【大学入試】生物~目次~
生物基礎
1.生物の特徴
2.遺伝子とその働き
3.ヒトのからだの調節
4.植生と遷移
5.生態系とその保全
生物
6.生物の進化
7.生物の系統と進化
8.細胞と分子
9.代謝 ⇒現在はここのページ
10.遺伝情報とその発現
11.遺伝子の発現調節と発生
12.遺伝子を扱う技術とその応用
13.動物の反応と行動
14.植物の成長と環境応答
15.生態系のしくみ
生物《代謝》重要語句と典型問題まとめ・総チェック
★代謝とは
生体内における化学反応全般のこと。同化と異化に大別でき、どちらもATPが使われている。
★同化とは
単純な物質から複雑な物質を合成し、エネルギーを吸収する反応のこと。
例 炭酸同化(光合成、化学合成)、窒素同化
★異化とは
複雑な物質を単純な物質に分解し、エネルギーを放出する反応(放出されたエネルギーはADP⇒ATP合成)のこと。
例 呼吸
異化
★異化の種類
①酸素を必要としない発酵
②主にミトコンドリアで進み酸素を必要とする呼吸
などがある。
どちらも,有機物の分解によって生じたエネルギーを利用して,ATP を合成している。
異化の種類(発酵)
★発酵とは
異化(複雑な物質を単純な物質に分解してエネルギーを放出する反応)の中でも、酸素を使わない異化のこと。
原核細胞や低酸素環境での真核細胞では,発酵によってATP が産生(さんせい)されている。
例 乳酸発酵(乳酸菌)
例 解糖(低酸素環境の筋細胞など)
例 アルコール発酵(酵母)
★発酵と呼吸との違い
・発酵は酸素が消費されず、呼吸は酸素が消費される。
・発酵は、サイトゾル(細胞質基質)で進むが、呼吸は、解糖系,クエン酸回路と電子伝達系の3 段階に分けられ、解糖系はサイトゾル(細胞質基質)で進み、クエン酸回路と電子伝達系はミトコンドリアで進む。
・発酵は低分子の有機物まで分解されるが、呼吸は有機物が無機物にまで分解される。
異化の種類(乳酸発酵)
★乳酸発酵とは
グルコースを乳酸に分解する過程で、ATP を合成する反応のこと。
例 乳酸発酵(乳酸菌)
例 解糖(低酸素環境の筋細胞など)
異化の種類(アルコール発酵)
★アルコール発酵とは
グルコースをエタノールと二酸化炭素に分解する過程で、ATP を合成する反応のこと。
例 アルコール発酵(酵母)
異化の種類(呼吸)
★呼吸とは
異化(複雑な物質を単純な物質に分解してエネルギーを放出する反応)の中でも、酸素を用いた異化のこと。
グルコースを基質(生成物の材料のこと。)とした呼吸は、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の3種類ある。
異化の種類(呼吸:解糖系)
★解糖系とは
グルコースからピルビン酸まで分解される反応のこと。
*乳酸発酵やアルコール発酵にも共通する,基本的な異化の過程。
異化の種類(呼吸:クエン酸回路)
★クエン酸回路とは
ピルビン酸(C3化合物:しーさん化合物)から生じたアセチルCoA(コーエー)と、オキサロ酢酸が結合して、クエン酸が生じる。
その後,クエン酸が再びオキサロ酢酸が生成されるため,反応が回路状(ぐるぐるループする)になっている。
*クエン酸回路では,NAD+が還元されてNADH が生じるだけでなく,FAD が還元されてFADH2 も生じる。
異化の種類(呼吸:電子伝達系)
★電子伝達系とは
解糖系とクエン酸回路で生じた還元型補酵素(NADH やFADH2)が,酸素によって酸化されて酸化型補酵素(NAD + やFAD)に戻る過程で,多量のATP が合成すること。
電子伝達系におけるATP 合成は,特に「酸化的リン酸化」と呼ばれる。
*1 分子のグルコースに由来する還元型補酵素から,最大で34 分子のATP が生じる。
手順
・還元型補酵素から放出された電子がタンパク質複合体の間を受け渡される。
・電子伝達系を流れた電子は,最終的にH +と酸素と反応し,水を生じる。
・電子が受け渡されると、H+が引き付けられ、マトリックス側から内膜と外膜の間へと能動輸送される。
・膜間のH+の濃度が濃くなると、濃度勾配に応じて,ATP合成酵素を通ってマトリックス側へ戻る。その際にATP が合成される。
異化の種類(呼吸基質:呼吸するための材料)
★呼吸基質(呼吸するための材料)として、脂肪とタンパク質がある。
★呼吸基質(脂肪)
脂肪が分解されると⇒脂肪酸とグリセリン(モノグリセリド)
*消化酵素は、すい液に含まれるリパーゼ
★呼吸基質(タンパク質)
タンパク質が分解されると⇒アミノ酸
*消化酵素は、すい液のトリプシン,胃液のペプシン,小腸のペプチダーゼ
呼吸商
★呼吸商とは
呼吸で排出された二酸化炭素の体積を,吸収した酸素の体積で割った値。
*炭水化物(グルコース)の分解の化学反応式は、重要なので暗記しよう!
同化
★同化とは
単純な物質から複雑な物質を合成し、エネルギーを吸収する反応のこと。
例 炭酸同化(二酸化炭素を利用する炭酸同化のこと、光合成や化学合成)、窒素同化(窒素を利用して複雑な物質を合成)など
★炭酸同化の種類
①光合成
光エネルギーを使って、(化学エネルギーに変換して)二酸化炭素から有機物をつくる。
⇒さらに電子を発生させるために何を利用するかで種類が分かれる。
通常の植物、シアノバクテリア(ユレモ、ネンジュモ、イシクラゲなど)、藻類(クロレラなど):電子発生に水を利用
光合成細菌の光合成:電子発生に硫化水素を利用
②化学合成
光エネルギーではなく、酸化による化学エネルギーを利用して、二酸化炭素から有機物をつくる。
⇒何を酸化させるかで種類が分かれる。
硝酸(しょうさん)菌:亜硝酸イオンNO2- を硝酸イオンNO3- に酸化
亜硝酸(あしょうさん)菌:アンモニウムイオンNH4+ を亜硝酸イオンNO2- に酸化
硫黄細菌:硫化水素H2S を硫黄S に酸化
光合成(炭酸同化)
★炭酸同化とは
同化(単純な物質から複雑な物質を合成する)の中でも、二酸化炭素を利用して、有機物を合成する反応のこと。
★光合成とは
二酸化炭素と水と光エネルギーから、酸素と有機物を合成する反応のこと。
葉緑体のチラコイドで起こる反応と、ストロマで起こる反応に大きく分けることができる。
光合成(葉緑体のチラコイドで光を吸収する)
チラコイドの膜には、光合成色素が存在し、光エネルギーを受容する場所となっている。
★光合成色素とは
光エネルギーを受容する色素のこと。
例 クロロフィルa:青紫と赤色の光を吸収(波長の両端、外側)
例 クロロフィルb:青緑と橙色光を吸収(波長の両端、すこし内側)
例 カロテン:紫~緑色(500㎚あたり)までの波長の短い色を吸収⇒橙色光(600㎚あたり)は吸収できず反射するので、カロテン自身は橙色に見える
★吸収スペクトルとは
各色素が吸収する波長を表したグラフのこと。
例 クロロフィルは、青色と赤色の光を吸収し,緑色の光を反射・透過するため、クロロフィル自体が緑色に見える。
★作用スペクトルとは
各波長の光で(どの色の光で)、どの程度の光合成が進むかを表したグラフのこと。
⇒どの色でも光合成は進むが、そもそも吸収する色素を持っていなければ、その色で光合成ができない。
例 緑色の光を吸収する光合成色素がいないから、緑色の光で光合成ができない。
⇒吸収スペクトルの総和が、作用スペクトルの概形と対応している。何色でも吸収した分だけ、光合成が進む。
薄層クロマトグラフィー(TLC)
★薄層(はくそう)クロマトグラフィー(TLC:Thin-Layer Chromatography)とは
水に溶けやすさを利用して、混合物中の化合物を分離するために使われる実験のこと。
光合成(葉緑体のチラコイドで起こる反応)
★光化学系とは
チラコイド膜に存在する、光合成色素とタンパク質でできた複合体のこと。
反応手順
①【光化学反応】光化学系ⅠとⅡの光合成色素で光エネルギーが受容され,電子の流れが生じる。*光から電気が流れる。
⇒電子は、電子受容体と呼ばれるNADP+が受け取り(電子を受け取る=還元されて)、還元型補酵素(NADPH)が生じる。
②【光化学系Ⅱ】水が酸素とH+,および電子に分解され,生じた電子はチラコイド膜にある電子伝達系に伝わる。H2O⇒2H+ + 2e– + O
③【光リン酸化】電子伝達系に電子が受け渡されていく過程でH+ がチラコイド内に能動輸送され,濃度勾配が形成される。濃度勾配に応じて,H+ がATP 合成酵素を通ってストロマに戻る際にATP が合成される。
⇒葉緑体におけるATP 合成は,光リン酸化とよばれる。
光合成(ストロマで起こる反応:カルビン回路)
★カルビン回路(C3回路)とは
チラコイドで生成したATP とNADPH を利用して,二酸化炭素からグルコースなどの炭水化物が合成される回路のこと。
カルビン回路の途中で、
1 分子の二酸化炭素は、1 分子のC5 化合物リブロースビスリン酸(RuBP)と結合し,2 分子のC3 化合物ホスホグリセリン酸(PGA)が生じる。
この反応は、ルビスコと呼ばれる酵素によって触媒される。
光合成(ストロマで起こる反応:C4回路)
★C4回路とは
一般的な植物は、葉肉細胞でカルビン回路(C3回路)だけを持つが、二酸化炭素を効率よく吸収するために、カルビン回路に追加して、C4回路を持つ植物が存在する。
*カルビン回路(C3回路)のデメリット
カルビン回路で、ルビスコは二酸化炭素が低濃度の環境でははたらきにくい。
二酸化炭素を効率よく吸収する必要がある。
★C4植物とは
熱帯などの強光,高温で乾燥した環境での生育に適している植物のこと。
葉肉細胞でC4回路をまわし、維管束鞘細胞でカルビン回路(C3回路)をまわしている。
例 トウモロコシ,サトウキビ
★CAM植物(カム植物)とは
夜に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み,リンゴ酸として液胞に貯蔵する植物のこと。
夜にC4回路をまわし、昼にカルビン回路(C3回路)をまわしている。
昼に気孔を開かずに(二酸化炭素を使って)光合成できるため,砂漠などの乾燥地での生育に適している。
例 ベンケイソウ,サボテン
細菌の炭酸同化
光合成細菌
例 色あり細菌:紅色(こうしょく)硫黄細菌,緑色(りょくしょく)硫黄細菌
★植物の光合成との違い
・光合成色素としてバクテリオクロロフィルを利用している。
・水の代わりに(水の分解で電子を放出する代わりに)、硫化水素(硫化水素を分解して電子を放出)を利用⇒結果として、酸素ではなく硫黄を生じる。
★光合成細菌の光合成の式
6CO2 + 12H2S → C6H12O6 + 6H2O + 12S
*一般的な光合成の式(シアノバクテリアもこの同じ式。同じだからこそ、葉緑体の共生説がある。)
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
★シアノバクテリアと光合成細菌の共通点と違い
共通点
両者ともに地球の初期のころ、初めて光から有機物を合成できた(光を吸収できる光合成式を獲得した)生物。
光合成細菌も、シアノバクテリアも葉緑体がなくても光合成をすることができる。
相違点
光を吸収するための光合成色素がそれぞれ異なる。
光合成細菌
例 緑色硫黄細菌、紅色硫黄細菌
⇒バクテリオクロロフィル
シアノバクテリア
例 ユレモ、ネンジュモ(イシクラゲ)
⇒クロロフィルa
化学合成細菌
例 色なし細菌:亜硝酸(あしょうさん)菌,硝酸(しょうさん)菌,硫黄細菌
★光合成と化学合成の違い
二酸化炭素から有機物を合成している点は同じだが、光エネルギーではなく、化学エネルギー(無機物の酸化、燃やす)を利用している点。
まず、無機物 + 酸素 → 酸化物+化学エネルギー
次に、作成した化学エネルギーを使って、6CO2⇒C6H12O6