このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「地役権」(第270条から第279条)をまとめたページになります。
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【民法物権】論点「地役権」ガチ解説
地役権の基本(意義・設定・当事者・存続期間)
第二百八十条
「地役権者」は、「設定行為で定めた目的」に従い、「他人の土地」を「自己の土地の便益」に供する権利を有する。ただし、「第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)」に違反しないものでなければならない。
条文構造
【原則】
地役権者は、当事者間の契約で定めた目的に従って、他人の土地を自分の土地のために利用することができる(内容決定の自由)。
【例外(制限)】
ただし、その利用目的や方法は、所有権の限界に関する規定(公の秩序に関するもの)に違反するものであってはならない。
また、あくまで「自己の土地の便益」のためでなければならず、個人的な利益のための利用は地役権としては認められない。
条文の文言
「地役権者」:
他人の土地を利用させてもらう権利を持つ人(要役地の権利者)のこと。
「設定行為で定めた目的」:
通行するため、水を引くため、日当たりや見晴らしを確保するためなど、当事者間の契約(設定行為)によって自由に決めた目的のこと。
「他人の土地」:
便益を提供する側、つまり利用される側の土地(承役地:しょうえきち)のこと。
「自己の土地の便益」:
便益を受ける側、つまり利用する側の土地(要役地:ようえきち)の使い勝手を良くすること。
特定の「人」の利益ではなく、あくまで「土地」自体の価値を高めるための便益でなければならないのがポイントです。
「第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)」:
民法の相隣関係などの規定のこと。いくら当事者間で自由に契約できるといっても、公の秩序(隣人同士の最低限のルールなど、強行規定)に反するような無法な使い方は認められないということです。
地役権は、要役地と承役地が隣接していない場合でも設定することができる
例 眺望地役権
土地A⇒土地B⇒土地Cの順で、離れていた場合で、土地が「素晴らしい景色を見渡せること」という便益を自分の土地(要役地A)に確保するために、他人の土地(承役地C)に対して「一定の高さ以上の建物を建てないこと」などを約束させる地役権です。
地役権のみを目的とする抵当権設定の禁止(282Ⅱ付従性)
*地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。(369)
地役権について存続期間を定めることができる。
存続期間について規定がないことから、当然に設定契約で定めることができる。
ただし、存続期間は地役権の登記事項とされていないので第三者に対抗できない。
地役権は要役地の所有者のみならず、要役地の地上権者や永小作人、賃借人も行使できる。
地役権は、所有者である地主だけでなく、地上権者であっても設定できるが、自身について重複して地役権は設定できない
第二百六十六条 第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。
2 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
条文構造
【大原則】
地上権は 本来「無償」でも成立する権利であるが、特約で「定期の地代」を支払う約束をした場合は、この条文が発動する。
【適用ルール①:永小作権の準用】
地代を支払う場合、まずは同じ物権である「永小作権」のルールが強力に適用される。(例:不可抗力による減額不可、2年以上の滞納で地主から消滅請求される)
【適用ルール②:賃貸借の準用】
上記①のルールでカバーしきれない細かいルール(支払いの時期や、事情変更による地代増減額請求など)については、性質に反しない範囲で、一般的な「賃貸借」のルールを借りてきて適用する。
地代を払う旨の特約は、それを第三者(新しい地主など)に主張(対抗)するためには、地代に関する「登記」が必要です。
地役権の基本(意義・設定・当事者・存続期間):過去問厳選コレクション
地役権の設定要件(要役地と承役地の隣接の要否)
地役権は、要役地と承役地が隣接していない場合には設定することができない。
解答表示
地役権は、要役地の便益になるのであれば、離れた土地間(例:眺望地役権など)でも設定可能です。
地上権と地役権の重複設定の可否
Aが「電線路及びこれを支持するための鉄塔を施設し、保持すること」を目的として、Bからその所有する甲土地(1筆の土地)について地上権の設定登記を受けていた。当該地上権が甲土地の全部を対象として設定されたものである場合には、Aは、「電線路(支持物を除く。)を施設、保持し、その架設・保守のために土地に立ち入ること」を目的としてBから別途、地役権の設定を受けることはできない。
解答表示
すでに甲土地の「全部」を対象に包括的な地上権を取得しているAにとって、その土地に立ち入る目的の地役権は地上権の内容に包含されており、重ねて設定する実益がないため許されません。
地上権者による第三者への地役権設定
Aが「電線路及びこれを支持するための鉄塔を施設し、保持すること」を目的として、Bからその所有する甲土地、一筆の土地の全部について地上権の設定登記を受けていた。当該地上権が甲土地の全部を対象として設定されたものである場合には、Aは、第三者Eのために「電線路(支持物を除く。)を施設、保持し、その架設・保守のために土地に立ち入ること」を目的とする地役権を設定することができる。
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ひっかけポイント: 「地役権は、土地の所有者(B)しか設定できず、地上権者(A)は、第三者のために地役権を設定できないのではないか?」と勘違いさせる点です。
地上権者(A)は土地を全面的に使用する権限を持っているため、その権限の範囲内であれば、第三者(E)に対して有効に地役権を設定(承役地と)することができます。
承役地の一部に対する地役権設定
Aが「電線路及びこれを支持するための鉄塔を施設し、保持すること」を目的として、Bからその所有する甲土地、一筆の土地の全部について地上権の設定登記を受けていた。当該地上権が甲土地の全部を対象として設定されたものである場合には、Bは、甲土地のその余りの部分について、通行地役権を設定することができる。
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ひっかけポイント: 「要役地」は一筆の土地全部でなければならないというルールと、「承役地」のルールを混同させる点です。
便益を提供する側である「承役地」は、一筆の土地の「一部(その余りの部分)」であっても設定可能です。
また、土地所有者Bは地上権者Aの使用を妨げない範囲で設定できます。
地役権のみを目的とする抵当権
地役権は、その権利のみを目的とする抵当権を設定することができない。
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ひっかけポイント: 「地上権」や「永小作権」が単独で抵当権の目的になることから、同じ用益物権である地役権も抵当権の目的にできると思わせる点です。
地役権は要役地と運命を共にする性質(付従性)があるため、単独で抵当権の目的にしたり分離譲渡したりすることは絶対にできません。
地役権の存続期間
地役権について存続期間を定めることができる。
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存続期間について規定がないことから、当然に設定契約で定めることができる。
ただし、存続期間は地役権の登記事項とされていないので第三者に対抗できない。
地役権の有償・無償の自由
地役権は、無償のものとして設定することができない。
解答表示
ひっかけポイント: 永小作権(小作料が必須要件)のルールと混同させる点です。
地役権においては、地代は成立の要素ではないため、有償でも無償でも自由に設定することができます。
地役権の行使権者(地上権者、賃借人、永小作人)
要役地の地上権者又は賃借人は、いずれも地役権を行使することができる。
解答表示
地役権を行使できるのは、要役地の所有者だけでなく、その土地を使用収益する正当な権利を持つ地上権者や賃借人、永小作人も、要役地の便益のために地役権を行使できます。
要役地の地上権者による地役権の行使
Aが所有する甲土地を承役地とし、Bが所有する乙土地を要役地とする通行地役権が設定され、その登記がされた後、Cが乙土地に地上権の設定を受けた場合には、Cは、当該通行地役権を行使することができない。
解答表示
事例問題の形をしていますが、本質は「要役地(乙土地)の地上権者(C)は地役権を使えるか」という前の問題と同じ。
Cは乙土地(要役地)を使用する権利を得たため、Bが設定した通行地役権を当然に行使できます。
地役権の性質①「付従性」と「随伴性」
第二百八十一条
「地役権」は、「要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)」の「所有権に従たるもの」として、その「所有権とともに移転」し、又は「要役地について存する他の権利の目的」となるものとする。ただし、「設定行為に別段の定め」があるときは、この限りでない。
2 「地役権」は、「要役地から分離して譲り渡し」、又は「他の権利の目的」とすることができない。
主役はあくまで土地(要役地)であり、地役権はそのオマケであるという関係性を示しています。
地役権が特定の「人」ではなく「土地(要役地)」の使い勝手を良くするための権利であることから、地役権は要役地と運命を共にすること(付従性・随伴性)を定めた条文です。
条文構造
【原則(1項本文):随伴性】
地役権は要役地の所有権の「オマケ」であるため、要役地が売却されれば一緒に移転し、要役地に抵当権が設定されれば一緒に巻き込まれる。
【例外(1項ただし書):特約の有効性】
ただし、当事者間で「要役地が売却されても、地役権は一緒に移転させない(消滅させる)」といった特約を結ぶことは自由である。
【絶対の禁止事項(2項):分離処分の禁止】
地役権だけを要役地から切り離して別の人に売ったり、地役権だけを担保に入れたりすることは、特約があっても絶対にできない(強行規定)。
条文の文言
「所有権に従たるもの」:
要役地の所有権が「主(メイン)」であり、地役権はそれにくっついている「従(オマケ)」の権利であるということ。
「所有権とともに移転」:
主役である要役地が売却されれば、オマケである地役権も自動的に新しい所有者へと引き継がれる性質(随伴性)のこと。
「要役地について存する他の権利の目的」:
例えば、要役地に抵当権が設定されれば、その効力は当然にオマケである地役権にも及ぶということ。
もし要役地が競売にかけられたら、落札者は地役権ごと手に入れます。
「設定行為に別段の定め」:
当事者間の特約のこと。地役権の移転については、当事者同士の合意で「土地を売っても地役権は移転しない」と決めることが認められています(任意規定)。
「要役地から分離して譲り渡し」:
地役権というオマケの権利だけを切り離して、第三者に売却すること。これは不可能です。
「他の権利の目的」:
地役権だけを担保にしてお金を借りる(抵当権に入れる)ようなこと。これも不可能です。
国民的アニメのストーリ―風
土地と一緒に引っ越す通行ルート(のび太の家の売却)
要件:
のび太の家(要役地)の出入りのために、スネ夫の庭(承役地)の一部を通行させてもらう地役権が設定されているとします。
ある日、のび太の家族が引っ越すことになり、のび太の家と土地を出来杉くんに売却しました。
効果:
原則として、スネ夫の庭を通る権利(地役権)も、家や土地(要役地の所有権)にくっついて、自動的に出来杉くんに移転します。
出来杉くんは、わざわざスネ夫と新しい契約を結ばなくても、スネ夫の庭を通行できます。
例外(注意!):
のび太とスネ夫が最初に契約したとき、「のび太の家族が住んでいる間だけ通してあげる。
他人に売ったら通行権はナシね」という特約(別段の定め)をしていれば、出来杉くんに通行権は移転しません。
しかし、のび太が「家は出来杉くんに売るけど、スネ夫の庭を通行できる権利(地役権)だけは便利だから、ジャイアンに売ってあげよう!」と考えることは絶対に許されません。
通行権だけを切り売りすること(分離処分)は、法律で固く禁じられているからです。
地役権の性質①「付従性」と「随伴性」:過去問厳選コレクション
地役権の性質②「不可分性」
第二百八十二条
「土地の共有者の一人」は、「その持分につき」、「その土地のために又はその土地について存する地役権」を「消滅させることができない」。
2 「土地の分割」又はその「一部の譲渡」の場合には、地役権は、「その各部のために又はその各部について存する」。ただし、地役権が「その性質により土地の一部のみに関する」ときは、この限りでない。
地役権は「特定の人のため」ではなく「土地という物理的なまとまり全体のため」に存在し、あるいは「土地全体」に負担をかけるものであるため、切り売りしたり一部だけを消滅させたりすることはできないという「不可分性」を定めた条文です。
条文構造
【原則①(1項):共有の場合の不可分性】
要役地や承役地が共有されている場合、共有者の一人が勝手に「自分の持分(割合)だけ地役権を消滅させる」ことはできない。
地役権は全員について存続するか、全員について消滅するかのどちらかである。
【原則②(2項本文):分割・一部譲渡の場合の不可分性】
土地が分割されたり一部が売却されたりしても、地役権は消滅せず、分割された「すべての土地」のために、あるいは「すべての土地」の負担としてそのまま存続する。
【例外(2項ただし書):性質上の制限】
ただし、土地が分割された結果、地役権の利用目的(特定の場所の通行など)から見て、明らかに無関係となった部分の土地については、地役権は消滅する(存続しない)。
条文の文言
「土地の分割」・「一部の譲渡」:1つの土地を2つ以上に切り分ける(分筆する)ことや、その切り分けた一部を他人に売却すること。
「その各部のために又はその各部について存する」:土地が複数に分かれても、地役権は分割されたそれぞれの土地のために存続するし、それぞれの土地に対する負担として残り続けるということ。
「その性質により土地の一部のみに関する」:例えば「庭の右端の幅1メートルだけを通行する」という地役権において、土地が左右に分割された結果、右側の土地にしか物理的に関係がなくなったような場合のこと。
国民的アニメのストーリ―風
空き地の通行ルート(ジャイアンとスネ夫の共有地)
要件①(承役地が共有のケース):
のび太の家(要役地)から大通りに出るために、ジャイアンとスネ夫がお金を出し合って買った共有の空き地(承役地)を通行する地役権があるとします。
ある日、ジャイアンがのび太と喧嘩をして、「俺の持分(半分)については、のび太が通る権利を消滅させてやる!」と言い出しました。
効果①:
しかし、地役権は「空き地全体」にかかっているため、ジャイアン一人の一存で自分の持分だけを消滅させることはできません。
のび太はこれまで通り空き地を通行できます。
要件②(要役地分割のケース):
のび太の家の敷地(要役地)が広すぎたので、土地を半分に分割し、半分を出来杉くんに売却しました。
効果②:
この場合、要役地が分かれたからといって地役権が消滅するわけではありません。
のび太も出来杉くんも、それぞれの土地のために、ジャイアンとスネ夫の空き地を通行する権利を持ち続けます。
例外(注意!):
もし、ジャイアンとスネ夫の空き地(承役地)が分割され、ジャイアンの土地とスネ夫の土地に真っ二つに分かれたとします。
のび太の「通行ルート」がスネ夫の土地の側にしかなく、ジャイアンの土地には全くかすっていない場合。
このときは例外として、「物理的に全く関係なくなった」ジャイアンの土地についてのみ、地役権の負担は消滅します。