【夏休みの課題】高校化学基礎「物質図鑑」の書き方

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提出フォーマット

物質図鑑
物質名:「担当の物質名を記入」

1 物質の性質
・化学式
・その物質が、「分子からなる物質」か「イオンからなる物質」か「金属元素からなる物質」か「共有結合の結晶」のどれにあたるのか
・常温常圧での状態など(沸点・融点・密度・溶解度などのうち2つ以上)
・色
・化学的性質(溶液の性質が酸性・中性・アルカリ性のどれか、酸化されやすい、されにくい、潮解性など)
・その他、物質特有の性質
・天然に存在するかどうか。また、天然にする場合どのような場所に存在するのか文章だけでなく、物質の写真や構造式などの図を用いるとなお良い。

2 物質の利用例と使用上の注意事項
物質が私たちの生活の中もしくは工業的にどのように利用されているのか記述する。また、実験室や日常の中で使用するときの注意事項についてもわかれば記述する。

3 参考文献
参考とした文献について書く。
本:「タイトル」、出版社、版数、著者
HPなど:「タイトル」、URL、参考とした年月日

具体例「水酸化ナトリウム」

1 「水酸化ナトリウム」の性質
・化学式 NaOH
・「水酸化ナトリウム」は「イオンからなる物質」ナトリウムイオンと水酸化物イオンが静電気的な引力(イオン結合)で結びついてできています。
・常温常圧での状態など(沸点: 1390℃・融点: 328℃・溶解度について、水に非常によく溶けます。例えば、100gの水に対して、20℃で111g溶けます。このとき、多量の熱(溶解熱)を発生します。)
・色:常温常圧では、白色の固体です。
・化学的性質(強塩基性、潮解性も非常に強い、二酸化炭素を吸収しやすく炭酸ナトリウムに変化する)
・その他、物質特有の性質(タンパク質を分解する性質が強く、皮膚や髪の毛などを溶かします。このため、直接手で触れるのは非常に危険です。)
・「水酸化ナトリウム」は、反応性が非常に高いため、天然に単体で存在することはありません。工業的には、塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を電気分解して作られます。詳細は後述。

2 「水酸化ナトリウム」の利用例と使用上の注意事項

水酸化ナトリウムは「苛性ソーダ」とも呼ばれ、基礎化学品として様々な産業で利用されています。

・石鹸・洗剤の製造
油脂と反応させて石鹸を作る「けん化」という反応に不可欠です。
・紙・パルプの製造
木材から繊維(パルプ)を取り出す際の薬剤として使われます。
・上下水道の処理
水のpH調整や不純物の除去に使われます。
・排水管の洗浄剤
家庭では、タンパク質や油脂を溶かす性質を利用して、パイプクリーナーの主成分として使われています。

【使用上の注意事項】
・保護具の着用: 皮膚や眼に付着すると重篤な化学やけど(火傷)を引き起こすため、必ず保護メガネ、ゴム手袋、白衣を着用する必要があります。
・換気: 粉末を吸い込むと呼吸器系を損傷する恐れがあるため、換気の良い場所で扱う必要があります。
・溶解時の注意: 水に溶かす際は、必ず多量の水の中に少しずつ加える。逆(水酸化ナトリウムに水を加える)を行うと、発生した熱で水が突沸(突然沸騰)し、強アルカリ性の液体が飛び散る危険があります。
・保管: 潮解性と二酸化炭素を吸収する性質があるため、必ず密栓して湿気や空気から遮断して保管する必要があります。

3 参考文献
HP: 「水酸化ナトリウム」, Wikipedia、2025/7/15
本: 「化学図録」, 数研出版, 2019年版, 数研出版編集部

具体例「ヨウ素」

物質図鑑
物質名:「ヨウ素」

1. 「ヨウ素」の性質
・化学式 I2

・物質の分類
分子からなる物質です。2つのヨウ素原子が共有結合で結びついたヨウ素分子 (I2) が、分子間力によって集まって結晶を作っています。

・物質の状態
常温常圧(25℃, 1気圧)では、黒紫色の固体(分子結晶)です。
融点: 113.7℃
沸点: 184.3℃
溶解度: 水には溶けにくい(水は極性分子でヨウ素は無極性分子であるため)ですが、ヨウ化カリウム(KI)水溶液にはよく溶けて褐色の溶液になります。これは、ヨウ素分子 (I2) とヨウ化物イオン (I) が反応して三ヨウ化物イオン (I3) を生成するためです(イオンはマイナスの電荷を持っているので水に溶ける)。また、エタノールやヘキサンなどの有機溶媒(水以外の液体で、ものを溶かすもの)にも溶けます。

・色
固体: 黒紫色
気体: 紫色(固体を加熱すると、液体にならずに直接気体になる昇華性という性質を持ちます。このときの蒸気は紫色です。)
溶液:ヨウ化カリウム水溶液やエタノールに溶かすと褐色、ヘキサンや四塩化炭素に溶かすと紫色

・化学的性質
ヨウ素は、水にほとんど溶けませんが、わずかに溶けた場合、ごく一部が加水分解して酸性物質を生じますが、その影響は非常に小さく、溶液の性質はほぼ中性と見なせます。
ヨウ素(I)の原子番号は53で、17族に属する元素(ハロゲンとも呼ぶ)です。ハロゲン元素は、一般に酸化力は非常に強いです。もっとも、ハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)の中では、酸化力は最も弱い。
デンプンと反応して青紫色となる(ヨウ素デンプン反応)。

・天然での存在
天然には単体のヨウ素としてはほとんど存在しません。
主にヨウ化物イオン (I) やヨウ素酸イオン (IO3) の形で、海水や地下のかん水(地下塩水)に含まれています。
また、コンブやワカメなどの海藻類は、海水中のヨウ素を体内に濃縮して蓄積しています。健康に良いとされるヨウ素の摂取量が成人で1日3mgなので、乾燥コンブを約2g摂取しただけで上限に達します。食べ過ぎに注意です。

写真
*写真は、天然に存在するヨウ素の化合物から、人工的に取り出して純粋な結晶にしたもの。

2 物質の利用例と使用上の注意事項

◯利用例
消毒薬・うがい薬
ヨウ素の酸化作用を利用した殺菌効果から、ポビドンヨード(イソジンなどの商品名で知られる)として、のどのうがい薬や傷口の消毒薬に使われています。

ヨウ素デンプン反応の利用
小学校の理科の実験で、ジャガイモなどに含まれるデンプンを検出するために使われます。

レントゲン造影剤
ヨウ素はX線を通しにくい性質があるため、ヨウ素を含む化合物を注射することで、血管や臓器の形を鮮明に写し出す造影剤として医療現場で利用されます。

工業的な利用
スマートフォンやテレビの液晶ディスプレイに使われる偏光フィルムの製造に不可欠な材料です。

◯使用上の注意事項について
毒性: ヨウ素の単体は劇物に指定されており、毒性があります。取り扱う際は、直接手で触れたり、蒸気を吸い込んだりしないように、保護手袋や保護メガネを着用し、必ず換気の良い場所で実験を行う必要があります。
保管: 昇華しやすいため、密栓できる容器に入れ、冷暗所で保管する必要があります。
アレルギー: ヨウ素に対してアレルギー反応(発疹など)を示す人がいるため、特に医薬品として使用する際は注意が必要です。

3 参考文献
HP: 「ヨウ素」、 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%82%A6%E7%B4%A0 2025/7/10
本: 「化学図録」, 数研出版, 2019年版, 数研出版編集部 2025/7/10