【司法書士試験】物権「所有権」(第206条から第264条)

このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「所有権」(第206条から第264条)をまとめたページになります。

司法書士試験で必要な全単元は、コチラのページにまとめてあります。
>>【司法書士試験】全科目攻略・論点まとめページ(全論点リンク集)

ディスプレイ

【民法物権】論点「所有権」ガチ解説

所有権の全体像
民法の条文
第三章 所有権
第一節 所有権の限界
第一款 所有権の内容及び範囲(第二百六条―第二百八条)
第二款 相隣関係(第二百九条―第二百三十八条)
第二節 所有権の取得(第二百三十九条―第二百四十八条)
第三節 共有(第二百四十九条―第二百六十四条)
第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令(第二百六十四条の二―第二百六十四条の八)
第五節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令(第二百六十四条の九―第二百六十四条の十四)

民法物権の全体像と条文

民法物権の全体像と条文

相隣関係

単元:相隣関係のセンターピン(本質)
お互いの土地を平和に使うため、
少しずつ所有権を制限して『お互い様』で譲り合うためのルールである!

(隣地の使用)
第二百九条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

境界における隣地の使用請求(お隣の土地に入らせて!)
要件:土地の所有者が、境界の近くで「壁や建物を建てたり、壊したり、修理したりするため」に必要な場合
効果:
原則として、必要な範囲内で、お隣の土地を使用することができる。
例外(注意!):いくら必要な範囲でも、お隣さんの**「住家(実際に住んでいる家の中)」に立ち入るには、必ず居住者の承諾が必要**である。

(公道に至るための他の土地の通行権)
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

第二百十二条 第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

囲繞地(いにょうち)通行権(道がないから通らせて!)
定義:
「袋地(ふくろち)」:他の土地に囲まれていて、公道に出られない土地
「囲繞地」その袋地を囲んでいる周りの土地

要件・効果:
袋地の所有者は、公道に出るために、周りの土地(囲繞地)を法律上当然に通行する権利(囲繞地通行権)を持つ。
※この囲繞地通行権は、権利は法律で当然に認められるため、登記がなくても第三者に主張(対抗)できる。

通行の方法:
通行に必要で、かつ、周りの土地への損害が最も少ない場所・方法を選ばなければならない。
必要があれば、通路を開設することもできる。
自動車の通行について:
法律で当然に認められる囲繞地通行権が、自動車による通行が認められるかどうかは、自動車による通行の必要性や、周りの土地への損害などを「総合考慮」して裁判所が判断する。

対価(原則):
タダで通れるわけではなく、通行する人は、周りの土地の所有者に対して償金(お金)を支払う義務がある。

例外(無償になるケース):
土地の「分割」や「一部譲渡」によって、一筆の土地がA(袋地)とB(囲繞地)に分かれたとする。その袋地Aの所有者は、分割されたもう片方の囲繞地B(残余地)しか通ることができない。なぜなら、他の囲繞地である隣人からすると、勝手に袋地を作っておいて迷惑をかけるな!となるため。その代わり、ABの当事者間で、通行料は無償になる。
⇒囲繞地Bが別の人に売られた場合、この袋地Aが持つ「囲繞地はBしか通れないが無料」は、そのまま引き継がれる。
理由:譲受人の認識ではなく、袋地に付着した物権的権利・残余地に課せられた物権的負担だから。
⇒袋地Aが別の人に売られた場合も同様に、囲繞地はBしか通れないが無料」は、そのまま引き継がれる。

例外(無償になるケース)の具体例
もともと1つの広い土地だった磯野家の土地を、波平さんが半分に「分割」して、道路に面していない奥側の土地「袋地」をカツオくんにあげたとします。
⇒「袋地」のカツオくんは、波平さんの土地を**タダ(無償)**で通れます。他の囲繞地には新しい迷惑なので通れません。
理由: 波平さんが自分で分割して袋地を作ったのだから、息子に迷惑料(通行料)を請求するのは筋違い(自己責任)だからです。

*その後、波平さんが自分の土地(道路側・囲繞地)を穴子さんに売りました。
⇒カツオくんは、穴子さんの土地を今でも**タダ(無償)**で通れます。
理由: 穴子さんは「無料通行権のついた囲繞地」であることを承知で買ったとみなされるからです。

*その後、カツオくんが自分の袋地を、中島くんに売りました。
⇒中島くんは、穴子さんの土地を通る際、お金(償金)を払わなければなりません。
理由: 「身内や当事者だからタダ」という特別な人間関係は、中心となる袋地が売られた時点で「リセット」されます。中島くんは「道路がない袋地」を安く買ったはずなので、通行料を払うのが公平というリーガルマインドです。

(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
第二百十三条の二 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

第二百十三条の三 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

(自然水流に対する妨害の禁止)
第二百十四条 土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない

自然の摂理に従って流れる水(ポンプなどの人工的な力によらず、地形の高低差に従って自然に流れてくる状態)については、隣人同士がお互いにその状態を受け入れ、自分勝手な都合でせき止めたりしてはならないという「相隣関係」の基本的なルールを定めた条文です。

「土地の所有者」:「水が流れていく先」である低地の所有者を指すことが多い
「隣地」:ここでは主に「水が流れてくる元」である高地のことを指します

「人工的な排水」については、別途「雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止(218条)」などで規制されます 。

(水流の障害の除去)
第二百十五条 水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。

自然災害は「やったもん勝ち」ならぬ「困ったもん負担」

「高地の所有者」:上流側の土地を持っている人です。このままでは自分の土地に水が逆流し、浸水被害を受ける恐れがある当事者です。

「自己の費用で」:工事のお金は「やりたい人(上流の人)」が出します。原因が自然現象(天災)なので、下流の人に「お前の土地なんだからお前が直せ」とは言えないという理屈です。

もし下流の人がわざと堰き止めた場合や、管理不足で詰まった場合には、別の条文(216条)により「下流の人の費用」で直させることになります。

(水流に関する工作物の修繕等)
第二百十六条 他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。
(費用の負担についての慣習)
第二百十七条 前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。
(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)
第二百十八条 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない
(水流の変更)
第二百十九条 溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。
2 両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。
3 前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

水は、上流から下流へと流れる性質上、流域に住む人々にとって共通の利益をもたらすものです。
自分勝手に水路を曲げたり広げたりして、お隣さんに迷惑をかけないための「水利用の公平性」を定めた条文です。

原則:向こう岸が他人のときは勝手にいじらない
Aさんの土地とBさんの土地の間に、小さな農業用水路が流れています。
Aさんは「自分の敷地を広く使いたいから、水路を少しBさん側に押し広げて、こちら側を埋め立てよう」と考えました。
しかし、これはNGです。

例外:両岸が自分なら自由、だけど最後は元通りに
Cさんの広大な土地の中を、水路が横切っているとします。右岸も左岸もCさんの土地です。
この場合、Cさんは「農作業の邪魔だから、自分の土地の中で水路をS字に曲げたり、大きな池のように広げたりしたい」と思えば、それは自由です。
ただし、下流のDさんも使います。もしCさんが出口を勝手に変えて、Dさんの家の方向に水を流し込んだら大変です。
自分の土地から水が出ていく「出口」では、必ず元の「場所」と「状態」に戻して流さなければならない。

「溝(みぞ)、堀(ほり)その他の水流地」:
天然の川だけでなく、人工的に作られた用水路なども含まれます。
「水路又は幅員を変更してはならない」:
水路のコースを変えたり、幅(幅員)を勝手に変えたりすることの禁止です。これを認めると、対岸が削られたり、水の勢いが変わって下流の人が困ったりするからです。

「両岸の土地が水流地の所有者に属するとき」:
水路の右も左も、自分の土地である場合です。
「水路及び幅員を変更することができる」:
両岸が自分の土地なら、その範囲内で水路を曲げたり広げたりしても、直接誰かの迷惑にはなりにくいため、自由度が認められています。

「水流が隣地と交わる地点」:
自分の土地が終わって、お隣さんの土地へ水が流れ出す「出口」のことです。
「自然の水路に戻さなければならない」:
自分の土地の中でどれだけ水路をいじってもいいけれど、出口だけは元々の場所・角度・勢いに戻して返してね、という意味です。

(排水のための低地の通水)
第二百二十条 高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
(通水用工作物の使用)
第二百二十一条 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。
2 前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
(堰せきの設置及び使用)
第二百二十二条 水流地の所有者は、堰せきを設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
2 対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。
3 前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
(境界標の設置)
第二百二十三条 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。

自分と隣の土地の境目がどこにあるのかをハッキリさせることは、お互いの財産を守り、将来のトラブルを防ぐために非常に重要です。この条文は、隣人同士が協力して目印(境界標)を作ることを認めた、相隣関係の基本ルールです。

「境界標」:
コンクリートの杭、石の柱、金属のプレートなど、「ここが境目ですよ」と誰が見てもわかる物理的な印のことです。

「境界標の設置」とは?
隣人だけで新しく境界を作ることはできない。くあくまでも、すでに国によって定められている客観的な境界線(筆界)の上に、お互いが分かりやすいように目印(マーク)を置く」というだけの行為です。
「所有権の範囲(私的な権利の及ぶ範囲)」と「土地の境界線(公的な区画)」を全くの別物として扱います。
当事者の自由な意思表示によって、所有権が移転したからといって、国が定めた公的な「境界線」そのものが自動的に変動するわけではありません(最判昭42.12.26)

新しく境界を作りたい場合
土地の境界(筆界)の専門家である土地家屋調査士に依頼して、国(法務局)が関与する公的な手続きを踏む必要があります。

「設けることができる」:
もし自分一人で設置しようとしても隣人が反対する場合、裁判所に訴えて設置を命じてもらうことも可能だ、という「権利」を含んでいます。
隣人が「設ける必要はない」と消極的かもしれない状況でも、土地の境界は公共的な性質も持つため、「協力して杭を打つこと」を強制できる。

(境界標の設置及び保存の費用)
第二百二十四条 境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
(囲障の設置)
第二百二十五条 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
2 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。

「その間に空地がある」:
建物同士が隙間なくくっついているのではなく、境界線の上に塀を立てるスペース(空地)がある状態を指します。

「囲障(いしょう)」:
いわゆる「塀」や「フェンス」、「垣根」など、敷地を区切る構造物の総称です。

「協議が調わないとき」:
どんな塀にするか話し合っても決まらない場合です。「豪華なレンガがいい」「安いフェンスでいい」と意見が食い違った時のための救済策です。

「板塀(いたべい)又は竹垣(たけがき)」:
法律が定める「標準的な塀」の素材です。

【原則:塀は二人の共有財産】
新築の家を建てたAさんと、お隣のBさん。二人の土地の間にはまだ仕切りがありません。
「子供の飛び出しも怖いし、防犯のために塀を立てたいね」と二人の意見が一致しました。
この場合、お隣さんと協力して、折半(半分ずつ)の費用で、境界線の上に塀を立てることができます。

【例外:揉めたら「標準」に合わせる】
「こだわりがある方が、追加分を負担する」227条
または
「最低限のルールで決着させる」

(囲障の設置及び保存の費用)
第二百二十六条 前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
(相隣者の一人による囲障の設置)
第二百二十七条 相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
(囲障の設置等に関する慣習)
第二百二十八条 前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
(境界標等の共有の推定)
第二百二十九条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する

第二百三十条 一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。
2 高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。

境界の確定:
土地の境界線は、国が定めた客観的な線であるため、お隣さん同士の「合意(話し合い)」によって勝手に変更することはできない。

(共有の障壁の高さを増す工事)
第二百三十一条 相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。
2 前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。
第二百三十二条 前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第二百三十三条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

隣から伸びてきた木の「枝」や「根」にどう対応すべきかのルール

原則
「枝は勝手に切れない、根は勝手に切れる」というルール
「枝は、自分では切れないから、枝を切ってくれ」とお隣さんに請求することができる。
例外
「一定の条件(お願いしても無視される、相手が不明、緊急事態)を満たせば、枝も自分で切ってよい」というルール(第3項)が新設

(境界線付近の建築の制限)
第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
第二百三十五条 境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
2 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
(境界線付近の建築に関する慣習)
第二百三十六条 前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
(境界線付近の掘削の制限)
第二百三十七条 井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。
2 導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。ただし、一メートルを超えることを要しない。
(境界線付近の掘削に関する注意義務)
第二百三十八条 境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。

相隣関係:過去問演習

境界における隣地の使用
土地の所有者は、隣地との境界の付近において建物を築造するため必要な範囲内で、その隣地を使用することができる。

解答表示

土地の所有者は、境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕するため必要な範囲内で、隣地を使用することができる(209 Ⅰ ①)。

囲繞地(いにょうち)通行権(道がないから通らせて!)
袋地の所有権の取得者は、その登記を経由していなくても、囲繞地の所有者及びその利用権者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。

解答表示

袋地の所有権を取得した者は、所有権移転登記をしていなくとも、囲繞地の所有者及びこれにつき利用権を有する者に対して囲繞地通行権を主張することができる(最判昭47.4.14)。

(論点:分割・一部譲渡によって生じた袋地の通行権の範囲と、土地の譲渡)
1筆の土地が分割により公道に面するA土地と袋地であるB土地に分かれた場合において、A土地が第三者に譲渡されたときは、B土地の所有者は、A土地以外の囲繞地についても囲繞地通行権を主張することができる。

解答表示

一筆の土地の分割によって袋地を生じた場合には、袋地の所有者は、公路に至るためには他の分割者の所有地のみを通行することができる(213 Ⅰ)。これは、他の分割者がその所有地を他人に譲渡した場合も同様である(最判平2.11.20)。
お前ら(AとB)の都合で袋地を作ったんだから、必ずお前らの土地(残余地であるA土地)の中で解決しろ!他の隣人の土地を通ることは絶対に許さない!

他の土地を通りたいなら、原則通り有料で通れる?
他の土地は「有料でも一切通れません」!
元々1つの土地だったものを分割して「袋地」を作ってしまったのは、**完全にAさんとBさんの都合(自己責任)**です。 それなのに、「A土地を通るのは気が引けるから」といって、無関係な別のご近所さんの土地を(有料とはいえ)無理やり通らせてもらうのは、別のご近所さんからすれば「お前らが勝手に土地を割ったせいで、なんでウチが迷惑(損害)を被らなきゃいけないんだ!」と大迷惑

もし、袋地であるBが売却された場合はどうか?
「分割されたもう片方の土地(A土地)しか通れない、かつ無料」**という縛りを受け続けます
「勝手に土地を割って袋地を作った」という過去の事実は土地に残り続けるので、絶対にA土地の中で解決しろ!(他の隣人に迷惑をかけるな)

論点:同一人物の所有する土地の譲渡によって生じた袋地の通行権
Aが、その所有する甲土地及び乙土地のうち甲土地をBに譲渡した際に、これにより、Aの所有する乙土地が公道に通じない土地になることを認識していた場合、Aは、公道に至るために甲土地を通行することはできない。

解答表示

土地の一部譲渡によって公道に通じない土地が生じた場合には、当該土地の所有者は、残余地についてのみ通行権を有する。
ここにいう一部譲渡には、同一人の所有する数筆の土地の一部を譲渡する場合を含む(最判昭44.11.13)。
そして、このことは土地所有者の認識によって異ならない。

(論点:分割によって生じた袋地の囲繞地通行権と、通行地役権の設定の可否)
Aが所有する甲土地を二つに分筆してそれぞれをBとCに譲渡したところ、Bの取得した土地が公道に通じない土地になった場合、Bは、公道に至るため、Cの取得した土地のみを通らなければならず、隣地を所有するDとの間で公道に至るための通行地役権を設定することはできない。

解答表示

土地所有者が一筆の土地を分筆した上、そのそれぞれを他人に譲渡したことにより公道に通じない土地を生じた場合、公道に通じない土地を取得した所有者は、分筆前一筆であった残余の土地についてのみ通行権を取得する(最判昭37.10.30)。しかし、この場合においても、当該通行権とは別個に、残余地以外の土地の所有者と地役権設定契約をすることまでが禁じられるわけではない。

(論点:自然水流の妨害の禁止)
互いに隣接する甲土地と乙土地があり甲土地が乙土地より高地にある場合、甲土地から乙土地に水が自然に流れてくるときに、乙土地の所有者は、水の流れをせき止めることはできない。

解答表示

条文通り、低地などの土地の所有者は、高地などの隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない(214)。
これは、隣地の利用価値を確保する趣旨である。

(論点:境界標の設置請求と費用負担)
互いに隣接する甲土地と乙土地があり、甲土地の所有者が甲土地と乙土地との境界に境界標を設けたいと考えた場合、境界標を設ける必要性はないと考えているかもしれない乙土地の所有者と共同の費用でこれを設けることを求めることはできない。

解答表示

これは単なる「お願い」ではなく、相手方に協力を要求できる法的な権利(境界標設置権)「法律のルールなんだから、一緒に費用を出して境界標を設置しましょう!」と強制的に求めることができる
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる(223)。

隣人だけで境界を確定できるか
相隣者間で境界を定めた場合には、これによって土地の境界が変動するから、その定めにより境界を確定することができる。

解答表示

土地の境界は、国家が行政作用によって定めた客観的な存在であるから、私人の合意により変動するものではない(最判昭42.12.26)。

【区分所有法】区分所有(マンションのルール)

単元:区分所有のセンターピン(本質)
マンションの【三位一体】
『専有部分(自分の部屋)』
『共用部分(みんなの場所)』
『敷地利用権(土地を使う権利)』は絶対に切り離せない!

*「敷地利用権」とは、土地の「所有権」や「共有持分権」に限らず、「地上権」や「賃借権」などの土地を借りる権利もすべて含まれる。

(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

専有部分と共用部分の「切り離し禁止」ルール(建物の三位一体)
随伴性(くっついていく):
エレベーターや階段などの「共用部分」に対する権利(持分)は、自分の部屋(専有部分)の売却などに必ずくっついていく。
分離処分の禁止:
区分所有法に特別な定めがある場合を除き、自分の部屋と共用部分の持分を別々に切り離して売ることは絶対にできない。
分割請求の禁止:
共用部分は切り離せないため、「エントランスの俺の持分だけ分割して個人のモノにさせてくれ!」と、共有物の分割請求をすることも許されない。

(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

専有部分と敷地利用権の「切り離し禁止」ルール(土地との三位一体)
分離処分の禁止:
自分の部屋(専有部分)と、マンションが建っている土地を使う権利(敷地利用権)も、原則として切り離して売る(分離処分)ことはできない。
敷地利用権の範囲:
ここでいう「敷地利用権」とは、土地の「所有権」や「共有持分権」に限らず、「地上権」や「賃借権」などの土地を借りる権利もすべて含まれる。

(分離処分の無効の主張の制限)
第二十三条 前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。

切り離し禁止ルールを破って売ってしまった場合の例外(善意の第三者保護)
原則(無効):
自分の部屋と土地の権利を切り離して売る(分離処分)ことは法律違反であり、その取引は原則として「無効」になる。
例外(善意者の保護):
ただし、「この部屋と土地は切り離して売ってはダメ」ということが登記(記録)される前に取引をしてしまった場合、「そんなルールがあるとは知らなかった!」という善意の相手方に対しては、無効を主張することができない。

具体例:分離した状態で買う相手方なんているのか?
悪徳業者Aが、「部屋は売るけど、土地は別の値段ね(あるいは土地は売らないよ)」と、こっそり分離処分をして、何も知らない善意のBさんに301号室の部屋だけを売りました。
後になって、Aがもっと高く買ってくれるCさんを見つけました。
そこで悪徳業者Aは、Bさんに向かってこう言い放ちます。 「あ、ごめん!マンションの部屋と土地を切り離して売るのは法律違反(無効)だったわ!だから君との売買契約は無効ね!部屋を返して!」
Bさんからすれば、「ふざけるな!そんなルール知らなかったし、私は買った部屋にそのまま住み続けたい(契約を有効にしたい)んだ!」となります。
法律は「悪徳業者Aよ、お前は、何も知らなかった善意のBさん『に対しては』無効を主張することは許さないぞ!」

(民法第二百五十五条の適用除外)
第二十四条 第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

土地の持分を「放棄」した場合の特例(民法ルールの排除)
民法の原則:
通常の共有財産では、一人が自分の持分を「放棄」すると、その持分は「他の共有者のモノ」になる。(民法255条)
マンションの特例:
しかし、切り離しが禁止されている「敷地利用権(土地の持分)」については、この民法の原則は適用されない。
※つまり、一人が敷地の共有持分を放棄しても、他の住民のモノにはならず、専有部分と一緒に国庫(国)のモノになることになります。

(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

土地の権利を持たない住民への対応ルール
競売請求の制限:
マンションの部屋は持っているが「敷地利用権(土地の権利)」を持っていない人がいたとしても、「土地の権利がない」ということだけを理由にして、住民の集会(4分の3以上の多数の議決)で、その人の部屋の競売を強制的に請求することはできない。
いつ競売請求できるのか?:
競売請求という最強の手段が使えるのは、その住民がマンションの建物を壊そうとするなど、住民全体の「共同の利益に著しく反する行為(区分所有法6条1項違反)」をした場合などに限られる。

区分所有:過去問演習

(論点:敷地利用権の分離処分の禁止と、敷地利用権の範囲)
専有部分とその専有部分に係る敷地利用権との分離処分は、建物の区分所有者の有する敷地利用権が、敷地の所有権又は共有持分権である場合に限り、禁止される。

解答表示

「敷地利用権」とは、区分所有建物の所有を現に目的とする所有権、地上権、賃借権、使用借権等をいい、敷地の所有権又は共有持分権に限られない。
もし問題文の通り「所有権のときだけ切り離し禁止」だとしたら、土地を借りているマンションの場合は「自分の部屋と、土地を借りる権利をバラバラに売ってもOK」ということになってしまい、マンションの土台(三位一体のルール)が崩壊してしまいますよね。

分離処分の無効と、善意の相手方の保護
専有部分とその専有部分にかかる敷地利用権との分離処分が禁止される場合には、それに反する処分は無効であるが、その旨の登記がされていないときは、善意の相手方に対しては、その無効を主張することができない。

解答表示

専有部分とその専有部分に係る敷地利用権との分離処分の禁止規定(区分所有22 I 本文・III)に違反して、専有部分又は敷地利用権が処分された場合、当該分離処分は原則として無効である。
ただ、分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることが登記される前に、当該処分がなされたときは、善意の相手方に対しては、その処分の無効を主張することはできない(区分所有23)。

区分所有権の競売の請求
敷地利用権を有しない建物の区分所有者がいる場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の議決により、その者の所有する専有部分の競売を請求することができる。

解答表示
× 
〇だとすると、ひどい話すぎる。
区分所有法59条は、集会の決議に基づき区分所有者の専有部分の競売を請求することができる旨定めているが、競売請求の相手方である区分所有者に、区分所有法6条1項に規定する行為のあったこと、又は、そのおそれのあることが必要。
単に当該区分所有者に敷地利用権がないことを理由として、専有部分の競売を請求することはできない。

所有権の取得(誰のモノになるか?)

単元:所有権の取得のセンターピン(本質)
誰のモノか迷ったときは、
『元々の土台(メイン)の持ち主』か
『価値を大幅に上げた人』に所有権を一本化(共有関係にはしない)し、
損した人にはお金で清算する!

くっついて離れなくなったモノのルール
添付とは:別々の人のモノがくっついて離れなくなった状態。付合・混和・加工がある。
添付によって所有権を取得することは「原始取得(全く新しく権利が発生すること)」に当たります。
⇒バラバラにするとモノの価値が下がってしまうため、法律は「とりあえず誰か一人のモノ(または共有)」にしてしまい、損をした人にはお金(償金)で解決させる

(無主物の帰属)
第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

所有者がいないモノのルール(無主物の帰属)
動産の場合:
所有者のない「動産(持ち運べるモノ)」は、所有する意思をもって占有(先占)した人が所有権を取得する。
不動産の場合:
所有者のない「不動産(土地など)」は、早い者勝ちにはならず、すべて国庫(国)のモノになる。

(遺失物の拾得)
第二百四十条 遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
(埋蔵物の発見)
第二百四十一条 埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

くっついて離れなくなったモノのルール(添付:付合・混和・加工)
付合(ふごう):
モノ同士がくっついて離れなくなること。

不動産+動産の場合:
他人の土地や建物にモノをくっつけた場合、原則として不動産の所有者のモノになる。
例 無権原で植えた立木
⇒不動産所有者のモノになるため、無権原者に立木の収去請求ができない

権原(正当な権利)がある場合の例外:
借りている土地などに「正当な権利(賃借権など)」に基づいてモノをくっつけた場合は、くっつけた人のモノのままになる
強い付合:
ただし、増築部分のように建物の「構成部分(独立性がない)」になってしまった場合は、上記の例外は適用されず、不動産所有者のモノになる。

建前の建築物:
建築途中でまだ独立の不動産とはいえない「建前」に、第三者が材料と工事を提供して独立の建物を完成させた場合、「付合」ではなく**「加工」**のルールを使って誰のモノかを決定する。

(動産の付合)
第二百四十三条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。

第二百四十四条 付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。

くっついて離れなくなったモノのルール(添付:付合・混和・加工)
動産+動産の場合:
主従の区別がある場合は**「主たる動産の所有者」**のモノになる。
主従の区別がない場合は**「価格の割合に応じて共有」**になる。

(混和)
第二百四十五条 前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。

くっついて離れなくなったモノのルール(添付:付合・混和・加工)
混和(こんわ):
お酒や米など、混ざって識別できなくなること。

動産同士の付合のルールと同じ。

(加工)
第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

くっついて離れなくなったモノのルール(添付:付合・混和・加工)
加工(かこう):
他人の材料に手を加えて新しいモノを作ること。

1項は、「他人の動産100%(加工者が労力だけを提供した場合)」で工作をした場合を想定
1項の「材料」 = ベースとなった「他人の動産」そのもの。(元の動産の持ち主に帰属する)

1項原則:
他人の動産に工作を加えた場合、作成されたモノは**「材料(ベースとなる元の動産)の所有者」**のモノになる。
1項例外(元の材料 VS 工作によって生じた価格 の比較):
工作によって生じた価格が、材料の価格を「著しく超える」ときに限り、「加工者」のモノになる。

2項では、加工者自身も、材料の一部を提供した場合を想定
2項の「材料の一部」 = 加工の際に、加工者自身が追加で提供したパーツや部材のこと。

2項原則:
1項と同じ、「材料(ベースとなる元の動産)の所有者」のモノになる。
2項例外(元の材料 VS 加工者の材料の価格+工作によって生じた価格):
「加工者が加えた材料+工作の価格」が、元の他人の材料の価格を「(単に)超える」だけで、加工者のモノになります

建前の建築物:
建築途中でまだ独立の不動産とはいえない「建前」に、第三者が材料と工事を提供して独立の建物を完成させた場合、「付合」ではなく**「加工」**のルールを使って誰のモノかを決定する。

(付合、混和又は加工の効果)
第二百四十七条 第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
2 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。

担保などの運命:
元の所有者が権利を失えば、そこにくっついていた権利も道連れになって消える(1項)
元の所有者が新しい物の「単独所有者」または「共有関係」になれたなら、権利もスライドして生き残る(2項)

「その物について存する他の権利も、消滅する」:
元の材料に対して設定されていた質権(借金のかたとして預かる権利)や賃借権などが、所有権の消滅と同時に「道連れ」になって消えてしまうこと。

「単独所有者となったとき」:
例えば、自分のメインの材料に他人のサブの材料がくっついた結果、出来上がった新しい物の所有権を「自分一人」で取得できた場合。

(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)
第二百四十八条 第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。

お金で解決(償金請求権):
くっついたことによってモノを奪われ、損をした人は、得をした人に対して「償金請求(不当利得)」や「損害賠償請求(不法行為)」として、お金(償金や損害賠償)を請求することができる。

所有権の取得:過去問演習

論点名:埋蔵物の発見と所有権の取得
Aの所有する甲土地のなかからBが埋蔵物を発見した場合において、その所有者が判明しないときは、Bが当該埋蔵物の単独所有権を取得する。 論点名:埋蔵物の発見と所有権の取得(第241条)

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「見つけた人のモノになる(早い者勝ち)のでは?」という直感を突く引っかけです。
民法第241条ただし書は、他人の所有物の中から埋蔵物が発見された場合、**「発見した者(B)」と「その他人(土地所有者A)」が『等しい割合で(半分ずつ)共有する』**と定めています。発見者の単独所有にはなりません。

無主物の帰属
無主の不動産は、先占によってその所有権を取得することができる。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「動産」と「不動産」のルールの違いを突く問題です。
「持ち主のいない動産(魚やゴミなど)」は早い者勝ち(先占)で自分のモノにできますが、「持ち主のいない不動産(土地など)」はすべて自動的に国(国庫)のモノになります

不動産の付合
建物の賃借人が、賃貸人である建物所有者の承諾を得て建物の増築をした場合において、増築部分が構造上区分されるべきものでないときは、増築部分建物は、賃借人と賃貸人の共有となる。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「承諾を得て建てたのだから共有になるのでは?」と思わせる引っかけです。
構造上区分できない(独立性がない)増築部分は、元の建物に**「強く付合(吸収)」**されるため、賃貸人(建物の所有者)の単独所有になります。
「正当な権利(賃借権など)」に基づいてモノをくっつけた場合は、くっつけた人のモノのままになるが、強い付合はその例外。

不動産+動産の付合
BがA所有の甲土地上に無権原で立木を植栽した場合、AはBに対し、当該立木を収去して甲土地を明け渡すよう請求することができる。

解答表示

ひっかけポイント:「勝手に植えたんだから引っこ抜け!」と言えそうですが、法律上は違います。
無権原で植えた木は、土地に付合して「土地の所有者Aのモノ」になってしまいます。
自分のモノになった木を「収去しろ(撤去しろ)」とBに請求することは論理的におかしいため、✕となります。
策①:お伺いを立てずに、A自身で勝手に伐採・撤去してよい
策②:撤去にかかった費用は「損害賠償」としてBに請求する(民法709条)

加工の例外
出版社甲が誤って乙の所有する紙に印刷をし、これを製本したときには、その本の所有権は、乙に帰属する。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「加工」の例外ルール(価値の爆上がり)を問う問題です。
原則は材料の持ち主(乙)のモノになりますが、単なる紙が「本(工作物)」になったことで価格が著しく上がっているため、例外的に加工者(出版社甲)のモノになります。

建前の工事は、付合か加工か?
建築途中のいまだ独立の不動産に至らない建造物(建前)に第三者が材料を提供して工事をし、建物として完成した場合において、第三者の工事及び材料の価格が建前の価格を著しく上回るときは、その建物の所有権は、建物を完成させた者に帰属する。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:
建前が、
不動産+動産(材料)の付合だとすると、原則として不動産所有者(=建前の持ち主)のモノになり、例外として請負契約などの正当な権原があれば第三者のモノになり得ますが、建物の構成部分になってしまうような「強い付合」の場合は、結局のところ**「不動産所有者(建前の持ち主)」のモノに吸収されてしまいます

加工(ただの動産の集まりだ)だとすると、原則として「(元の)材料の所有者 = 建前の持ち主」のモノになる、例外を考えてみても、著しく価値があがるので加工者である「加工者(=工事と材料を提供した第三者)」のモノになるとなる。

結論先にありき⇒「価値を大幅に上げた人を保護する」=工事請負者に所有権帰属させるべき
不動産への付合ではなく、「動産の加工」のルールを適用して解決するのがポイントです。
価値が著しく上回ったため、完成させた第三者のモノになります。

加工した場合の所有権帰属
Aは、Bから依頼を受け、動産甲に工作を加えて動産乙を作成した。乙の価格が著しく甲の価格を超えている場合であっても、Bの所有物でなかったときは、Aは、乙の所有権を取得しない。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:本問、甲の所有権は不明(Bではない)、加工者Aであるが、「材料が他人のモノであっても、加工によって価値が著しく超えれば加工者が所有権を取得する」という246条1項ただし書のルールは、材料の持ち主が誰であろうと関係なく適用されます。
したがって、Aが所有権を取得します。

AとBが付合して1つになった場合の、Aの従たる権利
A所有の動産とB所有の動産とが付合して分離不能となった場合に、B所有の動産が主たる動産であるときでも、A所有の動産に設定されていた質権は合成物上に存する。

解答表示
解答:✕
「B所有の動産が主たる動産」⇒合成物は「Bのモノ」になります。(243)
Bの単独所有になった場合、敗者であるAの権利は消滅する。(247Ⅰ)

AとBが付合して1つになった場合の、Aの従たる権利
3パターンチェック
Aが主たる動産だった場合:Aの従たる権利存続(「合成物全体(Bの動産がくっついて価値が上がったモノ全体)」の上に拡大して存続)
Bが主たる動産だった場合:Aの従たる権利消滅
AとBが主従の区別がなく共有になった場合:Aの従たる権利存続(「合成物のうちの『Aの持分』」の上に乗っかったまま存続)

償金請求権と損害賠償請求権
Cは、Aから預かっていたA所有の動産甲にBから盗取してきたB所有の動産乙を付合させた。この場合において、甲が主たる動産であったときは、Bは、乙の所有権を喪失するが、Cに対する損害賠償請求権を取得するので、Aに対する償金請求権は有しない。

解答表示
解答:✕
主たる動産甲:A所有
従たる動産乙:B所有
⇒合成物は、A所有
⇒Bは、Aに償金請求権(248)、Cに損害賠償請求権(704)

ひっかけポイント:「損害賠償を請求できるなら、償金(お金の清算)は請求できないのでは?」というバランス感覚を突く引っかけです。
泥棒Cに対する「損害賠償」と、棚ぼたで利益を得たAに対する「償金請求(不当利得)」は、全く別の権利として両方とも行使することができます(二重取りできるわけではなく、どちらかで満足を得るまで請求可能)。

加工者が材料の一部を提供した場合の合成物の所有権
Aが、Bの所有する甲動産に工作を加えた場合において、Aが材料の一部を供したときは、加工物の所有権は、工作によって生じた価格が甲動産の価格を著しく超えるときに限り、Aがその加工物の所有権を取得します。

解答表示
×
加工者が材料の一部を提供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者が加工物の所有権を取得する(246 II)。

不動産と不動産の付合(条文無し)
A所有の建物甲及びB所有の建物乙が工事によって一棟の建物丙となった場合において、甲乙間に主従の区別をすることができないときは、甲について設定されていた抵当権は、丙のうちの甲の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして、存続する。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:別々の人の建物が合体して「共有」になった場合のルールです。「不動産+不動産(建物の合体など)」についての直接の規定がありませんが、「動産+動産(243条・244条)」のルールで解決しています。
主従の区別が「できない」場合(244条の考え方)、共有状態となり、Aの所有権は「丙建物の持分」に変化するため、Aの建物についていた抵当権も、消滅することなく「Aの持分」の上に乗っかったまま存続します。(247)

同一人物の建物+建物の付合
A所有の建物甲及び建物乙が、その間の隔壁を除去する等の工事によって、一棟の建物丙となった場合には、建物丙のうちの建物甲の価格の割合に応じた持分を算定し、Aは、この持分上に抵当権を設定することができる。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:こちらは**「同一人物(A)の建物同士」が合体したケースです。そもそも、民法に規定されている「付合(第242条など)」というルールは、あくまで「異なる所有者のモノ同士」がくっついてしまった場合に、「誰のモノにするか?」「損した人への利益調整をどうするか?」を解決するための規定だからです。同一人物のモノ同士がくっついた場合は、そもそも法律上の「付合(ふごう)」の問題にはなりません!
A一人のモノが合体しただけなので、そもそも「持分(共有割合)」という概念自体が生まれません**(Aの100%単独所有)。
存在しない「持分」に抵当権を設定することはできないため、✕となります。

共有の基本と「持分」のゆくえ

単元:共有の基本のセンターピン(本質)
共有持分は『独立した一つの権利』であり、
持ち主がいなくなれば残りの仲間に吸収されるが、
それを他人に主張するには絶対に『登記』が必要である!

共有関係の発生:
共有関係は、「当事者の合意」と「法律(自動的)」による

共有関係発生の例
他人の土地などから埋蔵物を発見し、警察に届けても所有者が判明しなかった場合、発見者が独り占めするのではなく、「発見者」と「土地の所有者」が等しい割合(半分ずつ)で共有する。(241但)

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

持分権者がいなくなった場合のルール(255条の基本)
他の共有者への帰属:
共有者の一人が自分の持分を「放棄」したとき、または「死亡して相続人が誰もいない」ときは、その持分は国庫(国)のモノにはならず、「他の共有者のモノ」に吸収されて帰属する。

第255条と「特別縁故者(第958条の2)」の優先関係(判例)
特別縁故者が優先:
まずは、亡くなった人を介護していた内縁の妻などの「特別縁故者」に財産分与されるかどうかの手続きが優先される。
特別縁故者への財産分与もされず、その持分の行き場がないことが**「確定したとき」に初めて**、他の共有者に帰属する。

共有持分の変動と「登記(第177条)」の関係(判例)

持分が増えたときの登記:
AB共有
Aが持分を放棄し、Cに譲渡
⇒Bは自己の持分が増加したことを第三者Cに対して登記無くして対抗できない。
「登記(持分移転登記)」が必要

他の共有者との関係で登記:
AB共有
Aが持分をCに譲渡
⇒Cは他の共有者Bに対して登記無くして対抗できない
他の共有者も、登記がないと対抗できない「第三者」にあたる

共有の基本:過去問演習

論点名:共有関係の発生原因
共有関係は、当事者の合意によって生ずるほか、法律の規定によっても生ずる。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:「共有って、みんなでお金を出し合って買う(合意)以外にないのでは?」と思わせる問題です。
しかし、民法には「他人の土地から埋蔵物を発見した(第241条ただし書)」「動産同士がくっついた(第244条)」「相続が発生した(第898条)」など、合意がなくても自動的に共有関係が生じる規定がたくさんあります。

論点名:共有者の死亡と持分の帰属(第255条)
共有者の一人が相続人なくして死亡したときは、その持分は国庫に帰属する。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「持ち主がいない不動産は国のモノになる(第239条2項)」という原則と混同させる大定番の引っかけです。
共有の場合は特別なルール(第255条)があり、相続人がいない持分は国ではなく**「他の共有者(仲間)」に吸収されて帰属します**。

論点名:第255条と特別縁故者への財産分与(第958条の2)の優先関係
A、B及びCが甲土地を共有している場合において、Aが死亡し、その相続人が存在しないことが確定し、清算手続が終了したときは、その共有持分は、特別縁故者に対する財産分与の対象となり、財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、B及びCに帰属する。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:「第255条があるから、すぐ他の共有者のモノになるのでは?」という条文知識を逆手に取った最高裁判例(最判平1.11.24)です。
亡くなった人を介護していた内縁の妻などの**「特別縁故者」の分与(第958条の2)のほうが、他の共有者(第255条)よりも優先されます**。特別縁故者がいないと「確定したときに初めて」他の共有者に帰属します。

論点名:持分の放棄(第255条)と対抗要件(第177条)
AとBが共有する建物について、Aが、自己の持分を放棄する意思表示をした後、当該持分をCに譲渡した場合、Bは、当該放棄による自己の持分の増加を登記なくしてCに対抗することができる。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「法律(255条)によって当然に増えたんだから、登記はいらないのでは?」という引っかけです。
判例(最判昭44.3.27)は、持分の放棄によって他の共有者の持分が増えることも、第177条の「物権の得喪」にあたるとしています。
したがって、増えた持分を第三者(C)に主張するには、絶対に「登記」が必要です。

論点名:持分の譲受人と他の共有者との対抗関係(第177条)
AとBとが甲不動産を共有していたところ、Aは、その共有持分をCに譲渡し、Cがその旨の所有権移転登記をしていない。この場合、Cは、Bに対し、甲不動産の共有持分の取得を対抗することができる。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「Bは元からの仲間だから、登記がなくても『Aの持分は私が買ったよ』と言えるのでは?」という引っかけです。
判例(最判昭46.6.18)は、新しく入ってきた譲受人(C)にとって、元からいる「他の共有者(B)」も第177条の「第三者」に該当するとしました。つまり、CがBに権利を主張するためにも「登記」が必須となります。

共有物の「変更>管理>保存>使用」

単元:共有物の「変更、保存、管理、使用」のセンターピン(本質)
共有物に対するあらゆるアクションは、行為の重さによって4つに分かれます。
変更(251条):全員の同意が必要(建替えなど)
管理(252条本文):持分の過半数が必要(短期賃貸、リフォームなど)
保存(252条5項):各共有者が単独でできる(雨漏り修理など)
使用(249条):持分に応じた全体の使用、持ち分を超える使用は対価の償還義務

(共有物の使用)
第二百四十九条 
1 各共有者は、共有物の「全部」について、その「持分に応じた使用」をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、「別段の合意」がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の「持分を超える使用の対価」を償還する義務を負う。
3 共有者は、「善良な管理者の注意」をもって、共有物の使用をしなければならない。

「みんなの物だから、自分の持分に関わらず全部使っていいけれど、使いすぎた分はお金を払ってね」という公平な利用を目指しています 。

「持分に応じた使用」:
使用自体は「全部」に及びますが、その使い方は「持分の割合」に制限されるという意味です 。

「持分を超える使用の対価」:
持分が半分なのに1人で家を独占して使っている場合、本来他人が使えるはずだった半分のスペース分の「家賃相当額」などを、他の共有者に支払わなければなりません

「善良な管理者の注意(善管注意義務)」:
自分の物だと思って適当に扱うのではなく、社会通念上、その地位にある人に通常期待されるレベルの注意を払って使いなさい、という義務です

ストーリー風
【原則:みんなで全部使っていい!】
のび太、スネ夫、ジャイアンの3人が、等しい持分(3分の1ずつ)で大きな空き地を共有することになりました。
「全部」について「使用」ができる**ので、のび太は空き地全体を走り回って遊ぶことができます。

【例外①:独占したらお金を払う!】
ところが、ジャイアンが「今日からここは俺様のステージだ!誰も入れるな!」と空き地を独占し、毎日リサイタルを開くようになりました。
確かに「全部」使えますが、他の2人が使えないほど独占するのは**「持分に応じた使用」を超えています。
そこで例外的に、ジャイアンは「自己の持分を超える使用の対価」**として、のび太とスネ夫に「土地のレンタル料(3分の1ずつ分)」を支払わなければならない義務を負います。

【例外②:雑に扱っちゃダメ!】
さらに、ジャイアンがステージ設営のために空き地をボコボコに掘り返して放置しました。
自分の持ち物なら勝手ですが、共有物である以上、ジャイアンには**「善良な管理者の注意(善管注意義務)」**があります。
損害賠償を請求される可能性が出てくるのです。

論点名:共有者の1人が単独占有している場合、明渡し請求はできない
持分が過半数に達していない共有者の一人が、協議なしに共有物を「単独で占有」している場合であっても、その単独占有している者にも第249条1項に基づく「持分に基づく使用権」があるため、他の共有者は、第252条5項の保存行為にもとづいて「当然に(無条件に)は自分に明け渡せ!」と請求することはできません。(最判昭41.5.19、最判昭63.5.20)。
他の共有者は自己の持分の価格の限度において共有物を使用収益することを妨害してはならない旨の不作為請求をすることができるにとどまる(大判大11.2.20)。

論点名:一部の共有者から使用承認を得た第三者への明渡請求もできない
協議に基づかないで一部の共有者から共有地の占有使用を承認された第三者は「その共有者の持分に基づく使用権」を借りて占有しているため、他の共有者は、明渡しを請求することができない。

論点名:遺産分割前の賃料債権は各共同相続人が相続分に応じて当然に取得する。(第898条関連判例)
相続開始後、遺産分割成立までに発生した賃料債権は、遺産そのものではなく、各共同相続人が相続分に応じて当然に取得する。
そして、遺産分割の遡及効の影響を受けない。

(共有物の変更)
第二百五十一条 
1 各共有者は、「他の共有者の同意」を得なければ、共有物に「変更」(その「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」ときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の「他の共有者の同意」を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

共有物の形や性質を根本から変えてしまうような重大な行為は、共有者全員の同意がないとやってはいけない、というルールです。
ただし、近年問題になっている「所有者不明土地問題」に対応するため、行方不明の共有者がいる場合には、裁判所の手続きを使うことで、残りのメンバーの同意だけで変更を進められるという画期的な例外が2項に定められています(令和3年改正・令和5年施行)。

「変更」:
共有物の物理的な形状や性質を根本的に変えてしまうことです。
具体例
共有している農地を潰して宅地にする
山林の木を全部伐採する
古い建物を完全に取り壊して新しい建物を建てる(建替え)などが該当します。

「他の共有者の同意」:
自分以外の「全員」の同意という意味です。
重大な変更は、1人でも反対する人がいれば実行できません。

「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」:
これを「軽微変更」と呼びます。
例えば、未舗装の共有道路に砂利を敷いたりアスファルト舗装をしたりする程度であれば、ここでの「変更」からは除外されます。
除外された軽微変更は、全員の同意ではなく「持分の過半数(管理行為:252条)」で決定できます。

「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」:
相続が繰り返されて誰が共有者か分からない場合や、夜逃げなどで住所が全く分からない場合です。

2項の「他の共有者の同意」:
行方不明者以外の、連絡が取れる共有者「全員」の同意のことです。

変更行為と管理行為の区別:
試験では、「その行為が全員同意が必要な『変更(重大な変更)』なのか、過半数で足りる『管理(軽微変更)』なのか」がよく問われます。
外壁の塗り替えなどの大規模修繕は、従来は「変更」とされがちでしたが、改正により形状や効用の著しい変更を伴わなければ「管理(軽微変更)」として過半数でできるようになりました。

ストーリー風:共有物の変更ルール(ガラッと変えるなら全員で!)
【原則:大きな変更は「全員の同意」が必要!】
のび太、スネ夫、ジャイアンの3人が、古い空き家が建っている広い土地を共有しています。
ある日、ジャイアンが「このボロ家をぶっ壊して、俺様専用の立派な野球場を作るぜ!」と言い出しました。
このように、建物を壊して土地の用途を全く変えてしまうような行為は、まさに**「変更(著しい変更)」にあたります。
そのため、ジャイアンが勝手に工事を始めることはできず、「他の共有者の同意(のび太とスネ夫の両方の賛成)」**が絶対に必要です。
どちらか1人でも反対すれば、野球場計画はストップします。

【例外:行方不明者がいる場合の救済策(リーガルマインド)】
さて、実はこの土地にはもう1人、出木杉くんという共有者がいました(4人での共有)。
ジャイアンの野球場計画に対し、のび太もスネ夫も「空き家が倒壊しそうで危ないから、壊して更地にするなら賛成!」と同意してくれました。
ところが、出木杉くんは宇宙開発プロジェクトに参加して火星に行ってしまい、**「所在を知ることができない」**状態になっていました。
ジャイアンたちは裁判所に「出木杉くんが火星に行って連絡がつきません!でも家が崩れそうで危ないんです!」と請求します。
すると裁判所は、**「出木杉くん以外の共有者(ジャイアン、のび太、スネ夫)全員の同意」**があれば、空き家を取り壊して変更を加えてもいいよ、という裁判(決定)を出してくれます。

論点名:一部の共有者による共有物全体の売却は、自己の持ち分はもちろん有効だが、持ち分を超える部分も他人物売買として有効。(第251条1項、第561条):

(共有物の管理)
第二百五十二条 
1 「共有物の管理に関する事項」(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の「持分の価格に従い、その過半数」で決する。「共有物を使用する共有者があるとき」も、同様とする。

2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の「裁判をすることができる」。
一 共有者が「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」とき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者が「その期間内に賛否を明らかにしない」とき。

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に「特別の影響を及ぼすべきとき」は、「その承諾」を得なければならない。

4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる「賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利」(以下この項において「賃借権等」という。)であって、「当該各号に定める期間を超えないもの」を設定することができる。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 「十年」
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 「五年」
三 建物の賃借権等 「三年」
四 動産の賃借権等 「六箇月」

5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、「保存行為」をすることができる。

共有物の「管理(利用や改良など)」や「保存(現状維持)」についてのルールを定めた条文です。
根本的な変更には全員の同意が必要(251条)ですが、日常的な管理や短期の賃貸などはスピーディに「持分の過半数」で決められるようにしつつ、緊急の修繕などは「1人」でもできるとしています。
令和3年改正により、行方不明者や返事をしない人を無視して決められるルール(2項)などが追加され、より使いやすくなりました。

「共有物の管理に関する事項」:
共有物の性質を変えない範囲での利用や改良です。
例えば、建物のリフォームや、期間を定めて他人に貸し出すことなどが該当します。

「持分の価格に従い、その過半数」:
人数の過半数ではなく、権利の割合(持分)の過半数です。
持分を60%持っている人がいれば、その人1人の賛成で決定できます。

「共有物を使用する共有者があるとき」:
既に共有者の1人が使っていても、過半数の決定があれば明け渡し等を求めることができる、という明確化です(ただし3項の制限あり)。

「無視する人」への対策(2項):
過半数で決める管理行為であっても、行方不明者や「返事をしない人」がいると、残りの人たちだけでは過半数に届かない場合があります。
その際、裁判所の許可を得れば、その人たちの持分を「母数から除外して」残りのメンバーだけで決定できるようになりました。

「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」:
行方不明などで連絡が取れない状態です。

「その期間内に賛否を明らかにしない」:
手紙などで「どうする?」と催告したのに、無視して返事をしてこない状態です。

「特別の影響を及ぼすべきとき」:
過半数の決定によって、適法に共有物を使っている共有者が追い出されるなど、不利益を被る場合です。

短期賃借権の明確化(4項):
従来、他人に貸す行為は「管理(過半数)」か「変更(全員同意)」か曖昧でしたが、「この法定期間内なら過半数(管理)で貸してOK」という明確な基準が設けられました。

「賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利」:
第三者に貸して家賃や地代をもらう権利のことです。

「当該各号に定める期間を超えないもの」:
いわゆる「短期賃貸借」です。
山林は10年、
土地は5年
建物は3年以内であれば、全員の同意がなくても「過半数」で貸し出すことができます。

*「10年を超えないもの」=10年以内(10年ちょうどを含む)
⇒持分の過半数でOK(管理行為)
⇒10年超は、全員の同意が必要(変更行為)

土地を貸す目的が駐車場などであれば良いが、もし建物を建てる目的がある場合
借地借家法という法律は、土地を借りて「建物を建てる人」を強力に保護するための法律です。 そのため、もしこの法律が適用されると、借主を守るために「土地の賃貸借(借地権)の存続期間は、最低でも30年とする(借地借家法第3条)」と強制的に長期化されてしまいます。
借地借家法により、5年という条件を満たせない以上、管理行為ではなく、変更行為として、共有者全員の同意が必要となる。

「保存行為」:
共有物の滅失や毀損を防ぐための現状維持行為です。
壊れた屋根の雨漏り修理、
不法占拠者を追い出す行為などが該当します。

ストーリー風:共有物の管理ルール(多数決で決める!でも緊急時は1人で!)
【原則:管理行為は「持分の過半数」で決める!】
のび太、スネ夫、ジャイアンの3人が、3分の1ずつの持分で1軒の家を共有しています。
家が古くなってきたので、スネ夫が「壁を綺麗に塗り替えよう(リフォーム)」と提案しました。
これは家を根本から変える「変更」ではなく、性質を変えない**「管理に関する事項」です。
管理行為は「持分の価格に従い、その過半数」で決めます。
のび太とスネ夫が賛成すれば、2人の持分合計で「3分の2(過半数)」になるため、ジャイアンが反対しても壁の塗り替えを実行できます。
また、家を他人に貸して家賃収入を得る場合でも、「建物の賃借権等 三年」**以内であれば、同様に過半数の賛成で貸し出すことができます(4項)。

【例外①:緊急の保存行為は「1人」でできる!】
ある日、台風で家の屋根が吹き飛び、雨漏りが始まりました。
このままでは家が腐ってしまいます。
このような現状を維持・回復するための行為を**「保存行為」といいます(5項)。
のび太は「多数決を採っている暇はない!」と判断し、他の2人の同意や過半数を待たずに、「各共有者」**として単独ですぐに修理業者を呼んで直すことができます。

【例外②:返事をしない人を無視できる!(リーガルマインド)】
さて、家を3年間他人に貸すこと(管理行為)について決めたいのですが、スネ夫は賛成、のび太は反対で意見が割れました(持分は3分の1ずつ)。
過半数にするにはジャイアンの賛成が必要ですが、ジャイアンは何度LINEを送っても既読スルーで**「賛否を明らかにしない」**状態です。
このままでは過半数を満たせず、家を貸すことができません。
そこでスネ夫は裁判所に訴え出ます。
すると裁判所は、無視し続けるジャイアンを決定の母数から除外する裁判をしてくれます。
結果として「スネ夫(賛成)とのび太(反対)」だけで決めることになり、スネ夫の持分だけで残りの過半数をクリアできるようになるのです(2項)。

【例外③:勝手に追い出すのはダメ!】
もし、のび太が共有者間のちゃんとした合意に基づいて、その家に住んでいたとします(共有物を使用する共有者)。
スネ夫とジャイアンが過半数(3分の2)の多数決で「この家を他人に貸すから、のび太は出ていけ!」と決定した場合、のび太は住む場所を失うという**「特別の影響」を受けてしまいます。
いくら過半数の決定でも、このような場合にはのび太の「承諾」**がない限り、一方的に追い出すことはできないと守られています(3項)。

判例(共有者の一人が全員の同意(第251条1項)なく勝手に農地を宅地に造成する工事を始めた場合、単独で工事の差止めや原状回復を請求できます):
他の共有者は第252条5項の保存行為として、持ち分にかかわらず可能。

判例(共有不動産について共有者の一人が無断で単独名義の登記がされ、その共有物が第三者に譲渡された場合、他の共有者が第三者に対して請求できるのは、自己の持分についてのみの抹消(更正)登記手続である。):
第三者は、共有者の一人の部分については有効な登記となります。そのため、他の共有者はあくまで「自己の持分についてのみ」一部抹消(更正)登記を請求できるにとどまり、全部の抹消は請求できません。

判例(共有不動産について全くの無権利者名義の登記がされた場合、単独でその登記の抹消を請求できます):
各共有者は第252条5項の保存行為として、持ち分にかかわらず可能。

判例(共有物を目的とする賃貸借契約の解除は、管理行為(252)に該当する):
契約の解除は全員でするのが民法の原則(第544条)ですが、共有物の場合は特別で「管理行為(第252条1項)」として扱われます。
よって、持分の過半数で足ります。

判例:第三者が不法行為によって共有物を壊した場合、自己の持分についての損害賠償を請求することはできるが、当該共有物の全損害の賠償を請求することはできない
保存行為として一人で全額請求できると思いきや、金銭の請求である損害賠償は、持分の割合に応じて分割されます。
各共有者は「自己の持分の割合」についてのみ請求でき、一人で全額を請求することはできません

判例:地役権の設定登記手続を求める訴えは、保存行為であり、要役地の共有者全員が原告になる必要はない
保存行為は一人でできるので、保存行為についての裁判は、固有必要的共同訴訟(権利者全員が一緒に原告(または被告)にならないと、裁判所が『当事者適格がない』として門前払い(却下)してしまう裁判)ではない

《保存行為についての裁判》の具体例:各共有者が一人で原告となって訴えを提起でき、固有必要的共同訴訟にはなりません。
不法占拠者に対する明渡請求訴訟
無権利者に対する不実登記の全部抹消請求訴訟
無断の変更行為に対する差止請求訴訟など

(準共有)
第二百六十四条 この節(第二百六十二条の二及び第二百六十二条の三を除く。)の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

地上権など、所有権以外の財産権を複数人で持っている場合(準共有)であっても、共有の規定が準用されるため、各共有者は単独で自己の持分に抵当権を設定できる。

共有物の共有物の「変更>管理>保存>使用」:過去問演習

論点名:単独占有する共有者への明渡請求(第249条、第252条5項)
A(持分2/3)とB(持分1/3)が甲建物を共有。Bが単独で占有しているときは、Aは当然に明渡しを求めることができる。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「Aは過半数(2/3)を持っているから、Bを追い出せるのでは?」という引っかけです。
Bにも1/3の持分に基づく「使用権(第249条)」があるため、Aは保存行為(第252条5項)として無条件に(当然に)追い出すことはできません。

論点名:単独占有する共有者への明渡請求(第249条)
他の共有者との協議に基づかないで共有地を占有している共有者に対し、他の共有者は、明渡しを請求することができる。

解答表示
解答:✕
勝手に占有していても、持分に基づく使用権がある以上、他の共有者は明渡しを請求することはできません。

論点名:不実登記の抹消と保存行為(第252条5項)
A、B、C(各持分1/3)が共有。無権利のDが自己名義へ移転登記した場合、Aは単独で抹消登記を求めることができる。

解答表示
解答:◯ ひっかけポイント:「Aは1/3しか持分がないから単独では無理では?」という引っかけです。
全くの無権利者名義の登記を消すことは、共有財産を守る**「保存行為(第252条5項)」にあたるため、各共有者が単独でできます**。

論点名:不法占有者への明渡請求と保存行為(第252条5項)
A(4/5)とB(1/5)が共有する甲土地をCが不法占有している場合、BはAの同意を得なくても単独でCに明渡しを求めることができる。

解答表示
解答:◯ ポイント:見知らぬ不法占拠者を追い出す行為は、典型的な**「保存行為(第252条5項)」**です。
持分がわずか1/5のBであっても、単独で明渡しを請求できます。

論点名:一部の共有者から使用承認を得た第三者への明渡請求
協議に基づかないで一部の共有者から共有地の占有使用を承認された第三者に対し、他の共有者は、明渡しを請求することができる。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「勝手に承認された第三者なら追い出せるのでは?」という引っかけです。
第三者は「その共有者の持分に基づく使用権」を借りて占有しているため、明渡しを請求することはできません。

論点名:単独使用する共有者に対する対価償還請求(第249条2項)
A、B、Cが共同相続(持分平等)。Aが協議なく単独で甲土地に建物を建てて居住している場合、B・CはAに対し、Aの持分を超える使用の対価について請求することはできない。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「Aは「持分に基づく使用権」により追い出されないのだから、お金も払わなくていいのでは?」という引っかけです。
追い出すことはできませんが、自分の持分(1/3)を超えて利用している分については、他の共有者に対して使用の対価(家賃相当額)を支払う義務があります(第249条2項)。

論点名:遺産分割前の賃料債権の帰属(第898条関連判例)
問題:遺産である賃貸不動産から生じた相続開始から遺産分割協議成立までの間の賃料債権は、遺産分割によって当該不動産を取得した者に帰属する。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「遺産分割には遡及効があり、不動産をもらった人が、過去の家賃も全額もらえるのでは?」という引っかけです。
遺産分割前の家賃は遺産とは別個の財産とされ、後から誰が不動産を取得しようと関係なく、各相続人が相続分に応じて確定的に取得します。

論点名:共有物の売却と変更行為(第251条1項)
持分の過半数を有する共有者の賛成により共有物を他人に売却した場合には、その効果は、共有者全員に及ぶ。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:売却は管理行為か、「変更・処分行為(第251条1項)」か?
過半数の管理行為(第252条1項)では足りず、「変更・処分行為(第251条1項)」として、必ず「全員の同意」**が必要です。

論点名:無断の変更行為に対する差止請求と保存行為(第252条5項)
共有者の一人が勝手に農地を造成して宅地にする工事を行っている場合、他の共有者は単独で工事の差止めを請求することができる。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:農地を宅地にするのは全員の同意が必要な「変更行為」です。
これを勝手に行う暴走を食い止める行為(差止め)は、共有物を守る**「保存行為(第252条5項)」にあたるため、単独で可能です**。

論点名:無断の変更行為に対する原状回復請求と保存行為(第252条5項)
Aが勝手に甲土地の宅地造成工事を始めた場合、Bは単独で原状回復を請求することはできない。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:差止めだけでなく、勝手にいじられた部分を元に戻せという**「原状回復請求」も保存行為として単独で可能です**。

論点名:伐採(変更行為)に対する禁止請求と保存行為(第252条5項)
A、B、C(各持分1/3)が共有する立木を、Aが勝手に伐採しようとしている場合、Bは単独で伐採の禁止を求めることはできない。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:立木の伐採も「変更行為」です。
これを止めるのは**「保存行為」なので単独で可能**です。

論点名:所在等不明共有者がいる場合の変更行為(第251条2項)
A、B、C(各持分1/3)が共有。Cが所在不明の場合、Aは裁判所に対する手続を履践しても、Bの同意を得て著しい変更を加える裁判を請求することはできない。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:法改正論点です。行方不明者がいて全員の同意が絶対に取れない場合、「裁判所の決定(裁判)」をもらうことで、残りの共有者の同意だけで変更行為ができるようになりました。

論点名:短期賃貸借の設定と管理行為(第252条4項)
A、B及びCが各3分の1の持分の割合で甲土地を共有している。Aが甲土地を駐車場として使用させる目的でDのために賃借権を設定する場合には、賃貸借の存続期間の長短にかかわらず、B及びCの同意が必要である。

解答表示
解答:✕
ポイント:土地の賃貸借であっても、**「5年を超えない(短期)」ものであれば、変更行為(全員)ではなく「管理行為(持分の過半数)」**で設定できるという例外規定(第252条4項)を突く問題です。
樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等以外の土地の賃借権等で5年を超えないものを設定する場合、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する(民252Ⅳ②、Ⅰ)。したがって、本肢の賃貸借の存続期間が5年を超えない場合には、Aは、「B及びC」という全員の同意を得る必要はなく、「BまたはC」のどちらか一方の同意があれば過半数として管理行為が実施できる。

なお、本肢は、甲土地を駐車場として使用させる目的で賃借権を設定しているため、借地借家法の適用はない。
借地借家法という法律は、土地を借りて「建物を建てる人」を強力に保護するための法律です。
そのため、もしこの法律が適用されると、借主を守るために**「土地の賃貸借(借地権)の存続期間は、最低でも30年とする(借地借家法第3条)」と強制的に長期化されてしまいます**

論点名:賃貸借契約の解除と管理行為(第252条1項)
A、B、C(各持分1/3)が共有する建物の賃借人が賃料を滞納したとき、Aは単独で契約解除の意思表示ができる。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:契約の解除は全員でするのが民法の原則(第544条)ですが、共有物の場合は特別で**「管理行為(第252条1項)」**として扱われます。
管理行為は持分の過半数が必要ですが、Aは1/3しか持っていないため単独では解除できません。

論点名:賃貸借契約の解除と管理行為(第252条1項)
A、B及びCは父親Xから甲土地を共同相続した(相続分は平等であり、遺産分割協議は未了である。)。この場合において、A、B及びCは、友人Dとの間で甲土地を10年間賃貸する旨の契約を締結したが、Dが賃料の支払を怠ったため、A及びBはCの反対にもかかわらず、Dに対し、催告の上で賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。この場合の解除の意思表示は、Cの同意がないから無効である。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:土地の賃貸借契約が5年未満でないと、管理行為にならないので、全員の同意が必要では?
その通りで、全員の同意を得て、賃貸借契約を締結が必要。
しかし、本問は、賃貸借契約を新しくやるのではなく、賃貸借の解除の話だから管理行為となる。
AとBの2人が賛成していれば持分の過半数を満たすため、Cの同意(全員の同意)がなくても解除は有効です。
*契約の解除は全員でするのが民法の原則(第544条)ですが、共有物の場合は特別で**「管理行為(第252条1項)」**として扱われます。

共有物の「費用負担」と「外部への権利主張」

(共有物に関する負担)
第二百五十三条 
「各共有者」は、その「持分に応じ」、「管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う」。
2 共有者が「一年以内」に「前項の義務を履行しないとき」は、他の共有者は、「相当の償金を支払って」「その者の持分を取得することができる」。

共有物を維持・管理していくための費用は、みんなで出し合うのが公平です。
しかし、いつまでも費用を払わない(義務を果たさない)人がいると、立て替えている人が損をしてしまいます。
そこで、長期間(1年)滞納した共有者に対しては、他の共有者がお金を払ってその人の持分を強制的に買い取り、共有関係から追い出すことができるという強力なペナルティ(持分買取権)を定めた条文です。

「その者の持分を取得することができる」:義務を果たさない共有者の「承諾」や「同意」がなくても、他の共有者の一方的な意思表示によって、強制的に持分を買い取ることができる権利(形成権)。

ストーリ―風
共有物に関する負担(維持費を払わないなら、君の持ち分は買い取っちゃうよ!)
原則:
のび太とスネ夫は、お小遣いを出し合って「最新型の超大型ラジコン(時価1万円)」を半分ずつの持分(5000円ずつ)で共有していました。
ある日、ラジコンのモーターが壊れてしまい、修理代が2000円かかりました。スネ夫が全額立て替えて修理してくれたので、のび太は自分の持分(半分)に応じた「管理の費用」として、1000円をスネ夫に支払う「負担を負う」ことになります。

例外(ペナルティ):
しかし、のび太は「今月はお小遣いがないんだ…」と言い訳をして、スネ夫が何度請求しても**「一年」**経っても修理代の半分(1000円)を支払いませんでした。

効果:
我慢の限界に達したスネ夫は、のび太に対して**「相当の償金」**(のび太の持分の価値5000円から、未払いの修理代1000円を差し引いた4000円)を支払うことで、のび太の同意がなくても強制的にのび太の持分を買い取り、超大型ラジコンをスネ夫だけの物にすることができるのです。

(共有物についての債権)
第二百五十四条 
「共有者の一人」が「共有物について他の共有者に対して有する債権」は、その「特定承継人」に「対しても行使することができる」

共有物を維持・管理するためにかかった費用(修理代や税金など)をある共有者が立て替えた場合、その人は他の共有者に対して「あなたの負担分を払ってね」と請求する権利(債権)を持ちます。
しかし、費用を払うべき共有者が、自分の持分をこっそり別の人に売って逃げてしまったら、立て替えた人はお金を回収できず困ってしまいます。
そこで、持分を新しく買い取った人(新共有者)に対しても、立替金の支払いを請求できるようにして、共有物の維持管理にかかる費用をしっかり回収できるようにした条文です。

「共有物について他の共有者に対して有する債権」:
共有物の修理代、固定資産税、管理費などを立て替えて支払ったことによって、他の共有者に対して「持分に応じた負担分を支払え」と請求できる権利(求償権など)のこと。

「行使することができる」:
立て替えたお金を、元の共有者だけでなく、新しく共有者になった人に対しても請求できるという意味。新旧どちらの共有者に対しても請求可能です(不真正連帯債務の関係になると解されています)。

【不真正連帯債務とは?】
複数の人が「同じ内容の借金(支払義務)」を背負っているものの、主観的に「一緒に協力して借金を返そう」というような強い結びつき(主観的共同関係)がない状態のことです。(条文にはなく、学説上)
1、誰にどう請求しても自由:債権者は、誰か1人に全額を請求してもいいし、全員に同時に全額を請求してもかまいません。
2、誰か1人が払えば、全員の義務が消える:誰か1人が借金を全額支払えば(弁済)、債権者は満足するので、他の人の借金もすべて消滅します(二重取りはできません)。
3、片方への特別扱いは、もう片方に影響しない(相対効):例えば、債権者が1人に対して「お前はもう払わなくていいよ(免除)」と借金をチャラにしても、もう1人の借金は一切減りません。あくまで「お金が払われた(弁済)」という事実以外は、お互いに影響を及ぼさないドライな関係です。

ストーリ―風
共有物についての債権(持分を誰かに売って逃げても、新しい持ち主に請求するからな!)
原則:
のび太とスネ夫は、お金を出し合って「最新型の超大型ラジコン」を半分ずつの持分で共有していました。
ある日、ラジコンが壊れたため、スネ夫が修理代2000円を全額立て替えて直しました。
これにより、スネ夫はのび太に対して、持分に応じた1000円を請求できる「債権」を持ちました。

例外(トラブル発生):
のび太は修理代の1000円を払うのが嫌になり、自分のラジコンの持分(半分)を、事情を知らないジャイアンに500円で売ってしまいました。
ジャイアンが「今日からこのラジコンの半分は俺のものだ(特定承継人)!」と名乗り出たため、スネ夫はのび太から修理代を回収できなくなりそうです。

効果:
しかし、スネ夫は、ラジコンの新しい共有者となったジャイアン(特定承継人)に対しても、「のび太が払わなかった修理代の半分(1000円)を代わりに払え!」と行使する(請求する)ことができるのです。
もちろん、ジャイアンに請求せず、元の共有者であるのび太に引き続き請求することも可能です。
ジャイアンからすれば思わぬ出費(とばっちり)になりますが、共有物を引き継ぐ以上は、その物にくっついているマイナスの負担も引き継がなければならない、というリーガルマインドが働いているのです。

共有物の「費用負担」と「外部への権利主張」:過去問演習

論点名:管理費用の負担割合
各共有者は、その持分に応じて共有物の管理の費用を負担する。

解答表示
解答:◯
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います。

論点名:立替債権の特定承継人に対する行使
A、B、Cが建物を共有。AがCに管理費用の立替債権を有する場合、AはCから持分の譲渡を受けたDに対して、その支払を請求することができる。

解答表示
解答:◯
第254条の知識を問う問題です。新しく入ってきた特定承継人に対して支払いを請求できます。

論点名:立替債権の元の共有者に対する行使
A、B、Cが甲土地を共有。AがBに管理費用の金銭債権を有する場合において、BがDに持分を譲渡したときは、Aは、Bに対してその債権を行使することができなくなる。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「Dに請求できるようになったから、Bには請求できなくなるのでは?」という引っかけです。第254条は特定承継人「にも」請求できるとする規定であり、持分を手放した元の債務者(B)の支払義務が免除されるわけではありません。AはBにもDにも請求可能です。

論点名:共有持分の処分(抵当権設定)
甲及び乙が不動産を共有している場合に、甲が自分の持分を目的として抵当権を設定するためには、乙の承諾を要しない。

解答表示
解答:◯ ひっかけポイント:「抵当権をつけるなら仲間の許可が必要では?」という引っかけです。
共有持分は各共有者の独立した財産であるため、自己の持分については他の共有者の同意を得ることなく「単独で」自由に処分(抵当権の設定など)ができます。

論点名:地上権の共有(準共有)と抵当権設定
地上権の共有者はその持分の上に根抵当権を設定することができる。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:所有権以外の財産権(地上権など)を複数人で持つこと(準共有:第264条)にも、共有の規定が準用されます。
したがって、自己の持分に単独で根抵当権を設定できます。

論点名:共有持分の放棄と同意の要否
A、B、Cが甲土地を共有している。Aは、B及びCの同意を得なければ、自己の持分を放棄することができない。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:持分の放棄も処分行為の一つであり「単独行為」です。他の共有者の同意は不要です。放棄された持分は他の共有者に帰属します(第255条)。

論点名:第三者の不法行為に対する損害賠償請求の範囲
AとBの共有物をCが過失によって壊してしまった場合、Aは、Cに対して、自己の持分についての損害賠償を請求することはできるが、当該共有物の全損害の賠償を請求することはできない。

解答表示
解答:◯ ひっかけポイント:「保存行為として一人で全額請求できるのでは?」という大定番の引っかけです。
金銭の請求である損害賠償は、持分の割合に応じて分割されます。各共有者は「自己の持分の割合」についてのみ請求でき、一人で全額を請求することはできません(最判昭41.3.3、最判昭51.9.7)。

論点名:他の共有者による単独名義登記と抹消請求の範囲
A、B、Cが共同相続した不動産につき、AがB及びCに無断で単独名義の登記をし、Dに譲渡した場合、BがDに対して請求できるのは、Bの持分についてのみの抹消(更正)登記手続である。

解答表示
解答:◯ ひっかけポイント:「不実登記の抹消だから、保存行為として全部消せるのでは?」という超難問引っかけです。
相手が「他の共有者(A)」から権利を譲り受けた者の場合、Aの持分(1/3)の部分については有効な登記となります。そのため、Bはあくまで「自己の持分についてのみ」一部抹消(更正)登記を請求できるにとどまり、全部の抹消は請求できません(最判昭38.2.22、最判昭59.4.24)。

論点名:時効の更新の相対効
A及びBの共有物を占有している第三者Cに対し、Aが単独で取得時効についての更新の措置をとったときは、この時効は、Bの共有持分についても更新される。

解答表示
解答:✕
「取得時効についての更新の措置」とは、第三者の取得時効の中断のこと
共有者の一人が単独で行った時効の更新措置(裁判上の請求など)は、原則として他の共有者には効力が及びません(相対効:第153条)。
Aが行った更新はAの持分のみに効力を生じ、Bの持分については更新されません(大判大8.5.31)。

論点名:地役権設定登記手続を求める訴え
要役地が数人の共有に属する場合において、当該要役地のために地役権の設定の登記手続を求める訴えを提起するときは、共有者全員が原告とならなければならない。

解答表示
解答:✕
要役地が共有の場合、地役権の設定登記手続を求める訴えは、固有必要的共同訴訟ではなく、地役権の「保存行為(第252条5項)」として、各共有者が「単独で」提起することができます。
共有者全員が原告となる必要はありません。

共有物の「分割」

単元:共有物の分割のセンターピン(本質)
共有物の分割は『いつでも自由にできる』が、
裁判で分ける場合は『全員参加が必須(固有必要的共同訴訟)』となり、
分けた効果は『過去には遡らず、やり直し(解除)もできない』!

(共有物の分割請求)
第二百五十六条 
「各共有者」は、「いつでも」「共有物の分割を請求することができる」。ただし、「五年を超えない期間」内は「分割をしない旨の契約」をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、「更新することができる」。ただし、その期間は、「更新の時から五年」を超えることができない。
第二百五十七条 
前条の規定は、「第二百二十九条に規定する共有物」については、適用しない。

《イメージ・記憶が残りやすい国民的アニメを使た具体的ストーリー》
ある日、新しいマイクを買うお金が欲しくなったジャイアンは、「この空き地を売って、お金を3等分して分けようぜ!(分割請求)」と言い出しました。
共有関係の解消は自由なので、スネ夫とのび太は原則としてこの協議に応じなければなりません**(原則)**。
しかし、スネ夫とのび太は「空き地がなくなったら野球ができなくなるよ! あと3年は売らずに共有のままにしておこうよ」と必死に提案し、ジャイアンも「まあ、あと3年なら野球の練習場所として残しておくか」と納得して合意しました**(例外①:不分割特約)**。
これにより、むこう3年間はジャイアンも分割請求ができなくなります。
さて、この空き地と、隣の神成(かみなり)さんの家の敷地との間には、境界を示す「ブロック塀」が立っており、これも神成さんと半々で共有している状態です。
ジャイアンがどれだけお金に困って暴れても、「このブロック塀の俺たちの持分だけ半分にぶった切って売る!」といった分割請求は絶対にできません**(例外②:境界上の共有物の分割禁止)**。

「共有」という状態は、物の自由な利用や処分が妨げられる「一時的で不自然な状態」と考えられています。

条文構造
【原則】 共有者は、「いつでも」自由に分割請求ができる(共有関係からの離脱の自由)。
【例外①:特約による制限】 ただし、共有者全員で合意すれば、「5年以内」に限って「今は分割しないでおこう」という契約(不分割特約)を結ぶことができる。
【例外②:性質による制限】 隣地との境界にある「ブロック塀や溝」などは、物理的に分割すると使い物にならなくなるため、分割請求自体ができない。

条文の文言
「分割をしない旨の契約」:
いわゆる不分割特約のこと。
たとえば「この土地はあと3年はみんなで共有のまま駐車場として貸し出そう」と約束することです。

この特約は不動産に限られず、動産についても可能。
・不動産についての不分割特約を、持分を買い受けて新しく入ってきた「特定承継人」に主張(対抗)するためには、その特約について「登記(不登59⑥)」をしておかなければならない。

「第二百二十九条に規定する共有物」:
隣の土地との境界線上にある境界標、囲障(フェンスやブロック塀)、障壁、溝などのことです。これらは性質上、隣人と共同で利用してはじめて意味を成すものであり、分割してしまうと本来の目的を果たせなくなるため、257条によって例外的に分割請求が禁止されています。

「不分割特約」と「持分譲渡禁止特約」について
「分割しないこと」と「自分の持分を売ること」は全く別の話であり、不分割特約があっても、共有者の承諾なしに持分を譲渡することができます

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 
共有物の分割について共有者間に「協議が調わない」とき、又は「協議をすることができない」ときは、その分割を「裁判所に請求」することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の「現物を分割」する方法
二 共有者に「債務を負担」させて、他の共有者の持分の全部又は一部を「取得させる」方法
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその「価格を著しく減少させるおそれ」があるときは、裁判所は、その「競売」を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の「給付を命ずる」ことができる。

第二百五十八条の二 
共有物の全部又はその持分が「相続財産」に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について「遺産の分割」をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、「相続開始の時から十年を経過」したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による「分割をすることができる」。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに「異議の申出」をしたときは、この限りでない。
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から「二箇月以内」に当該裁判所にしなければならない。

ストーリー
ジャイアンとスネ夫は、ある土地を半分ずつの持分で「共有」していました。
スネ夫は「ここにラジコンサーキットを作りたいから、半分に分けよう」と提案しましたが、ジャイアンは「俺様が全部をリサイタル会場にするんだ!」と言い張り、話し合いは一向に進みません。
これが**「協議が調わない」**状態です。
しびれを切らしたスネ夫は、裁判所に駆け込みました。
裁判所は、土地の形状や二人の言い分を検討します。
現物分割の提案:「じゃあ、この線で右半分をスネ夫、左半分をジャイアンにしよう」
価格賠償の提案:「スネ夫はラジコンのために全部欲しいんだね?じゃあスネ夫が全部取得して、その代わりジャイアンに時価の半分のお金を払いなさい」
競売の提案:もし、その土地がすごく狭くて、半分に分けたらリサイタルもラジコンもできない(価値が著しく下がる)ような場合、裁判所は**「競売」**を命じます。「この土地をオークションで売って、その代金を二人で分けなさい」というわけです 。
もし、その土地が「のび太のパパが亡くなって、のび太とママが共同相続したもの」だったらどうでしょう?
相続直後:
これは「遺産」なので、家庭裁判所での「遺産分割協議」で分けるのがルールです(258条の2第1項) 。
10年放置後:
遺産分割もせずに10年が経ってしまいました。
この場合、通常の裁判所に「共有物分割」を申し立てることができます。
土壇場の異議:
のび太が裁判を起こしたとき、ママが「やっぱりパパとの思い出の品だから、家庭裁判所でじっくり遺産として話し合いたい!」と2か月以内に異議を言えば、通常の裁判所での手続きは止まり、遺産分割の手続きに戻ることになります(258条の2第2項ただし書)

共有関係は、管理が複雑になりやすいため、民法は「いつでも解消できる」ことを理想としています。
まずは話し合い(協議)が原則ですが、それが無理な場合には、裁判所が強制的に「ケリ」をつけてくれる仕組みを定めています。
また、相続が絡む複雑なケース(遺産共有)についても、令和3年の改正でルールが整理されました 。

条文構造
【原則】 共有物の分割は、まず共有者全員での「協議(話し合い)」で行う
【裁判分割の要件】 協議が調わない、またはできない場合に「裁判所」へ請求できる
【分割の優先順位】
現物分割 または 全面的価格賠償(裁判所の裁量)
これらが不可能な場合に「競売(代金分割)」
【遺産共有の特則】
原則:遺産分割(家庭裁判所)の手続きで行う
例外:相続開始から「10年」経てば、通常の共有物分割(地方裁判所)でも可能になる
再例外:10年経っても、他の相続人が「やっぱり遺産分割でやりたい!」と2か月以内に異議を言えば、遺産分割の手続きに戻る

条文の用語
「現物を分割」:【原則的な方法】土地をチョキで切るように、物理的に分けること
「債務を負担させて…取得させる」:【全面的価格賠償】一人が全部をもらい、他の一人にお金を払う方法。令和3年改正で明文化されました

判例:共有物分割請求訴訟は、他の共有者全員を被告としなければならない必要的共同訴訟である(大判大12.12.17)。
関係者全員で画一的に結論を出す必要があるため、他の共有者「全員」を被告としなければならない

判例:共有物分割訴訟の途中で、共有者の一人が自己の持分を第三者に譲渡した場合、「新しい譲受人」も含めて共有者全員に対する関係で分割を命じなければならない(最判昭46.6.18)。
裁判所は、譲渡人(元からいる共有者)に対する関係だけで分割を命ずることはできない

判例:【遺産共有】と【通常共有】が併存する場合、両方をまとめて通常の「共有物分割訴訟」だけで一気に分割を請求することはできない(最判平25.11.29)。
一つの不動産の中に、「相続によって生じた遺産共有持分」と「売買などによる通常の共有持分」が混ざっている場合:通常の共有持分については「共有物分割訴訟」で解消するが、遺産共有持分については「遺産分割手続き」によって解消すべきである。

(共有に関する債権の弁済)
第二百五十九条 
「共有者の一人」が他の共有者に対して「共有に関する債権」を有するときは、「分割に際し」、「債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる」。
2 債権者は、前項の弁済を受けるため「債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要がある」ときは、「その売却を請求することができる」。

共有物を分割して共有関係を解消するついでに、共有関係から生じていた貸し借り(債権債務)もまとめて清算してしまおう、という便宜的かつ合理的な仕組みを定めた条文。

国民的アニメのストーリ―風
共有関係の借金の清算(立て替えたお金を、土地で返して!)
前提:**ジャイアン、スネ夫、のび太の3人で、裏山の空き地(共有物)を均等に持っています。
この度、3人は喧嘩をして、空き地を3等分に分割することにしました。
しかし、のび太は以前、空き地の草むしり業者に払う費用(共有物の管理費用)を、スネ夫の分まで立て替えて払ってあげていました(共有に関する債権)。
のび太はスネ夫に対して「現金を払わないなら、分割したときに君がもらえるはずの土地の一部を、代わりに僕がもらうよ!」と請求することができる。
もしのび太が「土地なんてもらっても使い道がないから、やっぱり現金で返してほしい」という場合は、スネ夫がもらうはずだった土地部分を**「売却(競売)」して、その売上金から優先して立て替え代金を回収すること**もできる。

条文構造
【原則】
共有物を分割する際、共有に関する債権(管理費の立替など)があれば、債務者(お金を払っていない人)が取得する予定の共有物の部分を、そのまま債権の支払いに充てる(現物で弁済させる)ことができる。(第1項)
【例外・発展】
現物ではなく現金で清算したい場合など、支払いを受けるためにその共有物の部分を「売却して現金化」する必要があるときは、その部分の売却を請求して代金から回収することができる。(第2項)

条文の文言
「共有に関する債権」:
共有物の管理費用、保存行為の費用(修繕費)、固定資産税の立て替え分など、共有関係から生じた債権のこと。個人的な借金(ゲーム機を買うために貸したお金など)は含まれない。

「分割に際し」:
共有物を現実に分割するタイミングで。

「債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる」:
立て替えたお金を現金で返してもらう代わりに、本来なら相手(債務者)がもらえるはずだった共有物の一部を、お金を貸している側が取得することができる(代物弁済のような処理)。

「債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要がある」:
現物を押し付けられても困る場合など、競売などでお金に換えてから支払いに充てたい場合。

「その売却を請求することができる」:
分割手続の中で、相手の取り分となる部分を強制的に売却して現金化し、そこから優先的に支払いを受けることができる。

(共有物の分割への参加)
第二百六十条
「共有物について権利を有する者」及び「各共有者の債権者」は、「自己の費用」で、「分割に参加することができる」。
2 前項の規定による「参加の請求」があったにもかかわらず、「その請求をした者を参加させないで分割をした」ときは、その分割は、「その請求をした者に対抗することができない」。

国民的アニメのストーリ―風
共有物の分割への参加(僕らにも口出しさせろ!)
前提:**ジャイアン、スネ夫、のび太の3人で、裏山の空き地(共有物)を均等に持っています。
この度、3人は空き地を分割することにしました。
一方、出木杉くんはのび太にお金を貸しています(各共有者の債権者)。
もしのび太がジャイアンたちに丸め込まれて、「自分は空き地の権利を全部タダで譲るよ」などという不利な分割をされてしまうと、のび太は無一文になり、出木杉くんはお金を返してもらえなくなってしまいます。
要件:
出木杉くんが、ジャイアンたちに対して「のび太くんが不利な扱いを受けないよう、僕も空き地の分割の話し合いに参加させて!」と請求すること(参加の請求)。
効果:
出木杉くんは、自分のお弁当代や交通費(自己の費用)を出して、話し合いの場に参加し、のび太の取り分が不当に減らされないよう見張ることができます。
例外(注意!):
もしジャイアンたちが、出木杉くんの参加のお願いを「部外者はすっこんでろ!」と無視して、3人だけで勝手にのび太が損をする分割を決めてしまった場合、その分割の決定は出木杉くんには「通用しない(対抗できない)」ことになります。
出木杉くんは「そんな不公平な分割は、僕に対しては無効だ!」と文句を言うことができます。

共有物の分割は、共有者たちの財産状況を大きく変化させます。
そのため、共有物に何らかの権利を持っている人や、共有者にお金を貸している人などが、自分に不利な分割(特定の共有者が極端に損をするような分割など)をされないように、手続きに参加して監視する機会を与えるための条文です。

条文構造
【原則】
共有物に抵当権などを持つ人や、共有者の債権者は、自分のお金(自己の費用)を使って分割の手続きに参加し、自分に不利益な分割がされないよう監視し、意見を述べることができる(分割への参加権)。(第1項)
【例外(違反への制裁)】
「参加したい」と請求してきた利害関係者を無視して、不当に仲間外れにして行った分割は、その参加請求者に対しては効力を主張することができない(対抗できない)。(第2項)

条文の文言
「共有物について権利を有する者」:
共有物全体や特定の共有者の持分に対して、抵当権(借金のカタにとっている)、地上権、賃借権などを持っている人のこと。

「各共有者の債権者」:
共有者に対してお金を貸している人などのこと。共有者が不利な分割を受けて財産を減らしてしまうと、自分がお金を返してもらえなくなる恐れがあるため、利害関係があります。

論点名:共有物分割と利害関係人の同意
債権者など利害関係人が分割に参加できるからといって、利害関係人の同意がなければ分割の合意ができないわけではない(同意なくとも分割は有効)。

(分割における共有者の担保責任)
第二百六十一条 
「各共有者」は、「他の共有者が分割によって取得した物」について、「売主と同じく」、「その持分に応じて担保の責任を負う」。

国民的アニメのストーリ―風
分割後の不良品トラブル(僕の取り分だけ壊れてる!ずるい!)
前提:
ジャイアン、スネ夫、のび太の3人で、3台のラジコンカー(A・B・C)を均等の割合(各3分の1)で共有していました。
ある日、3人は共有をやめて、それぞれが1台ずつ単独で自分のものにすること(分割)にしました。
クジ引きの結果、のび太は「ラジコンカーA」を取得しました。
ところが家に帰って遊ぼうとしたところ、のび太のラジコンカーAは最初からモーターが壊れていて全く動かない不良品(欠陥)でした。
ジャイアンとスネ夫のラジコンカーは正常に動いています。
要件:
のび太(他の共有者)が分割によって取得した物(ラジコンカーA)に、契約不適合(壊れていたという欠陥)があったこと。
効果:
のび太だけがババを引いて損をするのは不公平なので、ジャイアンとスネ夫(各共有者)は、のび太に対して「売主と同じ責任」を負わなければなりません。
具体的には、ジャイアンとスネ夫は自分たちの元の持分割合(3分の1ずつ)に応じて、修理代を負担したり、損害賠償を払ったりして、のび太の損失をカバーする義務を負います。

共有物の分割は、実質的にはお互いの持分を交換・売買し合って、単独所有の権利を完成させるような性質を持っています。
そのため、分割によって誰かが取得した部分にたまたま欠陥があった場合、その人だけが丸損するのは不公平です。
そこで、お互いに「売買契約の売主」と同じような責任を負わせることで、共有者間の公平を図るための条文です。

条文構造
【原則】
共有物を分割した結果、特定の共有者が取得した物に欠陥(契約不適合)があった場合、他の共有者は「売主と同じ責任(契約不適合責任)」を負う。
特定の共有者だけが一方的に損をしないよう、それぞれの「元の持分割合」に応じて損失を分担し、公平を保つ。(第1項のみの単独規定)

【分割の効果】
遡及効の否定(過去に遡らない):
共有物分割の効力は遡及しない。つまり、「分割協議が成立した時」または「裁判が確定した時」から将来に向かって単独所有等の効力が生ずるだけであり、共有関係の成立時にさかのぼるわけではない。

分割協議の「解除」も可能
共有物の分割によって取得した物に数量不足などの欠陥(契約不適合)があった場合、各共有者は「売主と同じ担保責任」を負います(261条)
この担保責任には、売買の規定(第562条〜第564条)が準用されるため、損害賠償の請求ができるだけでなく、売買契約のルールに則って「分割協議を解除することもできる」

(共有物に関する証書)
第二百六十二条 
「分割が完了した」ときは、「各分割者」は、「その取得した物に関する証書を保存」しなければならない。
2 共有者の全員又はそのうちの数人に「分割した物に関する証書」は、「その物の最大の部分を取得した者」が保存しなければならない。
3 前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、「分割者間の協議」で証書の保存者を定める。「協議が調わないとき」は、「裁判所」が、これを指定する。
4 「証書の保存者」は、「他の分割者の請求」に応じて、「その証書を使用させなければならない」。

国民的アニメのストーリ―風
権利証の保管係(図面を見せて!)
前提:**ジャイアン、スネ夫、のび太の3人で、広大な「裏山の土地」を共有していました。
この土地に関する昔からの売買契約書や全体図面(証書)が1通だけあります。
この度、3人は話し合いで土地を分割し、ジャイアンが半分の面積を、スネ夫とのび太が残り4分の1ずつを取得することになりました。
要件・効果(保管者の決定):
この全体図面は分割後も3人に関係する書類ですが、原本は1通しかないので誰かが保管しなければなりません。
この場合、「最大の部分を取得した」ジャイアンが、代表してこの図面を保管することになります。
例外(均等の場合):
もし3人が全く同じ面積で均等に分割していたら、「最大の部分を取得した者」がいません。
その場合は誰が保管するか話し合い(協議)で決め、どうしても決まらなければ裁判所に決めてもらいます。
効果(使用の請求):
後日、のび太が自分の土地に家を建てることになり、正確な境界線を確認するために元の全体図面を見る必要が出てきました。
のび太(他の分割者)は保管者であるジャイアンに対して「図面を使わせて!」と請求することができ、ジャイアンは「俺が保管者だから嫌だ!」と拒否することはできず、のび太に図面を見せたりコピーさせたりする義務を負います。

共有物を分割した後、その物に関する重要な書類(過去の契約書、権利証、図面など)を誰がどのように保管し、他の元共有者がどうやってそれを利用できるかを定めたルールです。
分割後も書類が必要になる場面に備え、トラブルを防止するための規定です。

条文構造
【原則(単独書類)】
自分が取得した物に関する書類は、各自が自分で保管する。(第1項)

【原則(共通書類)】
分割前の全体に関する書類など、複数人に関係する書類は、分割によって「最大の部分を取得した人」が代表して保管する。(第2項)

【例外(最大取得者がいない場合)】
均等分割などで最大取得者がいない場合は、まずは「協議(話し合い)」で保管者を決め、まとまらなければ「裁判所」が指定する。(第3項)

【保管者の義務】
書類の保管者は、他の元共有者から「使わせてほしい」と請求されたら、閲覧やコピーなどをさせなければならない(書類の独占禁止)。(第4項)

(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按あん分してそれぞれ取得させる。
2 前項の請求があった持分に係る不動産について第二百五十八条第一項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。
3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。
4 第一項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。
5 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

国民的アニメのストーリ―風
行方不明ののび太の持分(空き地を売るために!)
前提:**ジャイアン、スネ夫、のび太の3人で、裏山の空き地(不動産)を均等に共有しています。
ある日、空き地を高値で買ってくれる業者が現れたため、ジャイアンとスネ夫は空き地を売却しようと考えました(全体を売却するには共有者全員の同意が必要)。
ところが、のび太がどこかへ引っ越してしまい、連絡も取れず行方不明になってしまいました(所在を知ることができない)。
このままでは空き地が売れません。
要件:
ジャイアンとスネ夫(残りの共有者)が、裁判所に「のび太がいないと空き地の管理も処分もできないから、僕らにのび太の持分を取得させて!」と請求すること。
効果:
裁判所が認めれば、のび太の持分をジャイアンとスネ夫が(自分たちの持分割合に応じて)取得し、空き地を2人だけの共有にすることができます。
これで無事に業者へ空き地を売却できるようになります。
例外(注意!):
もしのび太の持分が「おじいちゃんからの遺産」で、まだ遺産分割が終わっていない状態だった場合、おじいちゃんが亡くなってから「10年」経たないと、この制度を使って持分を取得することはできません。
後日談(金銭の清算):
何年か後、のび太がひょっこり帰ってきました。
「僕の空き地はどうなったの?」と聞くのび太に対し、ジャイアンたちは「もう俺たちのものにして売っちゃったよ」と言います。
このとき、のび太は泣き寝入りする必要はなく、ジャイアンたちに対して「僕の持分を持っていったんだから、その分のお金を払ってよ!(時価相当額の請求)」**と要求することができます。

令和3年(2021年)の民法改正で新設された条文です。
行方不明の共有者がいると、不動産全体を売却したり活用したりすることができず、いわゆる「所有者不明土地問題」の原因となっていました。
そこで、裁判所の手続きを経ることで、残りの共有者が行方不明者の持分を強制的に買い取り(取得し)、不動産の処分や活用をスムーズに行えるようにした画期的な制度です。

条文構造
【原則(持分取得の裁判)】
不動産の共有者が行方不明の場合、他の共有者は裁判所に請求して、その行方不明者の持分を取得することができる。
複数人から請求があれば、持分割合で按分される。(第1項)

【例外①(他の手続きの優先)】
別の共有者から「共有物分割請求」や「遺産分割請求」が出されており、この持分取得の手続きに異議が出た場合は、持分取得の裁判はできない。(第2項)

【例外②(相続財産の制限)】
行方不明者の持分が遺産分割未了の相続財産である場合は、相続開始から「10年」が経過していなければ、この制度は利用できない。(第3項)

【効果(金銭的清算)】
持分を取得した者は、後で行方不明者が現れた場合、取得した持分の「時価相当額」を支払う義務を負う。(第4項)

【対象の拡大】
この制度は、所有権だけでなく、不動産の賃借権や地上権などの用益物権の共有にも適用される。(第5項)

条文の文言
「異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない」:
通常の「共有物の分割」や「遺産分割」の手続きで決着をつけたいと考えている別の共有者がいて反対(異議)した場合は、この特例制度はストップします。

「相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない」:
不明者の持分がまだ遺産分割されていない相続財産である場合、まずは遺産分割の手続きで解決するのが筋です。
しかし、亡くなってから10年も経てば遺産分割の手続きを待つ必要性が薄れるため、10年経過後に限ってこの制度を使えるようにしました。

(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。
3 第一項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。
4 前三項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

国民的アニメのストーリ―風
行方不明ののび太の持分(空き地をまとめて売るために!)
前提:**ジャイアン、スネ夫、のび太の3人で、裏山の空き地(不動産)を均等に共有しています。
ある日、不動産会社の社長が「空き地全体を丸ごと高値で買いたい」と持ちかけてきました。
ジャイアンとスネ夫は売りたいのですが、のび太が行方不明で連絡が取れません。
空き地全体を売るには共有者全員の同意が必要なので、このままでは売却できません。
要件:
ジャイアンとスネ夫が、裁判所に対して「僕らが自分の持分を全部社長に売るから、その代わり、のび太の持分も一緒に社長に売る権限を僕らにちょうだい!」と請求すること。
効果:
裁判所が認めれば、ジャイアンとスネ夫は、自分たちの持分を社長に譲渡すると同時に、のび太の持分も社長に譲渡することができます。
結果として、空き地全体が社長の単独所有となり、無事に売却が完了します。
例外(注意!):
のび太の持分が遺産分割前の相続財産だった場合は、相続開始から**「10年」経たないとこの裏ワザは使えません。
後日談(金銭の清算):
後日、のび太が帰ってきました。「僕の空き地はどうなったの?」と聞くのび太に対し、ジャイアンたちは「社長に全部売っちゃったよ」と言います。
このとき、のび太はジャイアンたちに対して「僕の持分も勝手に売ったんだから、売れたお金のうち、僕の持分(3分の1)の金額をちゃんと払ってよ!(代金の支払請求)」**と要求することができます。

前条(262条の2)が、行方不明者の持分を「残りの共有者自身が買い取る(取得する)」制度であったのに対し、
本条は「残りの共有者が、共有不動産全体を第三者にまとめて売却したい」場合に使う制度です。
行方不明者がいると全員の同意が揃わず不動産全体を売却できませんでしたが、裁判所の許可を得ることで、行方不明者の分も一緒に第三者へ売却(譲渡)できるようになりました(令和3年民法改正により新設)。

条文構造
【原則(持分譲渡権限の付与)】
不動産の共有者が行方不明の場合、残りの共有者全員が「自分の持分すべてを第三者に譲渡すること」を条件(停止条件)として、裁判所に請求し、行方不明者の持分も一緒にその第三者へ譲渡する権限を付与してもらうことができる。(第1項)
【例外(相続財産の制限)】
行方不明者の持分が遺産分割未了の相続財産である場合は、相続開始から「10年」が経過していなければ、この譲渡制度は利用できない。(第2項)
【効果(金銭的清算)】
行方不明者の持分を譲渡した共有者は、後で行方不明者が現れた場合、不動産の時価相当額から持分割合に応じて計算した金額(行方不明者の取り分)を支払う義務を負う。(第3項)
【対象の拡大】
この制度は、所有権だけでなく、不動産の賃借権や地上権などの用益物権の共有にも適用される。(第4項)

条文の文言
「共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として」:
行方不明者の持分だけを勝手に誰かに売ることはできません。
残りの共有者全員が「自分たちの持分もすべてその買主(特定の者)に売る」ということが、行方不明者の持分を売るための条件(停止条件)となります。
つまり、不動産「全体」を売却する場合にしか使えません。

「所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判」:
裁判所から「あなたたちが代表して、行方不明者の持分も一緒に買主に売却していいよ」というお墨付き(権限)をもらう手続きです。

「相続開始の時から十年を経過していないときは~裁判をすることができない」:
前条と同じく、持分が未分割の遺産である場合は、亡くなってから10年待たないとこの制度は使えません。

「不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる」:
後で行方不明者が現れたら、勝手に売却した共有者は、行方不明者に対して「不動産全体の時価 × 行方不明者の持分割合」で計算したお金(要するに売上金のうち行方不明者の取り分)を渡さなければなりません。

共有物の「分割」:過去問演習

論点名:共有物不分割特約の対象(第256条1項ただし書)
共有物を分割しない旨の特約は、動産についてはすることができない。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:「不動産のような重要な財産でしか特約を結べないのでは?」という引っかけです。
民法は、5年を超えない期間内であれば「分割をしない旨の契約(不分割特約)」を認めており、この対象は不動産に限定されず、動産についても特約を結ぶことができます

論点名:共有物不分割特約の特定承継人への対抗要件
A、B、Cが3分の1ずつの持分割合で共有する建物について、A、B、C間で、5年間建物を分割しない旨の合意がされた後、Cがその持分をDに譲渡した場合、Aは、その旨の登記がなければ不分割の合意をDに対抗することはできない。

解答表示
解答:◯
不動産に関する不分割特約の効力を、持分を譲り受けた新しい共有者(特定承継人D)に主張(対抗)するためには、不動産登記法上、「登記」を備えておくことが絶対条件となります(不登59⑥)

論点名:共有物分割の効力発生時期(遡及効の有無)
共有物の分割について共有者間に協議が成立した場合には、その分割は、共有関係の成立の時に遡ってその効力を生ずる。

解答表示
解答:✕
通常の共有物の分割には遡及効はなく、「協議が成立した時」または「裁判が確定した時」から将来に向かって単独所有などの効力が生じます

論点名:不分割特約が存在する場合の持分譲渡の可否
A、Bの共有物に関して、共有物不分割の特約がある場合においては、Aは、Bの承諾がなければ、自己の持分を他に譲渡することはできない。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「分割できないルールなのだから、勝手に持分を売るのもダメなのでは?」という引っかけです。
共有持分は独立した権利であり、その処分は原則として完全に自由です。「分割しないこと」と「自分の持分を売ること」は全く別の話であり、不分割特約があっても、Bの承諾なしに持分を譲渡することができます

論点名:共有物分割訴訟の当事者(固有必要的共同訴訟)
A、B及びCが共有する土地について、Aが裁判による共有物の分割を請求するためには、BがAの請求を争っていない場合であっても、B及びCの両者を相手方としてその訴えを提起しなければならない。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:「分割に賛成(争っていない)してくれているBは、わざわざ被告にしなくてもいいのでは?」という引っかけです。
裁判による共有物分割(第258条1項)は、関係者全員で画一的に結論を出さなければならない**「固有必要的共同訴訟」**です。
したがって、争いの有無にかかわらず、必ず「他の共有者全員(BとC)」を被告として訴えを提起しなければなりません

論点名:遺産共有持分と通常共有持分が併存する場合の解消手続
A、B及びCが各3分の1の持分の割合で甲土地を共有している。Aが死亡し、F及びGが相続をした場合には、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、F及びGに対して共有物分割の訴えを提起することができる。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:「相続が絡んでいるなら、まずは遺産分割を終わらせないとダメなのでは?」という引っかけです。
この土地は、B・Cの「通常の共有持分」と、F・G間の「遺産共有持分」が混ざった状態です。
判例(最判平25.11.29)は、B・Cの「通常の共有関係」を解消するための手続きとしては、遺産分割が終わる前であっても通常の『共有物分割訴訟(第258条)』を提起してよい**としています

ただ、その共有物分割訴訟の中で、裁判所が**「ついでにFとGの間も分割して、FとGそれぞれの単独所有にする」ことまではできない
なぜなら、FとGの間の持分はあくまで「遺産」であり、誰がどれだけ取得するかは家庭裁判所の「遺産分割手続」で決めるべきだからです。

論点名:共有物分割訴訟 VS 未登記の持分譲受人
不動産の共有者間で持分の譲渡がされたものの、その譲渡について登記がされていない場合における当該不動産の共有物分割訴訟において、裁判所は、当該持分が譲受人である共有者に帰属するものとして、共有物分割を命ずることができる。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:共有物分割訴訟の途中で持分が譲渡された場合、新しく入ってきた譲受人に対して、他の共有者は第177条の「第三者」にあたります。
したがって、譲受人が「登記」を備えていない以上、他の共有者には権利取得を主張できません。
そのため裁判所は、持分がまだ**「譲渡人(元の共有者)」に残っているものとして**共有物分割を優先して命じなければならず、未登記の持分譲受人に帰属するものとして命じることはできません(最判昭46.6.18)

論点名:裁判による共有物分割の方法(賠償分割)
A、B及びCが共有する建物を分割する場合において、協議により分割するときは、Aに当該建物を取得させ、B及びCに持分の価格を賠償する方法によることができるが、裁判により分割するときは、このような方法によることはできない。

解答表示
解答:✕
ひっかけポイント:「裁判所ができるのは、現物を切り分けるか、競売にかけることだけなのでは?」という引っかけです。
裁判による分割であっても、現物を一人が取得して他の者に金銭を払う**「賠償分割(全面的価格賠償)」が、条文上明確に認められています(第258条2項2号)

論点名:共有物分割と利害関係人の同意
A、B及びCが共有する地上にA、B及びDが共有する建物が建っている場合であっても、A、B及びCは、Dの同意なく当該土地の分割の合意をすることができる。

解答表示
解答:◯ ひっかけポイント:「建物の共有者Dは土地の分割に利害関係があるから、合意にはDの同意が必要では?」と思わせる引っかけです。
利害関係人(D)は、自分の費用で分割手続きに「参加」する権利(第260条1項)を持っていますが、これは意見を述べる機会が与えられるだけであり、共有者(A・B・C)による分割の合意そのものにDの「同意」までは不要です

論点名:共有物分割と担保責任
A、Bの共有物の分割の結果Aが単独で目的物を所有することとなった場合において、その物に第三者の権利の付着があったときは、分割が裁判による場合であっても、Bは、Aに対して、自己の持分に応じた担保責任を負う。

解答表示
解答:◯
ひっかけポイント:「裁判所が決めたことなんだから、他の共有者は責任を負わなくていいのでは?」という引っかけです。
共有物の分割によって取得した物に瑕疵(数量不足や第三者の権利の付着など)があった場合、各共有者は「売主と同じ(持分に応じた)担保責任」を負います(第261条)。これは協議分割でも、裁判による分割でも全く同じです

論点名:共有物分割の担保責任(解除の可否)
協議による共有物分割によって取得した物が分割協議の内容に適合しない場合、その物の取得者は他の共有者に対し損害賠償の請求をすることができるが、分割協議を解除することはできない。

解答表示
解答:✕ ひっかけポイント:共有物分割の担保責任には「売買(第562条〜564条)」の規定が準用されます(第261条)。
したがって、取得した物が協議内容に適合しない(契約不適合)場合、損害賠償請求ができるだけでなく、**売買契約のルールに則って「分割協議を解除することもできる」**のが正しい知識となります