司法書士試験で必要な全単元は、コチラのページにまとめてあります。
>>【司法書士試験】全科目攻略・論点まとめページ(全論点リンク集)
【民法総則】論点「法人」ガチ解説
「法人」で共通する内容
権利能力なき社団、一般社団法人、一般財団法人、外国法人など
権利能力なき社団
空き地で野球をしているジャイアンズを想像してください。
ジャイアンズは、監督(代表者)がジャイアン、メンバー(構成員)がのび太やスネ夫、部費(財産)も集めて活動している立派な組織です。
これを**「権利能力なき社団」**と呼びます。
「権利能力なき社団」 成立要件
①団体としての組織がある
②多数決の原則が行われる
③構成員が変わっても団体が存続する
④代表の方法や総会の運営が確定している
という実体を備えれば成立する。登記は不要(最判昭39.10.15)
営利性と目的(自由なチーム)
一般社団法人のようなガチガチの法律に縛られない(一般法人11Ⅱ)ので、
「大会で優勝して、賞金をみんなで山分けしようぜ!(営利目的)」というチームを作ることも自由にできます。
「権利能力なき社団」 登記できない:
チームと不動産を考えてみましょう。
団体名義での登記は一切認められない。
代表者の個人名義にするか、構成員全員の共有名義にするしかない(最判昭47.6.2、最判平6.5.31)
*ひっかけ注意:代表者の個人名義で登記する『しかない』」は言い過ぎ(共有名義もできる)
登記はないが訴訟はできる:
裁判所は柔軟なので、他のチームとトラブルになったときは「ジャイアンズ」というチーム名で裁判(訴訟)を起こすことができます。
もちろん、代表者ジャイアンの名前で裁判を起こすこともできます。(民訴29)
財産と処分方法:
チームの部費で買ったバット(財産)は、誰か一人のものではなく「みんなのもの(総有)」です。
「総有」とは個人の持分(取り分)がない状態のこと。
このバットを売る(処分する)ようなときは、全員の許可をもらわなくても、チームの原則である「多数決」で決めることができます。
全員の承諾は不要(最判昭32.11.14の趣旨)
借金と責任の壁(財布の分離) 個人の財布は守られる:
チームとバット屋さんとの取引を考えてみましょう。
団体の借金は、団体の財産(総有財産)からのみ払う。
構成員個人は責任を負わない(最判昭48.10.9)
代表者が団体名と代表者資格を記載して手形を振り出した場合でも、財団(社団)だけの責任となり、代表者個人は責任を負わない(最判昭44.11.4)
*これは「権利能力なき社団」でも「法人」でも同じ!
*ひっかけ注意:「第一次的にチームが払い、足りなければ(補充的に)個人が払う」という文章は、いかにも法律っぽく聞こえますが、大嘘です。個人の財布は絶対に守られます。
「権利能力なき社団」の過去問演習
問 権利能力なき社団の代表者が賃貸借契約を締結した場合において、社団の構成員全員の承諾がなければ代表者は賃借権の処分をすることはできない。
解答表示
チームの財産(賃借権)を処分する際も、全員の承諾は必要なく、原則として構成員の多数決**によって決めることができます(最判昭32.11.14)
問 権利能力なき社団は、団体の設立登記が成立要件である。
解答表示
①組織がある、②多数決で決める、③メンバーが変わっても存続する、④代表者などのルールが決まっている、という**「チームとしての実体」**さえあれば、登記がなくても権利能力なき社団として成立します(最判昭39.10.15)
問 権利能力なき社団は、営利(剰余金の分配)を目的としない。
解答表示
「草野球大会で優勝して、賞金をみんなで山分けしようぜ!(営利目的)」という組織であっても、実体さえあれば権利能力なき社団として成立します。
問 権利能力なき社団所有の不動産を登記する場合、代表者の個人名義で登記するしかない。
解答表示
判例は以下の2つの方法を認めています。
1. 代表者の個人名義(「ジャイアン」個人の名前)で登記する。
2. 構成員全員の共有名義(「ジャイアン・のび太・スネ夫…」全員の名前)で登記する。
したがって、「代表者の個人名義で登記する『しかない』」とする本問は誤り(×)となります
問 権利能力なき社団の構成員の債権者は、その債権に基づき、構成員が団体に拠出した財産を差し押さえることはできない。
解答表示
「総有」とは、個人の「取り分(持分)」が一切ない状態のことです。
したがって、チームの財産を差し押さえることは絶対にできません
問 権利能力なき社団が第三者に対して債務を負っている場合において、債権者は第一次的に社団の財産から弁済を受けることができ、各構成員からは補充的にその弁済を受けることができる。
解答表示
「チームの財布(総有財産)」と「個人の財布」は完全に別物です
問 権利能力なき社団の代表者が、団体名を表示しかつ代表者資格を記載して手形を振り出した場合、社団のほかその代表者自身も手形の振出人としての責任を負う。
解答表示
支払いの責任を負うのは「チームの部費(総有財産)」だけであり、代表者であるジャイアン個人が自腹を切る(振出人としての責任を負う)ことはありません
問 権利能力なき社団自身が訴訟当事者となり得るのでその代表者は訴訟当事者とはなり得ない。
解答表示
柔軟な裁判ルール:民事訴訟法により、「ジャイアンズ(権利能力なき社団)」というチーム名そのもので裁判を起こすことは確かにできます(民訴29条)。
• 代表者の登場:しかし、チーム名義では不動産登記などができない(実体法上の権利を持てない)ため、実務上は「ジャイアンズ代表 ジャイアン」のように、代表者自身が裁判の当事者になることも認められています(最判昭47.6.2)。
• つまり、どちらの形式でも裁判を起こすことができるため、「代表者はなり得ない」とする本問は誤りです。
一般社団法人及び一般財団法人
ジャイアンが法務局に行って「一般社団法人ジャイアンズ」として設立登記をしました。
この瞬間、チームは法律上「1人の人間(法人)」として誕生します。
法人とは、自然人以外のもので、法律上、権利・義務の主体たりうるものをいう
成立要件:
一般社団法人は、主たる事務所の所在地において**「設立の登記」**をすることによって成立する(一般法人22)
営利の禁止:
一般社団法人においては、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは無効である(一般法人11Ⅱ)
ただし、お金を稼ぐ「収益事業」自体をすることは可能です。
株式会社のように**「儲かった利益をメンバー(のび太やスネ夫)で山分け(配当)すること」は禁止**されています。
稼いだお金は、すべて次回の大会費用など「法人の活動」のために使わなければなりません。
法人名義で買える:
法人は「人」なので、「一般社団法人ジャイアンズ」という名前でクラブハウス(不動産)を買って登記できます。
財産の分離(有限責任の原則)
法人の財産と、構成員(社員)の個人財産は完全に別物です。
法人の借金は法人が返す。
個人の借金は個人が返す。
お互いの財布に手をつっこむ(差し押さえる)ことは絶対にできない。
*これは「権利能力なき社団」でも同じ!
契約などの「法律行為」に関するルール(代表権・代理)
■ 代表権の制限と第三者保護(一般法人法77条5項)
定款で「この契約はしちゃダメ」と代表者の権限を制限する内部ルール自体は有効。
しかし、法人の代表理事は、業務に関する一切の行為をする権限を持っているのが普通である。
よって、取引の安全を守るため、定款による代表権の制限を知らない**「善意の第三者」には対抗できない**(契約は有効になる)。
■ 代表権の制限と表見代理(110条類推適用)
相手方が「重要な取引には理事会決議が必要」という定款のルール自体を知っていた(悪意)場合、上記の「善意の第三者」としては保護されない。
しかし、相手方が**「今回はちゃんと理事会で決議されたんだろうな」と信じたことについて正当な理由があった場合**は、民法の「権限外の行為の表見代理(110条)」が類推適用され、法人に対して責任を問える(表見代理の主張ができる)(最判昭60.11.29)。
■ 代表権の濫用(私腹を肥やす目的)(民法107条) ※補足
代表理事が権限の範囲内の行為であっても「自己の利益を図る目的(濫用)」で行った場合、相手方がその意図を知っていた(悪意)か、過失があったときは、無権代理行為とみなされ、法人は無効を主張できる。
■ 代理行為の判断基準(誰の頭の中を見るか)(民法101条1項)
代理人が取引をした場合、その取引が有効かどうか(騙されていないか、知っていたか等)は、指示を出した代表者ではなく、実際に現場で動いた**「代理人」の頭の中を基準**に判断する。
したがって、代表者に過失があっても、現場の代理人が善意無過失なら、法人として即時取得は成立する
事故やトラブルなどの「不法行為」に関するルール(損害賠償)
■ 法人の不法行為責任の原則(一般法人法78条)
代表理事(ジャイアン)が「職務を行うについて」他人に損害を加えたときは、法人が賠償責任を負う。
■ 法人の責任の性質(無過失責任)
「代表者」がやらかした以上、法人の無過失責任(法人自身の過失の有無は問われない)であり、「法人に過失がないから免責する」といった定款の定めは無効となる。
※民法の「使用者責任(715条)」は、雇い主が「自分はちゃんと監督していた!(無過失だ!)」と証明できれば免責される余地があるが、法人の代表者の場合はそれが一切許されない。
■ 代表者個人との連帯責任
法人が責任を負ったとしても、実際にやらかした代表者個人の不法行為責任(民法709条)が消えるわけではない。被害者は法人・個人の両方に請求できる(連帯して責任を負う)。
■ 例外①:相手方が悪すぎる場合(外形標準説の例外)
代表者の行為が外形上は職務に見えても、相手方が「それは職務じゃない(権限外だ)」と知っていた(悪意)、または重大な過失があった場合は、法人は責任を負わない(最判昭50.7.14)。
■ 例外②:「代理人」のやらかしの場合
単にお使いを頼まれただけの「代理人」の行為は、「代表者の行為」ではない。したがって、代理人が損害を与えても、この「一般法人法78条に基づく賠償責任」は適用されない(※民法の使用者責任になる可能性はある)
理事の基本ルール
理事(雇われ店長)は、社員総会で選ばれます。
一般社団法人の理事は「1人」でもよい。ただし、「理事会」という会議体を設置する法人(理事会設置一般社団法人)の場合は、会議で決を取る必要があるので、理事は3人以上必要になります
任期は原則2年。定款で短縮は可能だが、伸長は許されない。
理事は絶対に他人に権限を委任できないわけではなく、特定の行為の委任は可能。
代表権の制限は「善意の第三者」に対抗できない。
代表理事が自己の利益を図る目的(濫用)で取引をし、相手方がそれを知っていた(悪意)か過失があった場合は、無権代理とみなされる。
理事が欠けた場合は「裁判所」が一時理事を選任する(主務官庁ではない)。
お目付役「監事」:
監事は、法人の財産状況だけでなく、理事の業務もチェック(監査)できます
理事の不正等を発見した場合、法律上、監事はまず**「理事(理事会設置法人では理事会)に報告しなければならない」**とされています(一般法人法100条)
「自ら社員総会を招集する」という強力な権限までは、一般社団法人の監事には与えられていません
法律は債権者を保護する目的で、お目付役(監事)が作った「監査報告書」や「計算書類(貸借対照表など)」について、債権者が営業時間内に閲覧を請求する権利を認めています(一般法人法129条3項)。
利益相反(自己取引):
理事と法人の利益がぶつかる取引(理事が自分の土地を法人に高く売りつける等)をする場合、勝手に行うことはできず、社員総会(または理事会)の承認が必要です。
監事や裁判所が代わりに決めるわけではありません。
社員総会:
理事(雇われ店長)は、社員総会で選ばれます
チームの解散や定款変更は、必ずメンバー全員の会議(社員総会)で決める必要があります。
議決について
原則:一般社団法人の社員の議決権は、原則として「各1個(1人1票)」です(一般法人法48条1項本文)。
例外(定款自治):しかし、法律は同時に「定款で別段の定めをすること」を認めています(同項ただし書)。 定款に定めさえすれば、問題文のように「出資口数に応じて議決権の数を変える(株式会社のような仕組みにする)」ことも有効となります。
民法719条の共同不法行為の成立:
法人の目的外のヤバい事業を行うことに対して、社員総会などで「賛成」の議決をした社員は、単なる傍観者ではなく**「一緒に悪いことをした仲間」**とみなされます
賛成した社員も代表者と連帯して損害賠償責任を負う
定款の変更:
理事全員の決議ではできず、必ず社員総会の決議が必要(一般法人35)
理事全員の決議によりすることができるとする内容の定めは無効である(一般法人35Ⅳ)
法人の終わり(解散・残余財産):
理事全員の決議ではできず、社員総会の決議等による(一般法人148)
一般社団法人及び一般財団法人の過去問演習
問 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の一般社団法人においては、構成員が団体に拠出した不動産も、団体の名義で登記をする。
解答表示
問 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の一般社団法人は、営利(剰余金の分配)を目的としない。
解答表示
問 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の一般社団法人の構成員の債権者は、その債権に基づき、構成員が団体に拠出した財産を差し押さえることはできない。
解答表示
問 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の一般社団法人の債権者は、その債権に基づき、構成員の個人財産を差し押さえることはできない。
解答表示
問 一般社団法人の定款に、定款変更するには理事全員の決議によらすことができるとする内容の定めをした場合、その効力は認められない。
解答表示
一般社団法人のルールにおいて、定款の変更はメンバー全員の会議である**「社員総会」でのみ決めることができる専決事項(絶対に譲れない権限)**とされています
問 一般社団法人は、設立登記が成立要件である。
解答表示
問 一般社団・財団法人の代表者が選任した代理人が、法人のために動産を買い受けたところ、売主が無権利者であった場合において、法人の代表者に過失があるときは、代理人が善意・無過失であっても即時取得は成立しない。
解答表示
本人(代表者)ではなく、実際にお使いに行った「代理人」を基準にして決めます(民法101条1項)
問 一般社団・財団法人の代表者が選任した代理人が、委任事務につき他人に損害を与えた場合において、その代理人に故意又は過失があったときには、法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条・197条の規定に基づく賠償責任を負う。
解答表示
一般法人法78条は、法人のトップである**「代表理事その他の代表者」**が職務中に他人に損害を与えた場合に、法人が責任をとるという特別なルールです。
代表者から単にお使いを頼まれただけの**「代理人」は、この「代表者」には当たりません
※ただし、民法上の「使用者責任(715条)」として法人が責任を負う可能性はあります)
問 一般社団法人の代表理事がした職務権限外の行為が外形からみてその職務行為に属するものと認められる場合であっても、その行為が代表理事の職務行為に属さないことを知らなかったことについて相手方に重大な過失があるときは、法人は、その行為について損害賠償責任を負わない。
解答表示
原則(外形標準説):法人の代表者が勝手なこと(職務権限外の行為)をして他人に損害を与えた場合でも、それがパッと見(外形上)法人の仕事に見えるなら、法人は責任を負うのが原則です。
例外(相手方が悪すぎる場合):しかし、被害を受けた相手方が「少し注意すれば法人の仕事じゃないと分かったはずなのに、あり得ないくらい不注意だった(重大な過失)」場合、そのような相手方を保護する必要はありません。したがって、この場合は法人は損害賠償責任を負いません
問 一般社団法人の定款に、代表理事がその職務を行うにつき不法行為を行った場合で、法人に過失があった場合でなければ法人の責任はないものとすることという内容の定めをした場合、その効力が認められない。
解答表示
強行規定:一般法人法78条が定める「代表者が職務中に他人に損害を与えたら、法人が責任を負う」というルールは、被害者を保護するための絶対的なルール(強行規定)です。
定款の限界:定款は法人の最高ルールですが、法律の絶対ルール(強行規定)を打ち消すことはできません。したがって、「法人に過失がない限り責任を取らない」といった法人に有利な俺様ルールを定款に書いても、法律違反となり無効
問 代表理事がその職務を行うにつき他人に損害を加えたため一般社団法人の不法行為が成立する場合、その行為をした代表理事は個人としては不法行為の責任を負わないが、故意又は重大な過失があったときは、法人から求償権の行使を受けることがある。
解答表示
法人の代表者がやらかして法人が責任(一般法人法78条)を負ったからといって、実際に悪いことをした代表者個人の民法上の不法行為責任(709条)がチャラになるわけではありません。
被害者からすれば、法人と代表者個人の**両方に対して損害賠償を請求できる
問 一般社団法人の代表理事が法人の目的の範囲外の事業を行い第三者に損害を与えた場合であっても、その事業を行う議決に賛成した社員が責任を負うことはない。
解答表示
共同不法行為の成立:法人の目的外のヤバい事業を行うことに対して、社員総会などで「賛成」の議決をした社員は、単なる傍観者ではなく**「一緒に悪いことをした仲間」**とみなされます。
したがって、不法行為の一般理論(民法719条の共同不法行為)により、賛成した社員も代表者と連帯して損害賠償責任を負うことになります。逃げ切ることはできません。
問 一般社団法人の理事の選任は、社員総会がする。
解答表示
一般社団法人において、「理事」は法人の業務を実行する重要なポジション(雇われ店長)です。
このような超重要人事は、法人の最高意思決定機関である**「社員総会(メンバー全員の会議)」**で決定しなければならないと法律で厳格に定められています(一般法人法63条1項)
問 一般社団法人には、複数の理事が必要であり、理事が一人であることは許されない。
解答表示
一般社団法人を設立するための最低限のルールとして、経営陣である**「理事」は1人いれば足ります**。
ただし、発展的な知識として、「理事会」という会議体を設置する法人(理事会設置一般社団法人)の場合は、会議で決を取る必要があるので、理事は3人以上必要になります
問 一般社団法人の理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結のときまでと定められているが、定款で任期を選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることが許される。
解答表示
一般社団法人の理事の任期は、原則として「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結のときまで」と法律で決まっています。
会社にとって、理事(雇われ店長)が有能かどうかを定期的にチェックし、ダメならクビにする機会は非常に重要です。
💡【過去問からの予想一言知識】
「任期を伸ばせない」という知識が出たなら、次は**「では、任期を短くすることはできるか?」と聞かれる可能性が高いです!結論として、「定款で任期を短縮することのみ可能(例えば1年にする等)」**です
問 一般社団・財団法人が定款で代表理事の代表権を制限しているにもかかわらず、代表理事が代表権の範囲外の取引をした場合には、相手方がその代表権の制限があることを知らなかったときであっても、法人は、その取引における意思表示を取り消すことができる。
解答表示
法人の代表理事は、法人の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持っています。
定款などの内部ルールで「〇〇万円以上の取引はダメ」と代表権に制限を加えること自体は自由ですが、その内部ルールを知らない相手方(善意の第三者)には対抗(主張)できません
問 一般社団法人の代表理事が代表権を行使するには理事会の決議を要する旨の定款の定めがあるにもかかわらず、代表理事が理事会の決議なしに取引をした場合に、相手方は、その定款の定めを知っていたときは、理事会の決議があるものと信じていたかどうかにかかわらず、表見代理の主張をすることができない。
解答表示
「ルールを知っていること」と「今回守られたと信じたこと」は別物です。
相手方は「重要な取引には理事会決議が必要」という定款のルール自体は知っていました(悪意)。
そのため、先ほどの「善意の第三者」としては保護されません。
しかし、相手方が**「今回はちゃんと理事会で決議されたんだろうな」と信じたことについて正当な理由があった場合**は、民法の「権限外の行為の表見代理(110条)」が類推適用され、法人に対して責任を問える(表見代理の主張ができる)とされています(最判昭60.11.29)
問 一般社団法人の代表理事が自己の利益を図るため代表権の範囲に属する法律行為を行った場合において、相手方が代表理事の意図を知らなかったときは、そのことに過失があったかどうかにかかわらず、法人は、その行為の無効を主張することができない。
解答表示
代表権の濫用(民法107条):代表理事が会社のためではなく「自分の利益のため」に権限を使った場合(権限の濫用)、相手方がその悪い意図を知っていた(悪意)か、**知らなかったことについて落ち度があった(有過失)**場合には、その取引は「無権代理行為」とみなされます
相手方に少し注意すれば見抜けたはずの「過失」があったのであれば、法律は相手方を保護しません。したがって、法人は「その取引は無効(無権代理)だから責任は負わない!」と主張することができます
問 一般社団法人の理事は、その権限を他人に委任することはできない。
解答表示
原則:一般社団法人と理事の関係は「委任」のルールに従います。メンバーからの信用関係が基礎にあるため、原則として経営を他人に丸投げすることは許されません。
例外:しかし、**「法人の許諾(会社のOK)を得たとき」や「やむを得ない事由があるとき(病気など)」**には、例外としてその権限を他人に委任(復代理人の選任)することが認められています
問 一般社団法人の理事が重病で入院したことによりその執行を行うことができないときは、主務官庁は、利害関係人又は検察官の請求により、一時理事の職務を行うべき者を選任することができる。
解答表示
理事が欠けた場合や、今回のように病気等で足りなくなってしまった場合に、一時理事(仮の店長)を選任してくれるのは、行政機関である「主務官庁」ではなく**「裁判所」**です。
• また、この選任を裁判所にお願い(申立て)できるのは**「利害関係人」に限られ、「検察官」からの請求は認められていません**
問 一般社団法人と理事の利益が相反する場合は、裁判所に請求して一時理事の職務を行うべき者を選任すべきである。
解答表示
このような危険な取引を行う場合は、法人の最高意思決定機関である**「社員総会」の承認決議**(理事会設置一般社団法人では「理事会」の承認決議)を受けなければならないとされています(一般法人法84条1項、92条1項)
問 一般社団法人とその理事の利益が相反する事項については、監事が法人を代表する。
解答表示
最高意思決定機関である**「社員総会(または理事会)の承認」**を得ることで内部統制を図る仕組みになっています
問 監事は、一般社団法人の財産の状況を監査することができるが、理事の職務執行の状況を監査することはできない。
解答表示
会社の「お金(財産の状況)」をごまかしていないかチェックするだけでなく、「普段の仕事ぶり(理事の職務執行の状況)」が法律や定款に違反していないかどうかも監査する権限を持っています
問 一般社団法人の監事は理事の職務執行に不正の事実があることを社員総会に報告するために必要があるときは、社員総会を招集することができる。
解答表示
お目付役である監事が理事の不正等を発見した場合、法律上、監事はまず**「理事(理事会設置法人では理事会)に報告しなければならない」**とされています(一般法人法100条)
「自ら社員総会を招集する」という強力な権限までは、一般社団法人の監事には与えられていません
問 一般社団法人の債権者は監事の監査報告の閲覧を求めることができる。
解答表示
法律は債権者を保護する目的で、お目付役(監事)が作った「監査報告書」や「計算書類(貸借対照表など)」について、債権者が営業時間内に閲覧を請求する権利を認めています(一般法人法129条3項)。身内(社員)だけでなく、利害関係のある外部の人間にも開示される透明性が求められているのです。
問 一般社団法人は、定款をもって、社員は出資の口数1口につき1個の議決権を有するものと定めることができる。
解答表示
原則:一般社団法人の社員の議決権は、原則として「各1個(1人1票)」です(一般法人法48条1項本文)。
例外(定款自治):しかし、法律は同時に「定款で別段の定めをすること」を認めています(同項ただし書)。 組織の内部ルールについては、メンバーの合意(定款)を尊重し、柔軟な設計を許容しているのです。
したがって、定款に定めさえすれば、問題文のように「出資口数に応じて議決権の数を変える(株式会社のような仕組みにする)」ことも有効となります。
問 理事全員によって解散の決議がされても、一般社団法人は解散しない。
解答表示
一般社団法人を解散させる(会社をたたむ)という究極の決定は、法人の最高意思決定機関である**「社員総会の決議」**によって行わなければなりません
問 一般社団法人の定款に、残余財産の帰属権利者を具体的に指定するのでなく、指定する方法を定めた場合、その効力が認められない。
解答表示
一般社団法人が解散して借金などを清算した後に残った財産(残余財産)を誰に渡すかについては、最高ルールブックである「定款」で決めることができます(一般法人法239条1項)。
このとき、「A山B男さんに渡す!」と具体的に個人や団体を名指し(指定)しなければならないわけではありません。「最後の社員総会の決議で決めた人に渡す」や「理事会で選んだNPO法人に寄付する」といったように、「指定する方法」だけを定款に定めておくことも有効です。法人の実情に合わせた柔軟な対応が許されています。
外国法人
外国法人が日本で活動する場合、
「①誰を認めるか」
「②どんな手続きが必要か」
「③どこまで権利を認めるか」**という3つのハードルを設けています。
外国法人の認許(日本で認められる条件)
「国」「国の行政区画(州や県など)」「商事会社(外国の株式会社など)」、そして「法律又は条約により認許されたもの」に限り、日本において法人格が認められる。(35Ⅰ)
裏を返せば、これら「以外」の外国の団体(例えば外国のNPO法人など)は、日本では法人として扱われない**ということです。
外国法人の登記(事務所を作ったときの手続き)
外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の場所で「登記」をするまでは、第三者(他の人)は、その法人が成立していることを「認めない!(否認)」と言うことができる。(37Ⅴ)
「登記してないなら会社として扱わなくていいよ」という強力なカードが他人に与えられています。
外国法人の権利能力の限界(持てない権利)
日本で認められた外国法人であっても、「外国人が享有する(持つ)ことのできない権利」や、「法律・条約中に特別のルールがある権利」は、例外的に取得することができない。(35Ⅱ)
外国法人の過去問演習
問 国、国の行政区画、商事会社又は法律もしくは条約により認許されたもの以外の外国法人は、我が国においては、法人格が認められない。
解答表示
日本が法人格を認める(認許する)のは、「国」「国の行政区画(州や県など)」「商事会社(外国の株式会社など)」、そして**「法律や条約で特別に認められたもの」だけに厳格に限定されています(民法35条1項)。
問 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、我が国において事務所設置の登記をするまでは、他人はその法人の成立を否認することができる。
解答表示
登記をサボっていると、日本の第三者(他人)から「登記してないってことは、お宅ら怪しいから法人として認めないよ!」と突っぱねられて(否認されて)も文句は言えません(民法37条5項)
問 我が国において認許された外国法人は、外国人が享有することができない権利であっても取得することができる。
解答表示
そもそも**「外国人(外国の自然人)」ですら持つことが禁止されている権利**(例えば、国の安全保障に関わるような特定の権利など)を、「外国の『法人』だから」という理由だけで持てるようになるわけがありません(民法35条2項ただし書)