【司法書士試験】物権「所有権」(第206条から第264条)

このページは、司法書士試験に出題された民法の物権「所有権」(第206条から第264条)をまとめたページになります。

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【民法物権】論点「所有権」ガチ解説

所有権の全体像
民法の条文
第三章 所有権
第一節 所有権の限界
第一款 所有権の内容及び範囲(第二百六条―第二百八条)
第二款 相隣関係(第二百九条―第二百三十八条)
第二節 所有権の取得(第二百三十九条―第二百四十八条)
第三節 共有(第二百四十九条―第二百六十四条)
第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令(第二百六十四条の二―第二百六十四条の八)
第五節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令(第二百六十四条の九―第二百六十四条の十四)

民法物権の全体像と条文

民法物権の全体像と条文

相隣関係

単元:相隣関係のセンターピン(本質)
お互いの土地を平和に使うため、
少しずつ所有権を制限して『お互い様』で譲り合うためのルールである!

(隣地の使用)
第二百九条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

境界における隣地の使用請求(お隣の土地に入らせて!)
要件:土地の所有者が、境界の近くで「壁や建物を建てたり、壊したり、修理したりするため」に必要な場合
効果:
原則として、必要な範囲内で、お隣の土地を使用することができる。
例外(注意!):いくら必要な範囲でも、お隣さんの**「住家(実際に住んでいる家の中)」に立ち入るには、必ず居住者の承諾が必要**である。

(公道に至るための他の土地の通行権)
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

第二百十二条 第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

囲繞地(いにょうち)通行権(道がないから通らせて!)
定義:
「袋地(ふくろち)」:他の土地に囲まれていて、公道に出られない土地
「囲繞地」その袋地を囲んでいる周りの土地

要件・効果:
袋地の所有者は、公道に出るために、周りの土地(囲繞地)を法律上当然に通行する権利(囲繞地通行権)を持つ。
※この囲繞地通行権は、権利は法律で当然に認められるため、登記がなくても第三者に主張(対抗)できる。

通行の方法:
通行に必要で、かつ、周りの土地への損害が最も少ない場所・方法を選ばなければならない。
必要があれば、通路を開設することもできる。
自動車の通行について:
法律で当然に認められる囲繞地通行権が、自動車による通行が認められるかどうかは、自動車による通行の必要性や、周りの土地への損害などを「総合考慮」して裁判所が判断する。

対価(原則):
タダで通れるわけではなく、通行する人は、周りの土地の所有者に対して償金(お金)を支払う義務がある。

例外(無償になるケース):
土地の「分割」や「一部譲渡」によって、一筆の土地がA(袋地)とB(囲繞地)に分かれたとする。その袋地Aの所有者は、分割されたもう片方の囲繞地B(残余地)しか通ることができない。なぜなら、他の囲繞地である隣人からすると、勝手に袋地を作っておいて迷惑をかけるな!となるため。その代わり、ABの当事者間で、通行料は無償になる。
⇒囲繞地Bが別の人に売られた場合、この袋地Aが持つ「囲繞地はBしか通れないが無料」は、そのまま引き継がれる。
理由:譲受人の認識ではなく、袋地に付着した物権的権利・残余地に課せられた物権的負担だから。
⇒袋地Aが別の人に売られた場合も同様に、囲繞地はBしか通れないが無料」は、そのまま引き継がれる。

例外(無償になるケース)の具体例
もともと1つの広い土地だった磯野家の土地を、波平さんが半分に「分割」して、道路に面していない奥側の土地「袋地」をカツオくんにあげたとします。
⇒「袋地」のカツオくんは、波平さんの土地を**タダ(無償)**で通れます。他の囲繞地には新しい迷惑なので通れません。
理由: 波平さんが自分で分割して袋地を作ったのだから、息子に迷惑料(通行料)を請求するのは筋違い(自己責任)だからです。

*その後、波平さんが自分の土地(道路側・囲繞地)を穴子さんに売りました。
⇒カツオくんは、穴子さんの土地を今でも**タダ(無償)**で通れます。
理由: 穴子さんは「無料通行権のついた囲繞地」であることを承知で買ったとみなされるからです。

*その後、カツオくんが自分の袋地を、中島くんに売りました。
⇒中島くんは、穴子さんの土地を通る際、お金(償金)を払わなければなりません。
理由: 「身内や当事者だからタダ」という特別な人間関係は、中心となる袋地が売られた時点で「リセット」されます。中島くんは「道路がない袋地」を安く買ったはずなので、通行料を払うのが公平というリーガルマインドです。

(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
第二百十三条の二 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

第二百十三条の三 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

(自然水流に対する妨害の禁止)
第二百十四条 土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない

自然の摂理に従って流れる水(ポンプなどの人工的な力によらず、地形の高低差に従って自然に流れてくる状態)については、隣人同士がお互いにその状態を受け入れ、自分勝手な都合でせき止めたりしてはならないという「相隣関係」の基本的なルールを定めた条文です。

「土地の所有者」:「水が流れていく先」である低地の所有者を指すことが多い
「隣地」:ここでは主に「水が流れてくる元」である高地のことを指します

「人工的な排水」については、別途「雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止(218条)」などで規制されます 。

(水流の障害の除去)
第二百十五条 水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。

自然災害は「やったもん勝ち」ならぬ「困ったもん負担」

「高地の所有者」:上流側の土地を持っている人です。このままでは自分の土地に水が逆流し、浸水被害を受ける恐れがある当事者です。

「自己の費用で」:工事のお金は「やりたい人(上流の人)」が出します。原因が自然現象(天災)なので、下流の人に「お前の土地なんだからお前が直せ」とは言えないという理屈です。

もし下流の人がわざと堰き止めた場合や、管理不足で詰まった場合には、別の条文(216条)により「下流の人の費用」で直させることになります。

(水流に関する工作物の修繕等)
第二百十六条 他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。
(費用の負担についての慣習)
第二百十七条 前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。
(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)
第二百十八条 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない
(水流の変更)
第二百十九条 溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。
2 両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。
3 前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

水は、上流から下流へと流れる性質上、流域に住む人々にとって共通の利益をもたらすものです。
自分勝手に水路を曲げたり広げたりして、お隣さんに迷惑をかけないための「水利用の公平性」を定めた条文です。

原則:向こう岸が他人のときは勝手にいじらない
Aさんの土地とBさんの土地の間に、小さな農業用水路が流れています。
Aさんは「自分の敷地を広く使いたいから、水路を少しBさん側に押し広げて、こちら側を埋め立てよう」と考えました。
しかし、これはNGです。

例外:両岸が自分なら自由、だけど最後は元通りに
Cさんの広大な土地の中を、水路が横切っているとします。右岸も左岸もCさんの土地です。
この場合、Cさんは「農作業の邪魔だから、自分の土地の中で水路をS字に曲げたり、大きな池のように広げたりしたい」と思えば、それは自由です。
ただし、下流のDさんも使います。もしCさんが出口を勝手に変えて、Dさんの家の方向に水を流し込んだら大変です。
自分の土地から水が出ていく「出口」では、必ず元の「場所」と「状態」に戻して流さなければならない。

「溝(みぞ)、堀(ほり)その他の水流地」:
天然の川だけでなく、人工的に作られた用水路なども含まれます。
「水路又は幅員を変更してはならない」:
水路のコースを変えたり、幅(幅員)を勝手に変えたりすることの禁止です。これを認めると、対岸が削られたり、水の勢いが変わって下流の人が困ったりするからです。

「両岸の土地が水流地の所有者に属するとき」:
水路の右も左も、自分の土地である場合です。
「水路及び幅員を変更することができる」:
両岸が自分の土地なら、その範囲内で水路を曲げたり広げたりしても、直接誰かの迷惑にはなりにくいため、自由度が認められています。

「水流が隣地と交わる地点」:
自分の土地が終わって、お隣さんの土地へ水が流れ出す「出口」のことです。
「自然の水路に戻さなければならない」:
自分の土地の中でどれだけ水路をいじってもいいけれど、出口だけは元々の場所・角度・勢いに戻して返してね、という意味です。

(排水のための低地の通水)
第二百二十条 高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
(通水用工作物の使用)
第二百二十一条 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。
2 前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
(堰せきの設置及び使用)
第二百二十二条 水流地の所有者は、堰せきを設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
2 対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。
3 前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
(境界標の設置)
第二百二十三条 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。

自分と隣の土地の境目がどこにあるのかをハッキリさせることは、お互いの財産を守り、将来のトラブルを防ぐために非常に重要です。この条文は、隣人同士が協力して目印(境界標)を作ることを認めた、相隣関係の基本ルールです。

「境界標」:
コンクリートの杭、石の柱、金属のプレートなど、「ここが境目ですよ」と誰が見てもわかる物理的な印のことです。

「境界標の設置」とは?
隣人だけで新しく境界を作ることはできない。くあくまでも、すでに国によって定められている客観的な境界線(筆界)の上に、お互いが分かりやすいように目印(マーク)を置く」というだけの行為です。
「所有権の範囲(私的な権利の及ぶ範囲)」と「土地の境界線(公的な区画)」を全くの別物として扱います。
当事者の自由な意思表示によって、所有権が移転したからといって、国が定めた公的な「境界線」そのものが自動的に変動するわけではありません(最判昭42.12.26)

新しく境界を作りたい場合
土地の境界(筆界)の専門家である土地家屋調査士に依頼して、国(法務局)が関与する公的な手続きを踏む必要があります。

「設けることができる」:
もし自分一人で設置しようとしても隣人が反対する場合、裁判所に訴えて設置を命じてもらうことも可能だ、という「権利」を含んでいます。
隣人が「設ける必要はない」と消極的かもしれない状況でも、土地の境界は公共的な性質も持つため、「協力して杭を打つこと」を強制できる。

(境界標の設置及び保存の費用)
第二百二十四条 境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
(囲障の設置)
第二百二十五条 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
2 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。

「その間に空地がある」:
建物同士が隙間なくくっついているのではなく、境界線の上に塀を立てるスペース(空地)がある状態を指します。

「囲障(いしょう)」:
いわゆる「塀」や「フェンス」、「垣根」など、敷地を区切る構造物の総称です。

「協議が調わないとき」:
どんな塀にするか話し合っても決まらない場合です。「豪華なレンガがいい」「安いフェンスでいい」と意見が食い違った時のための救済策です。

「板塀(いたべい)又は竹垣(たけがき)」:
法律が定める「標準的な塀」の素材です。

【原則:塀は二人の共有財産】
新築の家を建てたAさんと、お隣のBさん。二人の土地の間にはまだ仕切りがありません。
「子供の飛び出しも怖いし、防犯のために塀を立てたいね」と二人の意見が一致しました。
この場合、お隣さんと協力して、折半(半分ずつ)の費用で、境界線の上に塀を立てることができます。

【例外:揉めたら「標準」に合わせる】
「こだわりがある方が、追加分を負担する」227条
または
「最低限のルールで決着させる」

(囲障の設置及び保存の費用)
第二百二十六条 前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
(相隣者の一人による囲障の設置)
第二百二十七条 相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
(囲障の設置等に関する慣習)
第二百二十八条 前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
(境界標等の共有の推定)
第二百二十九条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する

第二百三十条 一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。
2 高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。

境界の確定:
土地の境界線は、国が定めた客観的な線であるため、お隣さん同士の「合意(話し合い)」によって勝手に変更することはできない。

(共有の障壁の高さを増す工事)
第二百三十一条 相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。
2 前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。
第二百三十二条 前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第二百三十三条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

隣から伸びてきた木の「枝」や「根」にどう対応すべきかのルール

原則
「枝は勝手に切れない、根は勝手に切れる」というルール
「枝は、自分では切れないから、枝を切ってくれ」とお隣さんに請求することができる。
例外
「一定の条件(お願いしても無視される、相手が不明、緊急事態)を満たせば、枝も自分で切ってよい」というルール(第3項)が新設

(境界線付近の建築の制限)
第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
第二百三十五条 境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
2 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
(境界線付近の建築に関する慣習)
第二百三十六条 前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
(境界線付近の掘削の制限)
第二百三十七条 井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。
2 導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。ただし、一メートルを超えることを要しない。
(境界線付近の掘削に関する注意義務)
第二百三十八条 境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。

相隣関係:過去問演習

境界における隣地の使用
土地の所有者は、隣地との境界の付近において建物を築造するため必要な範囲内で、その隣地を使用することができる。

解答表示

土地の所有者は、境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕するため必要な範囲内で、隣地を使用することができる(209 Ⅰ ①)。

囲繞地(いにょうち)通行権(道がないから通らせて!)
袋地の所有権の取得者は、その登記を経由していなくても、囲繞地の所有者及びその利用権者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。

解答表示

袋地の所有権を取得した者は、所有権移転登記をしていなくとも、囲繞地の所有者及びこれにつき利用権を有する者に対して囲繞地通行権を主張することができる(最判昭47.4.14)。

(論点:分割・一部譲渡によって生じた袋地の通行権の範囲と、土地の譲渡)
1筆の土地が分割により公道に面するA土地と袋地であるB土地に分かれた場合において、A土地が第三者に譲渡されたときは、B土地の所有者は、A土地以外の囲繞地についても囲繞地通行権を主張することができる。

解答表示

一筆の土地の分割によって袋地を生じた場合には、袋地の所有者は、公路に至るためには他の分割者の所有地のみを通行することができる(213 Ⅰ)。これは、他の分割者がその所有地を他人に譲渡した場合も同様である(最判平2.11.20)。
お前ら(AとB)の都合で袋地を作ったんだから、必ずお前らの土地(残余地であるA土地)の中で解決しろ!他の隣人の土地を通ることは絶対に許さない!

他の土地を通りたいなら、原則通り有料で通れる?
他の土地は「有料でも一切通れません」!
元々1つの土地だったものを分割して「袋地」を作ってしまったのは、**完全にAさんとBさんの都合(自己責任)**です。 それなのに、「A土地を通るのは気が引けるから」といって、無関係な別のご近所さんの土地を(有料とはいえ)無理やり通らせてもらうのは、別のご近所さんからすれば「お前らが勝手に土地を割ったせいで、なんでウチが迷惑(損害)を被らなきゃいけないんだ!」と大迷惑

もし、袋地であるBが売却された場合はどうか?
「分割されたもう片方の土地(A土地)しか通れない、かつ無料」**という縛りを受け続けます
「勝手に土地を割って袋地を作った」という過去の事実は土地に残り続けるので、絶対にA土地の中で解決しろ!(他の隣人に迷惑をかけるな)

論点:同一人物の所有する土地の譲渡によって生じた袋地の通行権
Aが、その所有する甲土地及び乙土地のうち甲土地をBに譲渡した際に、これにより、Aの所有する乙土地が公道に通じない土地になることを認識していた場合、Aは、公道に至るために甲土地を通行することはできない。

解答表示

土地の一部譲渡によって公道に通じない土地が生じた場合には、当該土地の所有者は、残余地についてのみ通行権を有する。
ここにいう一部譲渡には、同一人の所有する数筆の土地の一部を譲渡する場合を含む(最判昭44.11.13)。
そして、このことは土地所有者の認識によって異ならない。

(論点:分割によって生じた袋地の囲繞地通行権と、通行地役権の設定の可否)
Aが所有する甲土地を二つに分筆してそれぞれをBとCに譲渡したところ、Bの取得した土地が公道に通じない土地になった場合、Bは、公道に至るため、Cの取得した土地のみを通らなければならず、隣地を所有するDとの間で公道に至るための通行地役権を設定することはできない。

解答表示

土地所有者が一筆の土地を分筆した上、そのそれぞれを他人に譲渡したことにより公道に通じない土地を生じた場合、公道に通じない土地を取得した所有者は、分筆前一筆であった残余の土地についてのみ通行権を取得する(最判昭37.10.30)。しかし、この場合においても、当該通行権とは別個に、残余地以外の土地の所有者と地役権設定契約をすることまでが禁じられるわけではない。

(論点:自然水流の妨害の禁止)
互いに隣接する甲土地と乙土地があり甲土地が乙土地より高地にある場合、甲土地から乙土地に水が自然に流れてくるときに、乙土地の所有者は、水の流れをせき止めることはできない。

解答表示

条文通り、低地などの土地の所有者は、高地などの隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない(214)。
これは、隣地の利用価値を確保する趣旨である。

(論点:境界標の設置請求と費用負担)
互いに隣接する甲土地と乙土地があり、甲土地の所有者が甲土地と乙土地との境界に境界標を設けたいと考えた場合、境界標を設ける必要性はないと考えているかもしれない乙土地の所有者と共同の費用でこれを設けることを求めることはできない。

解答表示

これは単なる「お願い」ではなく、相手方に協力を要求できる法的な権利(境界標設置権)「法律のルールなんだから、一緒に費用を出して境界標を設置しましょう!」と強制的に求めることができる
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる(223)。

隣人だけで境界を確定できるか
相隣者間で境界を定めた場合には、これによって土地の境界が変動するから、その定めにより境界を確定することができる。

解答表示

土地の境界は、国家が行政作用によって定めた客観的な存在であるから、私人の合意により変動するものではない(最判昭42.12.26)。

【区分所有法】区分所有(マンションのルール)

単元:区分所有のセンターピン(本質)
マンションの【三位一体】
『専有部分(自分の部屋)』
『共用部分(みんなの場所)』
『敷地利用権(土地を使う権利)』は絶対に切り離せない!

(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

専有部分と共用部分の「切り離し禁止」ルール(建物の三位一体)
随伴性(くっついていく):
エレベーターや階段などの「共用部分」に対する権利(持分)は、自分の部屋(専有部分)の売却などに必ずくっついていく。
分離処分の禁止:
区分所有法に特別な定めがある場合を除き、自分の部屋と共用部分の持分を別々に切り離して売ることは絶対にできない。
分割請求の禁止:
共用部分は切り離せないため、「エントランスの俺の持分だけ分割して個人のモノにさせてくれ!」と、共有物の分割請求をすることも許されない。

(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

専有部分と敷地利用権の「切り離し禁止」ルール(土地との三位一体)
分離処分の禁止:
自分の部屋(専有部分)と、マンションが建っている土地を使う権利(敷地利用権)も、原則として切り離して売る(分離処分)ことはできない。
敷地利用権の範囲:
ここでいう「敷地利用権」とは、土地の「所有権」や「共有持分権」に限らず、「地上権」や「賃借権」などの土地を借りる権利もすべて含まれる。

(分離処分の無効の主張の制限)
第二十三条 前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。

切り離し禁止ルールを破って売ってしまった場合の例外(善意の第三者保護)
原則(無効):
自分の部屋と土地の権利を切り離して売る(分離処分)ことは法律違反であり、その取引は原則として「無効」になる。
例外(善意者の保護):
ただし、「この部屋と土地は切り離して売ってはダメ」ということが登記(記録)される前に取引をしてしまった場合、「そんなルールがあるとは知らなかった!」という善意の相手方に対しては、無効を主張することができない。

(民法第二百五十五条の適用除外)
第二十四条 第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

土地の持分を「放棄」した場合の特例(民法ルールの排除)
民法の原則:
通常の共有財産では、一人が自分の持分を「放棄」すると、その持分は「他の共有者のモノ」になる。(民法255条)
マンションの特例:
しかし、切り離しが禁止されている「敷地利用権(土地の持分)」については、この民法の原則は適用されない。
※つまり、一人が敷地の共有持分を放棄しても、他の住民のモノにはならず、専有部分と一緒に国庫(国)のモノになることになります。

(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

土地の権利を持たない住民への対応ルール
競売請求の制限:
マンションの部屋は持っているが「敷地利用権(土地の権利)」を持っていない人がいたとしても、「土地の権利がない」ということだけを理由にして、住民の集会(4分の3以上の多数の議決)で、その人の部屋の競売を強制的に請求することはできない。
いつ競売請求できるのか?:
競売請求という最強の手段が使えるのは、その住民がマンションの建物を壊そうとするなど、住民全体の「共同の利益に著しく反する行為(区分所有法6条1項違反)」をした場合などに限られる。

区分所有:過去問演習

所有権の取得(誰のモノになるか?)

所有権の取得:過去問演習

共有(みんなで一つのモノを持つルール)

共有:過去問演習