【司法書士試験】物権「総則」(第175条から第179条)

このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「総則」(第175条から第179条)をまとめたページになります。

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【民法物権】論点「物権総則」ガチ解説

物権の全体像

民法物権の全体像と条文

民法物権の全体像と条文

物権総則(第175条から第179条)

この単元は「条文にズバリ書かれていない」ことが多いですが、判例が作った以下のルール

一物一権主義(いちぶついっけんしゅぎ)
定義:1個の物の一部には独立の物権(所有権など)は存在しない(独立性)、という大原則

そもそも「1筆(いっぴつ)」とは?
不動産登記簿上で「1つの土地(1個の物)」としてカウントされている単位のことです。
これを2つの土地に分ける手続きを「分筆(ぶんぴつ)」と呼びます。

一筆の土地の一部(一物一権主義の例外)
定義:「1筆の土地の一部」とは、「役所の書類(登記簿)上は『1つの土地』としてカウントされているけれど、物理的に線を引いた『その右半分』などの一部分」**のこと。
要件と効果:一筆の土地の一部であっても、分筆の登記をすることなく、独立して売買の対象とすることができ、当事者間では有効に所有権が移転する
理由:土地の一部だけを取引する社会的な必要性があり、当事者間であれば公示(登記)がなくても範囲が特定できるから

物権的請求権
返還請求権:「奪われたから、返して!」
妨害排除請求権:「今邪魔されているから、どかして!」
妨害予防請求権:「このままだと危ないから、なんとかして!」

物権的請求権の基本ルール
定義:自分の物が誰かに邪魔されている時に、「返して!」「どかして!」と言える権利。明文の規定はないが、所有権の性質から当然に認められる(202Ⅰ、206参照)
要件:
・相手の故意(わざと)や過失(うっかり)は不要。不可抗力でもOK。
・相手の責任能力(事の良し悪しがわかる能力)も不要。
効果:
・この最強パワーは、所有権が生きている限り、消滅時効によって消えることは絶対にない。
・自分が直接言えなくても、債権者代位権を使って「代わりに」行使してもらうことができる。
・抵当権者(お金を貸す代わりに土地を担保にとっている銀行など)も、土地の価値が下がるような邪魔をされたら、このパワーを使える。

物権的請求権の「相手方」のルール
原則:
「処分権限を持たない無権利者」には請求できない。「現実に今、妨害している人(現在の所有者など)」が相手になる。
例外:
無権利者であっても、①他人の土地に不法に建物を建てた人が、「②自らの意思に基づいて建物の所有権取得の登記をした者」である場合は、建物を他人に譲渡した後でも、登記名義を持っている限り、土地の所有者から「建物をどかせ」と請求される。
ただ名前を貸しているだけの無権利者(登記名義人)には請求できない

担保物権も物権である以上、物権的請求権を持つ。
ex.
建物が損傷された場合の、抵当権に基づく妨害排除請求権
搬出された伐木の、抵当権に基づく返還請求
抵当権が設定されている山林の立木の伐採・搬出の差止め、抵当権に基づく妨害排除請求権
不動産質権に基づく返還請求
*留置権者や動産質権者が、目的物の「占有」を奪われてしまった場合、彼らは「留置権(または動産質権)に基づいて返して!」と主張することはできません(民法353条)
⇒留置権や動産質権が奪われた時は「占有回収の訴え」で取り返すしかない。

賃借権の物権化:不動産賃借権の物権的請求権(民法605条の4第2項、最判昭28.12.18)
原則として、賃借権はただの債権にすぎないため、物権的請求権を行使することはできません。
しかし、例外として、**「第三者に対抗することができる不動産賃借権(対抗力を備えた不動産賃借権)」**を有する者は、その賃借権に基づいて、不法占拠者に対して直接、妨害排除請求(建物の収去や土地の明渡しなど)を行うことが認められています

不動産賃借権の対抗要件とは
原則(土地・建物 共通)賃借権の登記(民法605条)
例外①(借地借家法10条1項)土地の賃借権(借地権):
土地の賃借権の登記がなくても、その土地の上に借地権者自身が登記(所有権保存登記など)をした建物を所有していれば、第三者に土地の賃借権を対抗することができます
例外②(借地借家法31条1項)建物の賃借権(借家権):
建物の賃借権の登記がなくても、建物の引渡し(鍵を受け取って住める状態になる等)を受けていれば、その後その建物について権利を取得した第三者に対抗することができます

ちなみに借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

付合のルール
定義:別々の持ち主の物が、くっついて取り外せなくなり、法律上「一つの物」になってしまうこと(242本文)。
例:
他人の土地に無断で植えた木は、土地と一体化(付合)してしまい、一旦は**「土地の所有者の物」**になります。
原則:自分の物である以上、無権原者に「原状回復しろ」とは言えなくなる。
例外:物の一部の時効取得
しかし、その木を無権原者が「自分の物だ」と信じて平穏かつ公然に20年間占有し続けた場合、「付合した木(土地の一部)」だけを独立して時効取得することができます(最判昭38.12.13)
結論:無権原者から所有者への損害賠償請求の可否
したがって、元の土地所有者が勝手に伐採すれば、元無権限者は、所有権侵害として損害賠償請求をすることができます

共有における保存行為
定義:共有物の滅失・毀損を防ぎ、その現状を維持するための行為のこと。
効果:不法占拠者を追い出すような「保存行為」は、他の共有者の許可をもらわなくても、各共有者が「単独で(一人で)」行うことができる。(252Ⅴ)

物権総則:過去問演習

問(一物一権主義の例外)
Xは、Aから昭和50年1月にA所有の1筆の土地の一部を買い受け、引渡しも受けたが、未登記のまま放置していた。その後、Xは昭和55年ころ、買い受けた土地上に樹木を植えた。しかし、昭和58年2月になって、Aは同土地の全部がいまだ自己名義に登記されているのを幸いに、Yに対して同土地の全部及びXの植えた樹木を自分のものであると偽って売却し登記も済ませた。この場合、土地の分筆の登記がされていないから、XとAとの間の1筆の土地の一部の売買によっては、所有権移転の効力は生じない。

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正解:×(第一譲渡の時に所有権移転の効力自体は生じる!)

第1段階:「まず、1筆の土地の一部を、XA間で売買することはできるのか?」
結論:一物一権主義の例外ではあるが、できる!所有権は移動する(当事者間では有効)。

第2段階:「じゃあ、Xへ所有権は移動したけど、後から登記を持っていったYには勝てるのか?」
結論:勝てない!(177条のルール通り、対抗できない)

問(不動産の付合と原状回復請求)
建物を不法に占有している者が増築をした場合において、当該増築部分が建物の構成部分となっているときは、建物の所有者は、不法占有者に対し、当該増築部分を原状に復すよう請求することができる。

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正解:×
増築部分が建物の構成部分となった以上、付合により建物所有者が増築部分の所有権を取得する(242)ので不法占有者に所有権に基づき増築部分を原状に戻すよう請求することはできない。

問(立木の付合と時効取得)
BがA所有の甲土地上に無権原で立木を植栽した場合において、Bが所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間立木の占有を継続した後に当該立木をAが伐採したときは、判例の趣旨に照らし、Bは、Aに対し、立木所有権の侵害を理由として損害賠償を請求することができる。

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正解:〇(時効所得により無権原者が所有権を取得するので、損害賠償請求できる)
原則として、付合により、立木の所有権は、土地所有者のもの。
しかし、時効取得によって、無権限者のものになる。

問(物権的請求権(妨害予防請求権)の相手方)
Aがその所有する甲土地を深く掘り下げたために隣接するB所有の乙土地との間で段差が生じて乙土地の一部が甲土地に崩れ落ちる危険が発生した場合には、Aが甲土地をCに譲渡し、所有権の移転の登記をしたときであっても、Bは、Aに対し、乙土地の所有権に基づく妨害予防請求権を行使することができる。

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正解:× Bの物権的請求権の相手方はCである。
物権的請求権の「相手方」のルール
原則:「現実に今、妨害している人(現在の所有者など)」が相手になる。前の持ち主には請求できない。

問(物権的請求権(妨害予防請求権)の要件(相手方の故意・過失の要否))
A所有の甲土地に隣接する乙土地がその所有者Bにより掘り下げられたため、甲土地の一部が乙土地に崩落する危険が生じた場合において、当該危険が生じたことについてBに故意又は過失がないときは、Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、甲土地の崩落を予防するための設備の設置を請求することができない

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正解:× 
Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、甲土地の崩落を予防するための設備の設置を請求することができる。
物権的請求権である妨害予防請求権は、相手方の故意又は過失は不要である。

問「共有物の保存行為(不実の持分移転登記の単独での抹消請求)」
A及びBが共有する甲土地のBの持分がCに売り渡され、その旨の登記がされたものの、当該持分の売買契約が虚偽表示により無効である場合には、Aは、Cに対し、その持分権に基づき、当該登記の抹消登記手続を請求することができる。

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正解:〇
AはCに対し、その持分権に基づき、当該登記の抹消登記手続を請求することができる。
不動産の共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができる
不実の持分移転登記がされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができる
よって、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる

問 【論点:物権的返還請求権の相手方】 典型例
Aの所有する甲土地を賃借しているBが、Cの所有する乙動産を賃借して甲土地上に置いていたところ、その後、AB間の賃貸借契約が終了したが、Bが乙動産を甲土地上に放置しているときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権に基づき、乙動産の撤去を請求することができる。

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正解:〇(撤去を請求することができる)
物権的返還請求権の相手方は、現に無権原で他人の物を占有している者(Bさん)、または、妨害物の所有者(Cさん)など他人の物への侵害状態を除去することができる者である

問 【論点:物権的請求権の行使と相手方の責任能力】
Aの所有する甲土地から、Bの所有する乙土地に土砂が流れ込むおそれがある場合には、Aが自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあっても、Bは、Aに対し、乙土地の所有権に基づき、予防措置を請求することができる。

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正解:〇(責任能力がなくても予防措置を請求することができる)
物権的請求権を行使するにあたっては、相手方の故意・過失が不要であるのと同様に、相手方に「責任能力」があることも要件とはなりません

問 【論点:物権的請求権の相手方(自らの意思で登記をした者)】
A所有の土地上に不法に建てられた建物の所有権を取得し、自らの意思に基づきその旨の登記をしたBは、その建物をCに譲渡しとしても、引き続きその登記名義を保有する限り、Aに対し、自己の建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れることはできない。

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正解:〇(免れることはできない)
「登記を残したまま逃げるヤツは許さない」不法占拠者である以上、無権利者Bはそのような義務を負う
原則として、土地の所有者(A)が「建物をどかして土地を返せ(建物収去土地明渡し請求)」と言うべき相手は、**「今現在、その建物を所有して土地を実質的に占有している者(C)」**です
しかし、今回のBのように、**「自らの意思に基づいて建物の所有権取得の登記をした者」**については例外ルールが発動します
Bがすでに建物をCに売却(譲渡)して実質的な所有者ではなくなっていたとしても、引き続きその登記名義を保有している限り、BはAに対して「もう俺の建物じゃないから、明渡しの義務はない!」と主張して逃げることはできません

問 【論点:物権的請求権の相手方(合意により登記名義人となった者)】
A所有の甲土地の上に、Bが乙建物をAに無断で建築して所有しているがBとの合意によりCが乙建物の所有権の登記名義人となっているにすぎない場合には、Aは、Cに対し、甲土地の所有権に基づき、乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

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正解:×(請求することはできない)
「登記を持っていたら請求できる」という判例はない。
ポイントは、請求権の相手方に、「建物を壊す権限(処分権限)」があるかどうか
あくまでも、自分が所有者として自ら登記をしたのに、売った後も登記を放置して逃げているヤツには請求できる!という判例はある
本問、Cさんは、Bさんとの合意で名前を貸しただけの**「最初から1ミリも所有権を持っていない無権利者(ただの名義人)」です。
もしAさんがCさんに対して「建物を壊せ!」と命じて、Cさんがそれに応じようとしても、Cさんは建物の所有者ではないため、「他人の物(Bの建物)を勝手に壊す権限」をそもそも持っていません

問 【論点:物権的請求権の行使と登記の要否(対 不法占拠者)】
A所有の甲土地上にBが乙建物をAに無断で建築して所有している場合において、Aが甲土地の所有権の登記名義人でないときは、Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができない。

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正解:×(登記がなくても明渡しを請求することができる)
真の所有者である以上、何の権利もない不法占拠者に対しては、登記なんて持っていなくても堂々と請求することができます。
Bは177条の「第三者」には該当せず

問 【論点:物権的請求権の相手方(合意により登記名義人となった者)】
Aの所有する甲土地の上にBが無権原で自己所有の乙建物を建てた後、乙建物につきBの妻であるCの承諾を得てC名義で保存の登記がされたときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権に基づき、建物収去土地明渡しを請求することができない。

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正解:〇(請求することはできない)
Cは、他人の建物(Bの建物)を勝手に壊す権限(処分権限)をそもそも持っていません。

問 【論点:物権的請求権の相手方(自らの意思に基づかない登記名義人)】
Aの所有する甲土地の上にBが無権原で自己所有の乙建物を建てた後、その所有権の保存の登記をしないまま、Cに乙建物を譲渡した場合において、乙建物につき、Aの申立てにより処分禁止の仮処分命令がされ、裁判所書記官の嘱託によるB名義の所有権の保存の登記がされたときは、Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、建物収去土地明渡しを請求することができる。

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正解:×(請求することはできない)
Bは所有権を持っていないから収去できない
この事案でBさん名義の登記がされたのは、Bさんが自ら進んで行ったからではなく、Aさんの仮処分申立てによって裁判所が勝手に(強制的に)やったにすぎません
「自ら登記しておいて逃げる無責任なヤツには鉄槌を下す!」という例外ルールは発動せず
原則通り「今現在、建物を所有して土地を不法占拠している実質的な所有者(Cさん)」を相手に請求しなければなりません

問 【論点:他人物売買と物権的請求権(所有権に基づく返還請求)】
未成年者Aは、単独の法定代理人である母親Bの所有する宝石をBに無断で自己の物としてCに売却し引き渡した上、代金50万円のうち30万円を受け取り、そのうち10万円を遊興費として消費してしまった。他方、Cは、Aに対し、残代金を支払わない。Bは、A・C間の売買が取り消されない限り、Cに対し、所有権に基づき宝石の返還を請求することができない。

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正解:×(取り消さなくても返還請求することができる)
真の所有者はA母であるから、返還請求できる
これは単なる「他人物売買」: Aくんは「Bの代理人」として売ったわけではなく、「自己の物として(自分のものだと嘘をついて)」売却
結論:取消しなんて面倒な手順は不要!

問【論点:担保物権と物権的請求権】
担保物権者は、物権的請求権を行使することができない。

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正解:×(担保物権者も行使することができる)
ex.
建物が損傷された場合の、抵当権に基づく妨害排除請求権
搬出された伐木の、抵当権に基づく返還請求
抵当権が設定されている山林の立木の伐採・搬出の差止め、抵当権に基づく妨害排除請求権
不動産質権に基づく返還請求
*留置権者や動産質権者が、目的物の「占有」を奪われてしまった場合、彼らは「留置権(または動産質権)に基づいて返して!」と主張することはできません(民法353条)
⇒留置権や動産質権が奪われた時は「占有回収の訴え」で取り返すしかない。

問 【論点:占有回収の訴えの期間制限と、対抗要件を備えた不動産賃借権に基づく妨害排除請求】
A所有の建物をBが抵当権を設定した後に、Aがその建物をCに賃貸して引き渡した場合、第三者DがCの知らない間に建物の不法占拠を始めた場合であっても、その時から1年が経過したときは、CはDに対して建物の明渡しを請求することができない。

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正解:×(請求することができる)
対抗要件を備えた不動産賃借権に基づく妨害排除請求(使える!)
本問、Cさんはすでに建物の「引渡し」を受けており、借地借家法上の対抗要件を備えています
*占有回収の訴え(使えない)「占有を奪われた時から1年以内(201)」

問 【論点:対抗力を備えた土地賃借権に基づく妨害排除請求】
第三者に対抗することができる土地の賃借権を有する者は、その土地上に不法に建物を建ててこれを使用している者に対し、当該賃借権に基づき建物の収去及び土地の明渡しを請求することができる。

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正解:〇(請求することができる)
原則として、賃借権はただの債権にすぎないため、物権的請求権を行使することはできません。
しかし、例外として、**「第三者に対抗することができる不動産賃借権(対抗力を備えた不動産賃借権)」**を有する者は、その賃借権に基づいて、不法占拠者に対して直接、妨害排除請求(建物の収去や土地の明渡しなど)を行うことが認められています(民法605条の4第2項、最判昭28.12.18)

不動産賃借権の対抗要件とは
原則(土地・建物 共通)賃借権の登記(民法605条)
例外①(借地借家法10条1項)土地の賃借権(借地権):
土地の賃借権の登記がなくても、その土地の上に借地権者自身が登記(所有権保存登記など)をした建物を所有していれば、第三者に土地の賃借権を対抗することができます

問 【論点:借地借家法による対抗要件と妨害排除請求】
Aが、Bから賃借している土地上に建物を所有し、所有権保存登記を経由している場合において、この土地の一部を隣地所有者Cが占拠した。この場合、AからCに対する妨害排除請求が認められる。

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正解:〇(妨害排除請求が認められる)
「第三者に対抗することができる不動産賃借権(対抗力を備えた不動産賃借権)」**を有する者は、その賃借権に基づいて、不法占拠者に対して直接、妨害排除請求(建物の収去や土地の明渡しなど)を行うことが認められています
そして、土地の賃借権の対抗要件は、民法上の「賃借権の登記」だけでなく、借地借家法10条1項により「借地上の自己所有建物の登記(保存登記)」をすることでも具備されます

問 【論点:請求権の競合(契約上の請求権と物権的請求権)】
Aがその所有する甲土地をBに賃貸して引き渡し、その後、AB間の賃貸借契約が終了したが、Bがその所有する乙動産を甲土地に放置している場合において、AがBに対し賃貸借契約の終了に基づき乙動産の撤去を請求することができるときは、Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、乙動産の撤去を請求することができない。

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正解:×(所有権に基づき、撤去を請求することができる)
請求権の根拠は複数あってよい
このケースでは、AさんはBさんに対して以下の2つの武器(請求権)を持っています。
契約に基づく請求権(債権的請求権):賃貸借契約の終了に基づく原状回復・目的物返還請求としての撤去請求
所有権に基づく物権的請求権:甲土地の所有権に基づく妨害排除請求としての撤去請求
自分にとって都合の良い方(たとえば、立証しやすい方など)を選択的に行使することができます

ちなみに、【使い勝手】契約に基づく債権的請求権のメリット
① 証拠(立証)が超絶ラク
所有権に基づく請求をする場合、裁判で「私がこの土地の真の所有者である」という大前提から証明しなければならないことがあります(登記簿や過去の売買の経緯など)。 しかし、契約に基づく請求であれば、**「あんた、私とこの賃貸借契約書にサインしたよね? 契約が終わったんだから原状回復して返せ」**と言うだけで済みます。
② 違約金や遅延損害金などもセットで請求しやすい
契約上の請求であれば、「期限までに撤去しなかったら1日〇〇円の遅延損害金を払う」「原状回復にかかる費用はすべて借主が負担する」といった**契約書上の特約(ルール)**をそのまま適用して、スムーズに費用を回収することができます。

問 【論点:物権的請求権の相手方(増築部分の所有者)】
Aが、Bの所有する甲建物に無権原で増築をし、当該増築部分が甲建物の構成部分となった場合でも、Bは、Aに対し、甲建物の所有権に基づき、当該増築部分の撤去を請求することができる。

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正解:×(撤去を請求することはできない)
「付合」による所有権の吸収(民法242条本文)⇒自分の物を相手に「壊せ」とは言えない
※もしAが正当な「権原(賃借権など)」を持っていれば例外になりますが、本問のAは「無権原」で増築しているため、例外には当たらずBのものになります
※ちなみにこの後、AさんからはBさんに対して「俺が建てた増築部分をもらっちゃったんだから、その分の建築費用(お金)を払え!」という不当利得返還請求(償金請求)をしていくことになりますが、撤去はできません

問 【論点:所有権留保売買における売主の撤去義務】
Aの所有する甲土地上にBがCから購入した乙自動車がAに無断で放置されている場合において、B C間の売買契約上、Bの代金債務の担保として乙自動車の所有権はCに留保される旨及びBが期限の利益を喪失して残債務の弁済期が経過したときはCはBから乙自動車の引渡しを受け、これを売却してその代金を残債務の弁済に充てることができる旨の合意がされており、Bが期限の利益を喪失してその残債務の弁済期が経過したときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権に基づき、乙自動車の撤去を請求することができる。

解答表示
正解:〇(撤去を請求することができる)
Aは、車を引き上げる権限(処分権限)を現実に取得したCに対して請求できる
ちなみに、弁済期が到来する前(まだ滞納していない時)売主Cは車の「名義上の所有者」ではありますが、契約上まだ車を引き上げて処分する権限を持っていません。したがって、この段階ではCに対して「どかせ」と請求することはできません。

問 【論点:不可抗力による妨害と物権的妨害排除請求権】
不可抗力により妨害が生じた場合には、物権的妨害排除請求権を行使することができない。

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正解:×(不可抗力による妨害でも行使できる)
例 台風などの不可抗力で隣の家の屋根が飛んできた場合でも、相手に落ち度があるかどうかに関わらず、「客観的に俺の土地が邪魔されているからどかしてくれ!」と堂々と妨害排除請求をすることができます

物権変動の時期

物権変動の時期の原則(意思主義)
物の持ち主が変わる(物権の設定及び移転)のは、当事者が「売る」「買う」という意思表示(約束)をするだけで、その効果が生じる。

所有権移転時期
所有権は、その移転を阻害する法律上の障害がある場合には、その障害がなくなった時に当然に移転する。

特定物の所有権移転時期
特定物(この世に1つしかない物。
「この家」や「この中古車」など)の売買では、原則として【売買契約が成立した時】に所有権が移転する。

不特定物の所有権移転時期
不特定物(どれでもいい種類のもの。
「ビール1ダース」など)の売買では、どれにするかハッキリ決まった【目的物が特定した時】に所有権が移転する。

他人物売買の所有権移転時期
他人の物を売る契約をした場合、契約した時点では所有権は移転しない。
⇒所有権の移転を阻害する法律上の障害がある場合とは、売主が本当の持ち主からその物の所有権を手に入れた時
この時に買主に当然に所有権が移転する。昔にさかのぼって移転するわけではない。

解除条件付売買の所有権移転時期
当事者間で「期限までに代金を支払わないときは契約が失効する(解除条件付き)」といった特別な約束(特約)がある場合
⇒所有権の移転を阻害する法律上の障害がある場合とは、条件が成就しなかった時
*契約の時点で当然に所有権が移転することはない。

不動産物権変動の対抗要件(登記の早い者勝ちルール)
不動産(土地や建物)の権利の移動は、登記をしなければ、正当な利益を持つ「第三者」に「自分のものだ!」と主張(対抗)することができない。
条文:
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない(177)。

物権変動の時期:過去問演習

問 【論点:動産の所有権移転時期】
売買の目的物が動産である場合には、その所有権が買主に移転するのは、その引渡しの時である。

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正解:×(引渡しの時ではなく、意思表示の時に移転する)
民法176条には、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と明確に規定
対象が動産であろうと不動産であろうと、原則として「買います」「売ります」という契約(意思表示)が成立した瞬間に、所有権は買主に移転します

問 【論点:特定物の所有権移転時期】
特定物の売買において、当事者間に所有権の移転時期に関する特約がない場合、目的物の所有権は、代金の支払いや目的物の引渡しの時に買主に移転する。

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正解:×(代金支払いや引渡しの時ではなく、契約成立時に移転する)
特定物(この世に一つしかない中古車や土地など)の売買において、特別な約束(特約)がない限り、所有権は**大原則通り「売買契約が成立した時(意思表示が合致した時)」**に買主に移転します

問 【論点:他人物売買の所有権移転時期】
第三者が所有する物の売買においては、他人の物の売買であることが契約において明示されているかどうかにかかわらず、その所有権は売買契約の成立時には買主に移転しない。

解答表示
正解:〇(契約の成立時には移転しない)
第三者所有物の場合、無権利者であるから、ただちには移転しない
本設のような他人物売買の場合、売主が後日目的物の所有権を取得し処分権限を有するに至った時に、買主に当然に所有権が移転することになる

所有権は、その移転を阻害する法律上の障害がある場合には、その障害がなくなった時に当然に移転する。

問 【論点:他人物売買における所有権移転時期と遡及効】
AがB所有の甲土地をBに無断でCに売却し、その後、AがBから甲土地を購入した場合には、Cは、Aから甲土地を購入した時点に遡って甲土地の所有権を取得する。

解答表示
正解:×(購入した時点に遡るわけではない)
所有権は、その移転を阻害する法律上の障害がある場合には、その障害がなくなった時に当然に移転する
本問では、AがBから甲土地を購入した時点。CがAから甲土地を購入した時点ではない。

問【論点:解除条件付売買と所有権移転時期】
Aが、倉庫に寄託中のA所有の動産甲を、約定日時までに代金を支払わないときは契約が失効する旨の解除条件付きでBに売却した場合には、Bは、売買契約が締結された時点で動産甲の所有権を当然に取得する。

解答表示
正解:×(契約締結時点では当然には取得しない)
原則:所有権は、その移転を阻害する法律上の障害がある場合には、その障害がなくなった時に当然に移転する。
解除条件付売買の場合、条件が成就しなかった時

不動産物権変動と登記

民法177条の「第三者」とは
「当事者及びその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(ないこと)を主張する正当な利益を有する者」を指します。

登記なくして対抗できる相手(177条の「第三者」にあたらない者)
背信的悪意者:単に悪意(知っている)だけでなく、人をハメてやろうという背信性を持つ者。
*背信的悪意者からの転得者は、人ごとに個別に(相対的に)判断するため、原則「第三者」にあたらない
不法占拠者・不法行為者:勝手に土地に住み着いたり、無権原で建物を建てたりした者。
無権利者・不実の登記名義人:実体上の権利がないのに、勝手に書類を偽造するなどして登記を備えているだけの者。
前主などの当事者:自分に土地を売ってくれた本人(A→B→Cと売られた場合の、Cから見たAなど)。
単なる一般債権者
他人のために登記を申請する義務を負う者:(不動産登記法5条2項)。

他人のために登記を申請する義務を負う者とは?
例:登記手続きを依頼された司法書士や代理人などをさし、自分名義に登記をしてしまった場合の話です。
自分が登記をサボったり妨害したりしておきながら「お前、登記持ってないじゃん!」と主張することは、信義則上許されません(不動産登記法5条2項)
177条の保護されるべき「第三者(正当な利益を有する者)」からは除外される(=背信的悪意者と同視される)

【登記が必要】正当な利益を有する者(177条の「第三者」に当たる者)
単なる悪意者:先に買われたことを知っていただけで、悪巧みをしていない者(自由競争の枠内)。
対抗要件を備えた不動産の賃借人:土地や建物を適法に借りて、対抗要件を備えている者。
仮差押債権者:裁判所の手続きを踏んで仮差押えをした債権者。
※もちろん差押債権者も該当する
※ただし、差押えをしていない「単なる一般債権者」は第三者に当たらない。
特定遺贈を受けた者:遺言で「この土地をあげる」と言われた者と、相続人から土地を買った者は対抗関係になる。
他の共有者
抵当権者

【94条2項の類推適用(不実の登記の「長期間放置」と帰責性)】
事例
1,本当はABの共有であったが、Aの単独登記という虚偽の外観
2,Bはこれを長期間放置
3,Cはこれを知らずにAから譲り受けた
94条2項を類推適用により、善意の第三者Cを保護。

【論点:無効な登記の流用】
事例
1,AがBと通謀虚偽表示、B名義の登記を作った
2,AがBに「本当に」土地を売却
3,「有効な登記」として復活(流用)します
もし、Aが「Cに売却した」後で「Bに真実に売却した」場合、これはAを起点とした【CとBの二重譲渡(対抗関係)】となります。
この場合、すでに登記を(結果的に)備えているBが、登記のないCに対して確定的に勝つことになります

【登記できる権利】
<物権>
所有権:最強の物権。
地上権:建物を建てるために他人の土地を使う権利
永小作権:農業をするために他人の土地を使う権利
地役権:自分の土地の利便性(通行など)のために他人の土地を使う権利
抵当権:不動産を担保にお金を貸す最強の権利
不動産質権:不動産を借金のかたに預かる権利
※動産質権は登記不可
不動産先取特権:不動産の工事や売買で発生した未払い金を、他の債権者より優先して回収できる権利

<物権以外で登記できるもの>
不動産賃借権(債権)(民法605条)
不動産買戻権(形成権/債権的権利)不動産を売却した売主が、代金と契約費用を返還して「やっぱり契約を解除して取り戻す!」と言える権利です。(579)
配偶者居住権(家族法上の権利)被相続人(亡くなった方)の配偶者が、相続開始時に住んでいた建物を、居住用建物の所有者に対して、無償で使用・収益できる権利です。(1028Ⅰ)
採石権(特別法上の権利):石を切り出す権利
債権譲渡の登記

【登記できない権利】(現場主義・事実状態重視の無法者たち)
留置権(時計の修理代を払ってもらうまで時計を預かっておく権利など)
占有権(今、現実に物を持っているという事実状態)
動産に関する物権(動産質権、動産先取特権など):動産の武器(対抗要件)は「登記」ではなく「引渡し(現実に渡すこと)」だからです
入会権(いりあいけん:村の人たちが共同で山や森を利用する権利)
水利権:水を引いているという事実状態を重視
一般の先取特権:日用品の供給や給料の未払いなど、特定の不動産に紐付かない権利
これらの権利は、その性質上(例えば、手元に置いておくこと自体が武器になる留置権や占有権など)、わざわざ国に名前を登録する「登記」というシステムに馴染まないため、登記することができません

債権者代位権とは?
債権者(A)が、自分の債権を回収するために、サボっている債務者(B)に代わって、Bが第三者(C)に対して持っている権利を代わりに行使する制度(民法423条)
(制度の目的)債務者の「責任財産を保全する」こと
4つの要件:
① 原則として「金銭債権」であり、かつ「弁済期」にあること
② 債務者(B)が「無資力(お金がない状態)」であること(保全の必要性)
③ 債務者(B)が「自ら権利行使をしていない」こと
④ 代位行使する権利が、行使上および帰属上の「一身専属権」ではないこと
【行使できない例】慰謝料請求権(額が確定する前)、離婚時の財産分与請求権(内容が確定する前)、扶養請求権など。など。

債権者代位権の「転用」(例外パターン)
転用例①:移転登記請求権の代位行使【民法第423条の7】
土地がA ⇒ B ⇒ Cと譲渡されたが、登記がAにあるケース。
中間省略登記の禁止:Cは、Aに対して直接「俺に登記をよこせ!」とは言えない
Cは、BのAに対する移転登記請求権を代位行使できる。
ステップ1:Cは、サボっているBの代わりに「AからBへ登記を移せ」とAに請求する(代位行使)
ステップ2:Bに登記が移ったら、CはBに対して「BからCへ登記を移せ」と請求する
【民法第423条の7】4つの要件の修正:
「登記手続を請求する権利(特定債権)」の保全を要件
無資力要件は不要
③ 債務者(B)が「自ら権利行使をしていない」こと
④ 代位行使する権利が、行使上および帰属上の「一身専属権」ではないこと

転売事例(A⇒B⇒C)の連続無効の登記リカバリー
事例:「AからB」「BからC」の契約がどちらも無効だったことが判明
真の目的:現在の登記名義人「C」から、本当の持ち主である「A」のところへ登記を戻したい!
ルート①:
まず、「Cの登記」を抹消する(登記がBに戻る)「Bが、Cに対して、Cの登記の抹消を請求する」or「Aが、Cに対して、Cの登記の抹消を請求する」どちらでもOK
次に、「Bの登記」を抹消する(登記がAに戻る)
ルート②:究極のショートカット「真正な登記名義の回復」ルート
やり方 CからAへ直接「所有権移転登記」をする。
「A」しか使えない!「Aが、Cに対して、Aへの直接移転を請求する」
*Bが、Cに対して、Aへの直接移転を請求することはできない

登記引取請求権
登記引取請求権とは?
未完了の所有権移転登記を引き取る(名義を変更する)よう求める権利
認められる理由
放っておけば、毎年固定資産税の請求が来てしまったり、土地で何か事故があった時に責任を問われたりするリスクがあります。
また、不動産登記は原則として「当事者の共同申請」でしか行えない
単独で自分の名前を消すことはできません。
そこで、「私の登記手続きに協力しろ!(登記を引き取れ!)」と請求する権利が認められる

中間省略登記の可否
事例:土地が A ⇒ B ⇒ C と順番に売買された。
状況:しかし、登記はまだ最初の「A」のところにある。中間のBを飛ばしてAからCへ直接登記を移したい(中間省略登記)
原則は不可(理由:権利変動の過程を登記に忠実に反映しなければならない)。
ただし「A・B・C全員の同意」があれば例外的にOK!

「解除と第三者」
解除『前』**に現れた第三者:解除の効果の原則と例外の関係であり、登記が保護要件(545Ⅰ但)
解除『後』**に現れた第三者:177条の対抗関係であり、登記の早い者勝ち
いずれの場合にも、第三者が勝つには登記が必要だが、ただ、本人が主張できるか否かは、話が違ってくる。
解除『前』**に現れた第三者:本人は登記がなくても主張できる。理由:原則と例外の関係だから
解除『後』**に現れた第三者:本人は登記がなければ主張できない。理由:対抗関係だから

事件の「前」の第三者と登記の要否まとめ
1、表意者(本人)が絶対に勝つグループ:第三者を保護する規定が存在しません
制限行為能力(未成年・成年被後見人・被保佐人・被補助人)による取消し(120、121)
強迫による取消し(96Ⅲ反対解釈)
相続放棄『前』の第三者(939条)
取得時効完成『前』の第三者(144)
2、【条件付き】第三者が勝つグループ
詐欺による取消し(96Ⅲ):「善意無過失」の第三者
錯誤による取消し(95Ⅳ):「善意無過失」の第三者
虚偽表示による無効(94Ⅱ):「善意」の第三者
心裡留保による無効(93Ⅱ):「善意」の第三者
失踪宣告の取消し(32Ⅰ後):契約当事者の「双方善意」
解除前の第三者(545Ⅰ但):「登記」が必要 *主観要件なし
遺産分割前の第三者(909但):「登記」が必要 *主観要件なし

事件の「後」の第三者と登記の要否まとめ
原則として177条の登記の先後の対抗問題となる。例外として相続放棄。
1、177条の対抗問題になるグループ(登記の早い者勝ち)
制限行為能力による取消し『後』の第三者
詐欺による取消し『後』の第三者
強迫による取消し『後』の第三者
解除『後』の第三者
取得時効完成『後』の第三者
遺産分割『後』の第三者
遺贈(遺言)による受遺者と、相続人から買った第三者
2、本来の権利者が絶対に勝つグループ
相続放棄『後』の第三者:相続放棄の遡及効は絶対的(939条)

単元《相続と登記》のセンターピン(本質)
相続や遺言での争いは、「本来もらえるはずの基本の取り分(法定相続分)」なら素手(登記なし)で勝てる
しかし、「基本より多くもらった分」や「話し合いの『後』に現れたライバル」には、武器(登記)がないと絶対に勝てない!

共同相続と無権利処分(勝手に売られた場合)
相続人の一人が勝手に単独名義の登記をして第三者に売却した場合、他の相続人は「自己の持分」については、登記なくして第三者に対抗することができる。(最判昭38.2.22)
この場合、第三者への売却は「勝手に売った本人の持分」については有効であるため、他の相続人は登記の「全部抹消」は請求できず、自己の持分についての「一部抹消」しか請求できない。

一部抹消登記請求とは?
具体例:
Aが死亡し、妻B、子供Cが相続した。
CがAの相続不動産を勝手に単独登記して、第三者Dに売却し登記までしてしまった。
妻BはDに一部抹消登記請求をした。
解説:
「一部抹消」というのは、文字通りに登記の一部を消しゴムで消すことではなく、「単独所有になっている状態から、間違っている部分(持分)の効力だけを打ち消して、正しい状態に直すこと『共有名義への書き換え』」を意味する。
方法①:更正(こうせい)登記 「D単独所有」という登記自体が間違っていたので、最初から「BとDの共有(持分2分の1ずつ)」だったことに修正(更正)する。
方法②:持分移転登記(真正な登記名義の回復) 現在の「D単独所有」という登記のうち、Bの取り分(2分の1)だけをDからBに移転させる。つまり、DからBへ**「持分2分の1の移転登記」**をする。

被相続人の生前譲渡と、相続人からの譲渡
被相続人A(亡くなった人)から生前に土地を買った人Bと、相続人C(Aと同視)から死後に土地を買った人Dは「対抗関係(177条のライバル)」に立つ。BとDの勝敗は登記で決まる。(大判大15.4.30)

相続分の指定(遺言)と登記(★超重要・令和元年改正法)
「相続させる」旨の遺言等により、法定相続分(基本の取り分)を超える権利を取得した場合、その超えた部分については、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。(899の2Ⅰ)

遺産分割と第三者
遺産分割の「前」の第三者:遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生ずるが、「第三者の権利を害することはできない」。この第三者が保護されるには登記が必要である。(909ただし書)
遺産分割の「後」の第三者:遺産分割により権利を取得した相続人と、分割「後」に他の相続人から持分を買い受けた第三者は「対抗関係(177条)」に立つ。勝つには登記が必要である。(最判昭46.1.26)

相続放棄と第三者
相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされる(絶対効)。
*放棄前も放棄後の第三者にも絶対効。
したがって、放棄した者から権利を買った第三者に対し、本来の相続人は登記なくして対抗することができる。(939、最判昭42.1.20)
ちなみに、相続放棄は一身専属権だから、代位で放棄しないなどは不可、詐害行為取消権も不可。絶対的すぎる!

遺贈(遺言でのプレゼント)と第三者
遺言で財産をもらった受遺者と、相続人から財産を買った第三者は「対抗関係(177条)」に立つ。勝つには登記が必要である。

生前贈与と遺贈(遺言でのプレゼント)
被相続人Aが、甲土地を、Bに生前贈与し、Cに遺贈した場合、BとCは「対抗関係(177条)」に立つ。勝つには登記が必要である。

単元《取得時効と登記》のセンターピン(本質)
時効完成の**「前」に現れたライバルには素手(登記なし)で勝てる
しかし、時効完成の「後」**に現れたライバルには武器(登記)がないと絶対に勝てない!

時効完成「前」の第三者が強制競売の買い請け人
買い請け人であろうと、登記無くして時効取得を主張できる。
強制競売の消除主義(民事執行法59条1項)で消せるのは**「法的な権利」だけであり、カツオが住み座っているという「物理的な事実(占有)」**までは消し去ることができない!
*そもそも、時効完成「前」に「登記しろ」というのは無理ゲー「先に登記を備えないと負けだぞ」というのは、あまりにも時効取得者に酷(事実上不可能)

時効の起算点の固定
時効取得者は、起算点(占有を開始した時)を任意に選択して、時効完成時期をずらすことはできない(最判昭35.7.27)。
もし、「いや、実はオレが住み始めたのは本当の日より5年遅い日なんだ!」とウソをついてスタート地点を後ろにずらせるとすると、常に時効完成の『前』の第三者にすり替えることが可能になってしまう。

時効完成後の第三者が背信的悪意者の場合
時効完成後の第三者が、時効取得の事実を知りつつ、時効取得者を害する目的で不動産を取得した「背信的悪意者」である場合、時効取得者は登記なくして対抗できる(最判平18.1.17)。

背信的悪意者とは?
要件
①実体法上物権変動があった事実を知っていること(悪意)
【重要】「単なる悪意」との違い(自由競争の範囲)⇒要件②まで必要
②登記欠缺を主張することが信義則に反すること(背信性)
具体例①:嫌がらせ目的(加害目的)
具体例②:不当な利益を図る目的

不動産物権変動と登記:過去問演習

問【論点:登記できる権利】
物権でない権利は、登記をすることができない。

解答表示
正解:×(物権でない権利でも登記できるものがある)

不動産賃借権(債権)(民法605条)
不動産買戻権(形成権/債権的権利)不動産を売却した売主が、代金と契約費用を返還して「やっぱり契約を解除して取り戻す!」と言える権利です。(579)
配偶者居住権(家族法上の権利)被相続人(亡くなった方)の配偶者が、相続開始時に住んでいた建物を、居住用建物の所有者に対して、無償で使用・収益できる権利です。(1028Ⅰ)
債権譲渡の登記

問 【論点:登記できない物権】
民法に定められている物権は、いずれも登記をすることができる。

解答表示
正解:×(登記できない物権もある)
登記できない物権の具体例
留置権(時計の修理代を払ってもらうまで時計を預かっておく権利など)
占有権(今、現実に物を持っているという事実状態)
動産質権・動産先取特権(動産を対象とする担保物権)
入会権(いりあいけん:村の人たちが共同で山や森を利用する権利)
これらの権利は、その性質上(例えば、手元に置いておくこと自体が武器になる留置権や占有権など)、わざわざ国に名前を登録する「登記」というシステムに馴染まないため、登記することができません

問 【論点:留置権と登記(対抗要件)】
不動産についての留置権は、登記しなければ、所有者からその不動産を譲り受けた第三者に対抗できない。

解答表示
正解:×(登記がなくても第三者に対抗できる)

そもそも不動産の留置権とは?
例えば、アパートを借りていて、雨漏りを自腹で修理したとします(有益費・必要費)。大家さんがその修理代を払ってくれない場合、ガチ勢様は「修理代を払ってくれるまで、この部屋(不動産)は絶対に明け渡さないぞ!」と部屋に居座ることができます。
留置権という権利には「登記」というシステム自体が存在しません

問 【論点:177条の基本(当事者同士の関係)】
A所有の土地がAからBへ、BからCへと順次売却されたとして、所有権の登記名義が依然としてAにある場合でも、CはBに対し、BからCへの所有権移転登記手続を請求することができる。

解答表示
正解:〇(請求することができる)
BとCは契約の**「当事者同士」**です。
所有権の登記名義が依然としてAにある場合であっても、登記請求権は実体的な物権変動に感応して発生するものと解されるから、CはBに対して所有権移転登記手続を請求することができる。
*「中間省略登記の禁止」CがAに「俺がBから買ったから、AからCへ直接登記を移してよ!」と請求することは、原則としてAに拒否されてしまいます。

問 【論点:特殊な権利(採石権・水利権)の登記】
採石権及び水利権は、いずれも登記をすることができる。

解答表示
正解:×(水利権は登記できない)
採石権(他人の土地から石を切り出す権利):特別法(採石法など)によって登記することが認められています
水利権(農業などのために水を引く権利):水路を設けて継続的に水を利用しているという「事実状態」そのものが権利として保護されるため、登記するシステムが存在しません

問 【論点:登記請求権の代位行使】
A所有の土地がAからBへ、BからCへと順次売却されたとして、所有権の登記名義が依然としてAにある場合において、Cは、Bの同意がなくても、Bに代位し(Bの代わりになって)Aに対しBへの所有権移転登記手続を請求することができる。

解答表示
正解:〇(Bに代位して請求することができる)
CがAに対して「俺に直接登記を移せ!」と請求すること(中間省略登記)は原則として認められません。
そこで、Cが自分のもとに確実に登記を持ってくるための「合法的な裏技」として用意されているのが、**「債権者代位権の転用」**というルールです。
「債権者代位権」という制度は、無資力で困っている状態でなければ使えないのが大原則だが、今回のように**「登記を移すため(特定物債権の保全)」にこの制度を使う場合(転用事例)は、Bにお金があるかないか(無資力かどうか)は一切関係なく使うことができる

問 【論点:中間者による抹消登記請求】
A所有の土地がAからBへ、BからCへと順次売却され、それぞれ所有権移転の登記がされた場合において、AからBへの売買が無効であっても、Bは、Cに対し、その登記の抹消を請求することができない。

解答表示
正解:×(BもCに対して抹消を請求することができる)
ルート①:
まず、「Cの登記」を抹消する(登記がBに戻る)「Bが、Cに対して、Cの登記の抹消を請求する」or「Aが、Cに対して、Cの登記の抹消を請求する」どちらでもOK
次に、「Bの登記」を抹消する(登記がAに戻る)

ルート②:究極のショートカット「真正な登記名義の回復」ルート
やり方 CからAへ直接「所有権移転登記」をする。
「A」しか使えない!「Aが、Cに対して、Aへの直接移転を請求する」
*Bが、Cに対して、Aへの直接移転を請求することはできない

Bが主体としてできるのはルート①だけであるから、ルートの確保のためにも、どうしても先に、一番末端にある「Cの登記」を抹消して、登記の記録をBに戻しておく必要がある
中間者BもCに対してBC間の所有権移転登記の抹消を請求することができる
*無権利者のBが、Cに「Cよ、Aのところに直接登記を移してあげてくれ」と請求することは法的にできない。Bだとルート②は無理。

問 【論点:実質的権利者による不実登記の抹消請求】
A所有の土地についてB名義の所有権保存登記がなされているときには、Aは、Bに対し、B名義の所有権保存登記の抹消を請求することができる。

解答表示
正解:〇(抹消を請求することができる)
保存登記(所有権保存登記)とは?
一言でいうと、**「その不動産(土地や建物)について『一番最初』にする名前の登録」**のこと

「ウソの登記」である以上、「保存登記」ですら抹消できる
Bの保存登記を抹消すると、登記簿から持ち主の名前が完全に消えて、元の「まっさらな状態」に戻ります。
その後、Aは「本当の持ち主」として、改めて自分名義の「所有権保存登記」を真っさらのノートに書き込む(申請する)ことになります。

問 【論点:登記権利者(買主)からの登記引取請求権】
Bがその所有する甲土地をAに売り渡して所有権移転登記をした場合において、売買契約が合意解除されたときには、Aは、Bに対し、BからAへの所有権移転の登記の抹消を請求することができる。

解答表示
正解:〇(AからBに対して抹消を請求することができる)
もしAの名前で登記が残ったままだと、Aのもとに固定資産税の納付書が届いたりして、Aにとっては非常に迷惑(不利益)です。
不動産登記は原則として「当事者の共同申請」でしか行えません。
Aが単独で自分の登記を消せない以上、Bに対して「抹消手続きに協力しろ」と要求する権利は認められ
そこで判例(最判昭36.11.24)は、この厄介な状況を解消するために、現在の登記名義人である買主Aの側から、売主Bに対して**「私の登記を抹消する手続きに協力しろ!(登記を引き取れ!)」と請求する権利を明確に認めました。

問 【論点:制限行為能力による取消しと第三者】
未成年者Aは、その所有土地をBに賃貸しBはその土地上に登記した建物を所有していたところ、Aは法定代理人の同意を得ないで、その土地をCに売却して所有権の移転登記をし、Cは更にその土地をDに売却して所有権移転登記をした。その後、AがAC間の土地の売買契約を未成年者であることを理由として取り消した場合であっても、DはAに土地の所有権を対抗することができる。

解答表示
正解:×(第三者DはAに対抗することができない=Aの勝ち)
未成年者を理由とする取消前の第三者の話
⇒第三者は保護されない

事件の「前」の第三者と登記の要否まとめ
1、表意者(本人)が絶対に勝つグループ:第三者を保護する規定が存在しません
制限行為能力(未成年・成年被後見人・被保佐人・被補助人)による取消し
強迫による取消し
2、【条件付き】善意の第三者が勝つグループ
詐欺による取消し:「善意無過失」の第三者
錯誤による取消し:「善意無過失」の第三者
虚偽表示による無効:「善意」の第三者
解除前の第三者:「登記」が必要 *主観要件なし

問 【論点:強迫による取消しと第三者に対する抹消請求】
A所有の土地がAからB、BからCへと順次売買され、所有権移転登記がされた後、AがBの「強迫」により売却したときに、Aは、Bに対し、AからBへの所有権移転登記の抹消を請求できるほか、Cに対し、BからCへの移転登記の抹消を請求することができる。

解答表示
正解:〇(BにもCにも抹消を請求することができる)
「強迫」を理由とする取消前の第三者の話
⇒第三者は保護されない
Aは、自分の所有権のパワーだけで、Bに対しても、Cに対しても、「直接『お前の登記を抹消しろ!』」と堂々と請求することができる
※ちなみに「代位行使」をしなければならなかったのは、本当の持ち主ではない無権利者のBが自力で事態を収拾しようとした時だけ

問 【論点:抵当権設定登記請求権の代位行使】
Aは、その所有する不動産につき、債権者Bとの間で抵当権設定契約を締結したが、その登記をしないうちに、この不動産をCに売却して所有権移転の登記をした。この売買契約が無効である場合でも、Bは、Aに代位してCに対し所有権移転の登記の抹消を請求することができない。

解答表示
正解:×(BはAに代位して抹消を請求することができる)
債権者代位権の「転用」(423例外パターン)
【民法第423条の7】4つの要件の修正:
「登記手続を請求する権利(特定債権)」の保全を要件
無資力要件は不要
③ 債務者(B)が「自ら権利行使をしていない」こと
④ 代位行使する権利が、行使上および帰属上の「一身専属権」ではないこと

問 【論点:中間省略登記の請求】
A所有の土地がAからBへ、BからCへと順次売却されたとして、所有権の登記名義が依然としてAにある場合にはCは、Bの同意を得れば、Aに対し、AからCへの所有権移転登記手続を請求することができる。

解答表示
正解:×(関係者全員(A・B・Cの三者)の合意がなければ、請求できない)
たしかに中間省略登記は権利変動の過程を忠実に反映しないため好ましくない。
しかし、現在の本当の持ち主がCであることは正確に公示できるのだから、関係者全員(A・B・Cの三者)の合意(特約)がある場合に限り、例外として中間省略登記の請求が認められる

問【論点:錯誤取消し『前』の第三者と登記】
Aがその所有する土地をBに売却し、その後Bがこの土地をCに転売したが、AがAB間の契約を錯誤により取り消した場合において、CがAの錯誤につき善意でかつ過失がないときには、Cへの所有権移転登記がされていなくても、Aはその所有権をCに主張することができない。

解答表示
正解:〇(Aはその所有権をCに主張することができない)
錯誤取消前の第三者は、善意無過失なら保護される。
本問、要件を満たすので、Cは保護される

問 【論点:制限行為能力の取消しと第三者(二重譲渡とのミックス)】
Aがその所有する甲土地をBに売却し、更にBが甲土地をCとDに二重に売却した後、Aが未成年を理由に売買の意思表示を取り消した場合には、Cは、その後に所有権移転登記を経由すれば、A及びDに対し、自己の所有権を対抗することができる。

解答表示
正解:×(CはA及びDに対抗することができない)
未成年者を理由とする取消前の第三者の話
⇒第三者は保護されない
取消により、Bが最初から無権利者である以上、そこから土地を買ったCもDも、共に「無権利者(ただの他人の土地を買ってしまった人)」になってしまいます。

事件の「前」の第三者と登記の要否まとめ
1、表意者(本人)が絶対に勝つグループ:第三者を保護する規定が存在しません
制限行為能力(未成年・成年被後見人・被保佐人・被補助人)による取消し
強迫による取消し
2、【条件付き】善意の第三者が勝つグループ
詐欺による取消し:「善意無過失」の第三者
錯誤による取消し:「善意無過失」の第三者
虚偽表示による無効:「善意」の第三者
解除前の第三者:「登記」が必要 *主観要件なし

問 【論点:制限行為能力の取消し『後』の第三者と登記】
未成年者Aは、その所有する甲土地をBに賃貸しBはその土地上に登記した建物を所有していたところ、Aは法定代理人の同意を得ないで、その土地をCに売却してその登記をした。Cが土地をDに転売する前に、AがA・C間の土地の売買契約を未成年者であることを理由として取り消した場合であっても、A・C間の所有権移転登記が抹消されていないときは、AはDに土地の所有権を対抗することができない。

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正解:〇(AはDに対抗することができない=Aの負け)
Cが土地をDに転売する『前に』Aが…取り消した場合
⇒Dは取り消し後の第三者といえる
第三者Dと本人Aは、Cを起点とした二重譲渡と同じ(177条の対抗問題)

*第三者が未成年者と取引をしてしまった場合の対処方法
戦略①:【タイムリミット(消滅時効)を待つ】(民法126条)
未成年者が成年になり、「追認できるようになった時」から5年
または、「契約(行為)の時」から20年
戦略②:【「催告」をして決着を迫る】(民法20条)
「法定代理人(親など)」に対して、「1か月以上の期間」を定めて、「この契約を追認しますか(確定させますか)?」と催告(手紙などで通知)することができます
もし親が期間内に返事をしなければ(無視したら)、「追認したものとみなされ」**、もはや取り消すことができなくなります
戦略③:【未成年者のウソ(詐術)を暴く】(民法21条)

問 【論点:177条の「第三者」に当たらない者(前主)】
Aがその所有する甲土地をBに売却したものの、その旨の登記がされない間に、Bが甲土地をCに売却したときは、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

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正解:〇(Cは、Aに対し、所有権の取得を対抗することができる)
前主は177条の第三者ではない

問 【論点:詐欺取消しと第三者】
Aがその所有する甲土地をBの詐欺によりBに売却してその旨の登記がされ、Bが詐欺の事実について善意無過失のCに甲土地を売却してその旨の登記がされた後、AがBとの間の売買契約を取り消したときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができない。

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正解:〇(AはCに対抗することができない)
Cは、詐欺取り消し前の第三者であり、善意無過失なのでCは保護される

問 【論点:詐欺取消し『前』の第三者と二重譲渡】
Aがその所有する甲土地をBの詐欺によりBに売却してその旨の登記がされ、更にBが甲土地をCとDに二重に売却した後、AがBの詐欺を理由として取り消した場合であっても、Cは、所有権移転登記を経由しており、かつ、Bの詐欺の事実について善意・無過失であれば、A及びDに対し、自己の所有権を対抗することができる。

解答表示
正解:〇(CはA及びDに対し、自己の所有権を対抗することができる)
Cは、詐欺取り消し前の第三者であり、善意無過失なのでCは保護される

問 【論点:177条の「第三者」に当たらない者】
Aが所有する土地をBに売却した場合に、AがBとの間の売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後AがCにこの土地を売却し、その後、Cが死亡し、Dが単独で相続したとき、Dは、登記をしていなくても、所有権の取得をAに対抗することができる。

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正解:〇(Dは登記をしていなくてもAに対抗できる)
民法177条の「第三者」とは、**「当事者及びその包括承継人(相続人など)以外の者」**を指します。
今回のケースでは、買主Cが死亡してDが相続しているため、DはCの「包括承継人」として、Cの権利義務を丸ごと引き継いでいます。 つまり、売主Aから見れば、**Dは買主Cと全く同じ「契約の当事者」**として扱われます。
「当事者同士」の争いにおいて、登記という武器は不要です。

問 【論点:177条の「第三者」に当たらない者(時効取得と相続)】
Aが、Bの所有する甲土地の占有を継続し、取得時効が完成した後、Bが死亡し、Bの相続人であるCが甲土地を単独で相続してその旨の登記がされたときは、Aは、取得時効を援用しても、Cに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

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正解:×(AはCに対して所有権の取得を対抗することができる)
民法177条の「第三者」とは、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」と定義されています
相続人Cは、Aから見れば「当事者(Bの分身)」と同じ扱いになります。
Cは、「新たなライバル(第三者)」には当たらないため、Aは登記を備えていなくても、Cに対して「時効で取得した私の土地だ!」と堂々と対抗することができます。

問 【論点:177条の「第三者」に当たらない者(所有権を取り戻した売主)】
Aが、その所有する甲土地をBに売却したものの、その旨の登記がされない間に、Aが甲土地をCに売却してその旨の登記がされ、その後にCがAに甲土地を売却してその旨の登記がされたときは、Bは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

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正解:×(Bは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる)
Bは一度Cとの関係で負けていて、権利関係は確定のように思えるが、「当事者同士の原則」が復活し、BはAとの関係では勝てる

問 【論点:詐欺取消し『後』の第三者と登記】
Aは所有の土地をBに売却し、所有権移転登記後に、Bの詐欺を理由として売却の意思表示を取り消したにもかかわらず、Bがその事情を知らないCに売却し、所有権移転登記をした場合でも、Aは土地の所有権をCに主張することができる。

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正解:×(Aは登記がないと土地の所有権をCに主張することができない)
詐欺取り消し後の第三者は登記がないと主張できない。
Cが先に登記を備えてしまったため、Aの完全敗北となります。

Aが詐欺を理由に契約を取り消したことで、所有権は一度Aに戻ります(復帰的物権変動)。
しかし、この時点でAが「登記をBから自分に戻す」ことをサボって放置していたため、Bを起点として**「Aへの復帰」と「Cへの転売」が二重譲渡と同じライバル関係(177条の対抗問題)**となってしまいました
対抗問題である以上、勝負を決めるのは「善意・悪意」などではなく、純粋に**「登記の早い者勝ち」**です。

問 【論点:177条の「第三者」に当たらない者(契約を取り消された無権原者)】
Aは、B所有の甲不動産を買い受けたが、その旨の所有権移転登記をしていない。Cは、甲不動産をBから買い受けて占有しているが、その売買契約は、詐欺によるものとして取り消された。この場合において、Aは、Cに対し、甲不動産の所有権の取得を対抗することができる。

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正解:〇(AはCに対し、所有権の取得を対抗することができる)
AとCは、Bから二重譲渡を受けたライバルのように見えます。
しかし、B・C間の契約が詐欺で取り消されたため、遡及的に無効(初めから契約はなかったこと)になります
結果として、Cは甲不動産に対する正当な権利を完全に失い、Aは登記(武器)を持っていなくても、素手のまま堂々と「私に権利があるから出て行け!」と対抗することができるのです。

問【論点:解除『前』の第三者と登記(保護要件としての登記の要否)】
Aが、その所有する土地をBに売却して所有権移転登記を経由し、更に、BがCに対し、この土地を転売した。Cが、この土地上に建物を建てた後、AB間の売買契約が解除され、AからBへの所有権移転登記が抹消された場合、AからCに対する土地の返還請求が認められる。

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正解:〇(AからCに対する土地の返還請求が認められる=Cは負ける)
民法545条1項ただし書は「解除は、第三者の権利を害することはできない」と定めており、解除「前」に登場した第三者は一見すると無条件で保護されそうに思えます。
しかし判例は、**「何ら落ち度のない解除権者(A)の犠牲の下に第三者を保護する以上、第三者(C)は権利保護要件としての『登記』を備えていなければならない」**と厳しく解釈しています

問 【論点:解除『前』の第三者と登記(第三者が登記を備えている場合)】
甲土地が、AからB、BからCへと順次譲渡され、それぞれその旨の所有権の移転の登記がされた。その後、Aは、Bの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除した。この場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権の自己への復帰を対抗することができる。

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正解:×(AはCに対して甲土地の所有権の自己への復帰を対抗することができない)
cは登記を備えているため、545Ⅰ但「第三者」として保護される

問 【論点:合意解除『前』の第三者と登記】
Aがその所有する甲建物をBに売り渡し、その旨の所有権の移転の登記をした後、Bは、甲建物をCに転売した。その後、AB間の売買契約が合意解除された場合、Cは、BからCへの所有権の移転の登記を受けていなくても、Aに対し、甲建物の所有権を主張することができる。

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正解:×(CはAに対して甲建物の所有権を主張することはできない)
「AとBが『合意解除(話し合いでの解除)』をしている点」ですが、判例(最判昭33.6.14)は、**「合意解除であっても、法定解除(債務不履行などによる解除)と同じく扱う(545条1項ただし書の類推適用)」**としています
つまり、解除の種類が何であろうと、**「解除『前』の第三者(C)が保護されるための絶対条件は『登記(権利保護要件)』である」**というルールは揺るぎません
今回の事案では、CはBから所有権移転の登記を受けていないため、Aに対して甲建物の所有権を主張することはできません

問 【論点:不法抹消登記と第三者】
Aが、Bの所有する甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記がされたが、Bの虚偽の申請によってその登記が不法に抹消され、その後Bが甲土地をCに売却したときは、Aは、Cに対して抵当権の取得を対抗することができない。

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正解:×(AはCに対して抵当権の取得を対抗することができる)
単純にAが可哀そう。完全なる被害者です。
Bの不法行為(虚偽申請)によって勝手に登記を消されてしまいました。
つまり、Aには「登記が消えたことに対する落ち度(帰責性)」が一切ありません。
判例(大判明39.12.24)も、このように登記が不法に抹消された(不実の抹消登記)事案において、**「一度適法に備えられた登記の対抗力は、不法に抹消されても失われない」**としています

問 【論点:解除『後』の第三者と登記】
Xが所有する土地をAに売り渡し、その旨の登記を経た後に、XA間でその売買契約を合意解除し、登記を抹消しないでいたところ、Aがその土地をYに売り渡し、その旨の登記を経た。この場合、Xは、Yに対して土地の所有権を主張することができる。

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正解:×(XはYに対して土地の所有権を主張することができない)
合意解除後は177条の対抗問題
したがって、Xが登記を取り戻してモタモタしている間に、Yが先に登記を備えてしまった以上、勝負はYの勝ちです。
登記を持たないXは、Yに対して所有権を主張することはできません。

問 【論点:解除前・解除後の第三者が混在するケース】
Aがその所有する甲土地をBに売却し、更にBが当該土地をCとDに二重に売却した。BがCに甲土地を売却した後、AがBの債務不履行を理由に売買契約を解除し、次いでBがDに甲土地を売却した。Bが登記記録上の所有名義を有していれば、Aは、C及びDに対し、自己の所有権を対抗することができる。

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正解:×(AはCには対抗できるが、Dには対抗できない)
Dは解除後の第三者であり、AとDは対抗関係(177)で、登記が必要。
Cは解除前の第三者であり、解除効果から保護されるには、登記が必要。
ともに第三者として、登記が必要だが、意味合いが違う。
Aは、Dに対して主張するには、対抗関係なので、登記が必要
Aは、Cに対して主張するには、545条の「原則と例外」の関係なので、原則通り登記が不要

問 【論点:共同相続と登記(他の相続人の持分についての無権利処分)】
甲不動産を所有していたAが死亡し、B及びCがその共同相続人である。Bが甲不動産につき単独相続の登記をした上、その後これをDに売り渡して所有権移転の登記をした場合には、CはDに対して自己の持分を主張することができない。

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正解:×(CはDに対して、自己の持分を主張することができる)
Bは自分の相続分については権利を持っていますが、**「Cの相続分」については単なる『無権利者(他人物売りの詐欺師)』**にすぎません
無権利者であるBからCの持分を買い受けたDも、Cの持分については当然に無権利者となります。
したがって、CとDは177条の「対抗関係(対等なライバル)」にはならず、Cは登記という武器を持っていなくても、「当然の権利者」としてDに対して堂々と自己の持分を主張(対抗)することができます

最新の法改正ポイント(民法899条の2第1項)
今回の事案でCが登記なしで勝てるのは、あくまで**「自分の法定相続分(当然もらえるはずの分)」**についてのみです。 もしCが「遺言」などで法定相続分『以上』の持分をもらっていた場合、その『増えた部分』については、登記がないとDに対抗できなくなりました(民法899条の2第1項)
。 「法定相続分までは登記不要で無双できる」と押さえておいてください!

問 【論点:被相続人の生前譲渡と、相続人からの譲受人との関係】 (難)
甲土地を所有するAには、子B及びCがある。Aは、生前に、甲土地をDに譲渡したが、その旨の所有権の移転の登記をしないまま、死亡した。Aの相続人であるB及びCは、甲土地について相続を原因とする所有権の移転の登記をした後、Cは、甲土地の自己名義の持分をEに譲渡した。この場合において、Eは自己の持分についての移転の登記をしなければ、Dに対し、その持分を主張することができない。

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正解:〇(Eは登記をしなければ、Dに対して持分を主張することができない)
時系列整理
A⇒Dに土地売却、登記はまだAのまま。
Aが死亡し、B・Cが相続:「Aの持っていた『Dに登記を移す義務付きの所有者』という地位」をそのまま引き継いだ(Aと同一人物になった)
C⇒Eに相続分を売却
A(BとC)を中心とする二重譲渡になり、177条の対抗要件の問題となる。
EがDに勝つためには、絶対に「登記」が必要となります

問 【論点:共同相続と登記(他の相続人の持分についての無権利処分・登記の一部抹消請求)】(難)
甲土地を所有していたAが死亡し、Aの配偶者B及び子Cが甲土地を相続した。その後、CがBに無断で甲土地について単独で所有権を取得した旨の登記をした上で、これをDに売却し、Dに対する所有権の移転の登記を行った。この場合、BはDに対し、当該所有権の移転の登記の全部の抹消を求めることができる。

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正解:×(BはDに対して、登記の「全部」の抹消を求めることはできない)
相続分ではなく、全部の抹消をできないのが原則
事案
A死亡 ⇒ B(配偶者1/2)、C(子1/2)で共同相続。
Cが勝手に「Cの単独所有」として登記し、Dに売却(Dへ移転登記)。
DはCの持分については正当な権利を取得しているため、BがDに対して「登記を全部消せ!」と要求することは、Dの正当な権利(Cから買った1/2の持分)まで奪うことになってしまい、許されません
判例(最判昭38.2.22)も、「他の相続人は、自己の持分の範囲内において第三者に一部抹消登記を請求することができるにすぎない」としています

問 【論点:相続分の指定(遺言)と登記】
甲土地を所有するAが死亡し、その子であるB及びCが相続した。Aは生前、甲土地について「Bの持分を4分の3、Cの持分を4分の1として相続させる」旨の遺言をしていた。しかしその後、Cが無断で甲土地について「法定相続分(B2分の1、C2分の1)」による共同相続の登記をしたところ、Cの債権者であるDが、当該登記に係るCの持分(2分の1)を差し押さえ、その旨の登記を経由した。 この場合において、Dは、Bに対し、甲土地の2分の1の持分を差し押さえた旨を主張することができる。

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正解:〇(DはBに対し、甲土地の2分の1の持分を差し押さえた旨を主張することができる)
事案
Bの本来の法定相続分は「2分の1」。
遺言で指定されたBの相続分は「4分の3」。
Bは法定相続分を「4分の1」超えて多くもらっています。

Bの法定相続分である1/2は絶対的であるが、法定相続分を越える「4分の1」の遺言の部分は177条で処理。民法899条の2第1項
本問、Dが先に登記をしているので、Bの「法定相続分を越える3/4である」との主張は認められない

問 【論点:遺産分割前の第三者と、登記の抹消請求】
AとBはCの子であり、Cが死亡した場合において、BがC名義であった甲土地につき勝手に単独相続の登記をし、これをDに売却して所有権移転登記をした後、AとBが甲土地をAの単独所有とする遺産分割協議をしたとき、Aは、Dに対し、その所有権移転登記の全部の抹消を請求することができる。

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正解:×(AはDに対して、登記の「全部」の抹消を請求することはできない)
遺産分割前の第三者は登記があれば保護される。
AはDに対して、Aの持ち分のみ主張できるにすぎない

問 【論点:遺産分割前の第三者と、登記の抹消請求】
AとBはCの子であり、Cが死亡した場合において、BがC名義であった甲土地につき勝手に単独相続の登記をした後(※これをDに売却しD名義に移転登記をした後)、AとBが甲土地をAの単独所有とする遺産分割協議をしたとき、Aは、Dに対し、その所有権移転登記の全部の抹消を請求することができる。

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正解:×(AはDに対し、登記の「全部」の抹消を請求することはできない)
遺産分割後の第三者は177条の関係。
本問、Dが先に登記を備えている。
もっとも、Aの法定相続分は絶対的なので、AはDに対して、Aの持ち分のみ主張できるにすぎない

問 【論点:遺産分割後の第三者と登記(差押え)】
甲土地の所有者Aが死亡し、その共同相続人であるB及びCは、遺産分割協議により甲土地をBが単独で相続することとしたが、登記名義はAのままであった。その後、遺産分割協議の存在を知らないCの債権者Dは、Cに代位して甲土地について相続を原因とする所有権の移転の登記をした上で、Cの持分(法定相続分)について差押えの登記をした。この場合、BはDに対し、Cの法定相続分に相当する甲土地の持分の取得を対抗することができる。

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正解:×(BはDに対して、持分の取得を対抗することはできない)
遺産分割後の第三者は177条で決する。
本問Dは先に登記を備えている。
譲渡と差し押さえは同じ処理で良い。177条の「第三者(ライバル)」には、土地を買った人(譲受人)だけでなく、「土地を差し押さえた債権者」も当然に含まれます。

問 【論点:相続放棄と第三者】
甲不動産を所有していたAが死亡し、B及びCがその共同相続人である。Bが相続を放棄したが、その後のBの債権者Dが、Bに代位して甲不動産につきB、C共同相続の登記をした上、Bの持分につき差押えの登記をした場合には、Cは、Dに対して自分が単独の所有者であることを主張することができない。

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正解:×(CはDに対して、自分が単独の所有者であることを主張することができる)
「相続放棄の効果は絶対的(絶対効)」
相続放棄をしたBは完全な無権利者(透明人間)になるため、無権利者Bの持分を差し押さえた債権者Dも当然に無権利者となります。
したがって、本来の相続人であるCは、登記がなくても(素手で)Dに対して自分が単独所有者であることを対抗することができます(最判昭42.1.20)

ちなみに、相続放棄は一身専属権だから代位で放棄しないなどは不可、詐害行為取消権も不可

問 【論点:遺贈と登記】
Aがその所有する不動産をBに遺贈する旨の遺言をして死亡した場合において、Aを単独で相続したCが、その不動産につき相続登記をしてDに売り渡して所有権移転登記をしたときは、Bは、Dに対し、遺贈による所有権の取得を対抗することができない。

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正解:〇(BはDに対し、遺贈による所有権の取得を対抗することができない)
DとBは177条関係
Cは、Aの「遺贈を履行する義務(Bに不動産を渡す義務)」を含めたすべての法的な立場を引き継ぎます
つまり、Cは「Aの分身」として扱われるため、B(遺言でもらった人)とD(Cから買った人)は、**「同一人物(A=C)から不動産を二重譲渡されたのと同じ状態(177条の対抗関係)」**になります
したがって、登記という武器をサボっていたBは、先に移転登記を備えたライバルDに対して勝つことができません

ちなみに、Bの遺贈が巨額すぎて無効になる制度なかったか?
遺贈自体が無効になるわけではなく、お金で解決する(「遺留分(いりゅうぶん)」に関する制度)
遺贈自体は「有効」で自分の最低限の取り分を奪われたCは、「私の最低限の取り分(遺留分)を侵害した分について、金銭で払いなさい!」と請求することができます
これを「遺留分侵害額請求」と呼びます

問 【論点:生前贈与と遺贈の対抗関係】
甲土地を所有するAが死亡し、その子であるB及びCのために相続の開始があった場合において、Aは、生前に、甲土地をBに贈与し、その旨の所有権の移転の登記をしないまま死亡し、Cに遺贈した。この場合において、Cは、甲土地について遺贈を原因とする所有権の移転の登記をしたとしても、Bに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

解答表示
正解:×(CはBに対し、甲土地の所有権を主張することができる)
Aが「Bに生前贈与した」ことと、「Cに遺贈した」ことは、法的には**「AからBとCへ二重譲渡されたのと同じ状態」として扱われます。
177条の完全なライバル(対抗関係)になります。ライバル関係である以上、勝負を決めるのは、「どちらが先に登記(武器)を備えたか」**です。
本問では、Cがすでに移転登記を備えているため、登記の早い者勝ちルールにより、**CはBに対して所有権を主張できる(Cの勝ち)**となります。

問 【論点:時効完成後の第三者と時効の再進行】
A所有の甲土地の所有権をBが時効取得した。Bの取得時効が完成した後、CがAから甲土地を買い受けて登記をしたときは、Cの登記がされた後、引き続きBが時効取得に必要な期間占有を継続したとしても、Bは、Cに対し、時効により所有権を取得したことを対抗することができない。

解答表示
正解:×(BはCに対し、再度の時効取得をもって対抗することができる)
時効完成後の第三者とは177関係
一度はCが登記を備えている以上、Bは負けている
しかし、登記を備えた日を「新たなスタート地点(起算点)」としてさらなる時効取得は可能

問 【論点:時効の起算点の任意選択の可否】
A所有の甲土地の所有権についてBの取得時効が完成しBが当該取得時効を援用している場合に関して、当該取得時効が完成した後にCがAから甲土地を買い受け、その旨の所有権の移転の登記がされた後、引き続きBが時効取得に必要な期間占有を続けた時点より後の時点を時効期間の起算点として選択し、時効完成の時期を遅らせることにより、甲土地の所有権を取得したことを主張することはできない。

解答表示
正解:〇(起算点を任意に選択して主張することはできない)
取得時効のスタート地点は、「実際に占有を開始した時」に完全固定されます
もし、「いや、実はオレが住み始めたのは本当の日より5年遅い日なんだ!」とウソをついてスタート地点を後ろにずらすと、常に時効完成の『前』の第三者にすり替えることが可能になってしまう。

問 【論点:時効完成後の第三者(抵当権者)と登記】
A所有の土地の所有権をBが時効取得した場合、Bの取得時効が完成した後、登記をしない間に、Aの債権者Cが、Aから土地に抵当権の設定を受けて登記をしたときは、Cは、Bに対し、抵当権を取得したことを対抗することができる。

解答表示
正解:〇(Cは、Bに対し、抵当権を取得したことを対抗することができる)
Cは、Bの取得時効完成後に抵当権の設定を受けていた時効完成後の第三者に当たるので、対抗関係(177)にある
Cは登記を具備しているので、Bに対して抵当権の取得を対抗することができる。

問 【論点:時効完成後の第三者と対抗関係】
XがYから甲土地に関して所有権移転を受けたが登記未了の場合において、XがYから買い受けるに先立ち、Zが20年間占有していたことにより甲土地を時効取得していた場合はZは、Xの「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者」に該当する。

解答表示
正解:〇(ZはXの「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者(177条)」に該当する)
XはZにとって**「時効完成『後』の第三者」**になります。
そして、時効完成後の第三者は、177条の第三者に該当。

問 【論点:取得時効と相続人】
A所有の土地の所有権をBが時効取得した場合、Bの取得時効が完成した後、登記をしない間にAが死亡し、Aの相続人Cが相続登記をしたときは、Bは、Cに対し、時効取得を対抗することができない。

解答表示
正解:×(BはCに対し、時効取得を対抗することができる)
相続人と被相続人は同視できる(896)ので、当事者にあたる

問 【論点:時効完成前の第三者と対抗関係】
Aの所有する甲土地を時効により取得したBは、その時効の完成前にAから甲土地を購入してその旨の登記をしたCに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

解答表示
正解:×(BはCに対し、登記なくして甲土地の所有権を主張することができる)
時効完成前の第三者の保護規定はない。原始取得である

そもそも、時効完成「前」のBに「登記しろ」というのは無理ゲー
「Cより先に登記を備えないと負けだぞ」というのは、あまりにもBに酷(事実上不可能)

問 【論点:時効完成前の第三者が強制競売の買受人】
A所有の土地の所有権をBが時効取得した場合、Bの取得時効が完成する前に、Cが土地を強制競売により買い受けて登記をしたときは、その後、Bの取得時効が完成しても、Bは、Cに対し、時効により所有権を取得したことを対抗することができない。

解答表示
正解:×(BはCに対し、登記なくして時効取得を対抗することができる)
「強制競売で買い受けた人」であろうと、時効完成の『前』に登場した以上、全員まとめて「Aの身代わり(当事者)」**として処理されます。
強制競売の消除主義(民事執行法59条1項)で消せるのは**「法的な権利」だけであり、カツオが住み座っているという「物理的な事実(占有)」**までは消し去ることができない!

問 【論点:時効完成前の第三者と登記のタイミング】
甲が乙所有の不動産の占有を継続し、取得時効が完成したが、他方、乙が甲の占有開始後にその不動産を丙に譲渡した。丙が甲の時効完成前にその不動産を譲り受けたが、その旨の登記をしたのが時効完成後である場合には、甲は、丙に対して、時効による所有権の取得を主張することができない。

解答表示
正解:×(甲は丙に対して、登記なくして時効取得を主張することができる)
不動産を譲り受けたのが時効完成『前』である以上、その登記を備えたのが時効完成の『後』にズレ込んだとしても、時効取得者から見ればただの当事者(身代わり)であることに一切変わりはない

問 【論点:時効完成後の第三者が背信的悪意者である場合】
A所有の甲土地の所有権についてBの取得時効が完成し、Bが当該取得時効を援用している場合に関して、当該取得時効が完成した後にCが甲土地を買い受けてその旨の所有権移転の登記がされた場合において、Cが甲土地の買受け時に認識しており、Bの登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情があっても、BはCに対し、時効により甲土地の所有権を取得したことを主張することができない。

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正解:×(BはCに対し、登記なくして時効取得を対抗できる)
背信的悪意者は177条の第三者に該当しない。

問 【論点:177条の「第三者」と不実登記の名義人(架空の権利者)】
A所有の甲不動産について、実体のない不実の登記がB名義でされている。この場合においてAから甲不動産を譲り受けたCは、その旨の所有権移転登記をしていなくても、Bの相続人Dに対し、甲不動産の所有権の取得を対抗することができる。

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正解:〇(Cは、登記をしていなくてもDに対し所有権の取得を対抗することができる)
「不実登記の名義人は177条『第三者』に含まれない」

問 【論点:177条の「第三者」と無権利者からの譲受人】
Aが、Bの所有する甲土地につき、売買契約を締結していないのに、書類を偽造してAへの所有権の移転の登記をした上で、甲土地をCに売却してその旨の登記をした場合において、そののち、Bが甲土地をDに売却したときは、Dは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

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正解:×(Dは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができる)
Cは無権利者からの譲受人に対して、Dは正当な譲受人

原則:「公信力がない」という絶望
救済(例外):神ルール「94条2項類推適用」
本問、Aに帰責性がないため、例外なし。

問 【論点:177条の「第三者」と共有持分の譲受】
AとBが共有する甲建物について、Bが自己の持分をCに売り渡したが、その旨の所有権の移転の登記がされていない場合には、Cは、Aに対し、自己の持分の取得を主張することができない。

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正解:〇(Cは、登記がなければAに対して持分の取得を主張できない)
BがCに持分を売ること自体はAの許可なく自由にできます。
しかし、持ち分を譲り受けたCは、残された共有者であるAに対して、登記無くして対抗できない。⇒共有者は177条の「第三者」にあたる

問 【論点:177条の「第三者」と仮装譲受人からの譲受人】
甲からその所有する土地を買い受けたが、所有権移転の登記を受けていない乙は、甲と通謀してその土地の仮装譲渡を受けた者からその事実を知らずに更に譲り受けた者に対して、所有権を対抗することができる。

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正解:×(乙は、登記がなければ所有権を対抗することができない)
仮装譲受人から譲り受けた者は、94条2項により保護されるので、乙と譲受人とは対抗関係(177)に立ち、乙は登記がなければ所有権を対抗することができない

問 【論点:177条の「第三者」と建物を建築して居住している者】
甲からその所有する土地を買い受けたが、所有権移転の登記を受けていない乙は、甲からその土地を賃借し、その土地の上に建物を建築して居住している者に対して所有権を対抗することができる。

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正解:×
賃借権者は177条の『第三者』に当たる。
したがって、乙(未登記の買受人)は土地賃借人に対して登記なくして土地所有権を対抗することができない。

問 【論点:177条の「第三者」と賃借人に対する賃料請求】
甲所有の土地を買い受けた乙が、甲からその土地を賃借していた丙に対して賃料の請求をするためには、甲から所有権移転の登記を受けなければならない。

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正解:〇(乙が賃料を請求するためには、所有権移転登記が必要である)
乙は、大家さんの地位を承継するが、登記が無ければ、丙としては支払いできないだろう
賃借人(丙)が177条の『第三者』にあたる
賃貸人たる地位の移転は、その不動産の所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(民法605条の2第3項)」

問 【論点:177条の「第三者」と賃貸借契約の解除】
Aが所有する土地をBに賃貸し、Bはその土地上に登記した建物を所有している場合において、Aがその土地をCに売却し、Cはさらにその土地をDに売却した。この場合において、Dが所有権移転の登記を備えていなくても、DはBの賃料不払を理由として賃貸借契約を解除することができる。

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正解:×(Dは、登記を備えなければ、Bに対して賃貸借契約を解除することができない)
登記を経ないと、賃貸人の地位を主張できない
「賃貸借契約を解除する」という行為も、「俺が新しい大家だ」という賃貸人の地位を前提とする主張に他なりません。

問 【論点:177条の「第三者」と差押えをした一般債権者】
XがYから甲土地に関して所有権移転を受けたが登記未了の場合において、ZがYに対する一般債権に基づき甲土地を差し押さえ、その登記をした場合は、Zは、Xの「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者」に該当する。

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正解:〇(差押えをした債権者 Zは177条の「第三者」に該当する)

問 【論点:177条の「第三者」と仮差押えをした一般債権者】
Aがその所有する甲土地をBに売却したが、その登記がされない間に、Aの債権者Cがその土地に仮差押えをした場合であっても、Cが一般債権者にすぎないときは、Bは土地の所有権をCに主張することができる。

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正解:×(Bは、登記を備えていなければCに土地の所有権を主張することができない)
仮差押えをした債権者は177条の第三者にあたる

問 【論点:177条の「第三者」と特定遺贈を受けた者】
XがYから甲土地に関して所有権移転を受けたが登記未了の場合において、ZがYの被相続人から甲土地を遺贈されその所有権移転の登記を受けていない場合は、ZはXの「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者」に該当する。

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正解:〇(Zは177条の「第三者」に該当する)
遺贈を受けた者は177条「第三者」に該当する

問 【論点:177条の「第三者」と、被相続人から譲り受けた者・相続人から譲り受けた者の関係】
Aがその所有する土地をXに売り渡したが、その旨の登記をしないまま死亡したところ、その後のAの相続人がこれをYに売り渡し、その旨の登記を経た。この場合、Xは、Yに対して土地の所有権を主張することができる。

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正解:×(Xは、Yに対して土地の所有権を主張することができない)
被相続人を起点とした二重譲渡(177条の対抗関係)

問 【論点:177条の「第三者」と抵当権者】
Aはその所有する未登記の甲建物をBに売り渡したが、その旨の所有権の移転の登記がされない間に、CがAから甲建物についてA名義で所有権の保存の登記をし、Cを抵当権者とする抵当権を設定してその旨の登記をした場合には、Cは、Bに対し、甲建物の抵当権を主張することができない。

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正解:×(Cは、Bに対し、甲建物の抵当権を主張することができる)
抵当権者は、177条の『第三者』に該当する

問 【論点:177条の「第三者」と不法占拠者】
XがYから甲土地に関して所有権の移転を受けたが登記未了の場合において、ZがYに対する貸金債権回収のため、甲土地を正当な権原なしに占有している場合は、Zは、Xの「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者」に該当する。

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正解:×(Zは177条の「第三者」に該当しない)
正当な権原なしに占有している(=不法占拠者)は、177条の第三者にあたらない

問 【論点:177条の「第三者」と無権原で建物を建築した者】
AがBから土地を購入したが、その所有権移転登記を受けないうちに、当該土地につき無権原のCが当該土地上に建物を建築した。Aは、所有権移転登記を受けなくてもCに対し、当該土地の明渡しを請求することができる。

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正解:〇(Aは、所有権移転登記を受けなくてもCに対し、当該土地の明渡しを請求することができる)
無権原者は177条の第三者に該当しない

問 【論点:177条の「第三者」と賃貸借契約解除後の占有者】(難)
賃貸借の目的である甲建物の所有者Aからその所有権を譲り受け、賃貸人の地位の移転を受けたBと甲建物の賃借人Cとの間で賃貸借契約が合意解除された場合において、Bから甲建物の明渡しを求められたCは、Bが甲建物の所有権の移転の登記をしていないことを理由として、甲建物の明渡しを拒むことができる。

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正解:×(Cは、明渡しを拒むことができない)
賃貸人たる地位の証明は登記が必要だが
しかし、賃貸借契約が合意解除されているので、Cは賃借権のない不法占拠者
Cは、177条の第三者とはいえない

問 【論点:弁済による抵当権の消滅と第三者への対抗】
Aは、Bに対する金銭債務を担保するために、B所有の土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Aの金銭債務が弁済されたが、抵当権設定登記が抹消されないうちに、たまたまBに対して債権を有していたCとの間で当該抵当権のみを譲渡する契約を締結し、その旨の登記をした。この場合、抵当権設定登記が抹消されていない以上、Bは、Cに対し、抵当権の消滅を主張することができない。

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正解:×(Bは、Cに対し、抵当権の消滅を主張することができる)
被担保債権が弁済等の原因により消滅し、抵当権が消滅した場合は、抵当権の付従性により、抹消登記をしなくても、その消滅をもって第三者に対抗できる
Bは抹消登記を持っていなくても「抵当権はもう消滅してるよ」と堂々と主張できます。

抵当権「だけ」を売却できるのか?
民法には**「抵当権の処分(抵当権の譲渡)」というマニアックな特例(民法376条1項)が存在
これは、「同じ債務者に対して、たまたま別の借金を取り立てる権利を持っている他の債権者」に対してのみ、自分の抵当権の「優先的に弁済を受けるパワー(枠)だけを譲ってあげる」**ことができるという制度、この場合、債務者(B)や設定者の同意は不要。

問 【順次譲渡における「前主」と「転得者」の関係】
Yがその所有する土地をAに売り渡したが、その旨の登記を経ないでいたところ、Aがその土地をXに転売した。この場合、Xは、Yに対して土地の所有権を主張することができる。

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正解:〇(Xは、Yに対して土地の所有権を主張することができる)
地が「Y → A → X」と順番に転売(順次譲渡)された場合、元の持ち主(前主Y)と最後の買主(転得者X)は、177条のリングで争うようなライバル(対抗関係)ではありません

問 【無効な登記の「流用」と二重譲渡の決着】
AがBと通謀してA所有の甲土地をBに売り渡した旨仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた後、AがBに対して真に甲土地を売り渡した場合であっても、その前にAがCに対しても甲土地を売り渡していたときは、Bは、Cに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。

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正解:×(Bはすでに登記(流用された有効な登記)を備えているため、登記のないCに対して確定的に所有権を主張することができる)
Bの無効だった登記が、後から真に売買されたことによって『有効な登記として復活(流用)』している
すでにBは(結果的に)登記という最強の武器を装備している状態

問 【論点:177条の「第三者」と仮装譲受人の相続人】
Aはその所有する甲土地をBに売り渡したが、その旨の所有権の移転の登記がされない間に、Aが甲土地をCに売り渡した旨を仮装し、AからCへの所有権の移転の登記がされた。その後、Cが死亡してその相続人であるDがCの財産を単独で相続し、CからDへの所有権の移転の登記がされた場合には、Bは、Dに対し、甲土地の所有権を主張することができる。
正解:〇(一般承継人(相続人)であるDは、虚偽表示の当事者Cと同視される無権利者であり、177条の第三者にあたらないため、Bは登記なくして土地の所有権を主張することができる)

問 【論点:177条の「第三者」と登記を申請する義務を負う者】
Aが所有する土地をBに売却した場合、AからBへの所有権の移転の登記を申請すべき義務を負っているCがAからその土地について地上権の設定を受けたときは、Bは、先に登記をしなければ、所有権の取得をCに対抗することができない。

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正解:×(登記申請義務を負うCは177条の第三者にあたらないため、Bは登記なくしてCに所有権を主張することができる)
登記申請義務を負うCは、司法書士などをさす。
司法書士は自分が登記を怠っておきながら「登記がない」と主張することは信義則上許されない。
したがって、このような者は177条の「第三者」には該当せず、真の権利者は**登記がなくても(素手で)**所有権を対抗することができる。

問 【論点:借地権の対抗力(借地借家法10条1項)】(難)
Aが甲土地の所有者であるBから建物の所有を目的とする地上権の設定を受けた後、甲土地上に乙建物を築造し、所有権の保存の登記をした。Aから乙建物の所有権の移転の登記を受けたCは、甲土地の地上権の登記をしていなければ、Bから甲土地を買い受けたDに地上権を対抗することができない。

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正解:×(Cは自分名義の建物の移転登記を備えているため、Dに対して登記なくして借地権(地上権)を対抗することができる)
借地権(地上権または賃借権)は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる(借地借家法10Ⅰ)
よって、地上権の登記を備えていなくとも、甲土地を買い受けたDに対抗することができる。

問 【論点:177条の「第三者」と背信的悪意者からの転得者】
Aはその所有する甲土地をBに売り渡したが、その旨の所有権の移転の登記がされない間に、Aが甲土地をCに売り渡してその旨の所有権の移転の登記がされ、さらに、Cが甲土地をDに売り渡してその旨の所有権の移転の登記がされた。この場合において、Cが背信的悪意者に当たるときでも、Dは、Bとの関係でD自身が背信的悪意者と評価されない限り、Bに対し、甲土地の所有権を主張することができる。

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正解:〇(背信的悪意者からの転得者Dは、D自身が背信的悪意者と評価されない限り、177条の「第三者」にあたるため、Bは登記なくしてDに所有権を主張することはできず、登記を備えたDが勝つ)
判例「背信的悪意者にあたるかどうかは、人ごとに個別に(相対的に)判断する」

問 【論点:取消しと登記(取消し「後」の第三者)】
Aがその所有する甲土地についてBとの間で締結した売買契約をBの強迫を理由に取り消した後、Bが甲土地をCに売り渡した場合において、AからBへの所有権の移転の登記が抹消されていないときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権の復帰を主張することはできない。

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正解:〇(取消し「後」に登場した第三者Cとは177条の対抗関係になるため、Aは登記(抹消・回復登記)を先に備えなければ、所有権の復帰を主張することができない)

問 【論点:94条2項の類推適用(不実登記の長期間放置)】
甲不動産はAとBの共有であるが、登記記録上はAの単独所有とされていたところ、Aは、Cとの間で甲不動産の売買契約を締結し、Cへの所有権移転登記を経由した。AがBに無断でA単独所有の登記を経由したが、Bはその事実を知りながら長期間これを放置していた場合において、甲不動産がABの共有であることをCが知らなかったときは、Bは、Cに対し、自己の持分を主張することができない。

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正解:〇(不実の登記を知りながら長期間放置したBには重い帰責性が認められ、94条2項が類推適用されるため、Bは善意のCに対して自己の持分を主張することができない)
たとえ虚偽の登記の外観は他人が作出したとしても、権利者がそれを知りながら長期間放置した場合には、真の権利者に帰責性が認められるので、94条2項が類推適用される(最判昭45.9.22)。
したがって、BはCに対し、自己の持分を主張することができない。

問 【論点:94条2項の類推適用(無断登記からの直ちの転売と帰責性)】
甲不動産はAとBの共有であるが、登記記録上はAの単独所有とされていたところ、Aは、Cとの間で甲不動産の売買契約を締結し、Cへの所有権移転登記を経由した。AがBに無断でA単独所有の登記を経由し、直ちにCに売却した場合には、甲不動産がAとBの共有であることをCが知らなかったときでも、Bは、Cに対し、自己の持分を主張することができる。

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正解:〇(Bには不実登記作出の帰責性がなく、94条2項が類推適用されないため、原則通りBはCに対して自己の持分を主張することができる)

動産物権変動

単元《動産物権変動》のセンターピン(本質)
動産(モノ)のバトルは「引渡し(手元に持ってくること)」が最強の武器!
ただし、持ち主じゃなくても「引渡し」を信じて買えば自分のモノになる【即時取得】という魔法がある!

動産の対抗要件「引渡し」(民法178条)
動産に関する物権の譲渡は、その「動産の引渡し」がなければ、「第三者」に対抗することができない。
ルール:
不動産(土地や建物)は「登記」という武器がないと他人に勝てませんでしたが、
動産(ゲーム機や本など)の場合は**「引渡し(実際にモノを受け取ること)」**が武器になります。
引渡しを受けていないと、他の人に「これ俺のモノだ!」と主張(対抗)できません。

4つの「動産の引渡し(渡し方)」の種類:
モノの渡し方には、直接手渡しする以外にも以下のような渡し方があります。
現実の引渡し: そのまま手渡しすること。
簡易の引渡し: すでに相手が占有している(持っている)モノを「今日から君のモノね」と約束すること。
占有改定: 相手にモノは売ったけど、そのまま自分の手元に置いておく約束をすること。(以後相手方のために占有する意思を表示する)
指図による占有移転: 倉庫などに預けている荷物を、「これからは新しい買主の指示に従ってね」と預かっている人に伝えること。

178条の「第三者」にあたる例
賃借人(モノを借りている人): 動産を買った新しい持ち主が、今そのモノを借りて使っている人に対して「俺のモノだから返して!」と言うには、必ず「引渡し(武器)」を受けていないといけません。

178条の「第三者」にあたらない例
受寄者(モノを預かっているだけの人):荷物を預かっているだけの人は正当なライバルではないので、武器(引渡し)を持っていなくても「俺のモノになったから返して!」と堂々と言えます。

会社(法人)の特別ルール=「動産譲渡登記」
会社(法人)が動産を売る場合だけ使える特別なルールがあります。
定義・ルール:
会社の在庫や機械などを、手元に置いたまま、登記によって第三者に対抗できるようにする制度
「動産譲渡登記」というパソコン上の記録をつければ、わざわざモノを現実に渡していなくても、178条の「引渡し」をしたのと同じパワーを持ちます。
逆に言えば、登記だからといって優れているというわけではなく、その優劣は具備の先後で決する。(動産債権譲渡特例3Ⅰ)

動産譲渡登記のイメージ例
A社は銀行Bからお金を借ります。
担保として、A社の倉庫にある在庫商品をBに譲渡担保に入れます。
でも商品はそのままA社の倉庫に置いて、A社が営業を続けます。
このとき、現物は動かさずに、登記で権利関係を外に示す。
これが動産譲渡登記の発想です。
① モノを動かさなくていい
② 第三者対抗要件になる

譲渡担保のイメージ
売買契約+買戻し特約+使用収益を債務者に残す特約を付けたものに近い
抵当権と基本的に似ている:
⇒債務者が使い続ける
⇒払えなければ、債権者が目的物の価値から回収する
抵当権との違い:
⇒抵当権は不動産・地上権・永小作権だが、譲渡担保は動産・債権が中心
⇒抵当権では所有者は債務者側だが、譲渡担保は債権者が所有者
⇒払えなかったとき、抵当権は裁判所の担保不動産競売だが、譲渡担保は私的実行+清算

A社が銀行Bから金を借りる。
A社の工場の機械や在庫を譲渡担保に入れる。
機械や在庫は現場に残してA社が使い続ける。
支払いが完了したら所有権返還、支払われなかったら私的実行+清算

「即時取得」
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
定義:
買った相手が本当は「無権利者」だったとしても、買った人が「この人が本当の持ち主だ!」と信じてモノを受け取れば、本当に自分のモノにできる(所有権を取得できる)というすごい魔法です。
要件
1,「取引行為」で手に入れたこと:
普通の買い物だけでなく、オークション(強制競売)で買った場合でもこの魔法は使えます!
2,「占有を始める(引渡しを受ける)」こと:
⇒占有改定では、モノが手元に全く動いてこないので、この要件を満たさない!
⇒会社の特別ルールである**「動産譲渡登記」も記録をつけただけでモノは手元に来ていないので、この要件を満たさない!
3,「平穏(暴力を振るわず)」「公然(コソコソ隠さず)」「善意(相手が本当の持ち主だと信じる)」であること
⇒今まさに占有を開始すれば、推定される(民法186条1項)
4,「無過失(信じたことにうっかりミスがない)」であること
⇒相手方の占有は、188条により、適法に有するものと推定されるので、取得者も推定される。

動産物権変動:過去問演習

問 【論点:解除後の第三者と動産の対抗要件】
Aの所有する甲動産を買い受け、引渡しを受けたBが、債務不履行を理由にその売買契約を解除されたが、Aに甲動産の引渡しをしないまま、これをCに売却し、Cに現実の引渡しをした場合には、Cは、Bが所有者であると信じ、かつ、そう信じるにつき過失のないときに限り、甲動産の所有権を取得することができる。

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正解:×(解除後の第三者CとAは対抗関係(178条)になるため、Cは引渡しを受けていれば、善意無過失(即時取得)でなくても確定的に所有権を取得できる)

問 【論点:178条の「第三者」と受寄者】
Aが所有する動産甲をBに寄託している場合において、Aが甲をCに譲渡した。Bは、民法第178条にいう「第三者」に当たらないから、Cは、指図による占有移転により甲の引渡しを受けていなくても、Bに対し、甲の引渡しを請求することができる。

解答表示
正解:〇(単に動産を預かっているだけの受寄者Bは178条の第三者にあたらないため、Cは引渡し(対抗要件)なくして所有権を主張し、引渡しを請求することができる)

問 【論点:178条の「第三者」と譲受人から寄託を受けた元の売主】
Aが、A所有の動産甲をBに売り渡し、Bの寄託によりこれを保管している場合において、BがCに動産甲を売却したときは、Cは、その引渡しを受けていなかったとしても、Aに対し、動産甲の所有権を主張することができる。

解答表示
正解:〇(元の売主Aは現在では単に動産を預かっているだけの受寄者にすぎず、178条の第三者に当たらないため、Cは引渡し(対抗要件)なくしてAに対して所有権を主張することができる)

問 【論点:178条の「第三者」と賃借人】
Aが所有する動産甲をBに賃貸している場合において、Aが甲をCに譲渡した。Bは、民法第178条にいう「第三者」に当たらないから、Cは、指図による占有移転により甲の引渡しを受けていなくても、Bに対し、甲の引渡しを請求することができる。

解答表示
正解:×(動産の賃借人Bは178条の「第三者」に該当するため、Cは引渡し(対抗要件)を備えなければBに所有権を主張して引渡しを請求することができない)

問 【論点:動産譲渡登記と引渡しの優劣】
Aが所有する動産甲をBに寄託している場合において、Aが甲をCに譲渡し、さらにCがこれをDに譲渡した。その後Cが指図による占有移転により甲の引渡しを受け、次いでDが動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づき、甲についての譲渡の登記をした。同法に基づく登記には、引渡しに対する優先的効力が認められているから、この場合にはDが甲の所有権を取得することになる。

解答表示
正解:×(動産譲渡登記と引渡しは全く同じ効力(パワー)であり、優先的効力はなく単に具備した順番(早い者勝ち)で決まるため)
法人による動産譲渡につき動産譲渡登記がされた場合、178条の引渡しがあったものとみなされる(動産債権譲渡特例3Ⅰ)
その優劣は具備の先後で決する

問 【論点:動産譲渡登記と即時取得】(難)
Aがその所有するパソコン(以下「動産甲」という。)をBに譲渡し、占有改定による引渡しをした後、AがCに動産甲を譲渡し、その譲渡につき動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づく動産譲渡登記がされた場合、Cは、Bに対し、動産甲の所有権を主張することができる。

解答表示
正解:×(動産譲渡登記では即時取得の要件である「占有を始めた」ことにならないため、魔法で逆転することはできず、対抗要件を先に備えたBが勝利する)
対抗要件の先後でBが勝利:AからBへの「占有改定」も立派な対抗要件(引渡し)であるため、Bが先に対抗要件を備えた時点で、二重譲渡の対抗問題としてはBの確定勝利となります。
《動産は即時取得を検討チェック!》Cとしては、即時取得を主張もできない:そこで後れを取ったCが「無権利者となったAから買った」として、起死回生の魔法(即時取得)を使おうと試みるわけですが、Cが備えた「動産譲渡登記」では手元にモノが来ていないため、魔法の発動条件(占有を始めること)を満たせず、結局Cは逆転できない(Bが勝つ)という構図

問 【論点:指図による占有移転と即時取得】
Aが、その所有する動産甲をBに寄託したのち、Cに動産甲を譲渡し、Cが指図による占有移転によって引渡しを受けた場合であっても、その後、Aが無権利者であることについて善意無過失のDがAから動産甲を譲り受け、指図による占有移転によって引渡しを受けたときは、Dは、Cに対し、動産甲の所有権を主張することができる。

解答表示
正解:〇(指図による占有移転であっても即時取得の「占有を始めた」という要件を満たすため、Dは即時取得により所有権を取得し、Cに対抗できる)

問 【論点:占有改定と即時取得】
Aがその所有する動産甲を目的とする譲渡担保権をBのために設定し、占有改定による引渡しをした後、AがCに動産甲を譲渡し、占有改定による引渡しをした場合、Bは、Cに対し、動産甲についての譲渡担保権を主張することができない。

解答表示
正解:×(Bは占有改定によりすでに対抗要件を備えており、後から占有改定で譲り受けたCには即時取得(魔法)も成立しないため、BはCに対して譲渡担保権を主張することができる)
①Bは占有改定という対抗要件(武器)を先に備えたから二重譲渡で勝つ
②後れを取ったCは無権利者(A)から買ったことになるので即時取得(魔法)を狙うが、占有改定では魔法が発動しないので負ける

譲渡担保権とは?
売買契約+買戻し特約+使用収益を債務者に残す特約を付けたものに近い

問 【論点:競売(強制競売)による取得と即時取得】
A所有の甲動産をBが占有している場合において、Bの債権者Cが甲動産を差し押さえ、競売手続により、甲動産をAが所有していることにつき善意無過失のDが甲動産を買い受けたときは、Dは、甲動産を即時取得することができない。

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正解:×(公的機関による強制競売であっても即時取得の要件である「取引行為」に含まれるため、Dは他の要件を満たせば甲動産を即時取得することができる)

明認方法

「立木ニ関スル法律(立木法)」が適用される場合
この法律の要件を満たした特別な立木は、土地とは別に**「立木としての登記」**を作ることができます
登記ができるようになると、不動産と同じ扱いになるため、明認方法の対象ではなくなります

「立木ニ関スル法律」が適用されない場合
一般的な山林の木などは、この法律が適用されず、立木として登記することができません。
登記ができないからといって木だけを売買できないわけではありません。
そこで、登記の代わりに編み出された公示方法(対抗要件)が**「明認方法(立て札や木の皮への墨書きなど)」**なのです

土地に生えている「立木(りゅうぼく)」や「果実」は、本来は土地の一部ですが、土地とは切り離して**「木だけ」を売買**することができます。
このとき、不動産の「登記」や動産の「引渡し」の代わりとなる武器(対抗要件)が**「明認方法」**です。
具体的には、木の皮を削って所有者の名前を墨書きしたり、周囲に「この木は〇〇のモノ!」という立て札を立てたりして、第三者から見て所有者が誰か一目でわかるようにする方法です。

単元:明認方法のセンターピン(本質)
対抗要件の話として、不動産や動産と同じ。
立木(生えている木)のバトルは「明認方法(立て札)」と「土地の登記」の【早い者勝ち】!
ただし、ライバルが現れた時に立て札が壊れていたら負けになるし、相手がニセモノ(無権利者)なら武器なしでも勝てる!

明認方法=立木や果物の対抗要件
立木(地面に生えている木)や果実など、本来は土地の一部だけど切り離して「木だけ」を売買する場合、「この木の持ち主は〇〇だ!」と書いた立て札を立てたり、木の皮を削って名前を書いたりして、誰が見ても持ち主がわかるようにするルールのこと。

土地と立木をセットで譲受した場合の対抗要件
セットで買ったにもかかわらず、「立木のみ」に明認方法を施しても、有効な対抗要件を備えたことにはならない。
この場合、立木所有権の対抗要件は**「土地の所有権移転登記」**となる。

「木だけを買って明認方法を備えた人」と、「後から土地ごと木を買って土地の登記を備えた人」が対立した場合、
「どちらが先に武器を備えたか(明認方法と登記の早い者勝ち)」**で勝敗が決まります。

明認方法は「ライバルが現れた時」に残っていないとダメ!
「明認方法」である立て札や墨書きは、雨や風で壊れたり消えたりしてしまうことがあります。
判例(最判昭36.5.4)は、「新しいライバル(第三者)が現れたその瞬間に、明認方法がちゃんと存在していなければ負け(対抗できない)」という厳しいルールをとっています。

自分の土地を売る時に「木は自分のモノのまま」にする場合(所有権の留保)
この場合でも、Aさんはしっかり「明認方法」を備えておかないと、Bさんが勝手に立木ごとCさんに売ってしまった時に、Cさんに対して「その木は私のだ!」と主張することができません(最判昭34.8.7)

他人の土地に木を植えた場合(付合)のルール(民法242条本文)
他人の土地だと知らずに(あるいは無断で)木を植えてしまった場合、その木は「土地」という親玉に吸収されて、「土地の持ち主のモノ」になってしまいます

自分の土地に木を植えた場合(付合)のルール
自分で「土地を買った」という正当な権利(権原)がある状態で木を植えると、立木は土地に付着せずに、242条ただし書の類推適用により立木所有権を取得する。
しかし、その所有権取得は、明認方法なくして第三者に対抗できない。

ニセモノ(無権利者)が相手なら武器(明認方法)はいらない
明認方法(武器)がないと勝てない相手とは、不動産や動産の時と同じく「正当なライバル(第三者)」のことです。

明認方法:過去問演習

問 【論点:立木の二重譲渡と明認方法の先後】
AがBに「立木ニ関スル法律」の適用のない立木を売り渡したにもかかわらず、Bがこれに立木所有の明認方法を施さないでいる間に、AがCにその立木を二重に売り渡し、Cが立木の明認方法を施した場合には、BはCに対して立木の所有権を対抗できない。

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正解:×(立木のみの譲受人Bと土地ごと譲り受けたCは対抗関係に立ち、BがCの登記より「先に」明認方法を施しているため、早い者勝ちでBが所有権を対抗できる)
「立木ニ関スル法律の適用がない」=「明認方法が使えない」というわけではありません。むしろその逆で、「(登記が使えないから)明認方法を使うことになるよ」という意味

問 【論点:土地と立木を共に譲受した場合の対抗要件】 (難)
AがBに「立木ニ関スル法律」の適用のない立木とともに土地を売り渡し、Bは立木のみに明認方法を施した。その後、AがCに立木所有権を留保することなく土地を売り渡し、移転登記をした場合には、BはCに立木の所有権を対抗できない

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正解:〇(土地と立木をセットで買った場合の対抗要件は「土地の登記」であるため、立木だけに明認方法を施しても不完全であり、後から土地の登記を備えたCには立木の所有権も対抗できない)

問 【論点:土地譲受人による立木の植栽と第三者への対抗要件】
乙が甲からその所有地を譲り受けて立木を植栽した場合において、丙がその立木を含めてその土地を甲から譲り受け、所有権移転登記をしたときは、乙は、丙に対し、立木の所有権を主張することができる。

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正解:×(乙は正当な権利(権原)として立木の所有権を取得するが、明認方法を備えていないため、先に土地の登記を備えた丙に立木の所有権を対抗できない)
乙は「土地を買った」という正当な権利(権原)がある状態で木を植えているため、例外的に**「木は植えた乙のモノ」として認められます**(242条ただし書の類推適用)もっとも、その所有権取得を第三者に対抗するためには、明認方法を要する

問 【論点:立木所有権の留保と第三者への対抗要件】
Aが「立木ニ関スル法律」の適用のない立木の所有権を留保して土地のみをBに譲渡したが、立木につき明認方法を施さないでいるうちに、BがCに土地とともに立木を売り渡し、Cへの所有権移転登記がなされた場合には、AはCに対して立木所有権を主張することができない。

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正解:〇(立木所有権を留保したAは明認方法(武器)を備えていないため、先に土地の移転登記を備えたCに対して立木の所有権を主張することができない)

問 【論点:明認方法の消失と第三者への対抗】
AがBに「立木ニ関スル法律」の適用のない立木を売り渡し、明認方法を施したが、その明認方法が消失した後に、CがAから土地を買い受けた場合には、BはCに立木の所有権を対抗できる。

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正解:×(明認方法は第三者が現れた時に存続していなければ対抗要件として機能しないため、消失後に現れたCに対してBは立木の所有権を対抗できない)

問 【論点:無権利者に対する明認方法の要否】
Aは、A所有の立木をBに仮装譲渡し、Bは、当該立木に明認方法を施した。その後、AがCに当該立木を譲渡した場合、Cは、明認方法を施さなくてもBに対し、当該立木の所有権を主張することができる。

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正解:〇(仮装譲受人であるBは全くの無権利者であり、正当なライバル(第三者)ではないため、Cは明認方法(武器)を備えなくてもBに対して所有権を主張することができる)

問 【論点:無権原での植栽(付合)と、伐採後の即時取得の成否】
A所有の土地をBが自己所有の土地と誤信して立木を植栽していたところ、Cが当該立木を伐採して伐木を持ち出した場合には、Aは、Cに対し、当該伐木の所有権を主張することができる。

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正解:〇(Bは無権原で立木を植栽しているため土地に付合してAの所有となり、これを勝手に伐採したCは取引行為がないため即時取得も成立せず、Aは所有権を主張できる)

物権の消滅・混同

単元:物権の消滅・混同のセンターピン(本質)
「大きい箱(所有権)」を手に入れたら「小さい箱(借りる権利など)」は消えてなくなる(混同)!
ただし、小さい箱が消えることで『自分が損する』か『他人が損する』場合は、例外として消えずに残る!

混同とは(179)
併存させておく必要のない二個の法律上の地位が同一人に帰属すること
⇒混同の有無の判断は「物権を保存しておく必要があるか」にかかる

例外①:自分が損するから「消えない」ケース(後ろに誰かいる場合)
AさんがBとCから借金。
Bさんが1番抵当権、Cさんが2番抵当権を持っている土地を、BさんがAさんから買ったとします。
債務は残っているから、もしAが借金を返さない場合、Bさんは自分の土地を売却することになるが、ルールの通りにBの1番抵当権が消えてしまうと、Cさんが1番に繰り上がってしまい、Bさんは「自分の土地が他人の借金のカタに取られやすくなる」という大損をしてしまいます。
このように、自分の後ろにライバル(後順位の権利者)がいる場合、自分の権利は消えずに残ります。
*もっとも、債権者Bが債務者Aを相続するなどして被担保債権が混同(520)により消滅した場合には、債務自体が消えるから、1番抵当権を実行することがなくなる。

例外②:他人が損するから「消えない」ケース(民法179条1項ただし書)
Bさんが持っている地上権(土地を使う権利)を、Cさんが借金のカタ(抵当権)にしているとします。
Bさんが土地を買ったからといってBの地上権を消してしまうと、Cさんの抵当権まで一緒に消えてしまい、Cさんが大損してしまいます。
このように、自分の権利の上に「第三者の権利」が乗っかっている場合も、第三者を守るために権利は消えずに残ります。

例外③:他の人と一緒に持っている場合(共有)
BさんとCさんの2人で一緒に地上権(土地を使う権利)を持っている時に、Bさんだけが土地を買ったとします。
この場合、Bさんの地上権だけを消してしまうと、Cさんとの関係(共有のバランス)がおかしくなってしまいます。そのため、共有している権利は混同では消えません。

例外④:二重譲渡のバトル中(勝負がつくまで消えない)
アパートを借りているBさんが、大家さんからアパートを買いました。
しかし、大家さんはCさんにもアパートを売っていて(二重譲渡)、Cさんが先に登記(最強の武器)を備えてしまいました。
もしBさんが買った瞬間に「借りる権利(賃借権)」が消えていたとすると、Bさんは登記の勝負でCさんに負けた上、借りる権利もないので家から追い出されてしまいます。
これを防ぐため、二重譲渡で完全に勝つまでは、借りる権利は消えずに残ります。

借金(債権)の混同は最強!(民法520条本文)
AさんがBさんにお金を貸していて、その借金のカタとしてBさんの土地に「1番抵当権」を持っています(2番抵当権者はCさん)。
その後、AさんがBさんを相続(BさんとAさんが同一人物に)しました。
この場合、「自分に借金を返す(債権の混同)」ことになり、借金そのものがチャラ(消滅)になります。
借金が消えれば、それを守っていた抵当権も絶対に消えます。
後ろにCさんがいようが関係なく、借金がゼロになれば担保もゼロになるという鉄則です。

転抵当とは?
ふつうの抵当権と何が違うか:担保の目的物が“不動産”ではなく“抵当権”になっている。
抵当権者が、自分の持っている抵当権を、さらに別の借金の担保に入れること
・例
① AがBから1000万円を借りる
② その担保として、Aの家にBの抵当権がつく
③ その後、Bが資金不足になり、Cから600万円を借りる
④ BはCに対し、「自分が持っているAの家への抵当権」を担保に差し出す
⑤ 原抵当権が先に実行されても、配当はまずC、残りがB
⑤’転抵当権が先に実行された場合も、配当はまずC、残りがB
*Cは、C→Bの債権だけでなく、B→Aの原抵当権の被担保債権についても弁済期が到来していないと、実行できません。
・何のために使うのか
Bからすると、Aへの貸金はまだ回収していないけれど、今すぐ資金が必要なことがあります。
そのときBは、自分が持つ抵当権を遊ばせず、それを担保にしてCから資金調達できる。転抵当はそういう仕組みです。
・誰の承諾が要るのか
BとCの合意で転抵当自体は成立します。ただし、A(元の債務者・抵当権設定者)などに対抗するには別問題です(民法377条1項)。

その他の重要判例(集合債権譲渡担保)
将来発生する債権も含めて、まとめて借金のカタにする(集合債権譲渡担保)場合でも、通常の「債権譲渡のルール(確定日付のある通知など)」を使えば、第三者に対抗できる(勝てる)という判例があります。

債権譲渡のルール(第467条第1項)
債権が譲渡されたことを知らない債務者を守るためのルールです。
① 譲渡人(元の債権者)からの「通知」
あるいは、
② 債務者の「承諾」
対抗要件(民法467条2項)
「確定日付のある証書」による通知① あるいは②・承諾が必要
※郵便局が「この日時に間違いなくこの内容の手紙が出されました」とハンコを押してくれるような公的な証拠が「確定日付」です。

(混同)
第百七十九条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。
ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。
この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。

第五百二十条 
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。
ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

物権の消滅・混同:過去問演習

問 【論点:本人を保護するための混同の例外】
甲が乙の所有地について地上権の設定を受け、次いで丙がその土地について抵当権の設定を受けた後、甲が乙からその土地を買い受けた場合における甲の地上権は、混同により消滅する。

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正解:×(甲の地上権の後順位に丙の抵当権が存在するため、地上権を消滅させると甲自身が不利益を被る(損をする)ことになり、例外として地上権は消滅しない)
甲は抵当権付きの土地を買ったことになるが、将来的に抵当権が実行された場合に自分が損をするので、地上権は消えない

問 【論点:共有する物権の混同の例外】
Aが所有する甲土地について、B及びCが地上権の設定を受けて地上権を共有している場合において、BがAから甲土地を買い受けてその所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

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正解:×(地上権をCと共有しているため、Bの持分だけを消滅させるとCの権利(共有のバランス)に影響を及ぼす(Cが損をする)ことから、混同の例外としてBの地上権は消滅しない(179Ⅰ但))

問 【論点:所有権以外の物権(地上権)とそれを目的とする権利(抵当権)の混同】(難)
Aが所有する甲土地について、Bが地上権の設定を受けた後、CがBの地上権を目的とする抵当権の設定を受けた場合において、CがBを単独で相続したときは、Cの抵当権は消滅する。

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正解:〇(CがBを相続したことで、Cは「地上権(親箱)」と「その地上権についた抵当権(子箱)」の両方を一人で持つことになり、自分の権利に自分で抵当権をつける意味はないため、抵当権は混同により消滅する(179Ⅰ本文))
事案
① Aさんが土地を持っている(大元)。
② BさんがAさんから土地を借りる権利**「地上権(親箱)」をもらった。
③ 債権者Cさんは、債務者Bさんにお金を貸して、そのカタとしてBさんの地上権の上に「抵当権(子箱)」**をつけた。
④ その後、債務者Bさんが亡くなり、債権者CさんがBさんを相続した。
⇒本来なら抵当権で競売すべき地上権を、相続により手に入れたことになる
⇒地上権(親箱)の取得により、抵当権(子箱)は消滅
「自分の持っている権利(地上権)」に「自分のための借金のカタ(抵当権)」をつけておく意味は全くありません

問 【論点:本人を保護するための混同の例外】
Aの所有する甲土地にBの地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定された場合において、Bが甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

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正解:×(Bの地上権の後順位にCの抵当権が存在するため、地上権を消滅させるとCの抵当権の価値が上がりB自身が不利益を被る(損をする)ことになり、例外として地上権は消滅しない)

問 【論点:二重譲渡における賃借権の混同の例外】
Aが所有する甲建物を賃借しているBが、Aから甲建物を買い受けたが、その旨の所有権の移転の登記をしない間に、CがAから甲建物を買い受けて所有権の移転の登記をしたときは、Bは、Cに対して賃借権を主張することができない。

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正解:×(二重譲渡の勝敗が決してBが所有権を失った場合、Bを保護するために混同の例外が適用され賃借権が復活(存続)するため、BはCに対して賃借権を主張できる)
賃借人が賃貸人から不動産を買い受けた場合、原則として賃借権は混同により消滅する。
しかし、第三者への二重譲渡がなされていた場合、賃借権が消滅してしまうと賃借人は不動産を占有する権原をすべて失うことになる。
第三者が先に登記を備え、賃借人が所有権取得を対抗できなくなった場合、いったん混同により消滅した賃借権は、当該第三者との関係では消滅しなかったこととなる(最判昭40.12.21)。

問 【論点:目的物が第三者の権利の目的となっている場合の混同の例外】
Aが所有する甲土地について、Bが抵当権の設定を受けた後、その抵当権をCの転抵当の目的とした場合において、BがAから甲土地を買い受けてその所有権を取得しても、Bの原抵当権は消滅しない。

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正解:〇(Bの抵当権を消滅させると、それをカタにしていたCの転抵当権まで消滅してしまいCが不利益を被る(他人が損をする)ため、混同の例外としてBの抵当権は消滅しない)
転抵当とは不動産ではなく抵当権を担保に入れるものだから、もし混同で抵当権がなくなると、転抵当も消滅することになる

問 【論点:後順位抵当権者が存在する場合の混同の例外】
Aが自己所有地についてBのために1番抵当権を設定した後、Cのために2番抵当権を設定した場合において、BがAからその土地の所有権を譲り受けても、1番抵当権は消滅しない。

解答表示
正解:〇(Bの後順位にCの2番抵当権が存在するため、1番抵当権を消滅させるとCが1番に繰り上がってしまい、B自身が不利益を被る(損をする)ことになり、例外として1番抵当権は消滅しない)

Bの1番抵当権(Aへの貸金):2,000万円
Cの2番抵当権(Aへの貸金):2,000万円
土地の価値:3,000万円
その後、BがAからこの土地を買った(所有権を取得した)。
もしBの1番抵当権が「消滅しなかったら」まず1番のBさんが2,000万円を回収し、残りの1,000万円を2番のCさんが受け取ります。
もしBの1番抵当権が「消滅してしまったら」1番になったCさんが、自分の貸金2,000万円を真っ先に全額回収してしまいます。これを防ぐために、「自分の後ろにライバル(2番抵当権)がいる時は、自分の身を守るために防具(1番抵当権)は絶対に脱いではいけない(消滅しない)」という例外ルールが存在しています!

問 【論点:債権の混同と担保物権(抵当権)の消滅】
AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け、Cがその土地に2番抵当権の設定を受けた場合において、AがBを単独で相続したときは、Aの抵当権は消滅しない。

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正解:×(債権者Aが債務者Bを相続したことで借金そのものが混同により消滅し、それに伴い借金のカタである抵当権も絶対に消滅するため)

問 【論点:最後順位の抵当権者が所有権を取得した場合の混同】
Aが自己所有地についてBのために1番抵当権を設定した後、Cのために2番抵当権を設定した場合において、CがAからその土地の所有権を譲り受けても、2番抵当権は消滅しない。

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正解:×(Cは最後順位の抵当権者であり、自分の後ろに誰もいないため、2番抵当権を消滅させても自分が不利益を被ることはなく、原則通り混同により消滅する)

問 【論点:目的物が後順位の権利の目的となっている場合の混同の例外(地役権)】
通行地役権者が、通行地役権の登記があり、その後抵当権の登記がなされている土地を譲り受けた場合であっても、通行地役権は混同により消滅しない。

解答表示
正解:〇(通行地役権の後順位に抵当権が存在するため、地役権を消滅させると抵当権の価値が上がり、地役権者自身が不利益を被る(損をする)ことになり、例外として地役権は消滅しない)
抵当権が実行された場合に困るから消滅しない

問 【論点:地上権の準共有と混同の例外】
地上権の準共有者の一方が土地を譲り受けた場合、共有持分は混同により消滅するので、他の準共有者の持分はその分増加する。

解答表示
正解:×(共有(準共有)している権利について、1人が土地の所有権を取得しても、他の準共有者の権利とのバランスを崩してしまうため、混同の例外として持分は消滅しない)

問 【論点:目的物が第三者の権利の目的となっている場合の混同の例外(地上権と抵当権)】
甲が乙の所有地について地上権の設定を受け、次いで丙がその地上権につき抵当権の設定を受けた後、甲が乙からその土地を買い受けた場合における甲の地上権は、混同により消滅する。

解答表示
正解:×(甲の地上権の上に丙の抵当権が設定されているため、地上権を消滅させると丙が不利益を被る(他人が損をする)ことになり、混同の例外として甲の地上権は消滅しない)

問 【論点:集合債権譲渡担保の第三者に対する対抗要件】
甲の乙に対する金銭債務を担保するために、甲が丙に対して有する既発生債権及び将来債権を一括して乙に譲渡し、乙が丙に対し担保権の実行として取立ての通知をするまでは丙に対する債権の取立権限を甲に付与する内容の債権譲渡契約について、乙がその債権譲渡を第三者に対抗するためには、債権譲渡の対抗要件の方法によることができる。

解答表示
正解:〇(集合債権譲渡担保であっても、特段の複雑な手続きは要求されず、通常の債権譲渡のルール(確定日付のある通知など)(467Ⅱ)を備えることで第三者に対抗することができる)

問 【論点:対抗要件を備えた賃借権と後順位抵当権が存在する場合の混同の例外】
Aが自己所有地を建物所有目的でBに賃貸し、Bが対抗要件を具備した後、その土地についてCのために抵当権を設定した場合、BがAからその土地の所有権を譲り受けても、賃借権は消滅しない。

解答表示
正解:〇(対抗要件を備えた賃借権の後順位に抵当権が存在するため、賃借権を消滅させるとCの抵当権の価値が上がりB自身が不利益を被る(損をする)ことになり、民法179条1項ただし書の準用により賃借権は消滅しない)
特定の土地につき所有権と賃借権が同一人に帰した場合であっても、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、対抗要件を具備した後にその土地につき抵当権が設定されたときは、179条1項ただし書が準用される(最判昭46.10.14)

問 【論点:借地権設定者が他者と共に借地権を取得した場合の混同の例外】
Aがその所有する甲土地を建物所有の目的でBに賃貸し、Bがその地上に建物を所有する場合において、A及びCがBからその建物を買い受けたときは、賃借権は、消滅する。

解答表示
正解:×(借地権設定者Aが第三者Cと共に借地権を取得した場合、借地権を消滅させると共有者であるCの権利を害することになるため、借地借家法15条2項により借地権は消滅しない)
Aは良いが、Cのためにも消滅しない