【司法書士試験】民法総則「無効及び取消し」(第119条から第126条)

このページは、司法書士試験に出題された民法の《総則》第四節 無効及び取消し(第百十九条―第百二十六条)をまとめたページになります。

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【民法総則】論点「無効及び取消し」ガチ解説

取消しと追認

全体のポイント
① 「取消し」という魔法のカード『やっぱりナシで!』
② 「取消し」カードを使える人の限定と、第三者の保護
③ 返還義務(現存利益のルール)
④ 「追認」とは『取消のカードを捨てて、ゲームのクリアを確定させる』こと!
⑤ 「法定追認」というトラップ
⑥ 魔法のカード「取消し」のタイムリミット(時効)

取消権者の限定列挙(120):騙された側。
制限行為能力では「守る人」も単独で取り消せるが、詐欺等では「本人サイド」のみが基本である。

制限行為能力の場合(120条1項):
本人、代理人(親権者、成年後見人など)、承継人(相続人など)、同意権者(保佐人、補助人など)
*保証人などは範囲外であり、取り消せない。

瑕疵ある意思表示(錯誤・詐欺・強迫)の場合(120条2項):
騙された本人、代理人、承継人

取消しの方法と効果(121、123)
取消しや追認は、直接の相手方に対する意思表示によって行う(123)。
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる(121)。

取消権の単独行使
未成年者や保佐人などの制限行為能力者は、法定代理人の同意を得なくても、「単独で」取消権を行使できる。

第三者保護(95Ⅳ、96Ⅲ)
「錯誤」「詐欺」による取消し:善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(95Ⅳ、96Ⅲ)
「強迫」「制限行為能力」による取消し:第三者保護規定なし

錯誤、詐欺、強迫、制限行為能力者の行為の取り消しの違い
重過失があったら錯誤取消できない。他は過失があっても取消できる。

原状回復義務と現存利益(121の2)
原則として原状回復義務(121Ⅰ)
例外:「現存利益(手元にある分だけ)」という甘々ルールが適用されるのは、以下の2パターンのみ
① 制限行為能力者(未成年など)や意思無能力者(121の2Ⅲ)
② 無償行為(タダでもらった)かつ善意の人(121の2Ⅱ)
趣旨:タダでもらった人(無償行為の受領者)は、もらったものをパーッと使ってしまいがちなので、後から「やっぱり勘違いだったから全額返して!」と言われると、あまりにも可哀想(不意打ち)

追認の要件(124)と効果(122)
要件:
追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後に(未成年者が成人した後や、詐欺に気づいた後など)、取消権を有することを知ってしなければ効力を生じない。
もっとも、制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得たときは、状況が消滅しなくても追認できる(124Ⅱ⓶)。

効果:
「追認」をすると、契約した時点から一応有効だった法律関係が有効なものとして確定する(遡及効ではない)。
確定後は、もはや誰であっても取り消すことはできなくなります(122)

無効な行為の追認(119)
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。
ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

無効行為の転換
判例:出生届と養子縁組届
まったくの他人の子を「本当の子(嫡出子)」と嘘をついて出生届を出したら無効であるが、これを「養子縁組」の届出に転換することはできない(最判昭50.4.8)
判例:出生届と認知の届出
愛人との間にできた「自分の本当の子供」を、本妻との間の本当の子(嫡出子)だと嘘をついて出生届を出したとします。 これも嫡出子としての出生届としては無効ですが、自分と血が繋がっていることは事実なので、「認知の届出」としては有効に転換されます(最判昭53.2.24)

法定追認(125)
追認をすることができる時以後に、以下の事由があったときは、追認したものとみなされる(法定追認)。
① 全部または一部の履行
② 履行の請求(※取消権者がした場合に限る)
③ 更改
④ 担保の供与
⑤ 権利の全部または一部の譲渡(※取消権者がした場合に限る)
⑥ 強制執行

取消権の期間の制限(消滅時効)(126)
取消権は、追認をすることができる時(気づいた時・大人になった時)から「5年間」行使しないとき、または行為の時から「20年」を経過したときは、時効によって消滅する。
※取消した後の「返還請求権(原状回復請求権)」は、取消し時から通常の債権として10年の消滅時効にかかる。

取消しと追認の過去問演習

問(詐欺と錯誤による取り消しの違い)
錯誤の場合には、表意者Aは、すべての第三者に対して、取消しを主張することができるが、詐欺の場合には、表意者Aは、すべての第三者に対して取消しを主張することができるわけではない。

解答表示
正解:×(錯誤の場合も、すべての第三者に主張できるわけではない)
錯誤による取消しは、善意かつ過失がない第三者には対抗(主張)できません(95Ⅳ)
詐欺による取消しは、善意かつ過失がない第三者には対抗(主張)できません(96Ⅲ)

問(詐欺と錯誤による取り消しの違い)
錯誤の場合には、表意者Aの追認によって有効な意思表示に転換させる余地はないが、詐欺の場合には、表意者Aの追認によって確定的に有効な意思表示にすることができる。

解答表示
正解:×(錯誤も詐欺も、取り消しうる行為として同じ)
実は旧民法時代は「錯誤=無効(最初からナシ)」「詐欺=取消し(魔法のカード)」という違いが存在
民法改正により「錯誤も取消し(魔法のカード)」に統一されました。

問(取消権の期間制限・消滅時効)
民法上、錯誤の場合には、取消しを主張することができる期間についての定めはない。

解答表示
正解:×(期間の定めがある)
民法126条には「取消権のタイムリミット(消滅時効)」が明確に定められています
錯誤による取消権も、他の魔法のカード(詐欺や未成年など)と全く同じように、以下の期間で消滅(ゲームオーバー)します。
追認をすることができる時(勘違いに気づいた時)から「5年間」
または、行為(契約)の時から「20年」

問(取消しの効果・遡及効と無効行為の追認)
当事者が無効な行為を追認したときは、当該追認は、当該行為の時に遡ってその効力を生ずる。

解答表示
正解:×(行為の時に遡るのではなく、「新たな行為」をしたとみなされる)
当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。(119但)

問(無効行為の転換と身分行為)
他人の子を自己の嫡出子として出生の届出をしても、その届出は、嫡出子の出生の届出としては無効であるが、その届出が当該他人の子を自己の養子とする意図でされたものであるときは、その届出をもって養子縁組の届出があったものとされる。

解答表示
正解:×(養子縁組の届出があったものとはみなされない)
養子縁組は戸籍法の厳格なルール(強行法規)に従って行うべきものであり、嘘の出生届で勝手に養子縁組を成立させるようなズルは許されない

問(未成年者の取消権と法定代理人の同意)
未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為を取り消すためには、法定代理人の同意を要する。

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正解:×(法定代理人の同意を得ることなく、単独で取り消すことができる)
未成年者にとっては100%プラスになる行為です。 このように自分を守るための行為をするのに、いちいち法定代理人に、取り消してもいい?と同意をもらう必要はありません。

問(被保佐人の単独取消権)
甲は、被保佐人であるが、保佐人丙の同意を得ないで、乙に甲所有の高価な壺を売却した。甲は、丙の同意がなければ、自ら売買契約を取り消すことはできない。

解答表示
正解:×(保佐人の同意がなくても、単独で取り消すことができる)
「未成年」であろうが「被保佐人」であろうが、自分を守るための魔法のカード(取消し)を使って契約を白紙に戻すことは、100%プラス(不利益からの解放)になります。
そのため、魔法のカードを使うこと自体には、親や保佐人の同意はいちいち必要ありません。

問(取消権者の限定)
詐欺の場合には、取消権を行使することができる者は限定されている。

解答表示
正解:〇(限定されている)
制限行為能力の場合:本人、代理人、承継人、同意権者(120条1項)
錯誤・詐欺・強迫の場合:騙された本人、代理人、承継人(120条2項)

問(取消権者と保証人)
主たる債務者が行為能力の制限によってその債務を生じさせた行為を取り消すことができる場合であっても、当該債務の保証人が当該行為を取り消すことはできない。

解答表示
正解:〇(保証人は取り消すことができない)
民法120条1項によれば、「未成年者本人」「その代理人」「承継人」「同意権者」のみ

問(取消し後の返還義務と現存利益)
甲乙夫妻の子丙(17歳)が丁から50万円借金して、大学の入学金の支払に充てた。丙が未成年を理由に消費貸借契約を取り消した場合、丙は丁に対して50万円を返還しなければならない。
正解:〇(50万円全額を返還しなければならない)

解答表示
未成年取消の場合、現存利益の返還義務を負う。
50万円を「大学の入学金(=どうせ払わなければならなかったもの)」に使ったので、50万円丸々「現存利益あり」と判定される。

問(無償行為の取消しと現存利益の返還)
AのBに対する無償行為が錯誤を理由に取り消された場合には、その行為に基づく債務の履行として給付を受けたBは、給付を受けた時にその行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

解答表示
正解:〇(現存利益の返還でよい)
民法121条の2第2項には、**「タダでもらった人(無償行為)」かつ「取り消されるなんて知らなかった人(善意)」**を守るための特別ルールが用意されています。

問(未成年取消し後の現存利益と目的物滅失)
未成年者が買主としてした高価な絵画の売買契約を未成年者の行為能力の制限を理由として取り消した場合において、その絵画が取消しの前に天災により滅失していたときは、当該未成年者は、売主から代金の返還を受けることができるが、原状回復義務の例外として絵画の代金相当額を売主に返還する必要はない。

解答表示
正解:〇(絵画の代金相当額を返還する必要はない)
未成年者による取消による返還義務は、現存利益でよい(121Ⅲ)。
そして、本問、手元には本当に「何もない(現存利益ゼロ)」状態です。
一方で、相手方は大人なので、チート能力は使えません。受け取っていた代金は、全額きっちりと返還しなければなりません。

問(追認の定義と相手方)
追認とは、取り消すことができる法律行為の効力を有効に確定する旨の意思表示であり、取り消すことができる法律行為の相手方に対する意思表示として、当該相手方に対してするものとする。

解答表示
正解:〇(直接の相手方に対して行う)
「取消し」をする場合も、「追認」をする場合も、常に元の契約の直接の相手方に対して意思表示を行う必要があります(民法123条)。

問(追認の要件・取消しの原因の消滅)
成年被後見人は、成年後見人が追認した行為も取り消すことができるが、被保佐人は、保佐人が追認した行為を取り消すことができない。

解答表示
正解:×(成年被後見人であっても、成年後見人が追認した後は取り消すことができない)
「追認」をすると、法律行為は有効なものとして確定し、もはや誰であっても取り消すことはできなくなります(民法122条)

問題(追認の要件・制限行為能力者の追認)
甲は、未成年者であるが、親権者丙の同意を得ないで乙に甲所有の高価な壺を売却した。甲は、成年者となる前は、丙の同意を得たときでも、売買契約を追認することができない。

解答表示
正解:×(親権者の同意を得れば、成年になる前でも追認できる)
原則として**「取消しの原因が消滅した後(大人になった後)」**でなければ効力を生じません(民法124条1項)
しかし、例外として、制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするときは、取消しの原因が消滅した後(大人になった後)でなくても取消できる。

問題(取消しうる行為の追認の効力・遡及効)
甲は、未成年者であるが、親権者丙の同意を得ないで、乙に甲所有の高価な壺を売却した。その後、丙がその売買契約を追認したときは、当該売買契約は追認の時から有効となる。

解答表示
正解:×(追認の時からではなく、初めから(契約時から)有効であったものとして確定する)
対比チェック!
無権代理の追認(116条) = さかのぼる!
無効の追認(119条) = さかのぼらない!(新たな行為)
取消しの追認(122条) = (そもそも一応有効なので)有効として確定する!