【高校生物】遺伝情報とその発現《DNAの半保存的複製、セントラルドグマetc》

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高校生物~目次~

生物基礎
1.生物の特徴
2.遺伝子とその働き
3.ヒトのからだの調節
4.植生と遷移
5.生態系とその保全

生物
6.生物の進化 
7.生物の系統と進化
8.細胞と分子 
9.代謝 
10.遺伝情報とその発現 ⇒現在はここのページ
11.遺伝子の発現調節と発生
12.遺伝子を扱う技術とその応用
13.動物の反応と行動
14.植物の成長と環境応答
15.生態系のしくみ

高校生物《遺伝情報とその発現》重要語句と典型問題まとめ・総チェック

DNAの構造と複製

DNAの構造(ヌクレオチド、ヌクレオチド鎖、二重らせん構造)

【高校生物】核酸(DNAとRNA)

【高校生物】核酸(DNAとRNA)

★DNA や RNA は核酸とよばれる。

★その構成単位はヌクレオチドである。

★ヌクレオチドの構成元素
リン酸:P H O(H3PO4
五炭糖:C H O
*五角形の上が酸素、右から順に炭素1’2’3’4’5’と「数字にダッシュ」をつけて呼ぶ。
*有名な糖としてグルコース(C6H12O6)があるが、グルコースは炭素が6個なので、グルコースではない
塩基:C H O N

★二重らせん構造

そもそもヌクレオチド(DNAの単位)は方向性を持っている。
①方向性が逆向きに、
②塩基どうしが水素結合によって、
③塩基の相補性によって、
④これらがねじれることで、
二重らせん構造をとっている。

【高校生物】DNAの構成単位ヌクレオチドの方向性

【高校生物】DNAの構成単位ヌクレオチドの方向性

【高校生物】二重らせん構造(方向性、塩基の水素結合、塩基の相補性、ねじれ)

【高校生物】二重らせん構造(方向性、塩基の水素結合、塩基の相補性、ねじれ)

DNAの複製(半保存的複製、DNAヘリカーゼ、プライマー、DNAポリメラーゼ)

★半保存的複製とは
コピー(複製)のやり方として、
DNAの2本鎖のうち、1本ずつに分けてコピーするので、
半分は古い鎖、半分は新しい鎖になることから、「半保存的」複製と呼ばれる。

【高校生物】半保存的複製①(DNAヘリカーゼ、プライマー、DNAポリメラーゼ)

【高校生物】半保存的複製①(DNAヘリカーゼ、プライマー、DNAポリメラーゼ)

★半保存的複製の手順①(DNAのコピー手順)~総論~
①二本鎖 DNA の二重らせん構造をほどく。DNAヘリカーゼが活躍。
②コピーの起点として、 3′末端側に、プライマー(複製の起点となる短い RNA 鎖)が置かれる(合成される)。
③起点(プライマー)から、相補的な塩基をもつヌクレオチドが順次結合、コピーされていく。DNAボリメラーゼが活躍。

【高校生物】半保存的複製②(岡崎フラグメント、DNAリガーゼ、ラギング鎖、リーディング鎖)

【高校生物】半保存的複製②(岡崎フラグメント、DNAリガーゼ、ラギング鎖、リーディング鎖)

★半保存的複製の手順~各論~
①DNAボリメラーゼは、始点となる3’側に置かれたプライマーからしかスタートできない。
(言い換えると、その3’をコピーした5’から3’方向へ進んでいく
②DNAヘリカーゼと同じ方向にDNAポリメラーゼが進む場合、そのままヘリカーゼと一緒に進めばよい。
これによってコピーできた鎖を、リーディング鎖という。
③DNAヘリカーゼと違う方向にDNAポリメラーゼが進む場合、プライマーをいちいち設置しないといけない。
プライマーから始まり、DNAポリメラーゼは伸長していく。
これよって生まれたスキマのある鎖たちは、岡崎フラグメントと呼ばれる。
岡崎フラグメントたちは、あとでDNAリガーゼによってス合成されて、1つの鎖となる。この鎖をラギング鎖という。
④最後にプライマーは除去されてDNAのヌクレオチドに置き換わる。

原核生物と真核生物のDNAの形状と複製起点

【高校生物】原核生物と真核生物のDNAの形状と複製起点

【高校生物】原核生物と真核生物のDNAの形状と複製起点

遺伝子の発現

【高校生物】セントラルドグマとは

【高校生物】セントラルドグマとは

★遺伝子の発現とは
タンパク質が合成される過程が、遺伝情報にもとづいてなされること。
そして、遺伝情報はDNA の塩基配列として存在している。

★遺伝子の発現の手順(この遺伝情報の流れをセントラルドグマと呼ぶ。)
①転写:DNA と相補的な塩基配列をもつ RNA が合成される。
②翻訳:RNA の情報にもとづいてタンパク質が合成される。

遺伝子の発現(転写)

★転写の手順
1 プロモーター(スタート地点)に、RNAポリメラーゼが結合することで、2本鎖DNAがほどけて1本鎖となる。
2 ほどけた鎖の一方が鋳型となる。どちらが転写されるかは遺伝子ごとに決まっており、鋳型となる鎖をアンチセンス鎖(鋳型鎖)、鋳型とならない鎖をセンス鎖(非鋳型鎖)という。
  *アンチセンス鎖をコピーするので、できるRNAはセンス鎖と同じ配列になる。
  例 アンチセンス鎖のアデニンA ⇒ RNA鎖でウラシルUができる(センス鎖のチミンTに相当)

★転写後、スプライシングとは
RNA(mRNA前駆体)からイントロンの領域が除かれてエキソンの領域だけが連結されmRNAが作られる過程のこと。
*イントロン:転写されるが、翻訳されない配列。不要な部分。
*エキソン:転写されて、翻訳もされる配列。大事な部分。
*真核細胞のみスプライシングが行われ、原核細胞では行われない。

★選択的スプライシングとは
イントロンだけではなくエキソンも部分的に取り除かれる場合があり、同じRNAから多様なmRNAが合成されることをさす。

【高校生物】選択的スプライシングとは

【高校生物】選択的スプライシングとは

遺伝子の発現(翻訳)

【高校生物基礎】遺伝子の発現(セントラルドグマ、転写から翻訳の流れ)

【高校生物基礎】遺伝子の発現(セントラルドグマ、転写から翻訳の流れ)

RNAの種類

★mRNA(伝令 RNA)
遺伝子領域から転写されたRNAが、スプライシングの過程を経てmRNAとなる。
3 塩基の配列であるコドンを持つ。

★tRNA(転移 RNA)
アンチコドンを持つ。
特定のアミノ酸と結合する部位をもち,リボソームまでアミノ酸を運ぶ役割をもつ。

★rRNA(リボソーム RNA)
タンパク質を合成工場であるリボソーム(だるまの形をしている)を、rRNAが構成している。
つまり、リボソームは,rRNA とタンパク質でできている。

翻訳の手順
【高校生物】セントラルドグマの流れ

【高校生物】セントラルドグマの流れ

翻訳の手順
1 mRNA とリボソームが結合する
2 mRNA のコドン(直線の中の3つの塩基)と 細胞基質中にいたtRNA のアンチコドン(3つの塩基=1のアミノ酸)が連結する
2 tRNA によって運ばれたアミノ酸どうしがペプチド結合で連結する
3 リボソームが移動しつつ、次々にtRNA がアミノ酸を運び、アミノ酸同士がくっつき、ポリペプチド(タンパク質)が形成される。

★遺伝子の発現(セントラルドグマ)まとめ
1 DNAにRNAポリメラーゼくっついてRNAが合成
2 RNAがスプライシングされてmRNAへ
3 mRNAとリボソームがくっつく
  *mRNAの開始コドン(AUG:アミノ酸はメチオニン)からスタート
4 mRNAの開始コドンのところに tRNAがアミノ酸(メチオニン)を運んできてくっつく。
  次々と運んでくっついていく。
5 となりのアミノ酸どうしがペプチド結合によってくっつく(ポリペプチドとなる)
6 リボソームが移動し、mRNAをどんどん読み込んでいく
7 合成されたポリペプチドがタンパク質となる

遺伝暗号表(コドン表)

「tRNAがアミノ酸を運んできてmRNAとくっつく」ときの話。

★mRNAのコドンと tRNAが運ぶアミノ酸の場合の数
コドンは3つの塩基の配列のことであり、
塩基の種類として4種ある(A,U,G,C)
⇒4種類を重複して使えるので、4×4×4=64パターン表すことができる。

しかし、アミノ酸には20種類しか存在しない。
⇒複数のコドンが同じアミノ酸を指定するものがある。

遺伝暗号表(コドン表)

遺伝暗号表(コドン表)

真核生物と原核生物の遺伝子発現の違い

【高校生物】真核生物と原核生物の遺伝子発現の違い

【高校生物】真核生物と原核生物の遺伝子発現の違い

遺伝子の発現調節

原核生物の遺伝子発現調節

生物は多くの遺伝子をもっているが,すべての遺伝子を常に発現しているわけではない。
発生段階や外部条件に応じて,どのような遺伝子が,どの程度発現するかが調節されている。

★構造遺伝子
タンパク質(酵素など)のアミノ酸配列の情報をもつ遺伝子。

★調節遺伝子
調節タンパク質(他の遺伝子の転写を調節)の遺伝子。
例 アクチベーター:転写を促進する調節タンパク質。
例 リプレッサー:転写を抑制する調節タンパク質

★転写調節領域
調節タンパク質が結合して,転写の調節が行われる領域。
原核生物では,オペレーターとよばれる。

例 大腸菌のラクトース代謝酵素の合成調節

★そもそもラクトースとは
グルコースとガラクトースが結合したもの。
乳糖とも呼ばれる。

大腸菌は、いつもラクトースを分解してエネルギーを得ているわけではなく、たまにラクトースを手に入れたら分解する程度。

大腸菌がラクトースを分解しエネルギー源として利用するためには,3 つの酵素が必要となる。
これら3つの酵素は、機能的に関連しているタンパク質の遺伝子として、 DNA 上で隣接して存在する。
このような構造遺伝子のまとまりを、オペロンという。

このオペロンを発現させるには、まずDNAの転写手順として、プロモーター(スタート地点)にRNAポリメラーゼが結合して、環状2本鎖DNAがほどけさせて1本鎖とする必要がある。
発現を抑制したいなら、プロモーター(スタート地点)にRNAポリメラーゼが結合させない仕組みにすれば良い。

普段は、ラクトースがないので、、リプレッサーがオペレーターに結合しているため,RNA ポリメラーゼがプロモーターに結合できない。
→転写が起こらない。

ラクトースがある場合、ラクトースを開錠のカギとして機能させることで、すぐに分解できるようにしている。
ラクトース代謝産物がリプレッサーに結合すると,リプレッサーの立体構造が変化してオペレーターから離れる。
その結果,RNA ポリメラーゼがプロモーターに結合できるようになる。
→転写が起こる。

【高校生物】原核生物の遺伝子発現調節(大腸菌のラクトース代謝酵素の合成調節)

【高校生物】原核生物の遺伝子発現調節(大腸菌のラクトース代謝酵素の合成調節)

真核生物のおける遺伝子発現調節

クロマチンの状態による遺伝子発現調節

遺伝子の発現のしやすさは、最初の手順である転写がしやすいかどうかである。
そして、転写のしやすさは、DNAが1本鎖となって読み取りやすい状態にあるかどうかである。

この点、真核生物の DNA は,核内でヒストンなどのタンパク質とともに折りたたまれて、クロマチンとよばれる構造を形成している。
クロマチンが密集した状態だと転写がしにくい。

調節タンパク質による遺伝子発現調節

そもそも転写のときに、
原核生物では、オペロンというDNA 上に機能的に関連しているタンパク質が隣接していて読み取りやすかったが、
真核生物では、オペロン構造は取らず、各遺伝子がそれ自身のプロモーターを持つ。
つまり、1 つの構造遺伝子ごとに、RNA ポリメラーゼが基本転写因子(RNAポリメラーゼが正しくプロモーターを認識して転写を開始するのに必要な因子)と転写複合体を形成して、プロモーターに結合することで転写は始まる。