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8種制限とは
8種制限とは
宅建業者が自ら売主となって、
一般消費者が買主となる場合に、
適用される宅建業法に定められた規制のこと。
① 自己の所有の属しない物件の契約締結の制限(他人物売買、売買の予約、33条の2)
② クーリング・オフ(37条の2)
③ 損害賠償額の予定等の制限(38条)
④ 手付の額の制限等(39条)
⑤ 担保責任についての特約の制限(40条)
⑥ 手付金等の保全(41条、41条の2)
⑦ 割賦販売契約の解除等の制限(42条)
⑧ 所有権留保等の禁止(43条)
8種制限の趣旨とは
受け取ることのできる報酬の額に宅建業法上限度額が設けられておらず、
買主の不動産取引に関する経験の乏しさや知識のなさを利用して、売主となる宅建業者が自らの有利な取引を締結させてしまうといった事態が起こる可能性があるため、
制限を設けた。
*ちなみに、取引の媒介や代理をした場合においては、受け取ることのできる報酬の額に宅建業法上限度額が設けられている。
8種制限~その1:他人物売買
原則:他人物売買は禁止
民法上他人物売買が認められているとはいえ(民法561条)、宅建業法上は、他人物売買は、その物の所有権を手に入れることができなければ、買主に損害を与えてしまうため、原則禁止。
例外:他人物売買が許される
宅建業者が確実に物権を入手できる場合(仕入が確実)、買主に不測の損害はない。
【他人物売買が認められる場合】
① 宅建業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約も含まれます)を締結しているとき
② 宅建業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で、国土交通省令等で定める一定の条件を満たすとき
例外の例外
停止条件付きの契約(仕入の契約が停止条件にかかっている)の場合、現在の物件の所有者から、宅建業者が確実に物件を入手することができるとは言えないため、例外に該当せず、他人物売買が認められない
未完成物件
原則:未完成物件の売却は禁止
例外:
1,手付金等の保全措置が講じられているときは、宅建業者は、未完成物件を売却することができる(33条の2第2号)。
2,手付金等の額が少額である等、手付金等の保全措置が不要である場合、宅建業者は、保全措置を講じることなく、未完成物件を売却することができる
8種制限~その2:クーリング・オフ
「クーリング・オフ(cooling-off)」とは
一定の条件を満たす買主が、書面により、簡単に申込みの撤回等を行うことができるという制度(37条の2)
クーリング・オフの要件
【原則】
自ら売主である宅建業者と、事務所等以外の場所で申込みや契約の締結をした宅建業者以外の買主は、その契約の解除や、申込みの撤回ができる。
要件
①当事者:売主が宅建業者、買主が宅建業者ではない一般消費者
②申込の場所:正しい判断をすることができない場所(事務所等以外の場所)
*申し込みの場所と、契約締結の場所が異なる場合でも、申し込みの場所が基準となる
ex.喫茶店
ex.仮設テント張りの案内所
ex.売主から依頼を受けていない媒介業者の事務所
ex.買主の申し出がない場合の買主の自宅
・売主の事務所
・土地に定着し、専任の取引士の設置義務のある、案内所(継続的に業務を行うことができる施設を有する場所)
ex.モデルルーム、モデルハウス
・売主から依頼を受けている媒介・代理業者の事務所や、案内所
・買主から申し出た場合で、かつ買主の自宅や勤務先
【例外】:以下の場合、契約の解除や申込みの撤回ができない。
Ⅰ売主からクーリング・オフができる旨及びその方法について、書面(承諾あっても電磁的な方法は不可)で告知を受けた日から起算して8日を経過した場合
→口頭で告知をした場合、8日間の期間は始まらず、買主はいつまでもクーリング・オフによる解除や撤回ができる。
→告知書面に記載する内容:媒介業者がいても、媒介業者の名前を記入する必要はなく、売主の名前を直接記入する
Ⅱ物件の引渡しを受け、かつ代金全額を支払った場合
買主に不利な特約
申込者等に不利なものは、無効となる(37条の2第4項)
ex.クーリングオフ解除ができる期間を、申し込みから10日以内に限るというような特約
→起算点が本来は告知した日にもかかわらず、申し込みした日にずらすことは買主にとって不利なので無効
ex.クーリングオフ解除をしても違約金を払ってもらうような特約
*逆に有利な特約は有効
ex.クーリング・オフの期間を「8日以内」ではなく「14日以内」とする特約は有効
クーリング・オフの方法
売主に対して、書面(電磁的な方法は不可)で行う(37条の2第1項柱書)
クーリング・オフの効果
1,書面を発した時に生じる(37条の2第2項)
2,宅建業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することはできない(37条の2第1項柱書)
3,宅建業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない(37条の2第3項)
8種制限~その3:損害賠償額の予定等の制限
民法上は、あらかじめ損害賠償の額(上限なし)を定めておくことができる(民法420条1項)
この趣旨は、損害賠償の額をあらかじめ定めておくことにより、債権者が実際に生じた損害の額を立証して請求する手間をなくす点にある。
しかし、膨大な損害賠償の責任から一般消費者を保護する必要性より、かかる損害賠償額に上限を設けた。
宅建業法の制限:損害賠償予定額+違約金=合計20%まで
売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えることとなる定めをしてはならない(38条1項)。
宅建業法の制限に反する損害賠償額の予定や違約金の定めは、代金の額の10分の2を超える部分について無効(38条2項)
8種制限~その4:手付の額の制限等
解約手付とは
宅建業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、当該宅建業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる(39条2項)。
手付金の額の制限:売買代金の20%以下しか認めない
民法上は、手付金の額の制限はない。
しかし、買主の保護の観点から、宅建業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができない(39条1項)
不利な特約
買主に不利なものは、無効となる(39条3項)
ex.売主は倍額ではなく手付を返還すれば契約の解除ができる→無効
ex.手付解除は、契約締結後○日までに限る→無効(履行に着手するまではいつでも解除できるので買主に不利といえる)
8種制限~その5:担保責任についての特約の制限
担保責任とは
売主が買主に対して負う責任のこと。
すなわち、売買契約の目的物である宅地や建物が種類又は品質に関してその契約の内容に適合しない場合において、売主は、買主に対して、一定の責任を負う。
民法の担保責任の内容(民法562条、563条、564条、415条、541条、542条)
買主は、売主に対して、以下の請求ができる。
・履行の追完を請求
・代金の減額を請求
・契約を解除
・損害賠償の請求
民法上、売主は、担保責任を負わない旨の特約をすること認められている
もっとも、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない(民法572条)。
民法上、担保責任の期間(不適合を通知すべき期間)の制限
買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、買主は、契約の解除等ができない(民法566条)
宅建業法による制限
原則として、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない(40条1項)
これに反する特約は無効となる(同条2項)
ただし、担保責任の期間(不適合を通知すべき期間)の制限について、(民法上は「買主がその不適合を知った時から1年以内に売主に通知」だったが)その目的物の引渡しの日から2年以上の期間を定めることが認められている(40条1項)
不利な特約
買主に不利なものは、無効となり、民法の規定をそのまま適用される
ex.担保責任を負う期間は、引渡しの日から1年間とする特約→無効(民法566条が適用され、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、買主は、契約の解除等ができない)
8種制限~その6:手付金等の保全
「手付金」「内金」「中間金」「申込証拠金」等の名目は問わず、
契約の締結の日以後、
当該宅地又は建物の引渡し前に、
代金に充当される金銭のこと。
買主の「手付金等」が守られる理由・保全の趣旨
引渡し前に、売主である宅建業者が倒産してしまった場合、買主は、「購入した物件は手に入らないうえに、支払った金銭も戻ってこない」というトラブルに巻き込まれることとなってしまう。
そこで、宅建業法は、宅建業者に万が一のことが起こった場合であっても、買主のところへ手付金等が無事に戻ってくるような制度をつくった。
契約締結時に未完成物件の場合、手付金等の保全の仕方
原則:
いずれかの措置を講じた後でなければ、宅建業者は、買主から手付金等を受領してはならない(41条1項柱書本文)。
① 銀行等との保証委託契約(41条1項1号):連帯保証人になってもらう
② 保険事業者との保証保険契約(41条1項2号):保険に入る
銀行その他「政令で定める金融機関」又は「国土交通大臣が指定する者」のこと。
政令で定める金融機関:信用金庫、農林中央金庫
国土交通大臣が指定する者:東京不動産信用保証株式会社、不動産信用保証株式会社など
例外:
以下の2パターン、手付金等の保全措置を講じることなく、宅建業者は、手付金等を受領することができる(41条1項柱書ただし書、施行令3条の5)。
① 宅地又は建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をした場合
② 宅建業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の100分の5以下であり、かつ、1,000万円以下である場合
契約締結時に完成物件の場合、手付金等の保全の仕方
原則:
いずれかの措置を講じた後でなければ、宅建業者は、買主から手付金等を受領してはならない(41条の2第1項柱書本文)
① 銀行等との保証委託契約(41条の2第1項柱書本文、41条1項1号)
② 保険事業者との保証保険契約(41条の2第1項柱書本文、41条1項2号)
③ 手付金等寄託契約(41条の2第1項1号):指定保管機関に手付金を預かってもらう
保証協会「公益財団法人 全国宅地建物取引業保証協会」と「公益社団法人 不動産保証協会」)などが指定されている
例外:
以下の2パターン、手付金等の保全措置を講じることなく、宅建業者は、手付金等を受領することができる(41条の2第1項柱書ただし書、施行令3条の5)。
① 宅地又は建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をした場合
② 宅建業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の100分の10以下であり、かつ、1,000万円以下である場合
8種制限~その7:割賦販売契約の解除等の制限
宅建業者への代金の支払いを、引渡し後1年以上の期間に、2回以上に分割して行うことを定めた売買契約のことをいう(35条2項柱書)。
賦払金(ふばらいきん)とは
割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分のこと。
民法上の、解除の要件
相手方が債務を履行しないとき、相当の期間(無制限)を定めて履行を催告(口頭も可)し、その期間内に履行がない場合に解除できる
宅建業法による、割賦販売契約の解除等の制限(42条1項)
賦払金の支払の義務が履行されない場合において、
① 30日以上の相当の期間を定め、その支払を書面によって催告をすること
② 上記①の期間内に、義務の履行がされないこと
この規定に反する特約は、無効(同条2項)。
8種制限~その8:割賦販売契約の所有権留保特約等の禁止
所有権留保とは
割賦販売の場合において、買主が代金を一定の額以上支払うまでの間、所有権を売主に留保し、買主に所有権を渡さないという特約のこと。
かかる特約の趣旨は、売主が代金の回収を確実に行うことを目的。
所有権留保の典型例~時系列で確認~
宅建業者Aが、1,000万円の家を非業者Bに割賦販売する
① 契約
売買契約に所有権留保特約を付ける
売主:「家は先に使ってよい。ただ、所有権はまだこちらに残しておく」
② 引渡し
Bが200万円を払い、Aが家を引き渡す
Bが住み始めるが、所有権はAのまま
③ 分割払い
支払総額が300万円になる
まだ3割を超えていないので、所有権留保を続けられる
④ 次の支払い
次の100万円を受け取り、総額400万円になる
その受領までに、Aは所有権移転・移転登記などを履行する
所有権留保特約の原則禁止の趣旨
所有権留保は、買主の側にとって不利なことが多いため
ex.売主に所有権が留保されていることから、二重譲渡が起こる危険性
ex.売主が倒産してしまった場合、売主の財産として差し押さえられる危険性
原則:
宅建業法上、引渡しまでに登記その他の売主の義務を履行する(所有権留保特約は禁止)43条
例外:以下、売買代金の回収見込みがない場合は売主(宅建業者)の保護の観点から、所有権留保が許される(43条1項ただし書)
① 宅地又は建物を引き渡すまでに、代金の10分の3を超える額の金銭の支払を受けていない場合
② 買主が、宅地又は建物につき所有権の登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権や不動産売買の先取特権の登記を申請する見込みや、保証人を立てる見込みがない場合
⓶について、割賦販売で代金の10分の3を超える支払いを受けた後でも、買主が、所有権登記後の残代金債務を担保するための抵当権等の登記を申請する見込みや、保証人を立てる見込みがない場合には、宅建業者が所有権を留保することが認められる。
譲渡担保特約の禁止
残代金の支払いを「担保」するために、買主が売主へ物件の所有権を「譲渡」する契約のこと。
*譲渡担保設定契約は、売買契約とは別の合意。
譲渡担保の典型例~時系列で確認~
宅建業者Aが、1,000万円の家を非業者Bに割賦販売する。
① 契約
② 引渡し
Bが400万円を払い、家の引渡しを受ける。
③ 譲渡担保の設定(*宅建業法で制限される)
売主A:「残り600万円の支払いが心配だから、担保として、家の所有権をこちらへ譲渡してください」
残代金600万円を担保するため、BからAへ所有権を移す合意をする。
宅建業者は、自ら売主として宅地又は建物の割賦販売を行った場合において、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、かつ、代金の額の10分の3をこえる額の金銭の支払を受けた後は、譲渡担保(担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けること)をしてはならない(43条2項)。
さっきの事例だと、③は既に「引渡し」と「代金3割超の受領」の両方を済ませているので、譲渡担保契約は禁止される。
なお、所有権留保の「買主に担保を用意する見込みがない場合」という例外は、譲渡担保には使えない。つまり、物件を買主に引き渡し、代金の10分の3を超える支払いを受けた後は、買主に担保を用意する見込みがない場合あっても、譲渡担保をすることはできない。





