 AがBに対して甲土地を売却してその旨の所有権の移転の登記がされ、その後、BがCに対して甲土地を転売した。 AがBC間の売買契約の締結後に、Bの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した場合において、当該詐欺の事実を知らなかったことについてCに過失があるときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができる。
解答表示
民法は、「騙された人」はかわいそうなので、第三者に無過失の要件まで要求している。96条3項
したがって、Aは過失があるCに対して「私が本当の所有者だ!」と主張して、土地を取り返すことができます
問 相手方の欺罔行為により錯誤に陥って贈与の意思表示をした者は、その相手方が贈与を受けた物を善意無過失の第三者に譲渡した後であっても、その意思表示を取り消すことができる。
解答表示
あくまで、「善意無過失のCさんに対して『物を返せ!』とは言えない(勝てない)」というルールであって、当事者であるBに対する「取り消し権の行使(契約をなかったことにする主張)」そのものまで禁止しているわけではありません。
したがって、物が第三者に渡った後であっても、騙された本人は当事者(騙した相手方)に対して「詐欺を理由とする取り消し」を主張すること自体は当然に可能です
※ちなみに、取り消しをした結果、物はCから取り返せませんが、Bに対しては「じゃあCに売った代金を寄越せ(不当利得返還請求等)」と追求していくことになります。
問 第3順位の抵当権者の欺罔行為により第1順位の抵当権者が錯誤に陥って、その抵当権を放棄する旨の意思表示をしたときには、第2順位の抵当権者が善意無過失であったとしても、第1順位の抵当権者は、その意思表示の取消しをもって第2順位の抵当権者に対抗することができる。
解答表示
詐欺による取り消しから保護される「第三者(96条3項)」とは、詐欺による契約などを前提として**「新たに利害関係に入ってきた人」**を指します。
今回のケースの第2順位の抵当権者は、第1順位の人が抵当権を放棄したことによって、たまたま「棚ぼた」で順位が上がって得をした(反射的利益を受けた)だけの人であり、「新たに取引をして入ってきた人」ではありません。
• したがって、第2順位の人は保護されるべき「第三者」には当たらないため、善意無過失であったとしても、第1順位の人は「騙されたから取り消す!」と主張して元の順位に戻ることができます
問 AがBの詐欺により、Bとの間で、A所有の甲土地を売り渡す契約を締結した。Aが詐欺の事実に気付いた後に、BがAに対し、相当の期間を定めて売買契約を追認するかどうかを確答するよう催告した場合、Aがその期間内に確答しなければ、Aは、売買契約の意思表示を取り消したものとみなされる。
解答表示
制限行為能力者の相手方には「追認しますか?」と催告する権利が法律で特別に認められています。
• しかし、詐欺をした悪い相手方(欺罔者)には、そのような催告権は一切認められていません。
• したがって、騙した側のBが「どうするんだ?」と催告をしてきたところで、それは法的に**完全に無意味(効力ゼロ)**です
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
問 相手方の欺罔行為により錯誤に陥ってした意思表示は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものについて錯誤があったときでも、詐欺を理由として取り消すことができる。
解答表示
騙された(詐欺)結果、重要な勘違い(錯誤)をして契約してしまった場合、詐欺による取消し(96条1項)と錯誤による取消し(95条1項)の**両方の要件を満たしている(競合している)**状態になります。
• このような場合、法律は「どっちかしかダメ」とは言いません。被害者(表意者)は自分にとって都合が良い方、好きな方を選んで主張(選択)することができます(通説)
問 Aは、その所有する甲土地のBへの売却がBの詐欺によることに気付いた後、甲土地の売買代金債権をBの詐欺につき善意無過失のCに譲渡した。この場合において、Aは、Bの詐欺を理由に、Bとの間の甲土地の売買契約を取り消すことができる。
解答表示
詐欺をしたBではなく、詐欺られたAが転売したのであれば、それは詐欺られたことを「法定追認」したといえる(民法125条5号)
(法定追認)
第百二十五条 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
問 AがBからC社製造の甲薬品を購入した場合において、AがC社の従業員から甲薬品はガンの予防に抜群の効果があるとの虚偽の説明を受け、これを信じて甲薬品を購入した場合、Bがその事情を知り得なかったときでも、Aは、Bとの間の売買契約を取り消すことができる。
解答表示
AとBが契約当事者であるが、詐欺したのはCであり、Bは詐欺に関しては善意無過失の第三者にあたり、契約は有効であり、詐欺取り消しできない。
~強迫~
問 甲が土地を乙に強迫されて譲渡し、更に乙が事情を知らない丙に転売し、それぞれ所有権移転登記を経由した場合、甲は、乙に取消しの意思表示をすれば、丙に対し、その登記の抹消を請求することができる。
解答表示
強迫の場合、善意であっても第三者は保護されない
問 AがBに対して甲土地を売却してその旨の所有権の移転の登記がされ、その後、BがCに対して甲土地を転売した。 Aが第三者による強迫によってAB間の売買契約を締結した場合において、Bが当該強迫の事実を知り、又は知ることができたときに限り、Aは、AB間の売買契約を取り消すことができる。
解答表示
契約当事者であるBが第三者みたいな形になるが、Bが善意無過失だろうと強迫の場合には絶対的に取消が可能となる
意思表示の到達・公示・受領能力
(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
いつ届いたことになるか?
到達の定義:到達とは、相手方の**「支配圏内(いつでも知ろうと思えば知ることができる状態)」に入ったこと**を指します
ポストに入った瞬間が『到達』!本人が実際に読んだかどうかは関係ない!
郵便受けに投函された時点や、同居の家族、会社の従業員が受け取った時点で「到達」です。本人が「まだ封筒を開けてない!読んでない!」と言い訳したり、「受け取った従業員には手紙を受領する権限がない!」と主張したりしても、法律上は「到達した」とみなされます。
(公示による意思表示)
第九十八条 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
2 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
3 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
4 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
5 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。
相手が見つからない時の最終手段!
いつ届いたことになるか?
掲示板に貼り出して2週間待ち!
最後に官報に掲載した日、または掲示を始めた日から**「2週間を経過した時」**に、相手に到達したものとみなされます
*ひっかけポイント:2週間経ったからといって、「掲示を始めた日に遡って(タイムスリップして)」到達したことになるわけではありません。あくまで「2週間が経過したジャストその瞬間」に到達したことになります。
(意思表示の受領能力)
第九十八条の二 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。
一 相手方の法定代理人
二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
ひっかけポイント:制限行為能力者の中でも、「被保佐人」と「被補助人」は、手紙の意味を理解できるだけの能力(受領能力)があるとされています。したがって、この2人には直接手紙を渡せば、その時点で有効に「届いた」ことになります!
未成年者、成年被後見人、あるいは泥酔している人(意思能力がない人)に「契約解除!」といった重要な手紙を直接渡しても、相手はその意味が理解できません。そのため、法律上は「まだ届いていない(対抗できない)」という扱いになります
じゃあどうすればいい?
その手紙を、彼らの**「法定代理人(親など)」が知った時点**で、初めて「届いた(対抗できる)」ことになります
「意思表示の受領能力・到達・公示」の過去問演習
問 甲がその所有にかかる土地を乙にだまされて売り渡し、その後契約を取り消す旨の手紙を出したが、その到達前に甲が死亡した場合、取消しの効果は生じない。
解答表示
97Ⅲの典型事例。つまり、意思表示(手紙など)は、相手方に届いた時(到達した時)に効力が発生するのが原則です(到達主義、民法97条1項)
発信後に死んでも、手紙の効力はそのままなので、原則通りに到達すれば効力が生じる。
問 未成年者甲の法定代理人乙から甲において土地を買い受ける旨の申込みを受けた丙が、土地を売り渡す旨の意思表示を直接甲にしたときは、契約の成立を主張することができない。
解答表示
未成年者には、手紙(契約の承諾など)の法的な意味をきちんと理解する能力(意思表示の受領能力)がありません。
• そのため、未成年者である甲に直接「土地を売るよ!」と手紙を渡したとしても、法律上は「まだ届いていない」という扱いになります。
• 手紙が届いていない以上、丙は甲に対して「手紙を渡したから契約成立だ!」と主張(対抗)することはできません
問 意思表示の相手方が当該意思表示を受けた時に未成年者であった場合でも、その法定代理人が当該意思表示を知った後は、表意者は、当該意思表示をもってその相手方に対抗することができる。
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未成年者や成年被後見人の**「法定代理人(親など)がその手紙(意思表示)を知った時」**から、正式に届いたものとして対抗できるようになるという例外ルールを定めています(98条の2第2項)
問 法人に対する意思表示を当該法人の使用人が受けた場合において、当該意思表示が効力を生ずるためには、当該使用人が当該法人から当該意思表示の受領権限を与えられていなければならない。 *平社員(使用人)
正解:×(受領権限は不要)
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「会社のポストに入った(=従業員が受け取った)時点で到達!」
問 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日(以下「公示の日」という。)から2週間を経過したときは、公示の日に遡って相手方に到達したものとみなされる。
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2週間が経過した**「ジャストその瞬間」に効力が発生する**のであり、過去(掲示を始めた日)にタイムスリップ(遡及)して効力が発生するわけではありません